柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「今から10年後くらい先の話」ではじまる。
自分の事務所に帰れなくなった探偵の話。
仕事、生活が淡々と語られていく。
滞在先の事務所もだけど、自分の国にもある事情から帰れていない。
よくある「探偵モノ」とはちょっと違う。
依頼任務や生活が描かれているが
探偵の仕事である秘匿性から、どこの国の仕事なのかなどが明記はされておらず断片から想像するしかない。
探偵連盟から任務を課され淡々とこなしていく、探偵は一箇所にとどまることはなくどこにいっても異物として存在する自分、帰れない国、自分が帰りたいのかもわからず、仕事も何故今ここで自分がこの仕事をしてるのかも揺らぐ
ずっと旅をしている。漂っている。 -
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを -
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ネタバレ岸さんと柴崎さん、そして私にとっての大阪
大学進学を機に大阪に住み始めた岸さんと、三十二歳になる直前まで大阪に住んでいた柴崎さん。
「わたしにとっては、大阪を書くことは、自分の生きてきた時間と場所と、関係のある人を書くことに、どうしてもなってしまう。」(P16)
柴崎さんは大正区の南の果てご出身、私は大阪市の北の果てに住んでいた(身内に美容師がいるのも同じ)ので「ああ、こういう感じだったなぁ」というところと「南のほうはそうだったんだ」という答え合わせのようでとてもとても興味深く…私が実家やその周辺で子供だった頃、柴崎さんも柴崎さんの場所で子供だったんだなというノスタルジーも感じつつ読みま -
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「続きと始まり」(柴崎友香)を読んだ。
やっ!柴崎友香、ただ者ではないな。
『帰れない探偵』を読んだ時の衝撃が忘れられずに他の作品も読みたくなったのだが、これはまた素晴らしい。
しみじみと読んでしまう。
西と東の大震災の、新型ウィルスの、ゲリラ豪雨の、過ぎ去った後であったり、最中であったり、その時その時の普通のひとたちの普通の生活を大仰にではなくさらりと描く。だけどその視線は細やかで核心を射抜く。
ああ、確かに、《の前の続き》は始まっているんだよな。何かが少し(でも確実に)違っているんだけれどさ。
以下、引用する。
「どうすればよかったのかわかるのは、いつもそれが過ぎたあとだよね」( -
Posted by ブクログ
雰囲気が好き。空気感が好き。とにかく面白い。
仮想の地球の仮想の国を行き来している探偵。身を明かせないし、徹底して「探偵」でいることに、ほんのりと漂う寂しさとか、プロ根性とか、どれもが愛おしくて楽しくて時を忘れて読み耽った。と同時に読み終えるのがもったいなくもあった。
人に裏切られたり、助けられたりしながらも、多くを語ることがない中での仲間との繋がりとか、時折出てくる探偵の心を満たしたであろう美味しそうな食べ物とか、じんわりと心に沁み入ってくるものがたくさんあったなぁ。
帰れない探偵は、最後は居場所を見つけたのか否か、よくわからないまま物語は終わりを迎えたけれど。読んで良かったし、また読みたい -
Posted by ブクログ
この本を読んで以後、良くも悪くも大阪に住んでるだけで、常にノスタルジーを感じさせてくれることになってしまいました。たぶんおそらく僕は生まれてから死ぬまで大阪から離れることはなさそうです。
出身の中学校はクラスの数も減り、所属していた部活はなくなり、僕も生まれて見てきた20年ほどで大阪の様相が随分変わってきました。もうあとしばらく経つと跡形もなくなってしまうんじゃないかと寂しすぎる気持ちです。
好きな関西の作家さん。岸さん、柴崎さん、西加奈子さん、塩谷舞さん、これからも増えていきそう。みんな関西弁を愛してる気がして。文字で読む関西弁はどこか小っ恥ずかしくて、可愛い。
西さんの解説の&quo -
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Posted by ブクログ
「帰れない探偵」(柴崎友香)を読んだ。
面白かった。
とてもとても面白かった。
探偵小説というより純文学的曖昧さが香ばしい。
探偵の胸の内の『帰れない』場所というのが何かのメタファーであろうことは容易に想像がつくのだけれど、いま現在のこのきな臭い世界において本当に帰りたい場所なんてあるのか?
自分の中の『帰れない』場所ってどこだろうな。
柴崎友香作品を初めて読んだわけだが、これはちょっと自分的には迂闊だったな。もっと早くにその存在に気づくべきだったよ。
印象的な(たぶん肝な)言葉を引用
《(前略)どこかの意図とか悪意をも超えて、まだ誰もわからない、取り返しのつかないことが起きてく -
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった......。このところ問題提起的な鋭い小説ばかり読んでいて心がささくれていたので、ちょっとぼけっとした人間の、物事の捉え方の機微が描かれているところにほっとした。初めて読む著者だったけど文体がとても好みで、気に入った表現がいくつもあった。あと酒が美味そう。毎日暑くてうんざりしてる中、そういえば近くに生えてるサルスベリが花をつけてる時季だなと気がついてとてもよかった。歳を重ねるごとに読み返したいと思った。
文庫版収録の三編もとてもよかった。最後の話がとくに気に入った。それから解説が信じられないくらい言語化能力が高くて(当たり前)、超納得した。