柴崎友香のレビュー一覧

  • ドリーマーズ
    現在と過去が、現実と夢が、融け合うでもなく混同するでもなく、割合に平然と共存する。
    夢に現れる人は、おおむね死人の気配。
    またこれから生まれる人もいるが、未生の者も死人も生きている語り手も、みな暗いところにいる。
    あるいは暗いところが見える。
    何気ない凄まじさ。

    ■ハイポジション
    ■クラップ・ユア...続きを読む
  • その街の今は
    至極退屈でドラマがなく、かすかに起承転結がある感じ。いいねー。
    合コン、クラブ、といった若者の普通の日常が描かれていて、森見登美彦みたいな非モテ芸・自虐芸しか引き出しがなくて笑えない感じになってきているような作品群よりも全然リアルな青春。そりゃレコード集めたり写真集めたりするわいな、普通の人間は。く...続きを読む
  • フルタイムライフ
    なんというか、なんでもないけど、そこに間違いなくあったって感じのお話。盛り上がりやクライマックスがあるわけでもないのにページをめくる手が止まらない。読み終わった後も、なんかよくわからないけと満足感がある、そんな感じ。柴崎さんの本って本当にいいなぁ。
    あと、読んでる間は自分の頭の中の言葉も関西弁に戻っ...続きを読む
  • 春の庭
    とてもよかった。思わずほっと息を下ろしてしまうような安心感と、内側から満たされるような温かさ。柴崎友香の小説はどれも読んでいると、「世界は私に開かれていて、受け入れるのを待ってくれている」という感覚になるが、今作は特にそれが強かった。この小説世界に生きられたら……。この作品から受ける感触は本当に温か...続きを読む
  • 週末カミング
    柴崎さんの本は「ビリジアン」に続いて二作品目。

    なんかいい。
    なにがいいのかよくわからないけどなんかいい。
    どこにでもいそうなひとたちのなんとはいうことのない日常。でもその日常のひとつひとつが大切に描かれていて読んでいるうちにとても愛おしく思えてくる、そんな感じ。

    どの作品も好きだけど、いちばん...続きを読む
  • 週末カミング
    そういえば、友達の友達とか、その場で会ったよく知らない人と出会う話が多い。もう二度と会わないかもしれない人の話を聞くのは楽しい
  • 週末カミング
    『ハルツームにわたしはいない』が一番よかった。一番柴崎友香らしい。いつものテーマでいつもの書き口ではあるのだが、短編になったぶん旨味がギュッと凝縮してはっきりしたような印象。
    私がいつ、どこで生まれ、いま、ここで生きているのは何故なのか。その素朴な疑問を実生活の中で問いかけ続ける。無理に形而上学や哲...続きを読む
  • フルタイムライフ
    なんにも事件のないただただ日々を過ごすだけのお話し。あんまりさらさら進むので誰が誰だか、途中で戻りながら読みました。
    自分の新入社員のころの懐かしき思い出を呼び起こされました。
  • フルタイムライフ
    芸大を出て一般企業へ事務職として入社した新入社員の日常が、柴崎さんらしい素直な目線と表現で綴られている。
    まだ完全に会社に馴染むことができていないが、サラリーマンのおじさんや先輩OLも、また個性的な学生時代の仲間たちの生き方も否定することなくゆったりとしたスタンスで受け入れるところは、柴崎作品の真骨...続きを読む
  • ビリジアン
    単行本で読んだときのほうが、本自体が記憶の話だとわかりやすかった。表紙も、記憶に強弱がつく感じとかも。だけど、文庫本の方が集中して読めた。こないだの滝口さんの本も、記憶の話はおもしろいと思って読める。
  • フルタイムライフ
    「自分がどうしたいかわからへんって、あほみたいじゃない?」
    自分のしたいことが分からない、このままでよいのかという漠然とした不安に共感の嵐だった。職場の人たちとの交流と芸術系に残った大学時代の友人たちとの交流を行き来して、自分なりの社会への馴染み方を見つけていく様がとても美しい。「必要なのは、何かす...続きを読む
  • ビリジアン
    雲のなかを走っているようだった。ふわふわしているけど、疾走感が溢れる。善く生きたいですに動揺したら、また出てきた
  • ビリジアン
    なんとも言えない。淡々と語られる10代の記憶。何が見えていて、何が見えていないのか。思えば友達や先生、何故かロックスターは登場するものの、両親は一度も登場してない気がする。
  • その街の今は
    読んでいると物事を何でもあるがままに捉えられるようなリラックスした気持ちになる。

    人物たちがものすごく自然。存在もセリフも心情も周囲を見る目も全てが自然で、物語的でない。そこが安心感を与えてくれるのかもしれない。特に人物が見ているものの描写、視点の描写が特徴的だと思った。小説的じゃないというか、物...続きを読む
  • わたしがいなかった街で
    現実の自分と、自分が存在していなかった過去の出来事との間に、何とも言えない違和感を感じているような女性の日常を淡々と描いた作品。なのかなぁ。
    愛嬌ある脇役たちの魅力と、1人になった時の主人公の屈折度合いにギャップを感じながらも、柴崎さんらしい繊細な描写に惹かれます。
    解説に書いてあるような複雑な分析...続きを読む
  • フルタイムライフ
    5月から2月まで、新入社員の10ヶ月の物語。
    慣れない仕事でミスはするし、将来は漠然と不安だし、学生生活に未練はあるし、会社という組織は理不尽だし、でも、会社で働く日々を案外好きだと思えたりもする。自分がいま新入社員の2月なので、うなずく所ばかりだった。
    青春小説でも会社員小説でも主人公にはなれない...続きを読む
  • フルタイムライフ
     毎日毎日会社へ通って仕事をするのが大好きというわけでは決してないけど、否定ばかりしていても今すぐに辞められるわけでもないし明日も働かなければいけないので、ほんの些細なことでもいいから好きなポイントを見つけて働いた方がいいなぁ、と主人公を見ていて思った。
  • 虹色と幸運
    三人の女友達。
    それぞれの暮らしがパラレルに描かれていく。

    それぞれの今を重ね続ける中、三人が顔を合わせる機会はほとんどない。三人の時間は重なることもなければ見えないところで関わったりすることもほぼないに等しい。

    抱えるものも異なるし、互いのことを思いやり心配するほどの濃密な繋がりもあるわけでは...続きを読む
  • わたしがいなかった街で
    自分が今存在していて、過去には存在していなかったこと。自分以外の人になれないこと。時間は遡れないこと。当たり前に聞こえるが、それらを意識することで、日常は少し違って見えると思う。
  • 虹色と幸運
    すべてはタイミングなのかな。恋愛のあれこれも仕事のあれこれも。2年後に私はどんな気持ちで読むのだろう