あらすじ
中国のはるか奥地を仕事で旅する日本人商社マンが、桃源郷の名をもつ小さな村にふと迷い込んだ。優美な村の名前からは想像もつかない奇怪な出来事が、彼の周りで次々と起こる。謎の溺死体、犬肉を食らう饗宴、つきまとう正体不明の男達……。彼も同行の日本人も、次第に調子がおかしくなってゆく。桃花の薫りがする魅力的な土地の女に導かれるように、知らず知らず村の秘密へと近づき、ついに彼が見た“真の村の姿”とは。話題の第103回芥川賞受賞作と他一篇を収録。
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Posted by ブクログ
2つの中編収録。
表題は日本の商人が中国奥地で村に呑まれる、少し異質な芥川受賞作。
比喩表現の少ない写実的で若干ユーモアの入った文体が独特だが、個人的に話の雰囲気と意図が複合された物語構造はかなり好み。吉行淳之介の選評が非常に参考になる。
『犬かける』は作者のデビュー作らしく、感覚的すぎて上手く掴めない。
Posted by ブクログ
言葉が通じない、風習がまるで異なる、日本の常識も通じない。そんな異国で自己を保つのは難しい。外国に行ったことがないから想像だけど。弟は本当に存在するのだろうか。錯乱した母親の妄想が息子に浸透し、居もしない弟との思い出を捏造したのではないか。記憶は常に改竄される。しかし結局は現実を直視できないから、有りもしないものを見ることで逃避しているのではないか。という考え方はきっと底が浅いのだろう。探している弟かいつの間に自分自身になっているような危うさは、誰だって持っていると思う。
Posted by ブクログ
異国の地でどんどん調子が狂い、判断力も失われ、新境地に達したかと思えば、最後は現実に引き戻されて終わる。夢か現実か間なのか。不思議な感覚になる作品。