【感想・ネタバレ】かわうそ堀怪談見習いのレビュー

あらすじ

わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説をかくのをやめようと思った。
恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。これからなにを書こうか。


環境を変えるため、三年住んだ東京を離れ、中学時代に住んでいた区の隣り、かわうそ堀に引っ越した。
そして、考えた末に怪談を書くことにした。そう決めたものの、
わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。
取材が必要だ、と思い立ち、たまみに連絡をとった。

中学時代の同級生・たまみは、人魂を見たことがあるらしいし、怖い体験をよく話していた。
たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。

行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、
こっちに向かってきているはずなのにいっこうに近くならない真っ黒な人影、留守番電話に残された声……。

そして、たまみの紹介で幽霊が出るとの噂がある、戦前から続く茶舗を訪れる。
年季の入った店内で、熊に似た四代目店主に話を聞くと、
絶対に開けてはいけないという茶筒、手形や顔が浮かぶ古い地図があるという。
そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。

わたしの日常は、いつからこんなふうになっていたのだろう。
別の世界の隙間に入り込んでしまったような。

柴崎友香が、「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談作品。

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Posted by ブクログ

確かにそれは怖い、怖さとはこういうことだと何回かぞくりとしました。怪談は日常の中に偏在していそうです。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

幻想小説は好きだが、怪談には手を出さずにきた(たとえば平山夢明の小説は好きだが、彼の実話怪談ものには手を出していない)。
そうして読んだ本作。
筆のすさびに怪談専門誌「冥 Mei」に書いたんだろうなと少し侮っていたが、いやいや、怖い怖いマジで。
ただしおそらく実話怪談的な怖さではない。
柴崎友香がずっと書き続けてきた、記憶の不思議さ、忘却と抑圧、目の前にいない人が気になるとはどういうことか、といった事柄が、すべていちいち怪談と親和性が高いのだろう。
というか認知の曖昧さと記憶の不確かさはそのまま怪談。
語り手の体験を細切れに書くが、その感覚した事柄ひとつひとつが、認知や記憶のフィルターを通すと、もう怪談にしか見えない。ここが実話怪談との違い。
そのわかりやすい例が、入眠時幻覚すれすれの恐怖体験だ。
もはやこの作品が書かれてしまった以上、柴崎友香の過去の作品未来の作品すべてが怪談に転じ得る。
語り手≒視点人物の世界認識と文体は関連しているが、やはり柴崎友香文体が怖いのであって(奇想の藤野可織や松田青子とは路線がちょい違う。記憶や人称という点では似ているのは滝口悠生や奥泉光か)、きっとこの流れで実話怪談に手を出しても怖がれるわけではなかろう。
そういう意味では筆のすさびでは全然ない、極めて構築的な小説を読んだわけだ。
終盤に明かされるのは、柴崎友香なりのミステリでもあるし、文体の伽藍こそが怖さを生み出すのだ、とも言える。
柴崎友香の「語り手のやばさ」はなかなか言語化しづらいのだけれど、この作品はその極北。

連想。黒沢清「回路」。というか全作品。曖昧さという点で、世界の見方や感じ方が似ているのではないだろうか。
また、テレビとマンションの一室という点では、村上春樹「アフターダーク」、その流れでデヴィッド・リンチも、具体的に言えないが「テレビ的」。

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2020年05月20日

Posted by ブクログ

最後の話について。
「なにか空白があるというか、そこにないもの、見えないものの気配を感じてしまいます。ほんとうは知っているはずなのに、気づかないふりをしているような、気になるところがあるんです。」
それだなぁと思った。柴崎友香作品の凄みってたぶんそういうところやし、ワタシが好きなほかの作家の作品も好きなのはそういうところやなって。
好きやから全部知りたいけど、全部書いてあったらつまんない。想像したい。読むだけじゃ足りない。そういうのが楽しい。大好き、ということを思ったりした。

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2020年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

注:内容にちょっとだけ触れています。

自分は、ホラーや怪談が大好きなバカな人だ(^^ゞ
だから、ホラーや怪談の出来にはやたらうるさいw

ホラーや怪談が好きな人って、世間的には「バカな人」として一緒くたにされがちだけど、実はホラーや怪談が好きな人が好むそれらというのは個々の人で大きく違う。
ホラー好きと怪談好きでは、“怖さ”のテイスト好みが全然違うことが多いし。
ホラー好きの人、あるいは怪談好きの人が「コレいいよ」とススメてくれた小説や映画が、他人には全然ダメということも普通だ。
個々のホラー好き・怪談好き、それぞれが好むテイストというのはもの凄く狭い範囲で、かつそれぞれの人で全然違うのだ。

何を言いたいかと言うと、この小説にはタイトルに「怪談」とついているが、竹書房から出ているような「実話怪談」本が好きな人は読まない方がいいということ(^^ゞ
『かわうそ堀怪談見習い』は間違いなく怪談の本だけど、いわゆる「実話怪談」のような怪談オタクのツボ押しまくりな、すんごぉ〜く怖い話はないw
そもそも、タイトルに「呪」、「忌」、「禍」、「凶」、「憑」…みたいな、おどろおどろしい文字がない(爆)
それどころか、『かわうそ堀』みたいに、どこか素っ惚けた文字が並んでいたり。
そもそも、『見習い』だw
その『見習い』も、独り語りの主人公(著者?)が、自分の肩書に「恋愛小説家」とあったのを見て違和感を覚え、“わたしは、怪談を書くことにした。”って言うんだから、その辺は察するべきだろう(^^)/


じゃぁ、この本を読んで怖さを感じないかと言うと、そんなこともない。
いや、一つ一つのお話に怖さはない。
それこそ、竹書房の「実話怪談」本が好きな人なら、怪異の部分に気づかないで読み終えちゃう話ばかりなんじゃないか?wってくらいだ。

ただ、ずーっと読んでいると、何かの拍子に、ふと、その情景が浮かぶ。
その、“そこはかとない怖さ”が悪くないのだ。
「あぁー、怖いかも…」みたいな怖さっていったらいいのかな?
本を読んでいて、そこに描かれた情景がふわぁーっと頭に思い浮かぶことで、怖さがじんわり滲んでくる。
つまり、「怪談」というよりは「小説」だし。
そもそも、著者もそういうのを目指したような気がする。
実は、「二十.地図」にある、“折ってある地図の隙間から……”のところは、見たそれが浮かんじゃって、ミョーにゾクリときた(^_^;)

★を一つ減らしたのは、「十九.影踏み」がそういうテイストからビミョーに外れちゃっているように感じたから。
自分は、怪異というのはあくまで現象であって、それには意思はないと思う方だ。
だから、「十九.影踏み」の怪異は、この本の中で違和感がある。
「二十三.幽霊マンション」もテイストが微妙にズレているお話なんだけど、ただ、これはあくまで「小説」なので。
一種の「小説」としてのお決まりとしてのお話という風に見るなら、これはキレイに収まっているような気がした。


自分の肩書に「恋愛小説家」とあったのを見て違和感を覚え怪談を書くことにしたという著者だが、その後は怪談を書いていないようだ。
惜しいなぁー。
どれこれも金太郎飴な実話怪談を書く人なら掃いて捨てるほどいるけどw、こういうテイストの怪談を書ける人はなかなかいないのに。

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2025年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

恋愛小説家という肩書きをやめたくて
怪談話を書こうとする主人公

自分は幽霊を見たことがないから
わりと霊感のある友人や知人などに話を聞いて
怪談話を書こうという内容なのに

1番主人公が幽霊というかこの世じゃないものと近い。それがなんてことないような話の終わりに
ポロッと書いたりするからすごく怖い

最初から怖い話という雰囲気で始まるのではなく
一見日常を書いてそうなのに
その日常や出てくる人たち街がおかしい。

つぎの話の移り変わりにはでもその話は
主人公にとってなんでもない風になってるのも怖い。


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2023年03月17日

Posted by ブクログ

不思議なタイトルに惹かれた。
恋愛小説家という肩書きに違和感を覚えた「わたし」が、怪談を書こうと思い立ち、東京を離れて「かわうそ堀」という名前の街に引っ越してくるところから、この小説は始まる。
だから、「かわうそ堀怪談見習い」。
「わたし」は怪談を書くために中学の同級生に取材を始めるが、それから奇妙な出来事に遭遇するようになる。

ゼロ「窓」から始まり、マイナス一「怪談」を経て二七の「鏡の中」まで、29の断章からなる。
小説全体を貫くのは「わたし」の記憶にまつわる謎で、やがてその謎は深まり、ほぐされていく。その過程で、断章のひとつひとつが、派手さはないけど不穏な手触りを「わたし」と読者に残していく。

「わたし」は自らのことを「感情が上がったり下がったりすることが、基本的に苦手だ」というふうに説明する。
そんな性格のためか、奇妙な出来事に遭遇しても、「わたし」はどこか淡々としているように見える。出来事を確かに認知はしているはずだけど、その恐怖に対する姿勢、というか構え方というものが、読者の想像しているものとどこか違っている気がしてくる。

たとえばホラー映画であれば、怪異に遭遇する視点人物はだいたい悲鳴を上げる。そうでなくとも恐れおののく。その時観客は、視点人物と同じように悲鳴を上げながらも、同時にどこかで安心しているところがあるのではないか。自分と同じように怖がってくれる人物がいる。しかもその人物は、スクリーンのこちら側ではなく向こう側、つまり怪異と同じ位相にいる。その人物が怪異のすぐそばで悲鳴を上げてくれるから、スクリーンのこちら側にいる自分は、その人物の後から悲鳴を上げればよい。言うなれば、怪異と自分のあいだに少しの隙間ができる。

ところがこの小説では、視点人物にあたる「わたし」は、怪異と同じ位相にいるはずなのに、悲鳴を上げない。怪異と読者とのあいだに、隙間を作ってはくれない。だからこの小説の怪異は、ページのこちら側にいる読者に向かって手を伸ばし、そっと、しかし直接、肌に触れてくるのだ。

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2022年02月22日

Posted by ブクログ

断片的に綴られていく、ホラー 小説。
幽霊など見たことのない作者が怪談を書くために取材を始めるが、徐々に自分自身も奇妙な体験あるいは違和感を感じる。

作者本人は自分はそういうものと無縁と思っているが、友人からそれは嘘だと言われる。
実際に奇妙な体験をしてもそれを見ないようにしているかのような振る舞いが、いかにも現実感というか、肌感覚で恐怖を少しずつ、ひしひしと感じる。実際に見たら自分もそんな風に受け流そうとしそうだ。

穏やかな描写のようでいて、気がつくと怖さが心に侵食してくる、都市伝説系の怪談では得られない強風感覚のできる一冊。

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2021年03月25日

Posted by ブクログ

☆3.4

ふっと突然に日常が今までと地続きに思えなくなる瞬間が訪れそうで、この暑い中でも寒くなれる。
自分を見失わないようにここに帰ってこなければ、と思ってしまった。

ほんのりじわじわと怖い話だった。
例えば普通の道を普段通りに歩いていたのに、ちょっと瞬きした間に何かが変わってしまったような。
ほとんど同じなのに決定的にさっきまでとは何かが変わってしまったことだけはわかる。
どうしようもない怖さ。
そんなものがずっと背中にはりついている。

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2023年08月19日

Posted by ブクログ


わたしのこと、見てるんです。

恋愛小説家から転身し、怪談見習いへ。住む環境も変えるも、幽霊は見えないし怪奇現象にも遭遇しない。しかし中学時代の同級生に会ったことをきっかけに日常が歪み始める。
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タイトルが気になって購入。不思議な雰囲気の小説だった。まるで実体験みたいな。怖い話って興味ありつつ、でも怖すぎると逃げたくなるから微妙なラインだけどこの作品はじーっと読めた。解説を読んで理解した所もあったが、短編ごとに話も進むから多少分からなくてもこういうこと言いたかったのか?と思いながら進んだ。
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心霊を見てしまったではなく、
心霊から見られてる
って感覚が新しいな。
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2021年10月27日

Posted by ブクログ

あやかし物かと思ったら、怪談集だった。作家が怪談を集めている設定なのに実はこの作家も奇妙な世界に生きてるという…。鏡に自分の後ろ姿が見えるって地味に怖い。

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2021年02月04日

Posted by ブクログ

恋愛小説家から怪談作家に転身した主人公の周りで起こる不思議な出来事や知人からの階段話を連作短編で
綴っている作品!
それぞれの話にすごく怖い話とかインパクトは無いけど、
世にも奇妙な物語みたいな、ちょっと不思議な話でサクサク読めるので良かったです

次回作も期待です

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2020年03月22日

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