柴崎友香のレビュー一覧
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いろんな人の性への考え方があって、理解できるものもあれば出来ないものもあった。
自分の性に対する考えをもっと整理したいと思った。
藤野可織さんの話は首がもげるほど共感できた。
特に共感した部分。
「私は自分が子どもを望んでいるのかどうかわからなかった。いくら考えてもわからなかった。私は体力がなくて、だいたい無気力で、まともな生活もできず、一般の人よりも劣っていると言う感覚があった。子供なんて産んでしまったら責任のある決定をたくさんしなければいけなくて大変だし面倒だし疲れるだろうと思った。」
「私は、自分をコントロールできるということに振り回されていた。当たり前でありながら得難い素晴らしい権利に気持ちをぐちゃぐちゃにされ、一瞬ごとに子供がいてもいいと思ったりいたら終わりだと思ったりしていた。自分が情けなかった。」 -
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ネタバレ友だちから「いつも仕事が楽しそう」と言われたことがある。いや、確かに自分にあった仕事に出会えたことは恵まれているとは思うけれど、いいことばかりじゃないし、いやなこともあるし、つまらないこともあるし、毎日「仕事やだー!」ってのたうち回りたい気分だし、そのなかで、「これは楽しい」を自分でどうにか見つけて、楽しんでいるだけだが?……とは返せなかった。
そういった友だちは友だちで、自分の選んだ仕事と、積み重ねてきたもの(こなかったもの)に大いに思うところがあるだろうというのは、重々分かっていた。
気の合う友人でもこういうことはある。
ただ近くに住んでいるだけの隣人なら余計だろう。
昔は、東京は誰とも他人で入れるのがいい、みたいなことを真に受けて、ほざいていた時代もあるけれども、年齢を重ねるにつれて、いざというときのネットワークとしての近所づきたいというものの大切さに気付くようになる。
面倒でもやらなきゃいけない。
そして、どうも価値観が違うよなと思う人たちも、それぞれが積み重ねてきたもの、こなかったもの、選んだもの、選べなかったものがあって、そのうえでの今がある。
年代の違う3人の交流は、日常的で、ときにざっくりと(おそらく互いに)傷を作りながらも、それでもあえてそれ以上踏み込まないことで、日常に回帰していく。
それもまた、互いの関係性を維持するやり方の一つ。
ゆかりさんの年を重ねたからこその、落ち着きみたいなものと、あの年代だからこその踏み込みすぎた感じ、逆に沙希からあふれでる若さ(時に図々しさ、遠慮のなさにもなる)に、うへぇとなりつつも、まぁ、それなりの距離をとっていければいいんじゃない?と思えるのも、40代後半になった今だからの感想かもしれない。
(多分20代とか、30代前半で読んでたら、もっとイラっとしていたんじゃないか)
最後に、結構前だったけれど、おじいちゃん役をよくしていた俳優さんがバラエティに出ていて、「もうすぐ70歳、70代なんて人生で初めて経験するから楽しみで」と、本当に心底楽しそうに言っていたのが印象的で(名演技だっただけかもしれないけれども)、以来私も年を重ねることを楽しめるように意識している。
それだけでも、人生や日常が少しは変わると思う。 -
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よくわかんなかった。
でも、それでもいい、それがいい。と思えるような話だった。
タイトル通り、なんでかわかんないけど帰れなくなった探偵の十年先の話。
十年先の話をしてるのもよく分かんないけど、
そこを気にしてたら話が進まないから、スルーして読み進めていく。
そんな感じのがいっぱい。
たいして事件は大して起こらないし、解決もしない。
食べ物が美味しそうだった。
あと、どの町も雰囲気が不思議。
帰れない、を気にしてたけど、最早そこは帰る場所ではなくなっているのでは・・・と読みながらずっと思ってた。
主人公はいろんな所に転々としていて、
それっぽい国が出てくるけど国名は出てこないから、
ここはどこカナーを予想しながら読むのも楽しかった。 -
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ネタバレ個々の記述は詳細で具体的だが、非常に抽象的。ブコウスキーの“セリーヌ”に「退屈がゲイジュツだと思ってやがる」と言われそうな内容。目線は散漫で意識は分散し、刻々変化する形の無い実体は捕まえられない。時折、形になる時もあるが。
2章まで理解不能だったが、3,4章からわりと面白くなってはくる。絶望、苦悩、愛憎、復讐などは表面的には描かれず、主人公も独白キャラではなく、あまり感情を露にしないので、その手のドロドロしたキツさがなく、一種の軽さがある。
しかし、雰囲気頼みの架空の旅行記かと思えば、かなり政治的でジャーナリズム的側面があり、著者は「わたし」を通して世界を説明しているようだ。トランプやパランティアの所業を予見しているのは鋭い。
なぜかオフィスが消失するという設定で始まり、故郷は鎖国して、主人公は二重に帰るべき場所のない喪失感を抱えつつ、地道に仕事をこなし続けグローバルに漂流する。
作中では不気味な怪事件、様々な文化圏の暮らしが登場し、背景には政治の動乱、不安定な社会、強い影響力を持つグローバル大企業の台頭などがあり、探偵業を通じてその末端に関わることになるが、半ば旅行者のように、その中心からは外れた周縁を歩く。しかし密かに革命の夢を見ている。
帰れない場所、無くなった場所、二度と会えない人、記憶にある風景ない風景。これこそハン・ガンの言う「白いもの」だ。
絆、繋がり、土地に頼らない生き方は歴史に依存していないといえる。それは実体なき不安定な影なのか。
「わたし」は探偵の仕事を通して良くも悪くも他人の人生の通行人となった時、一瞬歴史と交差する。そして歌が、音楽があり、その瞬間の場所、景色の中に居る私こそが100%存在保証された私である。
……などと思ってたら最後のオチで、白紙に戻された気分になった。
一体なんの話だったのか。やっぱりわからない。主人公は歴史の一部になりたいようだ。それは自意識的革命なのか社会的革命なのか。はたまた「フェス」なのか?感想も帰宅不能になってしまった。物語は不安定だ。 -
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私には難しく、少し読みづらい本だった。自分の感性不足、読みの力不足で書かれていることを捉えきれていないのではないかという気がする。
主人公の内向的で自信無さげな様子、すぐにとりあえず「すみません」と言ってことなきを得ようとしてしまう心性に自分の嫌な部分が重なるようで読み辛いという面もあったし、時代性ということもあると思う。
本文中では主人公の祖父の経験に絡めて、戦後65年、ということが何度か言われた。震災や戦争、世界の紛争などにも触れて、時間と空間の偶然性と接続性みたいなものが描かれているようにも思った。
ただ、やはり一つの戦争が終わって、一方世界の遠いところで続く戦争、という時間と空間の遠さ、そこにどう繋がるのか、という本書が書かれたときの時代の感性と今の感覚があまりに違っているのが、うまく消化できなかった理由であるような気もする。
世界の不安定さがすぐそこまで迫ってきて、戦争が近づいている不安感が実感としてある。10年前に比べるとずっと身近に。
小説というのはその時代の雰囲気が保存されているものなのだな、という感触を得た読書ではあった。
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同じ1日を繰り返すループに入った時、同じ出来事でも視点によって見え方が全く違うのが印象的。人によって物事の捉え方が違うのもこういうことなのかなと思う。
そしてループしたとしても行動は変えられない、やり直したいと思っていてもどうしようもできない様が描かれている場面が、現実でも1日1日が同じ繰返しのように感じるけど、後から変えることはできないものであって、一瞬一瞬を後悔しないように行動していく必要があるんだと考えさせられる。
主人公が、気の利いた会話ができればいいのにと心の中で思っている描写が何度も出てくるが、私にそっくりと思った。あのときこう言えればよかった、って後から考えても確かにやり直しはきかないんだよな。
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「今から十年くらいあとの話。」で始まる連作短編。
近未来SF探偵小説かな、と思うと、それほどかっちりとした手触りではなく、どこかふわふわとした夢の中のような印象である。カフカのような不条理の世界のようでもある。
主人公は女性探偵。とある国の出身だが、その国は探偵の出国後、統治体制が変わってしまい、容易に訪れることができないようになっている。
探偵は、故郷から離れた国で探偵学校を卒業後、世界探偵委員会連盟から世界各地に派遣されている。第1話では、とある町に事務所を構えたのだが、どういうわけかそこに通じる小道がなくなってしまい、帰れずにいる。仕方がなく、依頼主から宿を提供してもらい、なんとかしのいでいる。
その後、また別の国にも派遣されるが、どこも定住先ではなく、各地を転々と漂うような日々を送る。
探偵なので、依頼される事件もあり、解明すべき謎もあるのだが、犯人が誰で、事件の顛末はこうで、といった、しっかりした枠組みは感じられない。連盟に指示されて調査に携わるものの、探偵自身、何のために調査をしているのかわからないような事件もある。
世界を支配するような巨大企業の影もあり、ある種の近未来ディストピアものといってもよいのかもしれない。
茫漠とした世界の中で、探偵が彷徨う。
しかし、意外にこの雰囲気が心地よかったりもする。少々不思議な読み心地である。
登場人物たちはすべて仮名である。
1・2編目は漢数字の入った苗字、3編目はおそらくカルト的人気のドラマシリーズの登場人物(「双子山」が出てくるところからもそうだと思うのだが)の名、4編目は惑星を連想させる苗字、5編目は色名が入った苗字、6編目は植物の名、7編目は番号(これは仮名というより探偵の登録番号だが)が充てられている。
「スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット(黒人霊歌)」、「Tomorrow Never Knows(The Beatles)」、「終わらない歌(THE BLUE HEARTS)」など、具体的な曲名が出てくる場合もあるが、そうでなくてもどの小編のバックにも音楽が鳴り響いているようでもある。そしてその音楽は多分、戦う歌である。いや、歌を歌うということが、戦うこと、生きることなのかもしれない。
さて、「帰れない」探偵の「帰るべき」場所はどこなのか。
探偵は果たしてそこに帰りつけるのだろうか。
幕切れは希望に向かって走り去るようでもある。ロックを鳴り響かせながら。 -
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出版区の綿矢りささん回で知った小説。
上手くまとめられないけど、これからも大切にしていきたい本だと思った。
主人公は世界探偵委員会連盟という組織に縁のある探偵で、急な坂の街に自身の自宅兼探偵事務所を構えた数日後、その事務所へ続く路地が無くなってしまった。街そのものが生き物のように変化しているのかもしれないが確証はない。彼女(たぶん)は自分の元に舞い込む依頼をこなしつつ部屋を探すが見つからない。彼女の故郷の国は出国した後に体制が変わってしまい、帰ると仕事に支障が出る可能性があり簡単には帰れない。そのうち連盟の指示や先輩からの依頼のために彼女は別の国に行く。
各章の書き出しは統一されている。「今から十年くらいあとの話。」この文は各章の終わりにも登場する。帰れないことも含めて、自身が経験する様々な物事は本当に思ってもみなかったことなのだろう。
故郷へは「帰る」以外を捨てれば帰れるのかもしれない。しかし帰ったとて、自身がいた頃と大きく変化した環境に戸惑う可能性が高く、今の生活に大きな不満はなく、今日も明日も生活して生きていかねばならないので彼女はそうしない。仕事のために国々を転々としながら「帰れない場所」や親しかった人たちについて事あるごとに思い出す。激しい熱量はないが、ずっとずっと想っているその姿はすごくリアルに思えた。登場する国はなんとなくどこをモデルにしてるかが浮かんでくるし、あらゆる情報を集めて別の企業や政府に売ってそうな企業が出てきたり、連盟もどこか信用しきれない雰囲気があるなど、現実世界や社会とリンクする箇所が多々あった。
故郷にも部屋にも帰れず、自身を取り巻く世界には不穏な影もあるがお話は暗くなくて、なんなら希望みたいな明るく光るものも感じた。
帰れないというのは場所に対してかと思っていたが、知っている景色・空気・人など全てをひっくるめた"帰りたい場所"なのだと思った。時間は流れ、あらゆるものはどうしても変化してしまう。そこに留まっていれば気づかなかったであろう変化は遠く離れるほど大きな差に、なんなら全くの別物のように見えるかもしれない。変化する前のその場所にはどうやったって帰れない。なんてことを読みながら考えていた。