配信予定・最新刊
作品一覧
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-1巻1,100円 (税込)フィクションとは、はじめ私が考えていたような、作者の勝手気ままによって、どのようにもなるというものではなく、むしろ、ある必然の動きをもって作者に迫ってくるものだ、ということができます。フィクションとは、全体の真実を、生きた形で表わすための、必要な新しいパースペクティヴなのです――作家志望者に向けた講座(「言葉の箱」)、フィクション論から自作歴史小説での史料活用法まで。貧血化し機能化する散文に対する、豊饒な文学世界の実現へと誘う創作講義。文庫オリジナル。 〈あとがき〉辻 佐保子〈解説〉中条省平 (目次より) 言葉の箱 Ⅰ 小説の魅力 Ⅱ 小説における言葉 Ⅲ 小説とは何か フィクションの必然性 「語り」と小説の間 小説家への道 小説家としての生き方 なぜ歴史を題材にするか 『春の戴冠』をめぐって 歴史小説を書く姿勢 『言葉の箱』あとがきほか 辻佐保子 あとがきにかえて――記憶と忘却のあいだに 文庫版へのあとがき 中条省平 解説
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-待望の合本版!! かつての恋人を自殺に追いやってしまった罪の思いを一身に背負い、北海道の寒村で禁欲生活を続けていた矢口忍。だが、友人の誘いで赴いたシリアで、生と死が隣り合わせの砂漠の生活や、砂に埋もれそうになってもなお輝きを放つ遺跡を目の当たりにし、「生きる」ことの意味を捉え直そうとしていた。そんなとき、矢口はフランスの発掘隊に参加していた日本人女性、鬼塚しのぶと出会う。どことなくかつての恋人を彷彿とさせる彼女には、ある秘密があった――。 1976~77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」「生きるとは何か」を鋭く、深く問う傑作長編小説の上下合本版。
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-贖罪の日々を送る男に許される日は来るのか。 東京郊外で大学講師を務める矢口忍。その聴講生・卜部すえの、誠実で奥ゆかしく、はかなげなところに惹かれ恋仲になるが、すえとはまったく違うタイプの女性に心を奪われ、結婚してしまう。 すえの「最後に、もう一度会いたい」という願いをにべもなく断った翌日、すえが自殺――。以来、矢口は北海道の寒村で中学校の教師になり、自分を罰するためにひたすら禁欲的な生活をしていた。 しかし、友人の誘いで出掛けたシリアへの旅をきっかけに、矢口の心に変化が生まれ、止まっていた時間が少しずつ動き出す――。 1976~77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」を鋭く深く問う、傑作長編小説の上巻。
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4.0時には〈日常〉を脱して、魂の目くらむ昂揚を経験することも、人生を豊かにする大切な方法なのだ(本文より)。一九五七年の留学以降、第二の生活拠点となったパリ、創作への啓示を受けたアテネ、作品の舞台となったフィレンツェ、アルジェ……生涯を通じ旅を愛した作家の多幸感あふれるエッセイ集。 目次より I 地中海幻想の旅から 中部イタリアの旅 フィレンツェ散策 私の古典美術館 アッシリアの眼 ポンペイ幻想 廃墟の教えるもの 地中海幻想 力ルタゴの白い石 友をもつこと II フランスの旅から ヨーロッパの汽車旅 恋のかたみ モンマルトル住い 海辺の墓地から 早春のパリ 昔のパリいまのパリ 変ったパリ変らぬパリ フランスの知恵 パリの雀のことなど 回想のシャルトル 近い旅遠い旅 パリ――夢と現実 風塵の街から 回想のなかのゴシック III 北の旅 南の旅から ロシアの旅から一 ロシアの旅から二 森の中の思索から 北の海辺の旅 南イングランドから ハドリアヌスの城壁を訪ねて 大いなる聖樹の下 インド変容 旅立ちの前に 南の遙かな青い海 中国の旅から
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5.0闇市に現れた少年は神の子か狼か……石川淳「焼跡のイエス」、「国の守は狩を好んだ」に始まる王朝時代を舞台とした説話風物語「紫苑物語」、江戸人の精神に迫る「小林如泥」「鈴木牧之」「江戸人の発想法について」。 “大殿(シニョーレ)”織田信長の日本人離れした心と行動を異国人の眼を通すことで浮かび上がらせた歴史小説・辻邦生「安土往還記」。種田山頭火をめぐる文学史ミステリ・丸谷才一「横しぐれ」、小説的趣向に満ちた「樹影譚」。王朝文学や江戸文芸、西欧文学を礎に、稀代のモダニストたちが精緻に築き上げた傑作群を収録。 解説=池澤夏樹 年譜=中条省平 月報=鹿島茂・町田康
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-帆船という“劇場”で巻き起こる人間ドラマ。 海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船<大いなる(グローセル・)眞晝(ミッタ-タ)>号に乗り込んで船出をする。 「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。 やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風(ぐふう)圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。 辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
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4.0北欧で消息を絶った日本人女性の精神的彷徨。 織物工芸に打ち込んでいた支倉冬子は、一枚のタピスリに吸い寄せられ、魅惑されてしまう。ついにはヨーロッパに留学する決意までした冬子。だが、冬子は、ある夏の日、その地方の名家ギュルンデンクローネ男爵の末娘エルスと孤島にヨットで出かけたまま消息を絶ってしまう。 冬子が残した手記をベースに、生と死、または愛の不安を深く掘り下げた小説となっている。絶対的な孤独の中、日本と西欧、過去と現在を彷徨しながら、冬子はどのように再生していくのか……。 辻邦生が自著『生きて愛するために』で語った「死というくらい虚無のなかに、<地上の生>は、明るく舞台のように、ぽっかり浮かんでいる」という彼の死生観とともに、西欧的骨法によって本格小説を日本に結実させんとした、辻文学初期傑作の一つである。巻末に「創作ノート抄」を併録。
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4.0女流画家を通じ、“魂の内奥”の旅を描く。 異例の才能を持ちながら埋もれていった亡命ロシア人女流作家マリア・ヴァシレウスカヤ(マーシャ)の内的彷徨を描く辻邦生の処女長編作。 少女期に出会った魅惑的な少女アンドレとの痛みを伴った甘美な愛を失い、結婚に破れ、つねに芸術の空しさを苦汁のようになめながら、生の意味、芸術の意味を模索し続けた、寡作の画家マーシャの短い生涯を、彼女が遺した日記や手紙から辿る伝記風スタイルを用い、清冽な筆致で描いた作品 敬虔で慎み深く、絵の才能を持て余すマーシャと、身体が弱いために生に焦がれる無鉄砲なお嬢さまアンドレ、孤独を抱えるふたりの交流がとても丁寧に描写されている。第4回近代文学賞受賞作。
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ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
私はこの本は、本知人が「思春期の青少年にぜひ読んでもらいたい」と言っていたので(思春期ではないけど)読みました。
確かにその推奨の言葉の通り、古代ローマ帝国時代の話ではあるけれど、困難な人生に投げ出された若きユリアヌスが迷ったり苦しみながらも自分で進んでゆく姿は、現代の読者も彼の気持ちに沿いながら読んでいけます。
だからこそこの4巻は、ユリアヌスの危機、もどかしさ、空回り感が息苦しかった…(T_T)
青少年の皆様、ぜひユリアヌスと共に人生の道のりを体験してください。
私のような青少年をとっくに過ぎている皆様(笑)にもおすすめです!
※※※以下ネタバレしています※※※
皇帝コンスタ -
Posted by ブクログ
副帝としてガリア地方(現在のフランスとかベルギーとかのあたり)統治を任されたユリアヌスは、現地の兵士たちからの圧倒的な指示を得ていた。
だが皇帝コンスタンティウス二世の宮廷の高官たちはユリアヌスの失脚を謀る者たちばかり。唯一の味方は、皇帝コンスタンティウス二世の皇后で、ユリアヌスと愛し合うエウセビアだ。本来は明るく、唯一皇帝コンスタンティウス二世を説得することができ、政治的目線も優れているエウセビアだが、ユリアヌスへの愛に苦しみ衰え、ついには密かな大罪を犯し、病に伏せていた。
ユリアヌスはルテティア(パリ)を本拠地として、ガリア地方では圧倒的な指示を得た。だがそれはローマ帝国の正当性を訴え、皇 -
Posted by ブクログ
前巻で、粗野ながら皇帝の親族としての誇りを見せ、性格の違うユリアヌスとは妙に気の合った異母兄ガルスは、副帝となってアンティオキア(現在のシリアとトルコの国境あたり)に向かう。巨大なローマ帝国の反乱を抑えるのだ。
しかし冒頭は、ガルスと、その妻コンスタンティア(コンスタンティヌス大帝の娘で、皇帝コンスタンティウス二世の妹)の残虐行為が並べられてげんなりする…_| ̄|○
現在のローマはキリスト教を国教としているが、ガルスとユリアヌスの父はローマの多神教を信仰していたために殺された。ガルスもユリアヌスも、キリスト教に開教しているが、ローマ帝国での立場はかなり悪い。ちょっとしたことで反乱を疑われるし、 -
Posted by ブクログ
読書知人に大変とても熱心にお勧めされた本。といってもその方がお勧めする相手は「青少年」なのですが、周りにこれを読む青少年がいないので私が読んだ笑 皆さんの周りに青少年がいましたらおすすめしてくださいませ。
まずは歴史背景。
主人公ユリアヌスの父は、ローマ皇帝コンスタンティヌスの弟のユリウス。
コンスタンティヌス大帝(在位306年〜337年)は、それまで迫害されていたキリスト教を容認して自分も帰依した。ローマ帝国の首都もローマからコンスタンティノポリス(現イスタンブール)に遷都されている。
しかしその弟ユリウスはキリスト教よりもローマの多神教を信仰していた。
なお題名の「背教者」はキリスト教を