柴崎友香のレビュー一覧
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解説で瀧井朝代が言うように、確かにどの作品にも「生の一回性」を意識する瞬間がある。
だからこそいまここにいる自分、自分がいないどこかやいつかに思いを馳せる。
場所。時間。記憶。取り返せない過去。他人になれない自分。
それらを「無理なく思う」のが柴崎友香の作風なのだろう。
大雑把に言えば作中で行われているのは、歩く。話す。それだけ。
それだけで思考が広がり、「深まりそう」になる。
深く考え込む一歩手前でまた、歩く。話す。豊かだ。
■ハッピーでニュー
■蛙王子とハリウッド
■つばめの日
■なみゅぎまの日
■海沿いの道
■地上のパーティー
■ここからは遠い場所
■ハルツームにわたしはいない
■あと -
Posted by ブクログ
ネタバレ普通より少し波乱に満ちた人生と、それぞれに少し不思議な能力をもつ三兄弟の家に間借りすることになった主人公。主人公もまた複雑な過去を持ち、他人との距離感をつかめずにいる。一番共感したのはその主人公の、優しさや冷静さや諦めを含みながら周りを観察するその視点。自分やまわりを客観的に見つめながらも、思う通りの行動はできないということはよくあるものだ。。
最後、主人公が、ぎこちなさを伴いながらもちゃんと自分のしたいことを言葉にできたのは貴重な瞬間だった。それと、主人公はその優しさ、繊細さゆえに間借りしている家族たちの信頼を少しずつ得ているようにも見えたので、それもまた希望にうつった。
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Posted by ブクログ
難解な作品だな、というのが感想。
途中までは何も起こらない、だけど何も起こらない故の面白さみたいなものが感じられて、スイスイと読み進められたのだが、作品の終盤近く、視点が三人称から「太郎」という登場人物の姉に唐突に変わってからは、作品の様相がガラリと変わってしまったように感じられた。
視点どころか、過去・現在といった時系列も入り組んでしまったように感じる。
しかも視点は姉に変わっているはずなのに、いつのまにか三人称、つまり変わる前の状態に戻ってしまっているようにも読める。
ネットで検索してみると、この視点の変化については色々な意見が出されているのだが、「これだ!」という解釈は -
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Posted by ブクログ
至極退屈でドラマがなく、かすかに起承転結がある感じ。いいねー。
合コン、クラブ、といった若者の普通の日常が描かれていて、森見登美彦みたいな非モテ芸・自虐芸しか引き出しがなくて笑えない感じになってきているような作品群よりも全然リアルな青春。そりゃレコード集めたり写真集めたりするわいな、普通の人間は。くっつき別れたり。
そして、一々屈託にフォーカスせずに淡々と進行する人間関係もいい。眉間にしわ寄せて苦悩するばかりがおブンガク様ではない。
何より、登場人物が別に善人でないのか素晴らしいね。その点、原田マハより全然好きだなー。
保坂和志に近いかも、と思った。女子で、大阪で、若干リア充=人並みに努力して -
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柴崎さんの本は「ビリジアン」に続いて二作品目。
なんかいい。
なにがいいのかよくわからないけどなんかいい。
どこにでもいそうなひとたちのなんとはいうことのない日常。でもその日常のひとつひとつが大切に描かれていて読んでいるうちにとても愛おしく思えてくる、そんな感じ。
どの作品も好きだけど、いちばん好きなのは「ここからは遠い場所」かな。なんというか主人公の境遇に共感するのと、ちょっとしたミステリー要素があるのもおもしろい。主人公の名前に関してアレ?って思ったのもポイントだった。
あと印象深かったのは「地上のパーティ」。唯一主人公が男性なんだよね。
電車の中で読んでて柴崎さんの他の作品が気にな -
Posted by ブクログ
読んでいると物事を何でもあるがままに捉えられるようなリラックスした気持ちになる。
人物たちがものすごく自然。存在もセリフも心情も周囲を見る目も全てが自然で、物語的でない。そこが安心感を与えてくれるのかもしれない。特に人物が見ているものの描写、視点の描写が特徴的だと思った。小説的じゃないというか、物語を構成するための意図的な取捨選択が少なくて、その人物の見ている景色が本当にそのまま描写されているような感じがする。そのおかげか、小説の中の人物たちが私たちと同じ世界に実在しているように感じられ、親近感が湧く。小説の世界に没頭しているのに別世界感が全くなくて不思議な感覚だ。
この小説から感じる温か