【感想・ネタバレ】続きと始まりのレビュー

あらすじ

あれから何年経ったのだろう。あれって、いつから? どのできごとから?

日本を襲った二つの大地震。未知の病原体の出現。誰にも流れたはずの、あの月日――。別々の場所で暮らす男女三人の日常を描き、蓄積した時間を見つめる、著者の最新長編小説。

始まりの前の続き、続きの後の始まりを見下ろし、あの中のどこかにわたしもいる、と思った。(一穂ミチ・作家)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

石原優子、小坂圭太郎、柳本れい。どこにでもいそうな、かといって退屈ではない個性を持つ3人の視点でコロナ禍の日常を語る小説。

自粛要請(今考えると変な言葉である)やら、緊急事態宣言やら、まん坊(当時も思ったが変な略語である)…、感染拡大を錦の御旗に徹底的に抑圧された生活を送った3年ほどの期間、主人公らの生活も感性もどんより重くて、それでも生活は淡々と行われていく。

2つの大きな震災の記憶も生々しいままに、今度はパンデミック…。厄災の合間を縫って続く庶民に日常、政治は相変わらずクソだし、強かったはずの経済も日に日に弱っていって、明るい未来などフィクションの世界にも見当たらなくなった国。

口から出た言葉は戻らないし、マスコミやネットで報道する姿だけが真実ではないし、親は勝手に期待して絶望するし…。

何を書いてるのか分からなくなったが、何しろ情報量というか感情量というか言葉が丁寧にたくさん綴られていて、読み手側も思いが錯綜しまくるので、まとまらない。

とりあえず、ウクライナや能登や韓国の戒厳令や、やっぱり世の中無茶苦茶なことが多いけど、ゲー吐きながらでも乗り越えてきた俺たちは、これからも乗り越えていけるやろう。乗り越えていこう。勝たんでエエけど負けてたまるか

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2024年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分が決して共感しないだろう人の心情を疑似的に追体験するのが小説の機能の一つ。そういう意味でとてもよかった。依然としてわかりはしないけれど。

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2024年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

阪神大震災、東日本大震災、新型コロナと日本を襲った節目となる天災にほんのり関わった3人の寄るべなさ。親とうまくいっていないということも併せて、より寄るべなさが出ている。
小坂パートが、1番我が身に引き寄せることができ、面白かった。
最後、3人がニアミスしていたとある2月がなんか読んでてワクワクした。

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2024年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 男女三人の登場人物が、2020年3月からの2年間、要はコロナ禍の間、それぞれの場所で、それぞれの暮らし、人生を、いかに送ったかが、微細ながら、淡々と紡がれる。
 未曽有の国家的危機の最中、その9年まえの2011年の東日本での大震災や、さらにその前の阪神淡路の震災にも思いを馳せつつ、今を生きる市井の人びとの暮らしが、そこにある。
 つまり、いろんな出来事があった「続き」の今であり、そんな中で、新たな暮らしぶりの「始まり」を描く物語。

 ただ、いつまでたっても、その三人が絡んでこない。年代も、職種も、生活環境も、住む場所も異なる三人ゆえに、一向に人生が交差していかない。同じコロナ禍を過ごすことが、唯一の共通点で、なんとももどかしい。
 が、終盤、やっと、一つの書物を通じて結びつく。あぁ、そういうことかと、やっと得心。

 その本は、ポーランドの詩人、ノーベル文学賞受賞者である、ヴィスワヴァ・シンボルスカヤの『終わりと始まり』だ。
 私自身も、この詩集をコロナ禍中(2022年10月)に書店で見つけ読んでみて、いたく心を打たれたもの。その時はもう、ウクライナ戦争も始まっていたので、これまでの何かが「終わり」、新たな何かの「始まり」を予感させるようなタイトルにドキっとしたもの。

 本書の中の三者は、それ(ウクライナ戦争勃発)前に本書に触れていたという設定ではあるが、著者は、もしかしたら、私と同じころに本書に出会い、この物語を紡いだのかしれない。物語は、2022年2月まで綴られることから、そこはかとなく予想されるのだが、どうだろうか。

 ただ、本書のタイトルを「続きと始まり」と、シンボルスカヤの詩集と少しニュアンスを変えている点が、お見事だと思った。
  未曽有のパンデミックや、世界を巻き込むかのような、遠く忘れさられそうになっていた戦争というものが起こる今の世相を、これまでの時代の地続きと表現したのだろう。これまでの様々な要因の不用意な積み重ね、看過してきたことや、軽視してきた所業の続きとして、これからの未来が始まるとした。

 今は、過去の子であり、未来は今の子。登場人物のなにげない日常も、連綿と未来へとつながっていくのだ。そう、我々の暮らしも、人生も、なにもかもが。

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2024年06月13日

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