あらすじ
「申し分のない」夫と、二十五年ローンのマンションに暮らすリリ。このまま一生、こういうふうに過ぎてゆくのかもしれない……。そんなとき、リリは夜の公園で九歳年下の青年に出会う――。寄り添っているのに、届かないのはなぜ。たゆたいながら確かに変わりゆく男女四人の関係を、それぞれの視点で描き出し、恋愛の現実に深く分け入る長篇小説。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
切なさと息苦しさがあるはずの関係なのに、どこか爽やかで甘い。
4人の視点が切り替わりながら進む物語に引き込まれていく。
川上弘美さんの柔らかな表現力に、しっとりとした夜の中を静かに歩くような感覚で読み進める。
恋愛小説というジャンルでは括りきれない、生と性、人生における様々な想いを綴ってくれる。
深く静かに読書の海に浸りたい時に、ふと読みたくなる作家。
Posted by ブクログ
人が人を好きになる不条理さやら切なさやら、息苦しいくらい読んで取れた。
結局は誰も幸せになってない感じも、私独りよがりの感想なのかも。
捉え方は複雑だけど、僕は胸に染みた、傑作だと思います。
Posted by ブクログ
不倫関係のつながり
① 妻
② 夫
③ 妻の親友(独身)/ 夫の不倫相手
④ 妻の不倫相手 / ⑤の弟
④ 夫の友人(独身)/ ③の男友達
⑤ ③の男友達(独身)/ ④の兄
⑥ ③の男友達(独身)
最終的に皆自分たちの居場所を見つけ出し始めて、これらのつながりは解消されていくところで物語は終了。
登場人物の気持ちのうつろいや感情の揺れ動きを、作者はゆったりとした文体で丁寧に描写しているところが良かったです。
物語はスリリングな展開はなく、波が打ち寄せてはかえるといった情景が浮かんでくるような、穏やかで平和な流れで構成されていました。
文章の細やかな描写に惹かれ二度読みましたが、一度読んだだけでは登場人物たちの相関を理解できなかったのも事実です。
Posted by ブクログ
ゴーヤチャンプルーを作った翌日にたまたま手にとって読んでしまった。ゴーヤ炒めをスパムで作るとか通ではないか。
しまった、ゴーヤ料理するたびこの物語を思い出してしまうよ。
それぞれの配役、ドラマにするとしたら誰かな。
春名は黒木メイサ、リリは比嘉愛未?う~ん、どうでしょう。
Posted by ブクログ
面白かったです。
川上弘美さんは、不思議でおかしなうそばなしも好きなのですが、恋愛小説も悲しいおかしみがあって好きです。
川上弘美さんの恋愛小説は、寄る辺ない、という気持ちになります。
ちょっと人寂しくなる感じ。
この小説は、他の作家さんが書かれるともしかしたらすごくドロドロしたものになりそうなのですが、川上弘美さんはどこまでも静かでした。
終盤の幸夫の、「瞬間なのだ。憎しみも、愛着も、よろこびも、哀しみも。離れてしまえば薄い。薄くなる。」というのはすごくすとんと心に落ちました。
物語の中で、登場人物たちが「どうしてここにいるんだろう」と思うのが何度も出てくるのですが、わたしもわからないな、と思いました。
キラキラしてみずみずしい恋愛もあると思いますが、わたしの恋愛も多分こちらの世界に近い気がします。
どちらが幸せかなんて計れないです。どちらもあっていいです。
Posted by ブクログ
いとけない人、という表現がでてくる。知らないことば。ぐぐってみたら、汚れをしらない、あどけなさ、幼いはただ、歳が少ないに対して、純真さを持っている場合につかいますってでてきた。知らない言葉がまだまだあるものだ。いとけない
とても好きな小説だった。みんながぐるぐるしてて、どうしていいかわからなくなってて、なのに冷静で。きっと現実ってこんなかんじ。いま、信じられないほど大好きな人との関係だっていつかは冷めてしまうかもしれない。とすると、やっぱり結婚てなんなんだろう。人は一人ひとり自由なのに、縛るなんて無意味すぎる。こどものためなのかな?うーん
白骨温泉で読む
Posted by ブクログ
何事も突き詰めると苦しさが待っている。
やんわりしておくのがベストなんじゃないかと思う。道徳とか秩序とか常識がわかっているふりをして、やんわり、壊れないように。
人、人の心は揺らぐものだから。
若い時には私にはわからなかった。
今だからそうやって過ごしている。生きている。
Posted by ブクログ
親しい友だちの夫と不倫をするという
すごく嫌な物語のはずなのに、禍々しい気持ちにならずにわりと爽やかに読めた、不思議。
それぞれ4人の視点で読み進めていく
みんな結局好きや嫌いの線引きが曖昧な気がする
この人のここが好きだったと思うのに
いや、この人のどこが好きだったのか
お互い不倫しまくりなのに
修羅場なんぞなく、それはそれで寂しさを感じる
結局最後は親友同士だけがお互いを忘れずにいる
この友情とはなんぞや
Posted by ブクログ
関係する4人の視点から描きつつ少しずつ時系列が進んでいく。
私としては、友人の夫に出会った時に恋をするのは考えられないなと思うけど、お話として感情の流れを感じながら面白く読んだ。
Posted by ブクログ
久々に川上弘美さんの小説を読み、その表現力の高さに驚き、感動する。
主人公はたまたま知り合った若い男と不倫をし、主人公の親友は、主人公の夫、主人公の不倫相手の兄、それからよくわからないけどもう1人の男性と少なくとも関係を持っている。
泥沼でしかないのに、川上さんの手に掛かればもはやファンタジー。美しく清いとさえ感じる。
Posted by ブクログ
章ごとに、リリ、幸夫、春名、暁と視点が移っていき、お互いが緩く関わり合いながらそれぞれの生活や将来を変化させていく話。
全体を通して大きく視点が二周しており、一周目では四人全員の浮気現場がバレる同じ事件についてのそれぞれの視点だったが、二周目ではリリが離婚を決めたことを発端に章が進むごとに時間も進んでいっており、とても面白かった。物語の登場人物は、皆どこか自分の居場所に悩んでおり、どうしてここにいるかも分からないけど、それでも何かしらを求めて生きていく。薄暗く少しでも遠くにいる相手の顔などほとんど見えないが、近くを通り過ぎたり一緒に歩く時にはちょっとは、はっきりして見え、それでも離れれば分からなくなる最初に描写された「夜の公園」の散歩が、そのままこの小説のテーマなのかなと思った。
文章に関しては章の登場人物ごとにイメージを変えており、春名は軽く幸夫はどろっとしているという風な印象を受けた。だからこそ川上弘美らしさを文章全体から感じることは少なかった。また、描写が素晴らしく、特にリリの妊娠が発覚した時やその後の決意の描写が好きだった。ただ、純文学なのでつっこむ方が野暮なのかもしれないが、最初の暁のナンパに乗るリリのシーンで、お互いの考えや心情などが全く分からず、動機が薄いように感じた。
Posted by ブクログ
川上弘美さん。私が人生で一番尊敬している先生が好きな作家さん。そろそろ読んでみようと思って手にとった。
四人の男女の、恋愛を中心にしたお話。
前半から、すごくたんたんと出来事と感情がつづられていていた印象。ぜんぜん説明が少なくて、わからないところはまっすぐわからない、という感じ。
ただ、ときおりすごく強い力でわたしの経験と感情をひっぱられる予感がした。しかし、そもそもしっかりと心を動かすには、私の人生経験が合わないんだろうなという印象。
すごく理解できる人はすごく泣いてしまいそうと思った。
まだわたしには早かったかも。
Posted by ブクログ
リリ35歳。世間で言う、恵まれた結婚をしている。が、最近夫の幸夫のことがあまり好きではないと気づく。例えば、夫のふとした仕草。髭を剃るその掌の動き、とか。たてる音。はっきりとした咳払い、とか、そういう感じ。
リリは思う。そういうところが嫌いなのではない。幸夫を好きと信じてた頃はそれさえ愛していた、と。
なんなんだこの感情は?幸夫にではなく自分に向かっている感情って。
そんなころ、夜の公園をひとり歩くリリは、マウンテンバイクを飛ばしている9歳年下の暁と出会う。
夫幸夫は、リリの親友春名の猛烈な押しで関係を持つようになる。ありえないな、春名という女性。親友の夫に会った瞬間に。「リリは春名のその目に気づいた」とある。
しかも、春名は他にも複数の男性と関係を持つ。火中に身を投じるタイプなのでしょうか。
沢山心にはまるところがあったが、あえて一番は、幸夫が一番なのはリリだというところ。
リリ、君が私は好きなんだどうしてわかってくれないんだ。(心と体の求めるものは違う。)
幸夫が泣くところがある。
手を伸ばせば届きそうなところに幸せはあるのに、どうして、伝わらない。
リリはなぜ親友春名にぶつからない?幸夫に問い詰めない?読んでいてもどかしくてしかたなかった。あるいは春名は幸夫がリリの夫じゃなかったら、魅力を感じた?誘惑した?
不安、悲しみ、怒りや嫉妬そして喜び、それぞれの感情が入り混じっていた。
これは、夫幸夫、恋人暁を通して、リリと春名の、理屈でなく切っても切れない友情が描いてあると思う。
なぜなら、最後には、
春名、リリは心の中で呼びかける。
春名、あなたは今、さみしい?
あなたにあえないことだけが少しだけ私、さみしい。
最後に呼んでいるのは春名。
最終的にリリは、「今わたしここにいる」と、ほろほろと流れる時間の中。
子供を産むため、空をまっすぐに見上げ、リリは大きく強く、両の目を見開いた。
リリと春名が同じ感情を抱え持っている。
わたし、どうすればいいんだろう
わたし、どこにいるんだろう
わたし、どこに行くんだろう
わたし、ここにいるんだろう
という言葉。
(私的に)あまり波がなく、それがここちよく、とても心に触れて綺麗なストーリーだと思いました。
Posted by ブクログ
こういう乾いた恋愛ものはとても好き。語弊があるかも知れないけれど、江國香織さんの世界観とも共通するものがあるように感じた。
川上弘美さんの小説は私の場合、はまるものと世界が独特すぎてついていけないものに分かれる。この小説は完全に前者。
主人公は35歳のリリ。主婦で、夫の幸夫がローンで買ったマンションに暮らし、申し分ない生活をしている。だけど毎日が、なんとなく退屈だ。
幸夫は、リリの親友の春名と恋人関係にあり、リリもまた、マンション前の公園で知り合った9歳年下の暁と恋人関係にある。
こんなにせまい人間関係のなかで、さらにあるひとつのつながりがある。
リリはどことなく謎めいていて、感情をあまりおもてに出さない。幸夫のことを愛してはいないけれど、不満はないし、感謝はしている。春名との関係にも気づいているけれど、どちらにも何も言わない。
暁と過ごすのはとても心地よい。でもどちらかというと、深みにはまっているのは暁のほう。
春名はリリに対して申し訳なさを感じるものの、幸夫のことを愛してやまない。
幸夫は春名との身体の相性を愛おしく感じているけれど、おそらく心底で愛しているのはリリだ。
こんな世界観が、乾いた雰囲気で繰り広げられている。そんなにドラマティックではなく、淡々と日々は過ぎていくけれど、最初とは違う状況にそれぞれが変化して物語の終わりを迎える。そこからまた、変化の予感を感じさせつつ。
欲求が薄い人間(この小説の場合は主人公のリリ)はある意味とても厄介な存在だと思った。何かを選択するとき、欲がないから、先のことも深く考えず選んで進んでしまう危うさがある。
そういう風には生きられない人が大半だから、このリリという女性に嫉妬や羨望を感じてしまうのかもしれない。
主人公が魅力的な小説はとても良い、と、常々感じている。
Posted by ブクログ
不浄な妄想は、小説の世界くらい。実現はしないのだが、想像力を楽しむ権利は、侵されない。だから、登場人物に全く気持ちを重ねられない一面がありながら、だけど、そんな世界観を楽しむ自分がいる。味わっている、自分に気付かされる。こうした世界を不潔、と言ってしまう価値観の狭隘なことよ。ステキな、物語だった。
Posted by ブクログ
むかし読んだ本を、再読。
以前より、登場人物の年齢に近づいたせいか、心情の細部が少し、よりリアルに感じられるようになった。
現代的な恋愛小説。
ふわふわと、もがき流されて、気がつけば、「どうして今、ここに自分がいるのだろう?」と呟いてしまう感覚。
起きている事実は、不倫、なのだが、定型では語れない、つかみどころのない空気がこの小説の魅力。
読み終えて、横で寝ている夫の寝顔を見ながら、「はて、私はどうしてここにいるのかな?」と思わないでもない。
Posted by ブクログ
わからないわからない、と言いながらも
本当のことは痛いほどわかってる。
だからこそ素直な気持ちとは真逆なことを言ってしまう
そんな行動にでてしまう。。。
展開というよりか、その心理の動きが面白かった。
個人的に、リリは、
江國香織さんの"流しのしたの骨"にでてくる
そよちゃんにも重なるイメージ。
Posted by ブクログ
さらっとしたお話。
どろどろした感情を抱えてるひともいるんだけど、それぞれが客観的でまるで自分の感情なのかそうでないのか、自分なのか他の誰かなのか分からなくなっている。
でもふと自分のどうしようもない感情であることに気づく。
冷たいけど冷たくない。
感情が研ぎ澄まされすぎて逆に鈍感になってしまう。
あのひとを好きじゃなくなった瞬間ってどんなだったのかもう思い出せないな。
好きになった瞬間も然り。
Posted by ブクログ
人を好きになったり求めたりするのって、せつなくて、苦しくて、孤独なものなのかな。
淡いようで濃い心模様に大人ならではの揺らぎや心もとなさを感じる。
Posted by ブクログ
なんだろう…なんだろうなこれは…。
根幹に友情が根付いた状態の2人がお互いにそれに引っ張られたまんまずるずる恋愛する話なのか、良い時期に良いタイミングでことが運ばれなかったがばかりに深くなり得た恋愛がいともたやすく瓦解していく話なのか。
「女だからこそわかる」みたいな種類の話だろうに女のわたしでもひとつもしっくりと理解することが出来なかった。
それどころか男にも理解が出来なかった。このお話的に考えると己の幼さゆえということになるんだろうか。
果たして本当に己の幼さゆえ理解出来なかったと考えて終わるべき話なんだろうかね。
本の物語としての性質は読み手のメンタルを消費しつつ感情や関係性を問うようなお話で、なんというか自分が傷をおっている時にこの本に助けて貰おうと思っても余計深手を追うだけというかんじ。精神に余裕があって、かつ哲学書を読んでデカいテーマを考えてやろうというよりも身近な不思議を考えたいみたいな時に読むべきかなあ。
少なくともわたしは呻きながら読みました。
Posted by ブクログ
まさかの展開でもあり、しっくりくる各々の道でもあり、余白の作り方が上手だわぁ。
思いつめるくらいの気持ちを抱いていても、離れたら薄まる。結婚しててもそうなんだな、と思えれば気持ちが楽だし、そうあれ、と願う。
Posted by ブクログ
決定的な瞬間というものはあまり訪れず、それとなく進んで行くものだと思っていました。
良い意味で、予想を裏切られた感じでした。
内面と外面のどちらが自分かなんてそう簡単には分からなくて、出会う人々がそのどちらと会うのかも、分からないものなんですね。
Posted by ブクログ
少しずつ重なり合い、それでも決定的に愛し合えない四人の話。
小説全体に漂う、静かで、凛として、冷たくて、秘密めいた空気はまさに「夜の公園」に流れるそれのようで、
視点が変わるたびに濃さを増し、抜き差しならなくなっていく状況に息が苦しくなった。
全員があまりに感傷的で、感情的で、自分勝手で、人間臭すぎて、
それで息が詰まってしまった。
はっきり言って、僕は四人のうちの誰をも好きになれなかった。
息苦しさに喘ぎながら、必死で呼吸をするみたいにして読んだ。
きっと、四人のことをどうにか好きになりたいと思っていたんだと思う。
Posted by ブクログ
恋愛小説なんだと思う
でも、そうじゃないのかもしれない・・・・
結婚、不倫、妊娠、友情破綻
ひとは、ちょっとしたキッカケで
進む道なんて変わってしまうんだろうなぁ。
わたしは、今のこの道を
しっかり歩こう(笑)
Posted by ブクログ
不倫の話。
旦那は妻も愛人も好きで
愛人は恋人も他の男も好きで
っていうのはわからない。
でも何よりわからないのは
女同士の友人関係。
しかし夜の公園での出来事が
ほとんどなかったような。
Posted by ブクログ
読みながら、何度も「これ川上さんだったよな」と表紙を見直しました。
確かに川上さんらしい、フワフワした感じはあります。でもそれも所々です。それ以上に「何でこういうストーリーなの?」という感じのほうが強いのです。
ある人の感想に「物語世界から現実世界へ」というキーワードが有りました。これまでも「センセイの鞄」や「古道具 中野商店」のように現実社会を描いたものもありますが、それでもどこか霞がかかったような、浮世離れした感じがしました。それに対して、この作品は単にウソばなしや良い意味での現実感の無さが消えて、何だか生臭い程の現実感があるのです。
川上さんはこういう方向に向かうんですかね。私はやっぱりウソばなしを期待したいのですが。