丸谷才一のレビュー一覧

  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    とても面白かったです。特に「源氏物語」ファンにはタマラナイでしょう。僕はそうじゃないんですけど、舌を巻きました。

    やっぱり丸谷才一さんは、凄いなあ、と。なんていうか、好きか嫌いか、という趣味の問題はもちろんあります。
    なんていうか、ソコと別次元で、「知っている」「考えている」「自分の趣味を貫く」「肩の力が抜けている」「小説である、ということに意識的である」「モラルがあるが、押し付けない」とでも言いましょうか。

    2003年発表の小説だそうです。舞台は、まあだいたい1980年代~1990年代です。
    主人公は、杉安佐子、という名前の、日本文学者。つまり大学の教員さんです。30代~40代くらいの感

    0
    2014年05月20日
  • 女ざかり

    Posted by ブクログ

    女新聞記者を巡っての陰謀が話の筋だが、互酬の経済学、天皇制、文章の書き方、漢詩、哲学、などあらゆる学問的知識がふんだんに盛り込まれており、各章ごとに違った味わいが楽しめる。
    陰謀の話しといっても、きな臭いサスペンスではなく、洒脱で軽快な会話劇である。
    ただ、丸谷才一は市民小説の旗手とされるが、この本の登場人物は新聞記者や大学教授、女優、総理大臣、指揮者、書道家など上流階級ばかりで、その点が若干違和感があった。

    0
    2013年06月07日
  • 快楽としての読書 海外篇

    Posted by ブクログ

    本を切らしてしまった。読むに価する本をどうにかして調達せねばならぬ。そういうときどうするか。私なら書評に頼る。新聞や雑誌には書評欄というスペースがあって、週に一度は新刊の紹介記事が載っている。何度か試すうちにお気に入りの書評家が見つかる。そうなればしめたものだ。彼らの紹介する本を探して読めば、まず大概外れることはない。

    ところで、何もすぐに書店に向かう必要はない。書評はそれだけで立派な読み物である。ここに採りあげたような書評だけを集めた本もある。古くはホメロス、聖書から、ナボコフ、バルガス=リョサ、それにカズオ・イシグロまで、百冊を越える書物の書評が収められている。

    巻頭を飾る「イギリス書

    0
    2013年03月24日
  • 快楽としてのミステリー

    Posted by ブクログ

    帯に「追悼」の二文字が入った、これも文庫オリジナル編集の「追悼」本。早川書房の「エラリー・クィーンズ・ミステリ・マガジン」をはじめ各社の雑誌等に寄稿したミステリ関係の書評・評論を時代、内容ごとに改めて編集したものである。その多才さは知っていたものの、こうして集められたものを読むと、ミステリー愛好家としての丸谷才一の一面が、他の顔にも増して強く浮かび上がってくる。

    冒頭に「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」シリーズを語った鼎談を収める。これも今は亡き瀬戸川猛資と向井敏を相手に、趣味を同じくする者同士が座談に興じる様子が伝わってくる好い企画である。

    鼎談を別にすると、他は五つの章に分かれる。初期の

    0
    2013年03月22日
  • 年の残り

    Posted by ブクログ

    この本を読む前に、痴呆の祖母とこんな話をした。
    「一郎さんは?」「死んだ」「次郎さんは?」「死んだ」「三郎さんは?」「死んだ」………。十吉さんまで実在してて、皆ことごとく死んでて、私も祖母も近くで話を聞いていた両親も、それで大笑いした。

    この本を読んだ後には、父親とこんな話をした。
    「形式と内容はどっちが大切?」「内容が大切なら、どこか体育館みたいな広い所にゴザ敷いて“世界はひとつ”とか言ってみんなで暮らしてれば良いけど、そうじゃないから、みんな同じ形の家をそれぞれ建てて別々に住んでる。まぁ、何より大切なのは、工期だけどね」元現場監督の立場から父はそう答えた。

    もうすぐ30才で、ソンタグを

    1
    2012年11月25日
  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    "すべてすぐれた典籍が崇められ、讃えられつづけるためには、大きく謎をしつらえて世々の学者たちをいつまでも騒がせなければなりません。惑わせなければならない。"

    0
    2012年11月02日
  • 横しぐれ

    Posted by ブクログ

    「わたし」は、中世和歌や連歌を専門とする国文学研究室の助手。父の通夜の席で、父の友人であった国文学の黒川先生に思い出話を聞く。実は、戦争が激しくなるちょっと前、黒川先生は父と連れ立って郷里の松山を訪れたことがある。そのとき、道後温泉近くの茶店で一人の乞食坊主に酒をたかられた話を以前に父から聞いたことがあるのだが、たいそう話の面白い坊主で、特に将棋指しの手拭いの話が面白かったという。

    将棋指しに限らず無宿者は、旅の間一本の手拭いを用意し、一夜の宿を借る際に手向けとして差し出す。宿の主は翌朝そのまま返す、という慣習がある。評者は『ひとり狼』という映画でこれを知った。旅の将棋指しは、手拭いを洗濯中

    0
    2012年11月02日
  • たった一人の反乱

    Posted by ブクログ

    面白かった。繰り返し読みたいけど値段にびっくり。

    昭和47年刊行、谷崎潤一郎賞受賞作。

    昔の小説だし、いつ主人公が不幸に陥るかと恐れつつ読み進めたが
    最初から最後まで朗らかで何度も吹き出してしまうユーモラスな小説だった。

    構成も物凄く凝っていて、語れる人はどこまでも語れてしまうだろう。
    ラストもあっけらかんとしていてすごく好き。
    巻末の解説も面白かったが、他の人の書評も読んでみたいと思った。

    0
    2012年07月04日
  • 快楽としての読書 日本篇

    Posted by ブクログ

    先年、高校時代の国語の先生に「書評は毎日新聞が一番ですネ」と申し上げたら先生曰く「そりゃアンタ、丸谷才一が仕切ってるからヨ。」と。 
    そういう見方をしたことは無かったもので、その際は「ふーん」と思った程度だったのですが、本書「快楽としての読書」を読むと、丸谷の影響力の大きささがじわじわと分かってくるのであります。 
    今現在、丸谷は毎日書評顧問のを池澤夏樹に譲っていますが、その池澤をはじめ、鹿島茂、池内紀らが昔書いた本の書評も、本書に収められております。 これにより、毎日丸谷ファミリーとなる前の彼らを、丸谷が早くから買っていたことがよく分かるのであります。
    それにしても本書のタイトルは頂けない。

    0
    2012年06月06日
  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    日本文学(主に19世紀)研究者・杉安佐子は、日本最古の長編小説・源氏物語には「輝く日の宮」という巻が存在していたと考えていた。長良との恋に悩み、研究者との論戦に遭遇しながらも、幻の一巻を求め研究を続ける。やがて紫式部と時の権力者・藤原道長の関係に、安佐子は答えを見つけ出す――

    初めての丸谷才一だったのですが、歴史的仮名遣いをふっつーに使っているのであぜん!としました。でも1925年生まれですのでむしろこちらの方が普通なんでしょうね。冒頭が思いっきり文語調で始まるのでもうこの時点で挫折臭がすごくて(笑) ですがちゃんと読まないと!!と投げたくない性分ですので読み進めたら、これが面白い面白い! 

    0
    2011年11月05日
  • ボートの三人男

    Posted by ブクログ

    軽妙な話
    モンモランシーを含めてみんないいキャラクターをしてる
    モンモランシーがでかい(?)猫にちょっかい出しかけるあたりが面白かった

    コニー・ウィルスの「犬は勘定に入れません」を読む前に読んでおきたかったので読んだ

    0
    2011年09月20日
  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    源氏物語を研究している女性が主人公
    源氏をかじったことがある人は
    すごく楽しめるのでは。
    源氏を読んだことない人には
    良い足がかりになりそう。

    0
    2011年09月16日
  • 女ざかり

    Posted by ブクログ

    あらすじは正直惹かれなかったが「丸谷さんの本にハズレはない」と思って読みはじめたところ、やはりハズレてなかった。むしろ大当りである。

    丸谷さんの日本論、日本文学論、哲学に対する理解らしきものが随所にちりばめられていて、そっち方面を研究している自分としては実用的な読み方もできると感じた。

    これを読んだ人は『輝く日の宮』も手にとってみてください。

    0
    2011年05月07日
  • 女ざかり

    Posted by ブクログ

    教養小説としても中身の濃い1993年の作品。
    熟年の働く女性を恋もする美しく魅力的な存在として描いたので話題になった印象があります。
    新日報の新聞記者の南弓子は、45歳で論説委員になる。
    同時期に論説委員になった浦野は、取材記者としては名物男で優秀だが、じつは文章を書くのは苦手で有名な男。
    苦笑しつつ手を入れるのを手伝う弓子。
    この二人の出世は順当な物ではなく、派閥争いで有力候補が取り除かれた果ての偶然という内部事情もあったという~大会社では意外にありそうな?なりゆき。
    弓子は若い頃に見合い結婚をして娘を生んだが、まったく家事を手伝わない夫に家庭に入ってくれと言われて離婚。
    以来独身だが、20

    0
    2010年08月16日
  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    こういう小説を読むと、自分が日本人で日本語の素晴らしい作品に会えてよかったと思う。

    ===
    女性国文学者の研究、私生活を中心とした話。
    彼女は「源氏物語」には失われた一帖、「輝ける日の宮」があったと考え研究を続けている。その研究を中心に、主人公の思春期時代、家族や交際する男性達との関係、日本文学史などが語られる。
    章ごとに形式が変わって文語体やお芝居形式で語られる面白さには、松尾芭蕉や源義経などに関しての研究内容にも興味をそそられる。
    最後は紫式部と藤原道長の関係が登場人物たちに反映されていくところも見事。

    0
    2010年08月16日
  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    源氏物語の失われた章を探し求める女性国文学者の話です。文章というものを知りつくした人が書いたのではないかというくらい圧倒されました。旧仮名遣いや各章ごとに変わる文体が、それ以外の表現方法はないだろうと素人ながらに感じられます。資料を基に立てられる推論、もう用は済んだと思われた人がのちのち絡んでくる人間関係、段々と自分にも馴染みが出てくる時代の流れ、文学に纏わる知識など、どれを取っても興味深く厚みを感じませんでした。小説というものが、本能から惹きつけられるような力強さをもつものだと初めて知りました。

    0
    2009年10月04日
  • 輝く日の宮

    Posted by ブクログ

    『源氏物語』の失われた一篇「輝く日の宮」をめぐる物語。主人公が少女時代に書いた小説に始まり、討論会、作者の独白など、自由に描かれる。丸谷節炸裂。

    0
    2009年10月04日
  • 日本文学史早わかり

    Posted by ブクログ

    日本文学史は西洋的文学史の型に無理やり当て嵌めて考えられているのでは?という問題意識から、その源流を宮廷文化にあるとして、勅撰の詞華集(21代もある)に着目した論考。

    勅撰詞華集は文化政策であり、美学の編集を通じて、日本文化の本筋は宮廷であることを告知するものであっただけでなく、詞華集への掲載・編纂に関わることの名誉を、名誉職として(秀吉が土地は渡せないが茶器を送るかのように)も活用。

    なぜ中国には勅撰の詞華集がほとんどないのか?という話を儒教との関係で説明しているあたりも面白かった。曰く、日本には儒教の影響が少なく、土俗的な呪術性の残存があり、宮廷に司祭性が求められていたとのこと。

    0
    2025年05月29日
  • ボートの三人男

    Posted by ブクログ

    価値観については、古い小説であることを承知しつつ、イギリスらしいユーモアの勉強になりました。
    どこかずれた会話劇は、非常に面白いし、イギリスの皮肉混じりのユーモアは独特だなと感じつつ、メモをとりながら、マネをしたくなる作品!
    面白かったです!!

    0
    2025年02月16日
  • ボートの三人男

    Posted by ブクログ

    アガサ・クリスティーや太宰治など、とかく引用されることが多いイギリスの古典。気になって読んでみたら、とても面白かったです。

    物語は、気鬱にかかった三人の男(犬は勘定に入れません)が、ロンドンからオックスフォードまで、ボートを漕いでテムズ河を往復する旅の顛末を描いているだけです。しかし、この三人、準備に手こずりなかなかボートに乗らないのですが、いざ乗って帰ってくるまで、その合間に語られるユーモアのある会話のやり取りや、過去の出来事を回想するシーンの数々のエピソードは、とても楽しく読むことができました。

    主人公のわたし(=著者)は、ボートを漕ぎながら、テムズ河流域の歴史や地理などに思いを馳せる

    0
    2024年07月07日