主人公の置かれているその瞬間の情景と空気感を文章で伝えられる珍しいタイプの作家だと思います。
主人公が若い時は「若い」と分かる空気感と情景の表現であるため、昔を思い出し郷愁にかられる描写がいくつもありました。(当方トシなので)
しかしこれは甘い恋愛小説ではない!
主人公は(おそらく)守ってあげたい
...続きを読むタイプの可愛い女の子で、自己中な性格でも友だちがいて男性にも好意を持ってもらえて…
若い女性特有の「根拠のない無敵感」が分かる描写が中盤まで続き、後半で30歳を超えた主人公を取り巻く現実が徐々に読者に開示されます。
これまでやってきた事のツケが回ってきており、職や友達を失い、貯金もない。
「根拠のない無敵感」が通用するのは若い時だけ。
人間性に難があっても若い時はノリで恋人や友達になれるけど、歳を重ねると付き合う人間を選ぶようになる。
しかしそのことに気づいていない主人公の未来が想像できるラストまで、秀逸でした。