あらすじ
最高。何度も何度も読んだ。この小説を読み直すためにだけでも、十年先まできっと生きていたい。ーー斎藤真理子
『続きと始まり』『百年と一日』が話題の柴崎友香による全く新しい「探偵小説」
「世界探偵委員会連盟」に所属する「わたし」は、ある日突然、探偵事務所兼自宅の部屋に帰れなくなった。
急な坂ばかりの街、雨でも傘を差さない街、夜にならない夏の街、太陽と砂の街、雨季の始まりの暑い街、そして「あの街」の空港で……「帰れない探偵」が激動する世界を駆け巡る。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「今から10年後くらい先の話」ではじまる。
自分の事務所に帰れなくなった探偵の話。
仕事、生活が淡々と語られていく。
滞在先の事務所もだけど、自分の国にもある事情から帰れていない。
よくある「探偵モノ」とはちょっと違う。
依頼任務や生活が描かれているが
探偵の仕事である秘匿性から、どこの国の仕事なのかなどが明記はされておらず断片から想像するしかない。
探偵連盟から任務を課され淡々とこなしていく、探偵は一箇所にとどまることはなくどこにいっても異物として存在する自分、帰れない国、自分が帰りたいのかもわからず、仕事も何故今ここで自分がこの仕事をしてるのかも揺らぐ
ずっと旅をしている。漂っている。
描かれている世界が未来の世界なのか今の事を話しているのかも読んでてわからなくなる。
十年経ったら何だって色々と変わるのか
…悪くなっていくだけなのかな悲観する。
でも、事件が起きて探偵が解決する話ではない。
とわかってからは面白いというより、心地よく読めた。
探偵を通して、一期一会や自分の今の生き方などをかえりみてしまう。
Posted by ブクログ
短編連作のなかで、幾重にも重なる時間の揺らぎ。
いるよ、みてるよ、と存在を伝える者。失われた場所への眼差し。遠くへ音楽を届けようとする人々。
探偵が触れる謎と、解かれない謎。
読み終わるのが惜しくなる、長い旅をした気になる本。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃよかった。感覚的に好き。
探偵の仕事を一つ一つこなして軽い謎解き要素もあり、いろんな国のいろんな場所に赴任するのでどこかなーと想像しながら読んだり、不思議な魅力がある本。
Posted by ブクログ
語彙力がなくてうまく感想が書けないのが悔しい。居場所探し自分探しのモラトリアムなわけでもなく、達観してるわけでもない。
大立ち回りも号泣するようなカタルシスもない。ただ郷愁に身を委ね、人々の話の機微を聞いているのが心地よい。
近未来をイメージさせるどこかのいろんな国へ行く探偵。
目立つのは外国人や富裕層で、先住民や土地を捨てた人々の痕跡はあっても管理された情報でうまく辿ることは難しい。今ここにいない人たちに思いを馳せ、同じ景色を見たいと望み、自分の足元を確かめる。
Posted by ブクログ
世界を飛び回り依頼をこなす探偵の物語。
今から10年後の話、帰れなくなった、故郷の体制が変わった等々散りばめられた設定はSFとは言わないまでも独特な世界観。
探偵だから派手な事件と言うよりは調べ物が多く、主人公の名前も地名すら出てこず、淡々と仕事をこなす様は想像力に頼る部分が多く評価が別れるかもしれないが確実に変わりつつある世界に惹かれていき分厚いもののかなり夢中で読めて新しい読書体験になった。
末端だからこそ全貌が明かされず空港でリアルタイムに指示が来て様々な人と会話をする最後の物語がとても好き。
Posted by ブクログ
雰囲気が好き。空気感が好き。とにかく面白い。
仮想の地球の仮想の国を行き来している探偵。身を明かせないし、徹底して「探偵」でいることに、ほんのりと漂う寂しさとか、プロ根性とか、どれもが愛おしくて楽しくて時を忘れて読み耽った。と同時に読み終えるのがもったいなくもあった。
人に裏切られたり、助けられたりしながらも、多くを語ることがない中での仲間との繋がりとか、時折出てくる探偵の心を満たしたであろう美味しそうな食べ物とか、じんわりと心に沁み入ってくるものがたくさんあったなぁ。
帰れない探偵は、最後は居場所を見つけたのか否か、よくわからないまま物語は終わりを迎えたけれど。読んで良かったし、また読みたいし、読む日が来るだろうと思う。
Posted by ブクログ
よかった。
それぞれ架空の国だろうけど、どこの国か想像できるし紀行文のようにも読めた。
劇的な何かがあるとか起承転結がはっきりしてるとかではないけど、ずっと読んでたいそんな本
Posted by ブクログ
「帰れない探偵」(柴崎友香)を読んだ。
面白かった。
とてもとても面白かった。
探偵小説というより純文学的曖昧さが香ばしい。
探偵の胸の内の『帰れない』場所というのが何かのメタファーであろうことは容易に想像がつくのだけれど、いま現在のこのきな臭い世界において本当に帰りたい場所なんてあるのか?
自分の中の『帰れない』場所ってどこだろうな。
柴崎友香作品を初めて読んだわけだが、これはちょっと自分的には迂闊だったな。もっと早くにその存在に気づくべきだったよ。
印象的な(たぶん肝な)言葉を引用
《(前略)どこかの意図とか悪意をも超えて、まだ誰もわからない、取り返しのつかないことが起きてくるのが、怖いって思ってて」》(本文より)
まだ興奮冷めやらぬ感じ。
Posted by ブクログ
捉えどころのない不思議な小説。
読んでいるとここではないどこかに連れて行ってくれる。
それぞれの国のモチーフになっているであろう国を「中欧っぽい」「ドバイかな」「マニラなんじゃないか」などと想像するのも楽しい。
Posted by ブクログ
途中ツインピークスネタで笑わされたりで油断してたら後半予想してない方向に連れてってもらえて、ものすごく好きな終わり方だった。最初から読み直したらけっこう伏線もあって、ほんと面白くて好きな本。
オードリーでん?と思って、ドナが来て、これはあれだなと分かって嬉しかった(デイルって誰だっけ、としばらく考えながら読んだ自分に笑えたけど)。「終わらない歌」にしろ、好きな本を書いてくれる同世代の作家さんがいることの幸せ。
Posted by ブクログ
なんだろう。
うまく言葉にできないけど、なんか読み返したくなる。独特な世界観の中に妙な安らぎを感じてしまった。
特別な事件が起こるわけでもなく、探偵の仕事もふわんとした形で終わるのに、なんかまた読みたいと思わせる不思議な本だった。
雨の日にゆっくり読みたい。
Posted by ブクログ
今から10年くらいあとの話。
世界探偵委員会連盟に所属する私は、自分の生まれ育った国を離れ、とある国、急な坂のある街で探偵事務所を開設する。
だが、不意に発生した大規模停電を境にその事務所へ続く路地を見つけることが出来なくなり帰れなくなってしまう。
そこから寝床を転々とし、国を転々とし、あの日去った国、あの日去った街に思いを偲ばせながら探偵業に勤しむ日々を送る。。
何だこの読み心地。
SFかのような不思議設定、不思議展開を据えつつ、時、場所、人名の断定は徹底的に排除。
唯一無二のふわふわノスタルジックストーリー。
探偵が主人公なので、それなりに事件というか事案は発生するのだけれど、正直「探偵」のワードは目眩し。
ことごとく結末があるようなないような匂わせ終焉。
でもこれはこれであり。
こんなにも長きにわたって郷愁の感情を表現した物語はなかなかない。
そして、この物語の行き着く先があのロックバンドの歌って。
意外なんだけど、なんか合ってる。
聴きたくなってApple Musicで探したけど、本家のはなく、くっきーの歌っているやつしかなかった。
youtubeで探してみたら1000人ROCKというイベントの動画に出会った。これは凄い!これは熱い!!
時を越えて伝わる言葉、響く音。
Posted by ブクログ
名前も出てこない女性探偵が、重要かそうでないかすらわからない仕事をこなしつつ、行った先で色々な人々に出会うお話。国を巡る様子は探偵物語的な謎も含ませつつ紀行小説のようでもあり、私も一緒にたくさんの街を巡った気持ちになりました。最後もはっきりわからないけど、想像の余地が沢山ありそこがまたいいかなと思うし、希望が芽生えるような終わり方だと思います。私はとても好きです。
Posted by ブクログ
各章の後先に出てくる、今から10年くらいあとの話し、って何。
どれを読んでもその疑問は解けなかった。
探偵と言えば、ハードボイルドか、浮気調査か、くらいのイメージしか持たない私に、新たな探偵イメージができた。
全体を通して、静かな空気が流れていて、心穏やかに読める。
最後の方で、主人公の出身地はあそこか⁈と思える場面はあったが、、、あ、そか!これから10年後、こんな世界になっているってこと?
Posted by ブクログ
ようやく読み終えた。
SF的な空想の舞台で、時系列としては「今」の10年後の物語。
決して地名や国名が出ることはないけど、政治的な理不尽だったり、異常気象だったり、どこかを想起させてしまう描写に、思わず唸ってしまう。
唐突なエンディングだったけど、考えうるポジティブなエンディングだったように思う。
Posted by ブクログ
祖国、自宅、が無くなってしまい文字通り帰ることができなくなった探偵。
地元に根付いた仕事をしつつも、根無草の探偵
定期的にどこか縁もゆかりも無い場所へと異動し、またそこでも泥臭い探偵業を行う。
世界は大きく変わるのに、主人公はふわふわとしたまま流れに身を任せて生きてゆく。
どこか憧れる生き方。
でも帰る場所のある安心感があるからこそ、私たちはこちら側から傍観できているだけなのかもしれない。
大きなオチは無いけれど、世界は、組織は歪みながら進んでいる、そして主人公も少しずつ自分を捉え始めようとしている。けれどそれはまだ10年後のお話。
非常に読みやすく、流れるように体に言葉が入ってくる。とても魅力的な作家さんの作品。
Posted by ブクログ
柴崎さんが、近未来のディストピアを描くとこうなるのか。今まで誰も書いたことのないやり方。今から10年くらいあと、こんな世界が本当にあるのではないかと思わせるくらいの、濃密でリアルな空気感。
帰れない探偵なんて発想!
デジタルで時空が歪められた世界。巨大企業が情報をコントロールして、あることが無かったことにされる世界。
そんな抑圧された世界から隔絶して、糸が切れた凧のように生きる探偵は果たして幸福なのか、不幸なのか?
みんなが不幸な世界で、息を潜ませて生きる人々。
悲しい世界だ。
でも、きっとすぐそこの世界。
Posted by ブクログ
「今から十年ぐらいあとの話」
探偵事務所を出てから戻ろうとすると事務所への道が見つからない。あの角を曲がったところの小道にあるはず…。いくら探しても見つからない。探偵は帰る場所を無くした。そして、世界探偵委員会連盟や先輩からの指示で世界の色ろなところに出かけていく。帰る場所を無くした探偵はそうして生きていくしかなかった。
Posted by ブクログ
場所は変わりゆく。
例えばコロナ禍の煽りを受けてお気に入りの店が閉店する。母校が老朽化によって取り壊されて新校舎になる。かつて生活していた場所から離れて暮らすことになっても、その場所にも等しく時間は流れている。思い入れがあったかつてのあの場所にはいつしか帰れなくなり、時間が止まったままの形で私の中に断片的に留まってしまう。
成長の過程で嫌な経験を多くすると、その経験をした場所そのものを憎み、二度と帰るものかと思ってしまうように、感情と場所は強く結びついている。大きな枠組みの末端で理由も分からず翻弄され、色んな場所を転々としながら、それぞれの場所で誰かに出会って会話をし、いつしかそれが記憶となり、それぞれの場所が感情を伴って私という人間を形成していく。
しかし時間がどれだけ経っても、たくさん経験を積んだとしても、生まれ育ったあの場所はあのときのままの形で私という存在に強く根ざす。
場所を失うことは自分の一部を失うことに等しい。人生で帰らなくなった場所、会えなくなった人、また故郷に帰ることができない人がいるということ。読みながらたくさんの場所と人に想いを寄せていました。
Posted by ブクログ
柴崎友香さんの新刊です。本作も、柴崎作品の特徴とも言える「多層的に重なる時間と場所」がテーマの作品でした。読み手に多くの解釈が可能な余白を残し、不思議な面白さを提供してくれます。
全章とも「今から十年くらいあとの話」の前置きで始まる本作は7章立てで、主人公は探偵の「わたし」。この「わたし」の未来を、(過去形で)今語るという複雑な時間軸で描かれるのです。
さらに、「わたし」はある日突然、(探偵事務所兼自宅につながる路地ごと消え去り)自宅に帰れなくなり、「世界探偵委員会連盟」の指示で国を跨いで移動し、国にも帰れません。
こんな状態で、探偵として人々や土地の過去の痕跡を探し調査する、という風変わりな物語です。
過去(回想)、現在、未来が重なったり混ざり合ったりする場面、その曖昧な境目を行き来したり、人の記憶にも出入りしたりする描写が、不思議な感覚だけどもそこが面白いと思えました。でもこの辺が評価の分かれるポイントでしょうか?
目指す場所の曖昧さと、未来だけど今ここに居る明確さの対比が絶妙です。柴崎さんは、双方向の時間の流れをつくることで、想像世界が格段に広げられることを示してくれた気がします。
ザ・ブルーハーツの『終わらない歌』のように、時は流れても人は歩みを止めず、人生は続いていくのですね。
Posted by ブクログ
ミステリのような、ファンタジー小説のような、近未来を舞台とした文学のような、重心が独特の位置にある小説。
スノコルミー社が結局何だったのかよく分からなかった。
Posted by ブクログ
最初の1行目から困惑。どう読めばよいのかと考えながら、途中から雰囲気を楽しむ本だなと切り替えて読んだ。不思議な異国のようなでも知ってる国のような。
Posted by ブクログ
ニュアンス小説。
なんだか曖昧で、分かりそうだけど、やっぱり分からなかったな。
今実際に世界で起こってることが書かれてるかと思えば、未来のことを示唆してる?と感じる描写もあれば、過去にあった話かもしれない。
時間も時空もゆらゆらしてるような浮遊感のある本でした。
Posted by ブクログ
SNSで絶賛されてたので
掴みどころがなくてふわふわ読んでたら終わってしまった。
自分の知識や感性の問題なのか、色々な方のレビューを見るとそんな事を思って読んでるのかと…
Posted by ブクログ
誰かが「すごく良かった」って言ってた
そんな気がしたので買った本
ちょっと期待しすぎてたので
なかなかおもしろくならんなぁって
我慢しつつ読んでたら
読んでたの忘れてて
読んだ内容覚えてないなって
また最初から読み直したら
割と好きじゃんこれ
ってなってそのまま最後まで読めた
音楽が必ず出てくるなぁってことと
名前になにかしらの共通点があるなぁってことと
なんとなく場所はあの辺かな
ってことくらいしかわかんなかったけど
もしかしてもっといっぱい
比喩とかオマージュとかあったのかも
この映画、なんだ?ってググったし
そういうの探しながら読める人は
きっと楽しいと思う
別に楽しい心躍る話ではないけど
こういうの好きそうな人には
これどうぞ!ってオススメできるけど
何読んでるかわからん人には
オススメしない本でもある
星は3つ
Posted by ブクログ
独特な世界観の物語。
突然事務所兼自宅に帰ることが出来なくなった探偵の「わたし」。その「わたし」が世界各国で探偵の依頼を受けるという不思議な設定。
「今から十年くらいあとの話。」から始まる7つの物語は、未来の話のはずなのになぜか過去形。そしてどこの国が舞台かもはっきりしない。名前や地形から「ここの国かな?」と想像しながら読んだ。
読み終えても、まだ霧がかかったような感じでもやもやしている。このすっきりしないのも面白さなんだと思うけど、私はちょっと読みこなせなかった。
Posted by ブクログ
自分の事務所へ戻る道がわからなくなってしまった探偵の物語。依頼を受けては世界各地を移動し、仕事をこなし、また別の土地へと向かう。物語は依頼ごと(国ごと)に章立てされており、あっさり終わるものもあれば、トラブルめいた状況で幕を閉じるものもある。そのたびに環境や状況の変化は感じられるが、探偵の心境は終始淡々としている。多くの国を巡りながらも、依頼の内容はどこか似通い、似たような場所が現れる。波風が立っても結局は元に戻っていくような、不思議な反復を感じる作品だった。
作品全体を通して、どことなく比喩めいたものは感じられたが、その感覚をうまく言葉にすることが難しい。