柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
柴崎友香さん初読でしたが、目次で驚き! 34編もの掌篇、さらに、あらすじのような長いタイトル…実に風変わりな印象です。読みながら、時間の流れを意識せざるを得ませんでした。
とてもレビューを書くことが難しいです。大雑把な言い方だと、大きな時間軸の流れの中で、様々な土地でいろいろな人の営みの一コマを切り取った映像を観ている感覚に似ています。「土の人」「風の人」がいるから、廃れるもの、新たにできるもの、受け継がれるものがありますね。
些細な日常、そこに生きる普通の市井の人の一コマを、過去や今の自分とも重ね、知らず知らずに想像を膨らませます。それだけの余白こそが、著者のねらいだったのかもしれません。百年という時間を把握しやすい年配者ほど、思うところがある気がしました。
「百年」を365mとすると、「一日」は1cm。長い線のほんの一点ですね。谷川俊太郎少年は、かつて宇宙の直径を二十億光年(今では九百億光年?)と書きました。そう考えると百年もちっぽけですね。「諸行無常」の世界観に相通じるかもしれません。
著者が『百年と一日』と並列させているように、今を生きる私たちには、今日の一日は百年に匹敵する価値が絶対にある気がします。過去から続く今、未来へ続く今を、時間は見えないからこそ意識し、大切にしたいと思える作品でした。 -
Posted by ブクログ
エッセイみたいに特別何かが起きる訳ではない。戦争ドキュメンタリーを観て何故私が生き残っているんだろうと思い続けながら、そこが話の本流になる訳でもない。
東京の「わたし」と、京橋の葛井夏の視点の話が繰り返される。
わたしのぐるぐる一人思考は共感出来て静かに読めるけど、、で続く風景描写と話の抑揚のなさに何度か眠る…
裏表紙の「世界の希望に到達する傑作」はいくらなんでも言い過ぎだと思うが、最後の夕日の棚田の景色を夏が見てこれが幸せだ、と思うことを指しているのだろうか? もっと平和に関することだと思った。
「これで、これで」の今ここで飛び降りれてしまう、と考えちゃうの分かる。 -
Posted by ブクログ
最初は遠い存在の3人が、どんどん近しい存在になっていく。
背が低くてかわいいねと言われることに対して、
「自分より背の高い女は嫌い」と思っている男に「かわいい」と言われることが悔しいという石原優子。
自分が傷ついたと思っていた過去を辿ると、相手を傷つけ怖がらせていたという反転した現実に向き合うことになる小坂圭太郎。
4年間付き合った人は、過去を話したがらない人だったけど、それは自分が悪いとわからないから説明できないだけなのかもと、友人との思い出話で気づく柳本れい。
10年前のある時間に同じ場所にいた3人。少しだけ「かすった」3人が、それぞれの場所でそれぞれの人生を生きてきた。
ただそれだけの、その断片を映し出した小説。
私たちも同じようにそれぞれの人生を生きているのだよねと、「無数の3人」のうちの1人として思う。
こういう描き方もあるんだね。 -
Posted by ブクログ
アパートの契約更新に伴い、知り合いの木村家の空いた一部屋に移ることにした田中真紀子。増改築を繰り返された木村家の、不思議な二階に引っ越してみると、木村家は木村イチロー以外、常時薄着で建築業の父、イラストレーターの姉、映画監督を目指す妹、そして現役女優のみすずと、予想外に個性的な人たちの集まりであった。どことなくお互いよそよそしい家族と、自由奔放で頻繁に家を空けるみすず。真紀子を介してか介せずか、家族が少しずつ動いていく。
うーん、不思議な感覚の小説。のっけから妙に読みにくい部分があると思ったら、芥川賞作家なのね。わざとなのかわざとでないのかわからぬが、「なになにが何々をして、なになには何々で、なになには・・・」といった具合に、半ページ以上が一つの文になっていて何なんだ?と思ったと思えば、会話でどんどん進む部分がある。
また、突然イチローには、ある1日を2回繰り返す能力があるであるとか、姉の文にはワープする能力があるとか、ほんとかどうかよくわからない話も出てくる。まあそこも話のキーになっていくわけであるが。
木村家のあっけらかんとした、一方で他人のような家族はドライでよい。しかし、なかなか語られない田中家については、なにか闇があるのだろうなあと引っかかりながらストーリーを進めることになる。
序盤では文章が長すぎて読みづらく、なかなかページがめくれないが、あるところからぐんぐん読み進められるようになったのは、慣れなのかそういう文章なのか不明。
それぞれのキャラクターや立ち位置、関係性が、希薄であってもわかりやすい部分があるため、ある意味純文学的な、例えばオカヤイヅミの漫画のような感じで、「理由がわからなかった」となる人はほとんどいないだろう。漫画化しても面白いかもしれない。
ただねえ、映画教室は登場当初からなんか嫌な感じではありましたね。こういうコミュニティは苦手だなと。