柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大阪が舞台という事で前々から気になっていた作品。
著者と同世代で同じく大阪育ちなので、10代の主人公・解の目を通した大阪の街の当時の様子を懐かしく思い起こせました。
1本10ページ程度の短編集で、時間軸はバラバラ。
その構成が解の記憶のあやふやさを際立てていると思います。
唐突にリバー・フェニックスやマリリン・モンローが大阪の街に現れて、大阪弁で解と会話しているところあたりも、記憶というよりは空想なのかなと。
特にこれといって大きな事件が起こるわけでもなく、主人公も仲良く遊ぶ子はいるけどクラスでは孤立しがちで……といった、まあ平凡と言える人物なので、大阪という土地に愛着のない人には入っていきにくいかも。
個人的にはノスタルジーをたっぷり味わえて気持ち良く読めました。 -
Posted by ブクログ
最初、随筆かなぁと思った。
山田解の日常が飾られることもなく、ありありと綴られてゆく。彼女は、彼女自身のことに何故か距離があって、一大事な出来事ほど淡々と描き、ともすると誰にでもあることの目を具に描く。
この、淡々と感にしっくりハマればきっと好きになれるし、我慢出来ないとダメだと思う。
私は、「赤の赤」という話が、どハマりして、ぞくぞくして、息を呑んだ。
以下、ネタバレ含むので、注意。
「大学入試センター試験というのを受けるために来た。」
この一文が、先ほど挙げた解らしい淡々さだと思う。しかも、センター試験で。
倫理・政経を選択した彼女は、問題を開く。
そこには先生と生徒の問答が、会話文形式になっている問題がある。
そこで、生徒が問う。
先生、善く生きるとはどういうことですか?
解の目に「涙がにじんだ。」
そうして、その問いを復唱するというシーン。
多くの人にとって只事ではない試験の中で、解はそれそのものから離れて、自分というものに向き合ってしまう。
そんなん考えてる場合ちゃうやろ!と言ってしまえばその通りで、でも、彼女にとって出会うべくして出会った瞬間が、そこだった。
そのことの、ちぐはぐさが凄いな、とただ感動して、この話は私の中に残ったな、と思った。 -
Posted by ブクログ
行きたい気持ちさえあればいつでも好きなところへ行けるんだ、という明るい短編集。別れの予感がする遠距離恋愛の話が多いのだが暗さはまったくなく、読後は晴れ晴れとした気分になった。柴崎友香の中でも一番爽快さのある作品だと思う。
恋人に対して離れていく心、それから人生そのものを非常によく象徴している『やさしさ』の次の一節が印象に残っている。
「発車のベルが世界を分ける。ドアが閉まって、わたしたちは空気といっしょに運ばれる。移動していることを感じないまま。(85P)」
解説で「その小説以外のことをいろいろ考えてみたくなって、その小説を読んでいるのに、その小説のことを、つい忘れてしまう」から柴崎友香の小説は素晴らしいのだと言っていて、柴崎友香の作品の魅力を絶妙にうまく表現した説明だと思った。言われてみると私も、彼女の作品を読んでいたはずがいつのまにか自分の身の回りのことを回想していることが多い。彼女の作品には、平凡な生活を送っている私のような人でも、自分と自分の周りの世界を重ねられる懐の深さがある。 -
Posted by ブクログ
走馬灯。この小説をひと言で言い表すならこの単語が相応しい。視点は一人称、時系列はバラバラ、他者への感情移入はほぼ無し、10代の日記を思いつくままに並べたような小説だ。ティーンエイジャーならではの喜びや悲しみ、仲間と敵の区別、大人への畏れと蔑み、身近に存在しない者への親近感、摑みどころのない自分に対する不安、痛みを感じている自分への距離感…。子ども時代を走馬灯のように描くことで、主人公の少女そのものを描いている。自分という存在を振り返るとき、誰もが同じような記憶を呼び起こすのではないか。絵の具の12色の緑は、なんで緑でなくてビリジアンなんやろ、みたいな素直な記憶を。