あらすじ
小説の魅力、小説の言葉、小説とは何かについて平易に語り下した文学論。「物語を創り読む快楽は不滅である」とする信念に満ちた辻本人による最終的回答。
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Posted by ブクログ
これはぼくだけしか見られない、ぼくだけが見ている、ぼくの世界で、ぼくが死んでしまうと、だれもそのなかに入って知ることはできない。だから、この世界をだれかほかの人に伝えるためには、その感じ方、色彩、雰囲気を正確に書かないと、ぼくが死んでしまったら、もうこの地上から消えてしまう。 作者の、切実な、印象的なフレーズ。
……ついでながら、私が、辻邦生氏の作品の中で、一番好きなのは、短編、 献身 です。アルチュール.ランボオの生涯と彼の妹の、ランボオへの献身 をえがいた、ランボオの独白がすごい迫力で読んでいると、ゾクゾクして、くらくら感動します。…シャルトル幻想 という本の中に入っていて、 この作品だけノートに書きうつして、生きるのにつらい時、読み返しています。生きろ!という気持ちになる。
Posted by ブクログ
「小説の書き方教えます」といった本は
スティーヴン・キングの「小説作法」しか読んだことがない。
だが当時、マジメに小説を書く気などさらさらなかったので
内容が記憶にない。
だが最近、職業作家の方々がなぜこんなに次々と
小説を書き続けることができるのか知りたくなったので
数ある中から辻邦生氏のこの本を選んでみた。
創作学校での講義をまとめたものだが
小説のベーシックな部分が丁寧に語られていて
実にわかりやすい。
辻夫人によると、辻氏にとっての小説との関わりは
自ら書くこと、そして小説とは何かを探索すること
であったと言う。
とにかく「いつでも書いていた」そうだ。
それが、職業作家が小説を書き続けることができる理由だ。
それは特別なgiftであって
欲しがって得られるものではない、だろうな。やっぱり。
Posted by ブクログ
著者が、小説を書くことを志す人びとに向けておこなった講義を収録しています。
著者は小説とはなにかという問いに対して、「フィクションによってつくられた架空の事柄を言葉によって構築し、「言葉の箱」のなかにそういうものを詰め込むという作業」だとこたえています。そのうえで、著者は夏目漱石の「文学論」における「凡そ文学的内容の形式は(F+f)なることを要す」という考えを参照し、近代以降のロマン(小説)における内面性を重視する立場から、小説のありかたについて議論がなされています。
本書の冒頭で、著者はアメリカの大学では創作科が存在するということに触れていますが、本書はシナリオ・ライターを養成するための教程で説明されるような内容ではなく、大文字の「文学」をめざすひとに向けた内容のように感じました。ただ、そのような「文学」の理念が現代において成立するのかと問いなおすことも、必要であるように思います。