柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
難解な作品だな、というのが感想。
途中までは何も起こらない、だけど何も起こらない故の面白さみたいなものが感じられて、スイスイと読み進められたのだが、作品の終盤近く、視点が三人称から「太郎」という登場人物の姉に唐突に変わってからは、作品の様相がガラリと変わってしまったように感じられた。
視点どころか、過去・現在といった時系列も入り組んでしまったように感じる。
しかも視点は姉に変わっているはずなのに、いつのまにか三人称、つまり変わる前の状態に戻ってしまっているようにも読める。
ネットで検索してみると、この視点の変化については色々な意見が出されているのだが、「これだ!」という解釈は(当然のことながら)出されてはいない。
少なくとも、作者は何かの意図をもってこういう書き方をしているのだから、単純に「読者を驚かせるための効果」などという軽視の仕方は出来ないだろうと思う。
いずれにしても、この視点が変化してからの二十数頁が存在するおかげで、僕にとってこの作品は「何がなんだかよく判らないけれど、何かが間違いなく存在している」魅力ある作品となった。
そういう意味でも(少なくても僕という読者にとっては)この視点の変化は必要不可欠だったことになる。
書き忘れそうになったけど、第151回芥川賞受賞作品である。 -
Posted by ブクログ
至極退屈でドラマがなく、かすかに起承転結がある感じ。いいねー。
合コン、クラブ、といった若者の普通の日常が描かれていて、森見登美彦みたいな非モテ芸・自虐芸しか引き出しがなくて笑えない感じになってきているような作品群よりも全然リアルな青春。そりゃレコード集めたり写真集めたりするわいな、普通の人間は。くっつき別れたり。
そして、一々屈託にフォーカスせずに淡々と進行する人間関係もいい。眉間にしわ寄せて苦悩するばかりがおブンガク様ではない。
何より、登場人物が別に善人でないのか素晴らしいね。その点、原田マハより全然好きだなー。
保坂和志に近いかも、と思った。女子で、大阪で、若干リア充=人並みに努力してる人たち、な保坂和志。 -
Posted by ブクログ
柴崎さんの本は「ビリジアン」に続いて二作品目。
なんかいい。
なにがいいのかよくわからないけどなんかいい。
どこにでもいそうなひとたちのなんとはいうことのない日常。でもその日常のひとつひとつが大切に描かれていて読んでいるうちにとても愛おしく思えてくる、そんな感じ。
どの作品も好きだけど、いちばん好きなのは「ここからは遠い場所」かな。なんというか主人公の境遇に共感するのと、ちょっとしたミステリー要素があるのもおもしろい。主人公の名前に関してアレ?って思ったのもポイントだった。
あと印象深かったのは「地上のパーティ」。唯一主人公が男性なんだよね。
電車の中で読んでて柴崎さんの他の作品が気になってきて途中下車して書店に寄って数冊購入。これは完全にハマっちゃったね(^^;) -
Posted by ブクログ
読んでいると物事を何でもあるがままに捉えられるようなリラックスした気持ちになる。
人物たちがものすごく自然。存在もセリフも心情も周囲を見る目も全てが自然で、物語的でない。そこが安心感を与えてくれるのかもしれない。特に人物が見ているものの描写、視点の描写が特徴的だと思った。小説的じゃないというか、物語を構成するための意図的な取捨選択が少なくて、その人物の見ている景色が本当にそのまま描写されているような感じがする。そのおかげか、小説の中の人物たちが私たちと同じ世界に実在しているように感じられ、親近感が湧く。小説の世界に没頭しているのに別世界感が全くなくて不思議な感覚だ。
この小説から感じる温かさや安心感の正体はなんだろうと思っていたら、解説に書いてあった。
『この世界のあやうい偶然と均衡の美しさ。』
まさにそれだ。強い主張や面白い展開はないが、偶然に満ちた日常の美しさを再認識させてくれる素晴らしい小説だと思った。 -
Posted by ブクログ
三人の女友達。
それぞれの暮らしがパラレルに描かれていく。
それぞれの今を重ね続ける中、三人が顔を合わせる機会はほとんどない。三人の時間は重なることもなければ見えないところで関わったりすることもほぼないに等しい。
抱えるものも異なるし、互いのことを思いやり心配するほどの濃密な繋がりもあるわけではない。
誰の日常にもあり得るくらいのトラブルや小さな変化を経験しながら、それぞれが過ごす一年。
現実世界を切り取って、そのリアリティを保ちながら描かれていく叙事詩のような作品だと感じた。そう、時系列で静かに重ねられていく三人の女性の日常は平坦で抑揚はなく、気づけば逆にそれが詩的だなあ、と思った。
美しいものが一つも描かれず、三人の人生は平凡で、そこに織りなされる新たな世界観…など皆無なのに。
この作品は美しい。そう思う。
リアリティの清々しさ、潔さのようなものを、初めて小説から感じとった。
美しくないのに、美しい。キラキラしている。