【感想・ネタバレ】続きと始まりのレビュー

あらすじ

あれから何年経ったのだろう。あれって、いつから? どのできごとから?

日本を襲った二つの大地震。未知の病原体の出現。誰にも流れたはずの、あの月日――。別々の場所で暮らす男女三人の日常を描き、蓄積した時間を見つめる、著者の最新長編小説。

始まりの前の続き、続きの後の始まりを見下ろし、あの中のどこかにわたしもいる、と思った。(一穂ミチ・作家)

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Posted by ブクログ

「続きと始まり」(柴崎友香)を読んだ。

やっ!柴崎友香、ただ者ではないな。
『帰れない探偵』を読んだ時の衝撃が忘れられずに他の作品も読みたくなったのだが、これはまた素晴らしい。

しみじみと読んでしまう。
西と東の大震災の、新型ウィルスの、ゲリラ豪雨の、過ぎ去った後であったり、最中であったり、その時その時の普通のひとたちの普通の生活を大仰にではなくさらりと描く。だけどその視線は細やかで核心を射抜く。

ああ、確かに、《の前の続き》は始まっているんだよな。何かが少し(でも確実に)違っているんだけれどさ。

以下、引用する。

「どうすればよかったのかわかるのは、いつもそれが過ぎたあとだよね」(本文より)

「なんもなかったみたいに、なんも変わってないみたいに見えた」(本文より)

何というわけではないのに沁み込んでくるのが柴崎友香さんの持つ文章力なんだな。

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2025年10月05日

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ネタバレ

石原優子、小坂圭太郎、柳本れい。どこにでもいそうな、かといって退屈ではない個性を持つ3人の視点でコロナ禍の日常を語る小説。

自粛要請(今考えると変な言葉である)やら、緊急事態宣言やら、まん坊(当時も思ったが変な略語である)…、感染拡大を錦の御旗に徹底的に抑圧された生活を送った3年ほどの期間、主人公らの生活も感性もどんより重くて、それでも生活は淡々と行われていく。

2つの大きな震災の記憶も生々しいままに、今度はパンデミック…。厄災の合間を縫って続く庶民に日常、政治は相変わらずクソだし、強かったはずの経済も日に日に弱っていって、明るい未来などフィクションの世界にも見当たらなくなった国。

口から出た言葉は戻らないし、マスコミやネットで報道する姿だけが真実ではないし、親は勝手に期待して絶望するし…。

何を書いてるのか分からなくなったが、何しろ情報量というか感情量というか言葉が丁寧にたくさん綴られていて、読み手側も思いが錯綜しまくるので、まとまらない。

とりあえず、ウクライナや能登や韓国の戒厳令や、やっぱり世の中無茶苦茶なことが多いけど、ゲー吐きながらでも乗り越えてきた俺たちは、これからも乗り越えていけるやろう。乗り越えていこう。勝たんでエエけど負けてたまるか

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2024年12月04日

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これまで、いくつかのライフステージを経験して、就職してからも複数の職場に身を置いてきた。
そのなかで、親の離婚や震災や、肉親との死別や最近ではコロナや、価値観を揺さぶられるような出来事もいろいろあった。
これまではそれらが自分の中でバラバラなこととして位置づいていたけど、それらを経て今のわたしがある以上、それらはみんな地続きなのかもしれない。
まだぼんやりとしているけど、すごく大事なことを示してくれている一冊だと感じたので、しばらく時間をおいて再読したい。

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2024年11月16日

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確かに、ここには私がいる。
しかしそれは、共感という名の、自己愛に満ちた思いの表明ではない。
自画像を突きつけられたときの少しばかりの居心地悪さに近いだろうか。
深煎りのコーヒーを口に運び、苦味と共に微かにざらつきが舌に残る。

声高な社会への違和感と、それに目を伏せるだけの日々。
空き地を見ても何が建っていたかすら思い出せない不安。
まだ恵まれている方だよなと、いう思いが浮かんでしまう自己嫌悪。
真っ当に生きていると思う一方で、社会の“普通”の枠から疎外され、帰属感を持てないこと。
誰かを傷つけた罪悪感を、誰かに癒して欲しいこと。

「終わり」も「始まり」も掴めないまま、続きを生きることしかできない僕は、何かを始めていけるのだろうか。
ベルリンの壁が打ち壊される映像に釘付けだった中学生のときのようには、僕もまた、世の中がいつか素晴らしくなるだろうとは、もう思えなくなってしまったけれども。

作中では二つの震災後が回想として描写される。

津波に押し流された石巻を訪れたとき。
 “ダウンジャケットを着込み、ニット帽を目深に被ったその人は、どんな人か遠目からはわからなかった。どんどん歩いて行く犬に引っ張られて、だんだんと夕闇が迫るその場所を、まっすぐに歩いていた。
どこを通ることもできそうだと、ここに何があったのかを知りもしない自分には見える場所で、車も、人も、道を通っていた。
犬は、どんどん道を歩いていった。
静かだった。
何もかもが変わってしまったその場所で、犬は変わる前と同じ道を散歩していた。たぶん、毎日。
悲しいと感じたのか怖いと感じたのか、もっと別の感情だったのか、いまだにわからない。”

神戸の街を六甲山から眺めたとき。
 “「わたしがここ初めて来たんやったとしたら、この景色はどんなふうに見えるんやろうなぁ、
って。
穏やかな海が見える、きれいな街やなあ、ただそういうふうに見えるやろか。
それか、あれからもずっと働いてたり、住んでたりしてたら、毎日見続けてたら自分が生活してる、暮らしてる街として馴染んでいって、そういう風景に見えてたかもしれへん。
二十年以上経ったなんて、信じられへんけど、その間にあったたできごとは全部確かにあったことで、上の子は二十歳になるし、母は死んだし、私は四十四歳で、どの人にもどの場所にも、同じだけ時間が過ぎて、それは消えない”

  始まりはすべて
  続きにすぎない
  そして出来事の書はいつも
  途中のページが開けられている

失なっても、残るものがある。
目に見えなくても、消えないものがある。
忘れてしまっても、色褪せてしまっても、僕を作ってきたものは確かに存在する。
引用された詩にあるように、続きの日々を新しく生きていくこと。
決して派手でも、目新しいわけでもないが、虚しく希望のない時代の中でも、日々を歩むことは、何かを作り出すことだと信じて。

終わらせてはいけないものに耳を澄ませて。
まだ始まらないものの胎動に目を凝らしながら。
今への違和感に向き合って、こだわりながら。

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2024年10月13日

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気づかずに忘れていたあの日々のこと、空気と、少しずつ降り積もっていった気持ちたち。

楽しいことはすべて制限されるのに仕事だけが通常モードになろうとする、働くだけの存在になれってこと?
とか、
まんぼう
とか、
⚫︎度目の緊急事態宣言
とか、
また営業時間が変わるだけ
とか、
え、これでもやるの?なオリンピック
とか、
自宅待機
とか、
Go travelとか。

いくつかの並行世界が、なんとなく同じところで繰り広げられてるように見えていた世界が、
やっぱり並行世界は並行世界だったんだと気付かされるような出来事の数々。

もっとさかのぼって、東日本だったり阪神淡路だったり
でもこの後だってたくさん更新されてしまってることたち

どれもその瞬間その日々は影響を受けて少しずつ削られてすり減って
なのに慣れてしまっていつしか忘れてしまう


優子が毎日川の見え方を確認する行為は、
自分自身の確認とともに、自分自身へのエールでもあったのかも。
でもほんとうに毎日は、このような些細なエールで築き上げられている

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2024年08月24日

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作品全体にコロナや震災という大きな出来事が横たわっているが、それとはまた別の小さな物語がていねいに綴られている。とりたてて特徴のない登場人物たちの、でもその人だけの悩み、気持ち、生き方。それを見過ごさないということ。なかったことにしないということ。
読み手である平凡なわたしの人生もまた、肯定されているように感じた。

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2024年07月02日

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石原優子、小坂圭太郎、柳本れい。
この3人の2020年から2022年までの日々や思いがそれぞれ記された小説。1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東北大震災、そして2020年からのコロナ禍。生活も考え方も変わらざるをえない出来事のなかで、どう生活をしなにを考えてきたのか。三人三様なのだけれど、細かく表現されていて、読みごたえがあった。共感することも多かった。「じわじわと。自分が削り取られていく感じ」とか。深く考えてしまうと、人と話すのは本当に難しく思えた。「わたしは、なにを言って、なにをしてきたか。わかっているのだろうか。」ということも、自分に当てはめて考えた。捉え方は人それぞれだから、普通に話すことは難しいと改めて思った。

「始まりはすべて
続きにすぎない
そして出来事の書はいつも
途中のページが開けられている」
このシンボルスカの詩の一部分が、表現していることが今日も続いているんだな、と思った。柴崎友香さんの他作品も、これから読んでいきたい。

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2024年05月21日

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ネタバレ

自分が決して共感しないだろう人の心情を疑似的に追体験するのが小説の機能の一つ。そういう意味でとてもよかった。依然としてわかりはしないけれど。

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2024年03月28日

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読みながら、コロナで自粛していた頃がとても遠くなって、細かいことを忘れていることに驚いた。でも確実に、あの経験は自分の何かを変えた。実際被害にあった1995年の震災も、テレビを見つめて心配だけしていた2011年の震災も同様だと思う。
目の前のことに追われて、でもその時その時は何かを感じ考えて、家族や周囲の人と共に一生懸命に生きている。ふと過去のことを思い出したり、未来のことを想像したり。死ぬその時まで、時間は短くなったり長くなったり始まったり終わったりしながら続いていく。
とても読みやすい小説なのに、とても深い何かが描かれているように思った。
シンボルスカの詩集読みたい。

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2025年08月16日

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ネタバレ

阪神大震災、東日本大震災、新型コロナと日本を襲った節目となる天災にほんのり関わった3人の寄るべなさ。親とうまくいっていないということも併せて、より寄るべなさが出ている。
小坂パートが、1番我が身に引き寄せることができ、面白かった。
最後、3人がニアミスしていたとある2月がなんか読んでてワクワクした。

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2024年12月27日

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砂地に水が染み込むような文章。
シンボルスカの詩を中心にコロナ下の3人を描く。
阪神の地震と東北の地震の記憶。それぞれのおいたちの記憶。過去からのつながり。

その時々の自分の思いがたちのぼってくるが、
コロナから2年経過した現在、コロナの頃の記憶が朧げになってることに驚く。地震のころの自分はありありと覚えているのに。。これはなんなのかな?

シンボルスカの詩を読んでみたいと思った。

それから、世界は暗い方へ進んでる、という基調だったけど、そんなでもないよ、と言いたい。20年前に比べて、良くも悪くも世界の均質化は進んでる。それは良い面の方が多いんだよ。

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2024年11月27日

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あの日のことをコロナ禍に思う。
淡々と日々を過ごす中、過去を振り返り、今を思う。幸せとはなんだろうか。被災地や戦場の人々のことを想うことはあれど、何か具体的に行動を起こすわけではない。いる場所によっても距離感は違うのか。
ほんの数年前のことだけど、忘れていることだらけだなぁと感じた。
夢=仕事って風潮どうにかならんかなぁ。

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2024年09月22日

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別々の場所でそれぞれの人生を送る3人(30代後半の女性・石原優子、30代前半の男性・小坂圭太郎、40代半ばの女性・柳本れい)について、2つの大震災など過去の記憶も呼び覚ましながら、日本がコロナ禍の只中にあった2020年3月から2022年2月の2年間を描く叙事的長編小説。
自分自身の人生も含め、それぞれの人生、時の流れなんかに思いを馳せさせてくれる実に良い小説だった。
本書のキーアイテムであるヴィスワヴァ・シンボルスカの「終わりと始まり」という詩集から抜粋される詩(特に、「戦争が終わるたびに誰かが後片付けをしなければならない」から始まる詩)も心に残った。

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2024年08月31日

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2020年3月から始まり2022年2月までの物語。ちょうどコロナ禍の話。
タイトルはポーランドの詩人の「終わりと始まり」という詩集からきているらしい。

1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災の頃を回想しつつ、コロナ禍の現在を生きている主人公は3人。
3人共ある意味普通の人達なので、自分自身と比較しやすい。震災の時に募金はしたけれど、ボランティアには行かなかった事の罪悪感とか、どんな時でも「自分よりも大変な人がいる」と思ってしまう感覚。
災害が起こると感じる、「安全な場所で『情報』を見ている」という言葉が一番刺さったかも。

『戦争が終わるたびに
誰かが後片付けをしなけれなばならない
物事がひとりでに
片づいてくれるわけではないのだから』

今ウクライナで起きている戦争は、まだ終わってもいないけれど。

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2024年07月12日

Posted by ブクログ

ちょうど真ん中くらいで、タイトルにもなってるフレーズが出て来たのが印象的でした。
もはや、コロナ禍、と言うジャンルが出てもよいくらい、この時期に執筆された本を色々読みました。
まだ収束してないフェーズで読んだのと、今読んだのでは全然印象が違います。もっともっと時が経ったら、これも昔の事になってしまうのかな。

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2024年05月15日

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なんかわかるな。
なんかそれぞれの感じ方に、共感できる部分が多数あって、なんか透明な感じにすーっと物語が続いてる感じがとても良かった。

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2024年03月18日

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過去を消すことはできない。
人を傷つけ、人に傷つけられた事実も無かったとこにできないし、あきらめた選択肢も戻ってこない。

つまるところ、みなそれぞれにこれまでの「続き」を生きるしかないのだ。

でも、新たな「始まり」のきっかけは、そんな現実や自分との向き合い方次第でいつでもだれにでも与えられるということを、この本は教えてくれる。

待望の長編新刊。読み応え十分。
もう少し刊行月が早ければ「今年の3冊」とか「2023年回顧・文学」にきっと取り上げられていたはず。

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2023年12月29日

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普段はミステリーばかり読んでいるので、久しぶりにこういう日常の描写が細やかな小説を読んだ。最後まで飽きずに読めた。

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2025年12月06日

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日々のいろいろが跡形もなく消えていくのが切なくて、全てを記録出来たら、なんて事を思う時もあるのだけれど、ずぼらな私にそんな細かい記録は出来ず、
出来たとして、それを読むのはこんなに大変なんだなと思い知る。読むのがしんどい本だった。

親との距離感。
災害の近くにいなかった事で感じる、
どうしようもない申し訳なさ。
共感する部分はあった。

知らず口にしたり、やらかしてしまった自分の罪に
ずーっと後になって気付いてしまってうろたえる。
「答え合わせをしたい」
「傷つけてしまった人に直接謝罪したい」
って、傷つけた側の自己満足に過ぎないんだろう。
傷つけられた側からすると、
せっかく折り合いをつけて暮らせる様になったのに
わざわざ蒸し返さないで欲しい事案だろうし、
二度と顔を見せないでくれ、が一番親切なんだろう。
でもそれは傷つけたとされる側には、
謝る機会も罵倒される機会も与えないって事で。
どちらから見ても「可哀想な私」「悪いあの人」。
さあ、「これからどうする?」

引用されているポーランドの詩が印象的だった。
「終わりと始まり」
 戦争が終わるたびに
 誰かが後片付けをしなければならない
 物事がひとりでに
 片づいてくれるわけではないのだから

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2025年12月06日

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二つの震災と感染症に翻弄された数十年で、なにが人や社会を変えたんだろうか。自分に出来たことは何かあったんだろうかとと考える人がこういう小説を書けるのだろう。文体は軽妙だけれどこれ作者に見合わない底流の重苦しさが心に残る。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

わたしは小説を読んでいるとき、わりと現実逃避していることが多く、つらかった思い出などもあまり直視しないタイプなので、珍しい読書体験になった。
二つの震災、コロナを通過してもたしかに降り積もっていく日常。社会の閉塞感。どうしても抜けない小さな棘。再会できる人/できない人。回収されない伏線。圧倒的に現実だった。
作家という職業の、語り部としての側面を強く感じたし、当時の空気感を文学として残す貴重さも改めて感じた。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

コロナ禍を生きる三人それぞれの日常。
時折知らずに近付いたり。
興味深くはあったけれど
なんだか読み進めるのが苦痛にも思えた。

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2025年05月12日

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登場人物の会話で所々、共感する箇所があった。家族との関係とか、子どもを持つ持たないとか。読後は、この小説が伝えたい一番のメッセージはなんなのだろうと考えたが、すぐ答えが出す…
自然災害•感染症•戦争のような非日常に思える出来事の中で、私たちは日常は過ごしている。世界は全て繋がっていて、全ての出来事に自分が無関係ではないと教えてくれているような気がする。

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2025年03月16日

Posted by ブクログ

コロナ禍で大震災を経験した男女の日常の話。コロナ禍は数年前のことだが、振り返れた。登場人物が最後にほんのりつながるのが面白かった。

シンボルスカの詩にそれぞれが続きや始まりを感じている。「続きと始まり」のタイトルの意味がわかった。

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2025年03月15日

Posted by ブクログ

最初は遠い存在の3人が、どんどん近しい存在になっていく。
背が低くてかわいいねと言われることに対して、
「自分より背の高い女は嫌い」と思っている男に「かわいい」と言われることが悔しいという石原優子。

自分が傷ついたと思っていた過去を辿ると、相手を傷つけ怖がらせていたという反転した現実に向き合うことになる小坂圭太郎。

4年間付き合った人は、過去を話したがらない人だったけど、それは自分が悪いとわからないから説明できないだけなのかもと、友人との思い出話で気づく柳本れい。

10年前のある時間に同じ場所にいた3人。少しだけ「かすった」3人が、それぞれの場所でそれぞれの人生を生きてきた。
ただそれだけの、その断片を映し出した小説。

私たちも同じようにそれぞれの人生を生きているのだよねと、「無数の3人」のうちの1人として思う。

こういう描き方もあるんだね。

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2025年03月11日

Posted by ブクログ

三人の日常の話しが入れ替わり立ち替わりに語られていてなかなか読みづらかった。それにしても何となく違和感があったのは2020年はコロナが全国的に流行った時でこんな物語りの様な日常はなかったのではないかな!三人の日常会話にコロナの深刻さがうかがえないのは何故なんだろうと思ってしまった!

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2025年01月21日

Posted by ブクログ

別々の3人がコロナ禍で考える日々を追う。

2つの震災やいろいろな出来事の中で、3人とは年齢も立場も違うけれど、いくつも私もそう思った、わからなかったけれど、同じ感情だと感じたことがいくつもあった。

とにかく、文字量が凄い。ただ、感情はこれほど多く日々語ってるんだよなと思うとともに、だから疲れるんだなぁとも。

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2024年09月20日

Posted by ブクログ

コロナ禍に陥った1年間に、それぞれの阪神大震災と東日本大震災の記憶が混ざり合う。
いまでは過去の言葉となった「不要不急」「まん防」などへの違和感を添えて、自分の記憶も丁寧に引き出されるノンフィクションのような作品。

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2024年08月14日

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ネタバレ

 男女三人の登場人物が、2020年3月からの2年間、要はコロナ禍の間、それぞれの場所で、それぞれの暮らし、人生を、いかに送ったかが、微細ながら、淡々と紡がれる。
 未曽有の国家的危機の最中、その9年まえの2011年の東日本での大震災や、さらにその前の阪神淡路の震災にも思いを馳せつつ、今を生きる市井の人びとの暮らしが、そこにある。
 つまり、いろんな出来事があった「続き」の今であり、そんな中で、新たな暮らしぶりの「始まり」を描く物語。

 ただ、いつまでたっても、その三人が絡んでこない。年代も、職種も、生活環境も、住む場所も異なる三人ゆえに、一向に人生が交差していかない。同じコロナ禍を過ごすことが、唯一の共通点で、なんとももどかしい。
 が、終盤、やっと、一つの書物を通じて結びつく。あぁ、そういうことかと、やっと得心。

 その本は、ポーランドの詩人、ノーベル文学賞受賞者である、ヴィスワヴァ・シンボルスカヤの『終わりと始まり』だ。
 私自身も、この詩集をコロナ禍中(2022年10月)に書店で見つけ読んでみて、いたく心を打たれたもの。その時はもう、ウクライナ戦争も始まっていたので、これまでの何かが「終わり」、新たな何かの「始まり」を予感させるようなタイトルにドキっとしたもの。

 本書の中の三者は、それ(ウクライナ戦争勃発)前に本書に触れていたという設定ではあるが、著者は、もしかしたら、私と同じころに本書に出会い、この物語を紡いだのかしれない。物語は、2022年2月まで綴られることから、そこはかとなく予想されるのだが、どうだろうか。

 ただ、本書のタイトルを「続きと始まり」と、シンボルスカヤの詩集と少しニュアンスを変えている点が、お見事だと思った。
  未曽有のパンデミックや、世界を巻き込むかのような、遠く忘れさられそうになっていた戦争というものが起こる今の世相を、これまでの時代の地続きと表現したのだろう。これまでの様々な要因の不用意な積み重ね、看過してきたことや、軽視してきた所業の続きとして、これからの未来が始まるとした。

 今は、過去の子であり、未来は今の子。登場人物のなにげない日常も、連綿と未来へとつながっていくのだ。そう、我々の暮らしも、人生も、なにもかもが。

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2024年06月13日

Posted by ブクログ

何か特筆するような出来事が起こるわけではない。2020年3月から2022年2月にかけての期間、コロナ禍で全ての人の生活が影響と制約を受けていた期間における、ごくありふれた一般市民である男女3人の身の回りで起きたことを、それぞれが主人公となる章を交互に重ねることで描いていく。
確かに、コロナ禍の生活ってこんな感じだったよなあと、ほんのちょっと前のことなのに、時を隔てた異世界のように感じられるのが不思議だ。
あの時期の暮らしや感覚を、後に記録として残す意味でも貴重な価値を持つ小説と言えるかもしれない。

登場人物たちに、ふとしたきっかけで蘇る過去の記憶、それがこの小説のテーマである。阪神大震災や東日本大震災など多くの人が共通に体験した記憶と、両親や同級生、別れたパートナーとの間で交わした会話の断片などのプライベートな記憶。
ありふれた一般市民といっても、人に歴史ありというか、記憶を紐解くことで立ち現れる、それぞれの人生の複雑性や個別性、それを丁寧に紡いでいく筆致の確かさはさすがで、読み応えがある。

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2024年03月07日

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