柴崎友香のレビュー一覧

  • わたしがいなかった街で

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    人と人とが出会えない瞬間のやるせなさが大変よかった。人生のとても悲しい部分をよく切り取れていると思う。淡々とそれを受容する主人公がまたいい。
    コミュニケーションの苦手な主人公は同じようにして正社員という地位ともすれ違い、バーでは同僚の女の子とすれちがい、別の登場人物に物語の語り手を任せて消えてゆく。イヤミスに似たしんどさだけど、エキセントリックでないほどよい苦味。どろどろの水たまりで転んで尻餅をついてしまい、そのまま曇った空を見上げてぼーっとしているようなここちよさ。
    もう一つ収録された短編もよかった。端の上にたって橋が流されていく感覚にとらわれてしまうのってすごくこわいよね。

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    2020年02月26日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    短編小説。
    中には情景がぼんやりしたまま終幕になったものもあるが、大半は程よく心地良い作品。
    日本には暦のほかにこんなにも豊かな四季の表現があると温かさも得た。

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    2020年02月09日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    12名の著名な作家の短編が72候の解説と一緒に読める、ある意味で贅沢な本だ.重松清の鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)は父親としての最後の旅行で息子の翔太を見つめる親心がうまく描写されている.筒井康隆の蒙霧升降(ふかききりまとう)は戦後の風物詩を散りばめた彼独特の文章でしっかり意見を述べているのが良い.堀江敏幸の熊蟄穴(くまあなにこもる)は菱山の取材活動のなかで村の古老たちとの奇妙な会話が面白かった.

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    2019年12月08日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    物語ではなく、読書そのものと、日本の繊細な四季の移ろいを味わう一冊。初めて読む作家さんもいて楽しかった。

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    2019年12月05日
  • 待ち遠しい

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    誰かと関わると、その先の人とも関わることがあって、それで生活は少し変わっていく。居心地の良い距離で、それぞれの生活を大切にしていきたい

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    2019年11月29日
  • 寝ても覚めても 増補新版

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    増補新版で再読しました。
    面白かったです。とてももやもやします。
    旧版→映画→増補新版と接してきたのですが、ずっとヒリヒリしました。
    運命だ、と思った相手がふたり。同じ顔で。
    登場人物たちのあれこれと共に風景が執拗とも言えるほどに描かれていて、人は視覚で生きている、ということを感じました。
    朝子が一目惚れするシーンも、麦のときも亮平のときも一度に全身を見ているし。
    でも朝子の友人の春代は、麦と亮平は同じ系統だけどそんなに似ていない、と言ってるので、好きだから似て見えるのかなと思ったりします。
    消えていた麦が朝子の前に現れてからはもう怖かったです。そっちに行ってはダメだ、と思いながらも、でもきち

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    2019年10月30日
  • 待ち遠しい

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    こういう家族ではないけど、ゆるく繋がるご近所づきあい、他で読んだような気がするし、映画で見たような気がする。こういう題材、最近流行っているのかな。
    独身のままだったり、結婚したけど一人になったり。一人は気楽でいいけれど、いい時ばかりではない。ゆるく人と繋がっていたい、そういう人が多いのかも。シェアハウスとかも。わかる気はするし、そういう小さなコミニュティみたいなもの、うらやましい気持ちもある。春子さんやゆかりさんが近所にいたら楽しく心強いだろう。

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    2019年10月28日
  • 公園へ行かないか? 火曜日に

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    小説なのにエッセーのように読んでしまった。
    作者のこの時の体験をテーマにした講演を聞いたということもあり、すべて実話であるかのように思ってしまった。
    ご自身でも英語があまりできないとおっしゃっていたが、そんなに得意でない状態での3ヶ月、できることとできないこと、とてもリアリティがあった。
    英語もっと頑張って、普通の(しかできない)短期留学したいなぁ。

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    2019年08月23日
  • パノララ

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    著者の作品は、いかにも芥川賞狙いの100からせいぜい200枚強程度の中編が多かった。
    また、たぶん作品の性質上中編が合っている。
    その著者にしては、結構な長編。(連載雑誌を購入していたが、その段階では追いかけられなかった。)
    ひょっとすると2014年に芥川賞を取ったからこそ、力を抜いて長編に取り組めたのかもしれない。

    え!? 柴崎友香がループ系を!? え、しかも家族を!?
    という驚きはあらすじを一瞥して感じていたことだ。
    村田沙耶香が書き続けてきたような、いわゆる毒親モノを、著者が書くのは初めてではなかろうか。
    著者はむしろアーバンな関係性に視野を絞り、興味の対象も視覚情報と活字情報一辺倒だ

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    2019年08月19日
  • ビリジアン

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    ネタバレ

    色縛りの連作。
    実は緑よりも赤のほうが登場している印象あり。
    というのは、地の文が「微温的緑」のままだからこそ、火や火事や血や夕焼けの赤が衝撃的なのだろう。
    そいえば語り手も相手も結構熱い台詞を吐いている(どうやったら、ら、かっこよくなれるんかなって、とか、意思があればどこにでも行ける、とか)。
    緑と赤の落差、微温と熱の落差、が本全体を不穏にしている。

    そして、やはり文体の凄まじさ。
    徹底的に過去形しか使わない「寝ても覚めても」と同じ系列だ。
    そしてまた、記憶。
    決してその時期だけにフォーカスしているわけではなく「その数年後にこうなったからこのときはこうだった」といった行き来も、なきにしもあ

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    2019年07月26日
  • フルタイムライフ

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    割と古い会社の話。というか、会社に勤めるということのお話。
    こういう社会のシステムに怒るというのもアリなんだけれど、そうじゃなくてその中で自然体に生きていくというのもまた生き方のひとつ。
    ほどほどに、けど潰れない程度に全力で。
    超幸せなエンディングだった。スキップしちゃいそう。

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    2019年07月17日
  • 春の庭

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    映画で時々見かけるドリーのような手法とでも言うのか、あるいは今風のドローン撮影のような感じと言う方が良いのか、視点が緩やかに変わっていくのに感覚的について行けず一寸苦労しましたが、巻き戻して(言い方が昭和…)再度読み直すなどすると慣れました。内容はともかく、豆腐への収斂がとても面白く印象的でした。

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    2019年03月05日
  • つかのまのこと

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    あたたかい、さみしい、せつない、、、色んな感情を抱きながら読みました。
    1人で静かな部屋で読むと、すっと入り込んできました。

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    2019年02月09日
  • きょうのできごと、十年後

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    ネタバレ

     映画になった「寝ても覚めても」を観て、「きょうのできごと、十年後」(河出文庫)が気になり始めて、買ったはずなのか、買ったつもりなだけなのか、どこを探してもなかったので新刊を買ってきて、まず、読んだ。すると、2000年に出て、映画も、たしか見た「きょうのできごと」(河出文庫)が気になって探すと、これは書棚にあって、もう一度読んだ。

    「きょうのできごと」は、一応、柴崎のデビュー作ということだから、読み始めて18年もたつんだと思って、今、読み終わった文庫本をしげしげという感じで眺めていると表紙の写真が妻夫木聡と田中麗奈。映画のコンビ。ぼくでも名前を知っている数少ない俳優なのだけれど、田中という人

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    2019年01月29日
  • 公園へ行かないか? 火曜日に

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    世界には、自分の生まれて育った国とは全く違う歴史や文化背景を持つ国がたくさんあるということを知識として知っていることと、他の国へ実際に赴いてそこで生まれて育った人とのコミュニケーションを通して理解することは次元の違う話なんだと思った。
    残念ながら私は日本以外の国の歴史や文化に触れてみたいという好奇心を持つことも、海外に行った経験もほとんどなく、それでも世界中からのニュースを日々見聞きできるけれど、もし他の国で過ごしたりそこの国の人と過ごす経験をしていたら、世界の見え方は変わっていたんだろうか。

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    2018年12月19日
  • 青空感傷ツアー

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    ネタバレ

    私の好みから言うと、こういうゆるふわガーリーな筋はむしろ苦手だ。
    が、柴崎友香に限定して、惹かれてしまうものがある。なぜだろう。

    一見、音生という奇矯なキャラクターや、旅先のきれいな風景、が読みどころに感じられるかもしれない。
    そういう表面的な読み方で満足することもできる、のだろう。
    が、私は柴崎友香が何気なく書き記す、視覚描写の的確さ、に惹かれているのだと感じながら読み進めた。(つまりは保坂和志と長嶋有の解説の通りなのだが。)

    例のごとく読書感想をネットで漁っていて、膝を打つ記事があった。
    (以下引用)
    いわゆる“行きて帰りし物語”的な、旅を通しての成長、変化が描かれる小説ではない。

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    2018年12月18日
  • 寝ても覚めても 増補新版

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    ネタバレ

    朝子は優柔不断でひどい人かもしれないけれど、恋愛の局面でそういうのが出てこないだけで、誰にでも(私にも)そういうずるさはあるだろうから、朝子のことを責められないなぁ…と思った。誰に何を言われても、何もかも失っても、自分を貫く強さを見習いたいと思う。

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    2018年12月03日
  • 寝ても覚めても 増補新版

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    ネタバレ

    何でこんな映画を観たのだろう、とまず思いました。
    一人でどこか遠くへ行きたくて、久しぶりに何か映画を観に行こうと決めました。
    映画は内容は本当に何でもよかったので、当てずっぽうでこれにしました。
    内容を知っていたらむしろ観なかったと思います。

    ストーリー云々より、主人公たちは、みんな若くてきらきらしていました。
    まぶしかったです。
    やっぱり若者の恋愛映画なんてやめておけばよかったのかな?と悲しくなってしまいました。

    帰りのバスの中から見た街中のクリスマスのイルミネーションの夜景までとってもまぶしすぎて、見ていて淋しくなってしまいました。

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    2018年11月12日
  • 寝ても覚めても 増補新版

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    主人公・朝子の視点を通した物語であり、それ以外の描写は一切出てこないので、読み続けるうちになんとなく嫌な気持ちが生まれて、読み続けるのがしんどくなる。が、あえてこの作風を評価したいとわたしは思います。

    解説でラスト30ページくらいからの弩級の衝撃がすごいと書かれていたけれど、感覚的に言うと爆弾の紐に着火されていた火花がじわじわと迫ってきていたことに気付かず爆発したって感じ。とにかく気持ち悪いのです。

    恋は盲目、恋に恋すると人間腐ります。

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    2018年10月28日
  • つかのまのこと

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    とても淡々と進んでいく、東出昌大さんの写真多めの本ですが、好きでした。
    今日も東出さんが出演されている落語の番組を見ていたので、一人称のこのお話が東出さんの声で再生されました。
    短いお話なのですが、光と不思議な時間の流れがあります。
    幽霊の「わたし」のこれからをぼんやりと考えてしまいます。

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    2018年10月21日