あらすじ
最高。何度も何度も読んだ。この小説を読み直すためにだけでも、十年先まできっと生きていたい。ーー斎藤真理子
『続きと始まり』『百年と一日』が話題の柴崎友香による全く新しい「探偵小説」
「世界探偵委員会連盟」に所属する「わたし」は、ある日突然、探偵事務所兼自宅の部屋に帰れなくなった。
急な坂ばかりの街、雨でも傘を差さない街、夜にならない夏の街、太陽と砂の街、雨季の始まりの暑い街、そして「あの街」の空港で……「帰れない探偵」が激動する世界を駆け巡る。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
探偵の物語だが、ミステリーでもサスペンスでもない不思議な作品
主人公は世界探偵委員会連盟に所属する
ある日突然に自宅に帰れなくなり、世界中を飛び回ることになる
そして、いろんな依頼の対応をしていく中、様々な人との出会いが繰り返される
何というか、哀愁が漂う作品だった
Posted by ブクログ
不思議な気持ちになるお話。
心許なくなり、自分も主人公の探偵と一緒に小道を彷徨い歩いているような気持ちになる。
だんだんとこの探偵の事が頼りなく思えてきたり、何のために依頼をこなしているのかわからなくなったり、確固たるものなんてないのかもと思えてきたり、関わってくる人達が実は探偵で、調べられているのは主人公の方ではないかと思ったり。
時にはこういうお話を読むのもいいなと思いました。
Posted by ブクログ
タイトルは「帰れない探偵」なんだが、ミステリーではないんだが、とてもミステリアスな小説。
借り受けた探偵事務所に帰ることができなくなった女探偵が主人公、彼女は生まれ育った母国にも帰れない事情を持つ。なんとなくどこの国か分かるような、でもちょっと違うような各所を転々としつつ、その場所場所で少し非現実的な仕事を請け負っていく物語。
異国情緒がある文体の中に、現実っぽいディストピアを予感させる出来事を散りばめ、デジタルデータなど最先端技術を手中に収める巨大企業「スコノルミー社」が暗躍する管理社会への危惧も描く。
架空の世界を扱ったフィクションだからと、油断しておいて最後に出てくる「終わらない歌(ブルーハーツ)」…探偵が帰れない、あの居心地の悪そうな国はやっぱり日本やったんやな。
Posted by ブクログ
この作品の『今』っていつなんでしょうか?
ずっと、今から10年くらいあとの話で、パラレルワールドなのかと思いきやそうでもない感じ。
タイトルロールの『帰れない探偵』は家を見失い(?)各国で依頼をこなしながら、異邦人のごとく漂っています。
訳ありの依頼人や連盟の指示に翻弄されたり、危険な身にあったり。
大きな波はなく、淡々と、すこしずつ進展していくストーリー。
職業柄あまり自分出さずに、感情に振り回されることもなく、どこか諦めている主人公ですが、最後の章で少しだけ、そのあたりがほぐれていく感じがしました。
探偵ものとして読むと裏切られた感じがするかもです(笑)
Posted by ブクログ
柴崎友香さんのエッセイを読み、どんな文章を書かれる方なのか興味があって読みました。
結果、とても好きでした。
今から10年後の話、というのも面白かった。
寝る前に少しづつ読み進めるのにちょうど良かったです。
途中、現実の世界にも通じるような描写が現れて、これは現実なのかな、物語なのかな、とよく分からなくなる感じも好きでした。
結局、今私が見てる世界もそうだよな、と思ったり…本当に現実世界として実在してるのかどうかなんて分からない、見ようとしてることしか見れないよな、など考えながら読んでました。
データで管理される世界も、もう少し先の未来という感じで、というかもう起こってることですかね。昔からの話す言葉と音楽やリズム、遺伝子というか染みついたものって消えずに残ってるよなーとか、
やっぱりそこに動かされる何かがあるよな、そことの対比というか、そこら辺も面白かったです。言語化がうまくできてないですが…
帰れない探偵というのも物理的にも帰れない、自分の気持ちというか自分を創り出してきたものを忘れてしまうとか、そういう意味の帰れないもあるのかな?最後言われるがまま、何のためにやってるか分からないまま、指示通り動くところの苦痛感とか、今までの依頼での主人公の心情との違いもそういうことかな、と。そしたら、最後は物理的にもアイデンティティというかそういう意味でも自分を取り戻す瞬間になったのかな、そういうことなのかなと今書きながら思いました。
私はやっぱり余白が多いというか、読んだあと色々こうだったのかな、とか考えられる話が好きみたいです。
1回では少し理解できてないかもしれないです。
もう1回読みたいなと思います。
Posted by ブクログ
個々の記述は詳細で具体的だが、非常に抽象的。ブコウスキーの“セリーヌ”に「退屈がゲイジュツだと思ってやがる」と言われそうな内容。目線は散漫で意識は分散し、刻々変化する形の無い実体は捕まえられない。時折、形になる時もあるが。
2章まで理解不能だったが、3,4章からわりと面白くなってはくる。絶望、苦悩、愛憎、復讐などは表面的には描かれず、主人公も独白キャラではなく、あまり感情を露にしないので、その手のドロドロしたキツさがなく、一種の軽さがある。
しかし、雰囲気頼みの架空の旅行記かと思えば、かなり政治的でジャーナリズム的側面があり、著者は「わたし」を通して世界を説明しているようだ。トランプやパランティアの所業を予見しているのは鋭い。
なぜかオフィスが消失するという設定で始まり、故郷は鎖国して、主人公は二重に帰るべき場所のない喪失感を抱えつつ、地道に仕事をこなし続けグローバルに漂流する。
作中では不気味な怪事件、様々な文化圏の暮らしが登場し、背景には政治の動乱、不安定な社会、強い影響力を持つグローバル大企業の台頭などがあり、探偵業を通じてその末端に関わることになるが、半ば旅行者のように、その中心からは外れた周縁を歩く。しかし密かに革命の夢を見ている。
帰れない場所、無くなった場所、二度と会えない人、記憶にある風景ない風景。これこそハン・ガンの言う「白いもの」だ。
絆、繋がり、土地に頼らない生き方は歴史に依存していないといえる。それは実体なき不安定な影なのか。
「わたし」は探偵の仕事を通して良くも悪くも他人の人生の通行人となった時、一瞬歴史と交差する。そして歌が、音楽があり、その瞬間の場所、景色の中に居る私こそが100%存在保証された私である。
……などと思ってたら最後のオチで、白紙に戻された気分になった。
一体なんの話だったのか。やっぱりわからない。主人公は歴史の一部になりたいようだ。それは自意識的革命なのか社会的革命なのか。はたまた「フェス」なのか?感想も帰宅不能になってしまった。物語は不安定だ。