中国のはるか奥地を仕事で旅する日本人商社マンが、桃源郷の名をもつ小さな村にふと迷い込んだ。優美な村の名前からは想像もつかない奇怪な出来事が、彼の周りで次々と起こる。謎の溺死体、犬肉を食らう饗宴、つきまとう正体不明の男達……。彼も同行の日本人も、次第に調子がおかしくなってゆく。桃花の薫りがする魅力的な土地の女に導かれるように、知らず知らず村の秘密へと近づき、ついに彼が見た“真の村の姿”とは。話題の第103回芥川賞受賞作と他一篇を収録。
Posted by ブクログ 2012年12月28日
言葉が通じない、風習がまるで異なる、日本の常識も通じない。そんな異国で自己を保つのは難しい。外国に行ったことがないから想像だけど。弟は本当に存在するのだろうか。錯乱した母親の妄想が息子に浸透し、居もしない弟との思い出を捏造したのではないか。記憶は常に改竄される。しかし結局は現実を直視できないから、有...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年04月28日
舞台は桃源郷の名を持つ中国の山奥の村。主人公は商談のためにそこを訪れる。
異国の景色や風習をその場で見ているような臨場感があり、ちょうどいい速度ですんなりと世界に入り込めた。
現地の人々にミステリアスに絡めとられていく主人公を見ていると心許ない気持ちになる。この人は現実に戻れるだろうか。本当に浦島太...続きを読む