柴崎友香のレビュー一覧
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タイトルにもある帰れない探偵。上層部の司令に従って住処や仕事場を世界中に転々と移していく探偵は、移り住んだある場所で自分の住居が“消えて”戻れなくなる。道を間違えたのか、本当に消えたのかはわからないが、これは本作に通底している人の記憶や視覚、聴覚の曖昧さを表しているものだと思う。
例えば、ある曲を聞いて、その瞬間に脳が反応して世界観が変わり、世界が変わって見えることがある。曲が終わった後の世界は元に戻ったようにも見えるが、実際の世界は変わっていない。ただし、曲の前後でその人の脳と目を通して見える(聴こえる)世界はたしかに変わっている。
これを一概に良い悪いと言うことは難しく、その都度異なるとは -
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主人公は探偵ではあるが、殺人事件の謎を解き明かしたり、難事件を苦労しつつ解決に導いたりしない。どちらかと言うと観察者に近い。
物語は激動の10年を語っている。日本のような国が出てきたと思えば明らかにそれとわかる海外の国が出てくる。その中を主人公は飛び回るでもなく、じっと見ている。
探偵は周囲をよく見ながら深く思考の中に潜り込むタイプなのだろう。探偵の思考を読み取っていくのだから中盤以降は展開に起伏がほしかった。
終盤は首を傾げた。色々な事が変わって探偵も変わったのだろうが、突然ポンとこれを出されても、という気持ちになった。柴崎友香だから分かってはいたが、もっと変化を見せて欲しかった。 -
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帰れない"探偵"の自分"探し"。
自分を消して奔走する探偵が、忘れものを見つける話。
この小説には不思議な「浮遊感」があります。大半の人が感じるはず。短編集のような構成、定住地がないところ、依頼者や同僚の探偵たちと色々な出会いがありながらも次の章では別の国に飛んで縁が切れるところ、主人公ふくめ登場人物の人となりを必要以上に描いていないところ……このあたりに「掴みどころのなさ」「落ち着きのなさ」みたいな浮遊感があるのかもしれません。
ただひとつ気になったのは、全体を通して「固有名詞」が異様に少ないところ。登場人物の本名、訪れる国名、各国の地名等々はみな -
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人名や地名などの情報をほとんどそぎ落とし、男、娘、小説家、港町などの抽象的な言葉でつづられる短編集である。そうした仕掛けにより物語のなかの時間軸についても「いま」がいつなのか読者にわかりにくくされているので、わずか数ページの掌編のなかで思わぬほど時間が過ぎ去ることもあり、この軽い驚きが『百年と一日』という表題に象徴されているように感じた。それだけの長い時間のなかでは人が死んで生まれ、建物はつぶされて更地になりまた新しく建て替わる。時には確固としていたはずの記憶さえ危うく揺らぐ(たとえば学生時代の事故の話のように)のだが、そうした変わるものや、すれ違いのなかにある変わらない風景なり、人の思いなり
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あなたのマイルールは?っていう質問が出演者にたいして投げかけられるのだけど、これが面白い。とても一般的なことを答える方もいれば、え?それってどういうこと?と答えるような内容もある。ただ、どの回答も、よくよく話を聞くと、なるほどそうか。と思う内容で、上っ面でなくきちんと腹に落としたマイルールがあることがすごいなと。
こうしたルールは最初からあるのではなくて、インタビューや内省の過程で形作られているんだろうけれど、きっと作家さんというのはそういう過程をごく自然なこととして普段からされているんだろうな感じたし、その過程と表出した事柄が、私の関心ごとなんだな。って気づけた。 -
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北川春子、39歳未婚。
実家を出て10年。
今は大家さんの敷地内にある離れで、静かに暮らしている。
会社勤めをしながら、刺繍や消しゴム版画を楽しむ日々。
春子自身は穏やかに暮らしているのだけれど、両親や友だち、同僚からの
「まだ結婚しないの?」という軽いプレッシャー。
そして、自分らしくありたい気持ちとの間で、どこか揺れている。
元々の大家さんだったおばあちゃんが亡くなり、代わりに娘のゆかりさんが越してきてから、春子の静かな生活は少しずつ賑やかになっていく。
結婚や恋愛にあまり興味のない春子。
家族と疎遠なゆかりさん。
そして、若いけれど結婚という形に強くこだわる沙希ちゃん。
春子の視 -