柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
事件を解決する探偵ではなく、遺失物探しや調査などの日常的な依頼をこなしていく探偵の話。
固有名詞はほぼ出てこないが文化や思想、食事や音楽などから様々な国(地方)のモデルを連想しやすく、空港での情景描写が細かいため旅行気分も味わえる。
書き出し文から立ちあがる時間空間の感性も、人や出来事の背景すべてが明らかになるわけではない余白の部分も、柴崎さんらしい魅力だと感じた。
現代社会への純文学的な風刺は感じるが、紀行音楽、寓話やある種のディストピア要素を多分に含んでいる内容で読みやすい作品だと思う。
間違ってもミステリーではないので伏線回収やどんでん返し、明快な答えを求める人には不向きかな。 -
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Posted by ブクログ
「今から10年後くらい先の話」ではじまる。
自分の事務所に帰れなくなった探偵の話。
仕事、生活が淡々と語られていく。
滞在先の事務所もだけど、自分の国にもある事情から帰れていない。
よくある「探偵モノ」とはちょっと違う。
依頼任務や生活が描かれているが
探偵の仕事である秘匿性から、どこの国の仕事なのかなどが明記はされておらず断片から想像するしかない。
探偵連盟から任務を課され淡々とこなしていく、探偵は一箇所にとどまることはなくどこにいっても異物として存在する自分、帰れない国、自分が帰りたいのかもわからず、仕事も何故今ここで自分がこの仕事をしてるのかも揺らぐ
ずっと旅をしている。漂っている。 -
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを -
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ネタバレ岸さんと柴崎さん、そして私にとっての大阪
大学進学を機に大阪に住み始めた岸さんと、三十二歳になる直前まで大阪に住んでいた柴崎さん。
「わたしにとっては、大阪を書くことは、自分の生きてきた時間と場所と、関係のある人を書くことに、どうしてもなってしまう。」(P16)
柴崎さんは大正区の南の果てご出身、私は大阪市の北の果てに住んでいた(身内に美容師がいるのも同じ)ので「ああ、こういう感じだったなぁ」というところと「南のほうはそうだったんだ」という答え合わせのようでとてもとても興味深く…私が実家やその周辺で子供だった頃、柴崎さんも柴崎さんの場所で子供だったんだなというノスタルジーも感じつつ読みま -
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「続きと始まり」(柴崎友香)を読んだ。
やっ!柴崎友香、ただ者ではないな。
『帰れない探偵』を読んだ時の衝撃が忘れられずに他の作品も読みたくなったのだが、これはまた素晴らしい。
しみじみと読んでしまう。
西と東の大震災の、新型ウィルスの、ゲリラ豪雨の、過ぎ去った後であったり、最中であったり、その時その時の普通のひとたちの普通の生活を大仰にではなくさらりと描く。だけどその視線は細やかで核心を射抜く。
ああ、確かに、《の前の続き》は始まっているんだよな。何かが少し(でも確実に)違っているんだけれどさ。
以下、引用する。
「どうすればよかったのかわかるのは、いつもそれが過ぎたあとだよね」( -
Posted by ブクログ
この本を読んで以後、良くも悪くも大阪に住んでるだけで、常にノスタルジーを感じさせてくれることになってしまいました。たぶんおそらく僕は生まれてから死ぬまで大阪から離れることはなさそうです。
出身の中学校はクラスの数も減り、所属していた部活はなくなり、僕も生まれて見てきた20年ほどで大阪の様相が随分変わってきました。もうあとしばらく経つと跡形もなくなってしまうんじゃないかと寂しすぎる気持ちです。
好きな関西の作家さん。岸さん、柴崎さん、西加奈子さん、塩谷舞さん、これからも増えていきそう。みんな関西弁を愛してる気がして。文字で読む関西弁はどこか小っ恥ずかしくて、可愛い。
西さんの解説の&quo -
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった......。このところ問題提起的な鋭い小説ばかり読んでいて心がささくれていたので、ちょっとぼけっとした人間の、物事の捉え方の機微が描かれているところにほっとした。初めて読む著者だったけど文体がとても好みで、気に入った表現がいくつもあった。あと酒が美味そう。毎日暑くてうんざりしてる中、そういえば近くに生えてるサルスベリが花をつけてる時季だなと気がついてとてもよかった。歳を重ねるごとに読み返したいと思った。
文庫版収録の三編もとてもよかった。最後の話がとくに気に入った。それから解説が信じられないくらい言語化能力が高くて(当たり前)、超納得した。 -