あらすじ
高校の修学旅行の夜。鳴海くんとの間に感じた、恋とは違う、何か特別な感情……七年後、会社員になった有麻は、それを確かめるべく、東京に行くついでに、彼に会ってみようと思い立つ。はたして鳴海くんは、同じあの時間、何を感じていたのか?せつない一週間の東京観光を描くロングセラー!
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Posted by ブクログ
この感覚すごくわかる 年に1人とかのレベルじゃなくて今まで生きてきて2、3人、恋愛とか尊敬とは別のベクトルで惹かれ合うことがある あれなんなんだろ、自分だけじゃないって知れて嬉しい 相手もそう思ってるかもってなんとなく思ってたけど、本当にそうなのかもって思える
その感覚を丁寧に丁寧に考えて咀嚼したら自分なら恋愛に結びつけちゃいそうだから、やっぱり柴崎友香さんの感性がすごく好き
素敵なタイトル、読んでて気持ちよかった!
Posted by ブクログ
柴崎友香の女の子が主人公の話はだいたい友だちの話をきく感覚で読むけど、これはわたしだと思って読んでる。単行本でも数えてですけど、何度目かの再読。毎回そうそうって思う。
Posted by ブクログ
言葉にしなきゃ伝えられないのに、言葉にすると実感から離れていく。そのジレンマを乗り越えようと努力してもたいてい無駄に終わるのに、なんてことないきっかけで言葉を越えて分かり合っている瞬間がやってきたりする。この小説ではそのジレンマのもやもや感と感覚レベルで分かり合う瞬間の行来が自然に描かれていて、読んでいるととても安心した気持ちになる。感じていることが完全に一致しているわけではないのは分かっているけど、確かに気持ちを共有できている感覚があって、それでいいやと思える。気持ちが通じ合うときの言葉にできないその感覚が確かによみがえってきた。
主人公のものの見方・感じ方にも共感する部分が多くあった。街を眺めたり、ライブを聞いたり、友人の寝ている姿を見たりしながら彼女が巡らす素朴な思考は、たぶん誰でも覚えがあるのではないかと思う。主人公は精神的にあまり成熟していないのだが、そのことで焦っている様子はないのが私には眩しい。この小説には「あまりよく分からない」という趣旨の彼女の言葉が笑ってしまうくらい何回も出てくる。今は分からなくても、自分なりの視点を持って自分なりに考えることをやめない彼女の健気さに少し元気をもらった。大満足の一冊。
Posted by ブクログ
単行本で読んだけどまた読みたくなって。感覚が一緒ってことだよね。なんか分かり合えてるよねっていう関係。そういう人はいると思う。しょうちゃんの、やってみようとしたことをたまに本当にやってみたときに変われる(要約してます)っていう台詞が好き。
Posted by ブクログ
誰かに対するはっきりしない感情とか関係性ってあるよなあ、と思った。
自分だと上手く言い表せないいろんな微妙なことを柴崎さんが綺麗に言語化してくれて、読み進めながらずっとそれな、それな、と思った。
にしても結婚前なのに女の子と会いすぎでしょ鳴海くん。
Posted by ブクログ
何気ない日常の中での人々の心情描写がとても上手いと思った
多分この著者の作風なんだろうけど、特別これといった事件がある訳ではないから、推理モノや刑事モノが好きな人は物足りなさを感じる
Posted by ブクログ
大阪に住む有麻が東京を訪れた一週間。元同僚、大学のサークル友だち、接待で出会った外国人、そして高校のときの同級生でなんとなく特別な思いを抱いていた鳴海くん、またその彼の家を時々訪れるらしい凪子。さまざまな人との出会いが柴崎友香らしいふわっとしたタッチで描かれる。
日常の描き方がやっぱり上手。本を役に立つ立たないで語るのであれば、そもそも小説なんて直接何かの役に立つとは言えないし、この本はその小説の中でも特にそんな感じ。それではなぜ読むのかというと、もちろん娯楽の一つとしてではあるのだけど、こういう世界が存在する、日常がこんな角度からも見え得る、ということを提示してくれる、そしてそれがなんとなく心の支えになってくれるからじゃないかな。ヒトは現実だけじゃ生きれないし、なによりそれは退屈。彼女の本を読むとこんなことを思う。なんでもない日常を、"あぁ、いいかも"と思わせてくれるところが好きだ。
Posted by ブクログ
そんなに特別なことは起こらないけど、とても現実味がある。
1日1日に様々なことを感じて生きる"有麻"。
なんとなくぼーっと生きるのをやめて1日に起きる自分の感情の変化を考えてみようかな、と思った。
Posted by ブクログ
「地方に勤めているOLが、高校時代に特別な思いを抱いていた同級生に久しぶりに会うために上京し、様々な人や風景に出会う。」という、ストーリーを簡潔にまとめてしまうと他愛もない話だが、端役も含め、登場人物の一人一人が非常に丁寧に描かれており、好感が持てる佳作。
Posted by ブクログ
合わなそうな気がする。
という何となくの感覚から、倦厭していた作家。
しかし、読んでみたら、意外といけた。
大きな展開はないんだよなーと、最初から思いながら読んだので、ちょっとだらだらしたけど、何もなくても、何となく感じるものがある。
そして、現代人をよく表した小説。
時代がたってから読んで、あーこんな時代あったなーとか思うかも。
Posted by ブクログ
高校生の頃に同級生と「セ」(ックス)の一文字すら喋れなかった私とは、そもそもクラスタが異なる。
というやっかみはさておき。
不思議な読後感。
何が起きたわけでもない、ただカメラアイとして存在するだけの「私」が、なぜか引っ張りだこ。
具体的にはみんな彼女に「自分の部屋へおいで」と声をかけてくるのだ。
最終的にはいわゆる「ゆきずり」へと。
(宿泊場所を変えられない自分とはまた、クラスタ違い。)
この図式的な感じは『春の庭』でも気づいたが、それがいったい何を示すのかは、やはりわからない。
「セックスフレンド」云々のエピソードはなぜか心に残っており、それを確かめるように動く。
つまり《過去の記憶に触ろうと》している。
この感覚を描くために、この中編はできたのではないだろうか。
Posted by ブクログ
普通に日常生活を淡々と描いているようで、視点や感性がほんの少し特別な、これぞ柴崎さんの作品という感じでした。
過去の作品もきちんと内容を覚えていないくせに、なんとなく好きでたまに読みたくなる作家です?
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんです。
登場人物の心理は、ちょっと理解できない部分が多かったですが、小説全体の雰囲気は好きでした。
しかし私には、鳴海&有麻のお互いに思っていた感情がわからない…。
読むにつれ、鳴海くんてあまりいい人じゃないね、とばかり思えてきました。
しょうちゃんがもっと活躍すると思ってたら、途中で消えてしまったのが残念。
Posted by ブクログ
大阪でOLをしている有麻は、
高校の同級生で、当時から恋とはまた違う感情を持ち続けている鳴海くんに会うために東京へやって来る。
有麻が東京で過ごす一週間を丁寧に辿り、
鳴海くんと、鳴海くんのストーカーをしている凪子と過ごす日々の中で人と人の関係性の不思議さを浮かび上がらせる。
有麻を中心とする人々の関係はあまりピンと来なかった。
ただ、東京という街の情景が細かすぎるほど丹念に描かれていて、
有麻が鳴海くんとの関係を捉え直すのがこの物語のテーマだとしたら、
読者が東京を捉え直すという活動も物語の裏側にあって、見えない役割を果たしているのではないかと感じた。
だからなんとなく、東京に住んでいる・住んだことがあるかどうかで印象が変わる気がした。
個人的には東京に縁のある人の方が楽しめる本な気がする。
東京というものに慣れ親しんでいる人は、見知っているはずの東京を有麻を通して再認識することで情動が生まれるのではないかと想像した。
だから東京とはテレビや雑誌の向こうの、ある種ファンタジーに近い世界と感じている人には、知らない街のことを詳細に教えられているとしか思わないのではないか。
ただ、これは東京に住んでいる私がそう思うだけで、実際どう感じるか感想を聞いてみたい。
正直物語は趣味ではないけど、表現や情景描写・文章といったディテールの部分は好きだった。
Posted by ブクログ
このお話はいちいちジャンル分けしなくていいんだろうなと思いました。
言葉は便利だけど、それだけでは言い表せない感情をそぎ落としてしまう。
すごくおもしろい、という話ではなかったんだけれど、自分のことを考え直すきっかけになりました。