柴崎友香のレビュー一覧

  • 帰れない探偵

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    「今から十年くらいあとの話」

    という書き出しで、いきなり時空をねじ曲げられた気分になる。これは「探偵」という単語がタイトルにあるが、いわゆるミステリ小説ではない。ミステリ要素が全くないかと言われればそんな事もないが、主題はそこではない。

    登場人物は全て仮名で、章ごとにとある法則で付けられている。現実世界にあるようなないような、ちょっとしたディストピアのような雰囲気がずっと続いている。

    帯にあるとおり、この物語の世界に帰ってきたくなる時がきっとまた来るだろうなぁと思わされる。すごく心地良い、およそ300ページの旅路。

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    2025年12月23日
  • 帰れない探偵

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    事件を解決する探偵ではなく、遺失物探しや調査などの日常的な依頼をこなしていく探偵の話。
    固有名詞はほぼ出てこないが文化や思想、食事や音楽などから様々な国(地方)のモデルを連想しやすく、空港での情景描写が細かいため旅行気分も味わえる。
    書き出し文から立ちあがる時間空間の感性も、人や出来事の背景すべてが明らかになるわけではない余白の部分も、柴崎さんらしい魅力だと感じた。

    現代社会への純文学的な風刺は感じるが、紀行音楽、寓話やある種のディストピア要素を多分に含んでいる内容で読みやすい作品だと思う。
    間違ってもミステリーではないので伏線回収やどんでん返し、明快な答えを求める人には不向きかな。

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    2025年12月20日
  • 私の身体を生きる

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    女性として生きて来た中での、著名&人気作家さんたちが悩みを赤裸々に綴られた連載が一冊に。

    自分が女性でいることを肯定するために背中を押してくれるような内容だった。

    無神経な数多の男性達に加害されてきた傷への癒し 自分だけではなかった、という、女友達と行ってきた、経験を分かち合って貰えることへのありがたみ

    女性の身体の不安 妊娠や性行為、体調不良、弱さ
    見た目への若い頃の過剰な拘り、ジャッジされることへの抵抗感と迎合

    まるっと。

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    2025年12月07日
  • 帰れない探偵

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    「今から10年後くらい先の話」ではじまる。
    自分の事務所に帰れなくなった探偵の話。
    仕事、生活が淡々と語られていく。

    滞在先の事務所もだけど、自分の国にもある事情から帰れていない。
    よくある「探偵モノ」とはちょっと違う。

    依頼任務や生活が描かれているが
    探偵の仕事である秘匿性から、どこの国の仕事なのかなどが明記はされておらず断片から想像するしかない。
    探偵連盟から任務を課され淡々とこなしていく、探偵は一箇所にとどまることはなくどこにいっても異物として存在する自分、帰れない国、自分が帰りたいのかもわからず、仕事も何故今ここで自分がこの仕事をしてるのかも揺らぐ
    ずっと旅をしている。漂っている。

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    2025年12月07日
  • 私の身体を生きる

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    「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
    各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。

    痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを

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    2025年12月04日
  • 帰れない探偵

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    短編連作のなかで、幾重にも重なる時間の揺らぎ。
    いるよ、みてるよ、と存在を伝える者。失われた場所への眼差し。遠くへ音楽を届けようとする人々。
    探偵が触れる謎と、解かれない謎。
    読み終わるのが惜しくなる、長い旅をした気になる本。

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    2025年12月02日
  • 百年と一日

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    様々な時間と場所にまつわる短編集。
    名前があったりなかったりする人々の、日々の断片が静かに描かれている。感情の描写はほとんどないのに、行間から彼らの思いや孤独、希望のようなものが滲み出してくる。
    淡々とした筆致の中に確かな熱を感じる、まさに柴崎友香の真骨頂。
    傑作だった。

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    2025年10月30日
  • 帰れない探偵

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    めちゃくちゃよかった。感覚的に好き。
    探偵の仕事を一つ一つこなして軽い謎解き要素もあり、いろんな国のいろんな場所に赴任するのでどこかなーと想像しながら読んだり、不思議な魅力がある本。

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    2025年10月30日
  • 大阪

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    ネタバレ

    岸さんと柴崎さん、そして私にとっての大阪

    大学進学を機に大阪に住み始めた岸さんと、三十二歳になる直前まで大阪に住んでいた柴崎さん。

    「わたしにとっては、大阪を書くことは、自分の生きてきた時間と場所と、関係のある人を書くことに、どうしてもなってしまう。」(P16)

    柴崎さんは大正区の南の果てご出身、私は大阪市の北の果てに住んでいた(身内に美容師がいるのも同じ)ので「ああ、こういう感じだったなぁ」というところと「南のほうはそうだったんだ」という答え合わせのようでとてもとても興味深く…私が実家やその周辺で子供だった頃、柴崎さんも柴崎さんの場所で子供だったんだなというノスタルジーも感じつつ読みま

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    2025年10月20日
  • 帰れない探偵

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    語彙力がなくてうまく感想が書けないのが悔しい。居場所探し自分探しのモラトリアムなわけでもなく、達観してるわけでもない。
    大立ち回りも号泣するようなカタルシスもない。ただ郷愁に身を委ね、人々の話の機微を聞いているのが心地よい。
    近未来をイメージさせるどこかのいろんな国へ行く探偵。
    目立つのは外国人や富裕層で、先住民や土地を捨てた人々の痕跡はあっても管理された情報でうまく辿ることは難しい。今ここにいない人たちに思いを馳せ、同じ景色を見たいと望み、自分の足元を確かめる。

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    2025年10月17日
  • 帰れない探偵

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    世界を飛び回り依頼をこなす探偵の物語。
    今から10年後の話、帰れなくなった、故郷の体制が変わった等々散りばめられた設定はSFとは言わないまでも独特な世界観。
    探偵だから派手な事件と言うよりは調べ物が多く、主人公の名前も地名すら出てこず、淡々と仕事をこなす様は想像力に頼る部分が多く評価が別れるかもしれないが確実に変わりつつある世界に惹かれていき分厚いもののかなり夢中で読めて新しい読書体験になった。
    末端だからこそ全貌が明かされず空港でリアルタイムに指示が来て様々な人と会話をする最後の物語がとても好き。

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    2025年10月15日
  • ご本、出しときますね?

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    BSジャパンのテレビ番組の書籍化。オードリー若林さんがMCする番組が好きな自分にとっては、読み進めてると声が聞こえてきそうな錯覚に陥った。作家の知らない一面が見えてとてもおもしろかった!読んだ章の中では村田沙耶香さんの変人度が群を抜いていた笑

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    2025年10月15日
  • 百年と一日

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    34篇からなる本作は、見知らぬ人が繰り広げる何気ない日常の数々から構成されている。
    思い出の街角や生まれ育った故郷など様々な場所が時間の経過と共に姿を変えていくが、人々の記憶や何らかの名残となって今もその土地に根を張り続けている事に、浪漫を感じた。
    また、章のタイトルが人の人生を客観的に書き連ねている様で興味深い。
    一見何の変哲のなく思える日常が、タイトルの後に本文を読むと、寂しさや愛おしさが込み上げてくる。
    線と点を一度に感じるような「百年と一日」という題名がピッタリの作品だった。

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    2025年10月09日
  • 本からはじまる物語

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    全体的にかなりのショートショートで18人の作家で有名な作家も取り揃えて234ページとは、かなりお得感がある。
    そして、それぞれが書店や貸本屋、本にまつわる出来事を綴っていくのはおもしろかった。

    本を読むのが苦手な人もこのくらいの短さであれば読むのも楽なのかなと思った。

    個人的には下記が印象に残ったが、
    それぞれの作家さんがこんな短い話しにきちんと自分の色を出しているのはすごいと思った。

    十一月の約束 本多孝好
    サラマンダー いしいしんじ
    読書家ロップ 朱川湊人
    閻魔堂の虹 山本一力

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    2025年10月05日
  • 続きと始まり

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    「続きと始まり」(柴崎友香)を読んだ。

    やっ!柴崎友香、ただ者ではないな。
    『帰れない探偵』を読んだ時の衝撃が忘れられずに他の作品も読みたくなったのだが、これはまた素晴らしい。

    しみじみと読んでしまう。
    西と東の大震災の、新型ウィルスの、ゲリラ豪雨の、過ぎ去った後であったり、最中であったり、その時その時の普通のひとたちの普通の生活を大仰にではなくさらりと描く。だけどその視線は細やかで核心を射抜く。

    ああ、確かに、《の前の続き》は始まっているんだよな。何かが少し(でも確実に)違っているんだけれどさ。

    以下、引用する。

    「どうすればよかったのかわかるのは、いつもそれが過ぎたあとだよね」(

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    2025年10月05日
  • 大阪

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    この本を読んで以後、良くも悪くも大阪に住んでるだけで、常にノスタルジーを感じさせてくれることになってしまいました。たぶんおそらく僕は生まれてから死ぬまで大阪から離れることはなさそうです。

    出身の中学校はクラスの数も減り、所属していた部活はなくなり、僕も生まれて見てきた20年ほどで大阪の様相が随分変わってきました。もうあとしばらく経つと跡形もなくなってしまうんじゃないかと寂しすぎる気持ちです。

    好きな関西の作家さん。岸さん、柴崎さん、西加奈子さん、塩谷舞さん、これからも増えていきそう。みんな関西弁を愛してる気がして。文字で読む関西弁はどこか小っ恥ずかしくて、可愛い。

    西さんの解説の&quo

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    2025年09月22日
  • 私の身体を生きる

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    様々な『自分の』性との向き合い方について書かれている。メタ的な性との向き合い方でないのは、女性の作家たちだからだと思う。
    女性も誰かの性を搾取することもあるだろうが、しかし圧倒的に搾取される側であり、自分の生命と性とが紙一重に近い存在だと思い知る。
    アンソロジーの最初の島本理生さんの作品が個人的ににとても響いた。
    なぜ自分の性と向き合うだけで傷ついてしまうのか。男性も同じなのだろうか。傷ついたことを思い出さないで自分の性について語れる人間がいるならば、どんな人生なのか知りたいと思う。

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    2025年09月20日
  • かわうそ堀怪談見習い

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    確かにそれは怖い、怖さとはこういうことだと何回かぞくりとしました。怪談は日常の中に偏在していそうです。

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    2025年08月24日
  • 春の庭

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    めちゃくちゃ良かった......。このところ問題提起的な鋭い小説ばかり読んでいて心がささくれていたので、ちょっとぼけっとした人間の、物事の捉え方の機微が描かれているところにほっとした。初めて読む著者だったけど文体がとても好みで、気に入った表現がいくつもあった。あと酒が美味そう。毎日暑くてうんざりしてる中、そういえば近くに生えてるサルスベリが花をつけてる時季だなと気がついてとてもよかった。歳を重ねるごとに読み返したいと思った。
    文庫版収録の三編もとてもよかった。最後の話がとくに気に入った。それから解説が信じられないくらい言語化能力が高くて(当たり前)、超納得した。

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    2025年08月24日
  • 私の身体を生きる

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    女性作家、芸術家たちの生と性、身体をテーマにしたエッセイ集
    自分も漠然と感じてた「女性であること」への違和感、敵対心、恐怖、いろんな言い尽くせない気持ちをそれぞれの人が言語化してくれるよう
    現代日本で高らかに女性讃歌を謳うのは難しいことを痛感する
    それでも次代はと願いたい

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    2025年08月10日