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Posted by ブクログ
舞台は1903年、紀州の新宮(本書では”森宮”と表記)の地においてアメリカ・インドで研究を積んで地元に貢献する医師として活躍しつつ、そのリベラルな政治姿勢から影響力を発揮する槙隆光という人物を主人公に、日露戦争開戦や鉄道の敷設など、様々な歴史の中で活きる人々の姿を描く長編小説。
主人公のモデルは、幸徳秋水らと共に処刑された大石誠之助という実在の人物である。実際、幸徳秋水自身も、新宮で講演に招聘されるというエピソードが本書では綴られ、幸徳秋水をマークする地元警察との緊張感溢れるやり取りなどは強く印象に残る。
総じて、新宮という決して日本の政治・文化的な中心から距離のある街において、日本が帝国主義へ強く傾いていく日露戦争の時期の世相を追体験できるかのような面白さに満ち溢れており、辻原登の優れたストーリーテリングの才能もあり、全く上下巻、飽きさせない流れを楽しめる。
個人的には、主人公の槙がアメリカ留学中に知り合ったジャック・ロンドンと、日露戦争への従軍医師として赴任した中国の地で再開する、というエピソードもあり、驚くと同時にロンドン愛好者として非常に印象的。
Posted by ブクログ
戦争に反対していた「毒取る」槇は、脚気に苦しむ兵士を助けるべく医者として戦地に赴く。
そこには、脚気について誤った主張・治療をしなければならず苦悩する森林太郎(森鴎外)がいた。
森宮に帰国後、槇はもとの生活にもどるが、
そこでは社会主義運動が広がり始め、怪しげな空気に包まれていた。
槇は、はからずもその騒動に巻き込まれてしまう。
上巻を読み終えた後、本書の題材である「大逆事件」について少し調べてみました。
槇のモデルとなった医師は、大逆事件で無実の罪で処刑されています。
だからきっと、「この物語も悲しい結末をむかえるんだ」と身構えて読んでいました。
しかし、最後まで読んでいくと、槇は想い交わしていた永野夫人と結ばれます。
二人で海外に移住します。
ハッピーエンドなのです。
「永野夫人」という存在は創作なので、この時点で史実とは一致しないのですが、
槇のモデルとなった大石誠之助が悲しいおわりを迎えているというのに、
こんな幸せな結末って、アリなのでしょうか。
史実を題材にした物語なのに、こんな真逆な終わり方なんて・・・。
もっと鳥子署長がイヤな感じで槇にからんでくると思ったのに、あっさり身をひいたしな。
納得がいきません。
「大逆事件」のこと、あまり調べないで読めば、
もっと違う感想をもっていたかもしれません。
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