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突然空が黄色くなった十一歳の日、爆竹を鳴らし続ける十四歳の日……十歳から十九歳の日々を、自由に時を往き来しながら描く、不思議な魅力に満ちた、芥川賞作家の代表作。有栖川有栖氏、柴田元幸氏絶賛!
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Posted by ブクログ
この小説(『小説』という鋳型に嵌め込むのもどうかと思う、解説も言っていたように連作散文詩という方が妥当)は、あえてジャンル分けをするとすればそれは心境小説という事になるかと思う。 古いカテゴライズで、有名所で言うと志賀直哉の『城の崎にて』、芥川龍之介の『蜃気楼』等々が挙げられると思うが本作はこれらを...続きを読むすべて千切り捨てている。柴崎友香のセンスが段違いなのだ。 同様に同世代作家も確実に差をつけられていて、保坂和志なんぞが待ってくれと言った所で、一生追いつけない位置まで柴崎友香は来たのだな、と再認識させられる傑作、怪作。 この頃で言う、心に〈刺さる、差さる〉表現がこれでもかとてんこ盛りで、文庫本でせいぜい200ページあるかないかだが、連載ものにしたってこれは書くのに相当、難渋したろうと思わせるものだ。 わかる人にだけ開かれた小説であり、わからない人には何の配慮もない小説だが、現代文学のエッジに位置する事は間違いない代物。
色彩と外人と10代の記憶を詰め込んだエッセイのような空想・妄想も絶妙に絡まるストーリー。 途中でサラッと衝撃告白があり、それにより最後の2編あたりはぐっときたし、なぜこのタイトルにしたかも理解すると切なく深い。 これの書き手の本当のシチュエーションは明らかになっていないが、この手の小説なのでそこは読...続きを読む者の想像にお任せします、なのだろう。 なかなか面白かったし、この著者の文才を感じた。
想像だが、何かの節目に主人公は我が身を振り返ろうと思い、何気なく思い出した記憶をその都度書き留めていったのだろう。その主人公の「記憶日記」とでもいうようなものがそのまま小説になっている。 現在の時点から過去を回想する物語はたくさんある。さらに、そのような小説では冒頭かどこかで回想行為の動機なり理由...続きを読むが語られることが多い。しかし、本書はそういう形式を取らない。回想される過去は断片的で順不同だし、過去を語る理由が述べられることもない。その意図は、本書の狙いが「自分を確認する行為そのもの」にあるからではないかと思う。すでに確立した自己や自分の哲学を語るために過去を持ち出しているのではない。考えてみれば、過去の回想はふとしたときに自然と起こることが多いし、思い出される記憶も時系列に並んでいるなんてことはない。そのような自然に起こる回想と同じ形式に本書はなっている。そうすることで読者は、主人公の「整理のついた過去」ではなく「整理している真っ只中の記憶の断片」を見ることになる。つまり、主人公が過去の中に自己を見出す作業をしているのを、現在進行形で共有しているような感覚になるのだ。小説を読んでこんな感覚になったのは初めてである。その効果はじわりと効いてきて、所々で主人公と自分の記憶が重なってなんだか懐かしい気持ちになり、封じていたいような記憶も含めて自分を肯定してやってもいいのではないかという前向きな気持ちが湧いてくる。読者である私たちの記憶とリンクして、気づかぬ間に内面に深く染み込んでくるのだ。これは言いようのない感激だった。他の作品ではなかなかないような味わいだと思う。 この小説は、どんな記憶でもそれは自分を唯一無二たらしめるかけがえのないものであると教えてくれる。そして、自分を肯定してよいのだという温かい気持ちを起こしてくれる。自分を見失いそうなときに何度でも読みたい本である。
単行本で読んだときのほうが、本自体が記憶の話だとわかりやすかった。表紙も、記憶に強弱がつく感じとかも。だけど、文庫本の方が集中して読めた。こないだの滝口さんの本も、記憶の話はおもしろいと思って読める。
雲のなかを走っているようだった。ふわふわしているけど、疾走感が溢れる。善く生きたいですに動揺したら、また出てきた
なんとも言えない。淡々と語られる10代の記憶。何が見えていて、何が見えていないのか。思えば友達や先生、何故かロックスターは登場するものの、両親は一度も登場してない気がする。
何億年か前の海は山になって、そして高島屋の階段になった。(44) 家でテレビを見た。白い着物の侍が大勢の人を斬ってすべてが解決した。(60) 生温かい風が、カーテンのあいだから吹き込んできた。その度に、長く重いカーテンは昆布みたいに揺れた。(110)
非常に難しい作品でした。 1つ1つの章は独特の目線と周囲との調和を気にしない一風変わった女の子のエピソードなのですが、全体を構成する意味、時折登場するアーティスト、前後する時制など、解説を読まなければ消化できませんでした。 少し時間が経ってから再読する必要があるかな。
大阪が舞台という事で前々から気になっていた作品。 著者と同世代で同じく大阪育ちなので、10代の主人公・解の目を通した大阪の街の当時の様子を懐かしく思い起こせました。 1本10ページ程度の短編集で、時間軸はバラバラ。 その構成が解の記憶のあやふやさを際立てていると思います。 唐突にリバー・フェニック...続きを読むスやマリリン・モンローが大阪の街に現れて、大阪弁で解と会話しているところあたりも、記憶というよりは空想なのかなと。 特にこれといって大きな事件が起こるわけでもなく、主人公も仲良く遊ぶ子はいるけどクラスでは孤立しがちで……といった、まあ平凡と言える人物なので、大阪という土地に愛着のない人には入っていきにくいかも。 個人的にはノスタルジーをたっぷり味わえて気持ち良く読めました。
文学ですね。 大阪の少女の小学校から高校時代の記憶が、それぞれ数ページの文章でで順不同に語られる。8㎜で撮影された日常風景を、思いつくまま再生した感じ。そこに何かのイベントや転機があるわけでもなく、ただ淡々と丁寧に。時折奇妙な心象風景が混ざりこんだりする。 鮮やかに主人公の少女・山田解の姿が浮かび上...続きを読むがる。 しかし、それだけなんですね。何か特別な主題のようなものは感じられない。山田解は柴崎さんの記憶のようでもあり、そうなると一種の私小説ですかね。だから純文学。
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