柴崎友香のレビュー一覧
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あなたは、旧友と久しぶりに会ってみたいと思うことがあるでしょうか?
私たちは熱い青春時代を過ごしてきました。もちろん、その熱さは人によってマチマチでしょうし、比べるものでもありません。しかし、誰にとっても輝いていた時代であることに違いはないと思います。
そんな時代には、誰しもが親友、悪友と言われる友だちの存在があったはずです。一緒に煌めく青春時代を駆け抜けた友だち。人によってはその後も生活圏を同じくして仲良く付き合い続けている場合もあるかもしれませんが、多くの場合は、それぞれ次のステージに進む中で疎遠になっていく場合の方が多いように思います。しかし、疎遠になったとしても、この空の下のどこ -
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別々の場所でそれぞれの人生を送る3人(30代後半の女性・石原優子、30代前半の男性・小坂圭太郎、40代半ばの女性・柳本れい)について、2つの大震災など過去の記憶も呼び覚ましながら、日本がコロナ禍の只中にあった2020年3月から2022年2月の2年間を描く叙事的長編小説。
自分自身の人生も含め、それぞれの人生、時の流れなんかに思いを馳せさせてくれる実に良い小説だった。
本書のキーアイテムであるヴィスワヴァ・シンボルスカの「終わりと始まり」という詩集から抜粋される詩(特に、「戦争が終わるたびに誰かが後片付けをしなければならない」から始まる詩)も心に残った。 -
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今回のレビューは、まず登場人物たちの会話に耳を傾けてみましょう。
『でもいいなあ、正道くん。大学院受かって。わたしも京都で学生生活してみたいなあ』
『そうやなあ。京都ってなんか知的な響きやしなあ』
『毎日今日みたいに飲み会できそうやし』
『飲むことばっかり考えてるよな、けいとは。さっきも飛ばし過ぎやって。かわちもひいとったで』
『そうかなあ、やっぱり。だって、男前がいてるとうれしいやん。あ、聞いてえや、かわちくんと遊びに行く約束したで』
『どうせ無理に承知させたんやろ。かわちも気い弱いしな。彼女おるから無駄やって言うてんのに』
いかがでしょうか?どうやら関西の大学生の男女二人 -
購入済み
読むのに気力のいる本だった
息子が中学にあがり、性教育を考えると男性視点の情報では難しいと思う事が多々ある
SNSでこの本のことが流れてきて書評を見た時、長男の女性に対する理解に何かしら寄与するかと思い、つい反射的に購入した。
男より女性の生き方はある意味で難しいが、性を持ち出すと安易に楽な選択を選ぶこともできる。
でも、それを選ぶと多くの場合、後でツケがまわる。だから、安売りするな、という言葉を親の世代は言う。
でも、若い世代が持て余す感情は大人の説教なんて聞き入れない。で、大人になって、同じように若い世代に言う。
そこに使える武器があってもそれを使わないって難しいこと。男が腕力で相手を従わせる選択をなかなか選べない -
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2020年3月から始まり2022年2月までの物語。ちょうどコロナ禍の話。
タイトルはポーランドの詩人の「終わりと始まり」という詩集からきているらしい。
1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災の頃を回想しつつ、コロナ禍の現在を生きている主人公は3人。
3人共ある意味普通の人達なので、自分自身と比較しやすい。震災の時に募金はしたけれど、ボランティアには行かなかった事の罪悪感とか、どんな時でも「自分よりも大変な人がいる」と思ってしまう感覚。
災害が起こると感じる、「安全な場所で『情報』を見ている」という言葉が一番刺さったかも。
『戦争が終わるたびに
誰かが後片付けをしなけれなばな -
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⚫︎感想
一件家、アパート、空き家、庭など、さまざまな種類の住まいを通して、1人の人間が生きるとは?に思いを馳せることができた。生活をする中で、一つ一つの出来事は些細なんだけれども、その些細なことの積み重ねで生活ができあがる。その些細なことのなかには、偶然がもたらす人間関係だったり、自分ではコントロールできないものがあったりする。
諸行無常を思わせる作品だった。語りは優しいが、ドキっとすることも起きたりで、一気に読めた。好きなタイプのお話だった。
⚫︎あらすじ(本概要)
東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示してい -
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ネタバレ・単行本では33。文庫で1増補。文庫解説=深緑野分
・公式HPが充実。後藤正文による書評「百年後の誰かも読む本」。作者と柴田元幸の対談「響きあう時間と場所と誰かの記憶」。
・読みながら思った……ある場所で、時間が流れる、何事の不思議なけれど。で検索してみたら、北原白秋「薔薇二曲」だった。〈一//薔薇ノ木ニ/薔薇ノ花サク。//ナニゴトノ不思議ナケレド。//二//薔薇ノ花。/ナニゴトノ不思議ナケレド。/照リ極マレバ木ヨリコボルル。/光コボルル。〉
・あるいは各話の章題から、飯田茂実「一文物語集」を少し連想した。といって「一文物語集」はそれ自体で完結しているので、拡大すればこうなるというものでもない