柴崎友香のレビュー一覧
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行きたい気持ちさえあればいつでも好きなところへ行けるんだ、という明るい短編集。別れの予感がする遠距離恋愛の話が多いのだが暗さはまったくなく、読後は晴れ晴れとした気分になった。柴崎友香の中でも一番爽快さのある作品だと思う。
恋人に対して離れていく心、それから人生そのものを非常によく象徴している『やさしさ』の次の一節が印象に残っている。
「発車のベルが世界を分ける。ドアが閉まって、わたしたちは空気といっしょに運ばれる。移動していることを感じないまま。(85P)」
解説で「その小説以外のことをいろいろ考えてみたくなって、その小説を読んでいるのに、その小説のことを、つい忘れてしまう」から柴崎友香の小 -
Posted by ブクログ
走馬灯。この小説をひと言で言い表すならこの単語が相応しい。視点は一人称、時系列はバラバラ、他者への感情移入はほぼ無し、10代の日記を思いつくままに並べたような小説だ。ティーンエイジャーならではの喜びや悲しみ、仲間と敵の区別、大人への畏れと蔑み、身近に存在しない者への親近感、摑みどころのない自分に対する不安、痛みを感じている自分への距離感…。子ども時代を走馬灯のように描くことで、主人公の少女そのものを描いている。自分という存在を振り返るとき、誰もが同じような記憶を呼び起こすのではないか。絵の具の12色の緑は、なんで緑でなくてビリジアンなんやろ、みたいな素直な記憶を。
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Posted by ブクログ
ネタバレ頻繁に交流があったわけではない祖父が、亡くなった。
それまで日常で思い浮かべるような存在でもなかった人が、亡くなった途端にやけに思い出が蘇ってくる。
穏やかな恋人の朝陽に、占いにはまる友人の皆子、UFOや霊感についてやたら感心を示す放浪人のカツオ。
移転する小さな職場に、悩みなんてないサバサバした年下の先輩。怪しげででも効果テキメンのマッサージ屋を紹介してくれた女性同僚。
一回だけ、結婚を破断にしてしまったことがある果絵さんだけど、今の生活に特に悩みも何もなく、しかしそれで大丈夫だろうかと、不安になってみたりもする、不安になることで悩んでいる自分を演じているような、そんな日常。
これとい