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【第51回毎日芸術賞受賞作】紀伊半島は熊野川の河口に位置する街、森宮。医者の槇隆光は貧しい者から治療費を取らないことから親しみを込めて“毒取ル先生”と呼ばれていた。ときは1903年、豊かな自然のなかで暮らす槇たちの周りには鉄道敷設や遊郭設置などの問題が起こり、一方で日露戦争開戦の足音がすぐそこに迫っていた――。歴史上の人物に材を取り、当時の情勢と熊野の人々を瑞々しく描いた第51回毎日芸術賞受賞作。
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Posted by ブクログ
日露戦争の史実と当時の町の人々の話と恋愛とか絶妙なバランスで描かれており、とても面白く読み進めた。特に後半はページめくりが止まらなくなった。心に残る良書でした。
舞台は1903年、紀州の新宮(本書では”森宮”と表記)の地においてアメリカ・インドで研究を積んで地元に貢献する医師として活躍しつつ、そのリベラルな政治姿勢から影響力を発揮する槙隆光という人物を主人公に、日露戦争開戦や鉄道の敷設など、様々な歴史の中で活きる人々の姿を描く長編小説。 主人公のモデルは、...続きを読む幸徳秋水らと共に処刑された大石誠之助という実在の人物である。実際、幸徳秋水自身も、新宮で講演に招聘されるというエピソードが本書では綴られ、幸徳秋水をマークする地元警察との緊張感溢れるやり取りなどは強く印象に残る。 総じて、新宮という決して日本の政治・文化的な中心から距離のある街において、日本が帝国主義へ強く傾いていく日露戦争の時期の世相を追体験できるかのような面白さに満ち溢れており、辻原登の優れたストーリーテリングの才能もあり、全く上下巻、飽きさせない流れを楽しめる。 個人的には、主人公の槙がアメリカ留学中に知り合ったジャック・ロンドンと、日露戦争への従軍医師として赴任した中国の地で再開する、というエピソードもあり、驚くと同時にロンドン愛好者として非常に印象的。
大逆事件を題材にしており、事件自体にも興味が湧いた。他に大谷探検隊や二楽荘に関してとか初めて知る事が多かった。小説としてはTHE純小説だった。
和歌山県「森宮」を舞台に、実在の人物をモデルに描かれた時代小説。 大国ロシアを敵として無謀な戦いを挑む小国日本。 世論の大半が開戦戦争を支持する異様なムードの中、 海外で学んで日本に帰ってきた「ドクトル槇」は、戦争に反対する立場を主張する。 『戦争を扇動するのは悪徳の人手、実際に戦うのは美徳の人...続きを読むだ』 しかし医者としての使命を果たすべく、槇は、当時不治の病であった「脚気」から人々を守ろうと戦地に赴くのであった。 ドクトル槇を中心に、時代の流れに巻き込まれていく「森宮」の人々の物語を描いていく。 若くして「山林王」となった美貌の「千晴」をめぐる愛憎劇の行方も気になるところ。 『萎びたり枯れたりしないように、水をやるのは欠かさないつもりだ。』 秘めた想いをあたためる人々のせつなさが胸をうつ。 和歌山県の新宮は私にとって身近な土地です。 あの美しい緑の街がどのような歴史をたどったのか、下巻も楽しみです。
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