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Posted by ブクログ
著者の作品は、いかにも芥川賞狙いの100からせいぜい200枚強程度の中編が多かった。
また、たぶん作品の性質上中編が合っている。
その著者にしては、結構な長編。(連載雑誌を購入していたが、その段階では追いかけられなかった。)
ひょっとすると2014年に芥川賞を取ったからこそ、力を抜いて長編に取り組めたのかもしれない。
え!? 柴崎友香がループ系を!? え、しかも家族を!?
という驚きはあらすじを一瞥して感じていたことだ。
村田沙耶香が書き続けてきたような、いわゆる毒親モノを、著者が書くのは初めてではなかろうか。
著者はむしろアーバンな関係性に視野を絞り、興味の対象も視覚情報と活字情報一辺倒だった。
それが毒親やら過干渉やらDVやらネグレクトやら、厭さやら嫌悪感やら気持ち悪さやらライムスター宇多丸の言葉でいう「ヤダみ」やら、まで描いた。
筆者にしては挑戦……、とここまで書きながら、いや無謀な挑戦じゃないな、と思い直した。
だって視点人物は著者ならではの性格(従来の作品で貫かれてきた)から抜け出ていないのだ。
これを逆に考えると、従来の作品の淡白さの理由に、親子関係の歪みをそれなりに求めてもいいのだと、遡及的に言質を得たと、考えてもいいのかもしれない。
つまりデビュー作以来の淡白さを解釈しなおす機会をもらったとも、いえる。
ただし毒親やらDVやらといった安っぽい題材を取り入れつつも、ちゃんと柴崎友香味になっているので、やはり読んでよかったなー、と。
言い換えると、著者の作品群は茫漠さが味だが、この長編では長編ならでは、キャラの味つけや増改築されゆく舞台の面白みや、でぐいぐい引っ張ってくれた。
ところで著者の作品群においては視点人物の異様さが仄見えてくるのが面白いが、
「ふ、ふ、文さんは亀だって、面倒見てるじゃないですかあああっ! おうおああああっーっ!」
という台詞は、異様さが突き破ってきて、思わず笑ってしまったよ。
Posted by ブクログ
同じ1日を繰り返すループに入った時、同じ出来事でも視点によって見え方が全く違うのが印象的。人によって物事の捉え方が違うのもこういうことなのかなと思う。
そしてループしたとしても行動は変えられない、やり直したいと思っていてもどうしようもできない様が描かれている場面が、現実でも1日1日が同じ繰返しのように感じるけど、後から変えることはできないものであって、一瞬一瞬を後悔しないように行動していく必要があるんだと考えさせられる。
主人公が、気の利いた会話ができればいいのにと心の中で思っている描写が何度も出てくるが、私にそっくりと思った。あのときこう言えればよかった、って後から考えても確かにやり直しはきかないんだよな。
Posted by ブクログ
アパートの契約更新に伴い、知り合いの木村家の空いた一部屋に移ることにした田中真紀子。増改築を繰り返された木村家の、不思議な二階に引っ越してみると、木村家は木村イチロー以外、常時薄着で建築業の父、イラストレーターの姉、映画監督を目指す妹、そして現役女優のみすずと、予想外に個性的な人たちの集まりであった。どことなくお互いよそよそしい家族と、自由奔放で頻繁に家を空けるみすず。真紀子を介してか介せずか、家族が少しずつ動いていく。
うーん、不思議な感覚の小説。のっけから妙に読みにくい部分があると思ったら、芥川賞作家なのね。わざとなのかわざとでないのかわからぬが、「なになにが何々をして、なになには何々で、なになには・・・」といった具合に、半ページ以上が一つの文になっていて何なんだ?と思ったと思えば、会話でどんどん進む部分がある。
また、突然イチローには、ある1日を2回繰り返す能力があるであるとか、姉の文にはワープする能力があるとか、ほんとかどうかよくわからない話も出てくる。まあそこも話のキーになっていくわけであるが。
木村家のあっけらかんとした、一方で他人のような家族はドライでよい。しかし、なかなか語られない田中家については、なにか闇があるのだろうなあと引っかかりながらストーリーを進めることになる。
序盤では文章が長すぎて読みづらく、なかなかページがめくれないが、あるところからぐんぐん読み進められるようになったのは、慣れなのかそういう文章なのか不明。
それぞれのキャラクターや立ち位置、関係性が、希薄であってもわかりやすい部分があるため、ある意味純文学的な、例えばオカヤイヅミの漫画のような感じで、「理由がわからなかった」となる人はほとんどいないだろう。漫画化しても面白いかもしれない。
ただねえ、映画教室は登場当初からなんか嫌な感じではありましたね。こういうコミュニティは苦手だなと。
Posted by ブクログ
普通より少し波乱に満ちた人生と、それぞれに少し不思議な能力をもつ三兄弟の家に間借りすることになった主人公。主人公もまた複雑な過去を持ち、他人との距離感をつかめずにいる。一番共感したのはその主人公の、優しさや冷静さや諦めを含みながら周りを観察するその視点。自分やまわりを客観的に見つめながらも、思う通りの行動はできないということはよくあるものだ。。
最後、主人公が、ぎこちなさを伴いながらもちゃんと自分のしたいことを言葉にできたのは貴重な瞬間だった。それと、主人公はその優しさ、繊細さゆえに間借りしている家族たちの信頼を少しずつ得ているようにも見えたので、それもまた希望にうつった。
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