川上弘美のレビュー一覧
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阿部工房やカフカを彷彿とさせる、異世界に迷い込んだような幻想的な物語。
「語り手である主人公マリエとその姉のユリエ、母カナ子、母の恋人だったイラストレーターのチダさん、マリエが教える大鳩女子高等学校の生徒ミドリ子、ミドリ子の兄でマリエの恋人になる紅郎、ミドリ子を追いかける鈴木鈴郎、姉ユリエの恋人オトヒコ。全員が揺らめくごとく、あやふやで、液体みたいな人物たちだ(解説p.252)」
ミドリ子はチダと性行為をすると耳が上下逆に「捻れる」(チダが一回につき二万円を支払うと元に戻る)。ある日突然「休眠」に入ったオトヒコの全身を膜のようなものが覆い、そのうち身体の一部が分裂して新しい小さなオト -
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ネタバレ川上さんのあたたかいお人柄が感じられる本。幼少期の思い出から最近の小話まで、身近な話と季語の融合がよかった。
北窓開くーー冬の間締め切っていた北に向かう窓を、春が来たのでひいらく、という意味をもちます。ずっと耐えた冬がゆるみ、ようやく明るくあたたかい空気が北側の部屋にも入るようになった喜びを表しているのです。
春愁(はるうれい)ーー小説内では、ひとはしばしば恋に落ち恋に敗れ友と別れ大切なものをなくし、人生を憂え、深い哀愁を覚えるものなのです。
鯖ーー鯖の目が、大きくてつぶらだったこと。油がよく乗っていて、包丁が油まみれになったこと。内臓も豊かだったこと。などなど、お店で買ったのでは実感で -
Posted by ブクログ
ネタバレいつだって家族の中心にいたママが
病気になって死んでいくまでと、
都が本当に愛していた人は、弟の陵だったこと。
時々尋ねてきてくれる武治さんのこと。
パパは本当のパパではなくて、
ママの兄だったこと。
互いを思い合う姉と弟。
その思いは恋を超えている何か。
p39ママが
都たちが子供の頃の話をしているとき
当時は理解できなかったけれど、なんとなくママがわざとふざけているようにわたしは感じられた。
後年、ママは、子供を育てるなんてこと、不真面目にでもやらなきゃ、たまらない苦行だわよって打ち明けて
じゃあ、わたしや陵を育てるのも苦行だったのかと都が聞けば
いいえ、苦行じゃなかったわ。だっ -
Posted by ブクログ
ご当地ソングというのがあるが、ご当地小説も興味あるもので。
川上弘美『真鶴』
まさにそう、ご当地小説である。川上弘美氏(96年115回芥川賞)という作家も初だから興味があり、さらに地名にも反応して文庫版化なったのでさっそく読んだ。
「代表作」と帯にあるから芥川賞の『蛇を踏む』や他の作品を読んでいなくても、この方の雰囲気が解かるのか?そうだとすると、幽玄的な幻想の場面が色濃く深層心理に迫る、それでいてふんわり感がただよう作風だ。
ストーリーは失踪した夫を探して「東京」と「真鶴」往還して半島を彷徨う主人公の物語り。失踪した夫が「真鶴」と手帳に書き残したのが唯一の手がかりだったから。 -