柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本を読んで以後、良くも悪くも大阪に住んでるだけで、常にノスタルジーを感じさせてくれることになってしまいました。たぶんおそらく僕は生まれてから死ぬまで大阪から離れることはなさそうです。
出身の中学校はクラスの数も減り、所属していた部活はなくなり、僕も生まれて見てきた20年ほどで大阪の様相が随分変わってきました。もうあとしばらく経つと跡形もなくなってしまうんじゃないかと寂しすぎる気持ちです。
好きな関西の作家さん。岸さん、柴崎さん、西加奈子さん、塩谷舞さん、これからも増えていきそう。みんな関西弁を愛してる気がして。文字で読む関西弁はどこか小っ恥ずかしくて、可愛い。
西さんの解説の"世界が均質化され、ほとんど同じことを体験させられ、そして共有を促される現代にあっては、"のところを見て、行列に並ぶ人気店とか、人気のインスタグラマーが買ってる商品だからとか、インスタやTiktokで流行りに乗せられ、すぐに群がっていってしまうような、そういうんじゃなくてもっと自分としての価値観を大切にしてほしい。自分で探して自分で見つけに行って、自分から良いものを広めないと。他人から受けとるだけの人間になってしまったらもう戻ってこれない、と思います。 -
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった......。このところ問題提起的な鋭い小説ばかり読んでいて心がささくれていたので、ちょっとぼけっとした人間の、物事の捉え方の機微が描かれているところにほっとした。初めて読む著者だったけど文体がとても好みで、気に入った表現がいくつもあった。あと酒が美味そう。毎日暑くてうんざりしてる中、そういえば近くに生えてるサルスベリが花をつけてる時季だなと気がついてとてもよかった。歳を重ねるごとに読み返したいと思った。
文庫版収録の三編もとてもよかった。最後の話がとくに気に入った。それから解説が信じられないくらい言語化能力が高くて(当たり前)、超納得した。 -
Posted by ブクログ
これ凄い好き。
私なんか全然本読んでないなーって思った。
若林さんがそもそも繋がっている、なんなら飲み仲間作家さんとの鼎談から始まって。初めましての作家さんも登壇してくるんだけどこんな会話繋がって凄いなー掘り下げてるなー面白いなーってのが連続するんだから。
タイムリーにみたかったなー。もっと対談して欲しい作家さんいるなー。私が好きな作家さんの本がお勧めされてて嬉しいなー。
もう紹介されてる本片っ端から全部読みたいっ!!すべての回でその時話題に上がったテーマでお勧めの本を作家さんが紹介するんだが、これが垂涎なんです。紹介の仕方にも唸る、だってどれもこれもすっごく読みたくなる。
沢山の本の中からキラっと光る物を探し当てた気分。 -
Posted by ブクログ
『いくつもの人の流れが交差する通路を歩き、ヤマネはようやく家に帰る路線に乗り換えた。ホームに入ってきた電車に乗り込むと、こちらもほどほどに混雑していた。ちょうど目の前の席が空いたので座り、一息つく。慌ただしくドアが閉まり、電車は走り始めた。スマホを取り出して、「普請中」がいつ書かれたのかを検索した。発表は明治四十三年。一九一〇年だから、百年以上前になる。百年以上、東京は普請中なのか、と思うと、長距離を移動してきた疲れも相まって頭の芯がふらっと揺れる感覚がした』―『話すことを思い出す/次の春から夏』
柴崎友香の風景というか情景描写がとても好きなのだけれど、その理由を突き止めようとすると言葉に窮する。ただその場の光景を言葉に置き換えているのではない。その視線の持ち主の心情がその景色をそのように見せているのだということが伝わって来るような書きぶり。デビュー以来、その筆致は変わることがない。
それなのに、この、普段なら数日もあれば読み終えてしまうだろう一冊の頁が中々進まないのを何故だろうと考えながら読んでいた。そして、読み進めなくなるのは、主人公が参加するオンラインでの創作講座の部分だと気付く。参加者が発表する画像や映像を描写する文章で躓いてしまうのだ。ああ、心情なしの描写だと柴崎友香の文章といえどもすっと言葉が入って来ないのだな、と。
本書は作家である主人公がコロナ禍の生活を過ごす、言ってみればヴァーチャルな人々との会話の前半と、ある程度自由に外出でき人とも会うことのできる後半とのコントラストが際立つ構成となっている。後半は、断然いつものこの作家らしい筆致で情景描写や会話が進むので、読んでいて楽しい。それに比べると前半は意図的かと思える程に色の無い世界の中で話が進む。例えば、オンラインの創作講座で発表される作品にモノクロの作品が多いのもそれを強調する。落ち葉の押し花を使う作品からも何となく枯れた葉の色が連想される。この作品は新聞の連載なので最初からそのように設計していたかは定かではないけれど、2023年からの連載時にコロナ禍での作家の実生活の中での心象を振り返り、それが反映されているのだろうと想像する。そして連載中に起きてしまった事象もまた、小説には投影されている。もちろん主人公の作家が柴崎友香本人だなどと野暮なことは言わないけれど、随分と重なる部分はあるし、独り言のような心情の吐露は作家自身の心の内を聞いているようでもある。それもかなり率直に思うことを語っているように聞こえる。
後半も最後の方になって、作家が担当編集者に対して、たくさん人が登場する作品が書きたい、という場面が出てくる。それが、この本のことを湾曲的に示唆しているようでもあるし、そうでないようでもあるのだけれど(しつこく言うけれど、この主人公を作家本人ではないと思いながら読むのは実は中々難しい)、自由に外出できるようになってからオフラインで講座の参加者たちと玉川上水を歩きにゆく場面は、同時並行に幾つもの会話が進行していて、こういう作品を意図していたのかなと勝手に理解する。それは柴崎友香の作家としての可能性をいち早く見抜いた保坂和志の「カンバセーションピース」の最終場面とよく似た構図でもある。最もこの小説は、そこへ向かって収束してゆく訳ではなくて、むしろ自由になった世界の中で改めて理解する不自由さや不条理のようなものの存在を静かに語り、自分の身に引き寄せることが主題となっているような気がする。作家の静かな主張が確かに響いている作品だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ石原優子、小坂圭太郎、柳本れい。どこにでもいそうな、かといって退屈ではない個性を持つ3人の視点でコロナ禍の日常を語る小説。
自粛要請(今考えると変な言葉である)やら、緊急事態宣言やら、まん坊(当時も思ったが変な略語である)…、感染拡大を錦の御旗に徹底的に抑圧された生活を送った3年ほどの期間、主人公らの生活も感性もどんより重くて、それでも生活は淡々と行われていく。
2つの大きな震災の記憶も生々しいままに、今度はパンデミック…。厄災の合間を縫って続く庶民に日常、政治は相変わらずクソだし、強かったはずの経済も日に日に弱っていって、明るい未来などフィクションの世界にも見当たらなくなった国。
口から出た言葉は戻らないし、マスコミやネットで報道する姿だけが真実ではないし、親は勝手に期待して絶望するし…。
何を書いてるのか分からなくなったが、何しろ情報量というか感情量というか言葉が丁寧にたくさん綴られていて、読み手側も思いが錯綜しまくるので、まとまらない。
とりあえず、ウクライナや能登や韓国の戒厳令や、やっぱり世の中無茶苦茶なことが多いけど、ゲー吐きながらでも乗り越えてきた俺たちは、これからも乗り越えていけるやろう。乗り越えていこう。勝たんでエエけど負けてたまるか