柴崎友香のレビュー一覧
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出版区の綿矢りささん回で知った小説。
上手くまとめられないけど、これからも大切にしていきたい本だと思った。
主人公は世界探偵委員会連盟という組織に縁のある探偵で、急な坂の街に自身の自宅兼探偵事務所を構えた数日後、その事務所へ続く路地が無くなってしまった。街そのものが生き物のように変化しているのかもしれないが確証はない。彼女(たぶん)は自分の元に舞い込む依頼をこなしつつ部屋を探すが見つからない。彼女の故郷の国は出国した後に体制が変わってしまい、帰ると仕事に支障が出る可能性があり簡単には帰れない。そのうち連盟の指示や先輩からの依頼のために彼女は別の国に行く。
各章の書き出しは統一されている。「今から十年くらいあとの話。」この文は各章の終わりにも登場する。帰れないことも含めて、自身が経験する様々な物事は本当に思ってもみなかったことなのだろう。
故郷へは「帰る」以外を捨てれば帰れるのかもしれない。しかし帰ったとて、自身がいた頃と大きく変化した環境に戸惑う可能性が高く、今の生活に大きな不満はなく、今日も明日も生活して生きていかねばならないので彼女はそうしない。仕事のために国々を転々としながら「帰れない場所」や親しかった人たちについて事あるごとに思い出す。激しい熱量はないが、ずっとずっと想っているその姿はすごくリアルに思えた。登場する国はなんとなくどこをモデルにしてるかが浮かんでくるし、あらゆる情報を集めて別の企業や政府に売ってそうな企業が出てきたり、連盟もどこか信用しきれない雰囲気があるなど、現実世界や社会とリンクする箇所が多々あった。
故郷にも部屋にも帰れず、自身を取り巻く世界には不穏な影もあるがお話は暗くなくて、なんなら希望みたいな明るく光るものも感じた。
帰れないというのは場所に対してかと思っていたが、知っている景色・空気・人など全てをひっくるめた"帰りたい場所"なのだと思った。時間は流れ、あらゆるものはどうしても変化してしまう。そこに留まっていれば気づかなかったであろう変化は遠く離れるほど大きな差に、なんなら全くの別物のように見えるかもしれない。変化する前のその場所にはどうやったって帰れない。なんてことを読みながら考えていた。 -
Posted by ブクログ
人名や地名などの情報をほとんどそぎ落とし、男、娘、小説家、港町などの抽象的な言葉でつづられる短編集である。そうした仕掛けにより物語のなかの時間軸についても「いま」がいつなのか読者にわかりにくくされているので、わずか数ページの掌編のなかで思わぬほど時間が過ぎ去ることもあり、この軽い驚きが『百年と一日』という表題に象徴されているように感じた。それだけの長い時間のなかでは人が死んで生まれ、建物はつぶされて更地になりまた新しく建て替わる。時には確固としていたはずの記憶さえ危うく揺らぐ(たとえば学生時代の事故の話のように)のだが、そうした変わるものや、すれ違いのなかにある変わらない風景なり、人の思いなりが空気として淡淡と漂うのがよい。
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あなたのマイルールは?っていう質問が出演者にたいして投げかけられるのだけど、これが面白い。とても一般的なことを答える方もいれば、え?それってどういうこと?と答えるような内容もある。ただ、どの回答も、よくよく話を聞くと、なるほどそうか。と思う内容で、上っ面でなくきちんと腹に落としたマイルールがあることがすごいなと。
こうしたルールは最初からあるのではなくて、インタビューや内省の過程で形作られているんだろうけれど、きっと作家さんというのはそういう過程をごく自然なこととして普段からされているんだろうな感じたし、その過程と表出した事柄が、私の関心ごとなんだな。って気づけた。 -
Posted by ブクログ
北川春子、39歳未婚。
実家を出て10年。
今は大家さんの敷地内にある離れで、静かに暮らしている。
会社勤めをしながら、刺繍や消しゴム版画を楽しむ日々。
春子自身は穏やかに暮らしているのだけれど、両親や友だち、同僚からの
「まだ結婚しないの?」という軽いプレッシャー。
そして、自分らしくありたい気持ちとの間で、どこか揺れている。
元々の大家さんだったおばあちゃんが亡くなり、代わりに娘のゆかりさんが越してきてから、春子の静かな生活は少しずつ賑やかになっていく。
結婚や恋愛にあまり興味のない春子。
家族と疎遠なゆかりさん。
そして、若いけれど結婚という形に強くこだわる沙希ちゃん。
春子の視点で綴られる日常は、作中で彼女自身がふと思う「一昔前のドラマみたい」という言葉に、すべて集約される気がする。
特別すごく面白いわけではない。
でも、なぜか見続けてしまう。
それぞれが少しずつ問題を抱えた、そんなヒューマンドラマ。
誰だって、私たちだって…
何もない人生を歩む人はいない。
見えないだけで、みんな何かを抱えて生きている。
折り合えないことや、分かり合えないこともある。
ときには折れて、ときには分かったふりをして「ま、いっか」「しかたないか」と生きていく。
それでも。
「未来が待ち遠しい」と思える今日でありたいなと思う。
今年の7冊目 -
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リレーエッセイ方式で17人の書き手が
『私の身体を生きる』という性をテーマに綴った作品。
想像していた感じと、かなり違っていた。
同じテーマでも書き手によって随分とみえる世界が変わるものだ。編集者から依頼された形で綴っているためか、何となく及び腰に感じる作品も少なくない。
女性しばりでリレーエッセイ集にした意味する所も、問いたいが、赤裸々告白をするものから、トラウマ的な内容を飄々と語ったものまで、多種多様・・・
トップバッターの島本理生さんの作品だけは、眠っていたような共感が呼び起こされる様な感覚があった。
恋愛ものがお得意な作家さんだけに、性の役割にも飄々と鋭い着眼点をお持ちだ。
色々な考え方や捉え方があるんだなぁと感じる一方、敢えて?競い合って?マイノリティ側に寄って描いている様に感じるものもあり、私にはあまり馴染まなかった。
性の話が公にはタブーとされていた時代を生きてきたからか、この歳になってそういう話ができる方が見つかると一気に距離が縮まる。
人によっては幾つになってもタブーなので、手探りと嗅覚?笑で探し当てる感覚に近い。
このテーマで男性バージョンもあったら読んでみたい。