柴崎友香のレビュー一覧
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読んでいると物事を何でもあるがままに捉えられるようなリラックスした気持ちになる。
人物たちがものすごく自然。存在もセリフも心情も周囲を見る目も全てが自然で、物語的でない。そこが安心感を与えてくれるのかもしれない。特に人物が見ているものの描写、視点の描写が特徴的だと思った。小説的じゃないというか、物語を構成するための意図的な取捨選択が少なくて、その人物の見ている景色が本当にそのまま描写されているような感じがする。そのおかげか、小説の中の人物たちが私たちと同じ世界に実在しているように感じられ、親近感が湧く。小説の世界に没頭しているのに別世界感が全くなくて不思議な感覚だ。
この小説から感じる温か -
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三人の女友達。
それぞれの暮らしがパラレルに描かれていく。
それぞれの今を重ね続ける中、三人が顔を合わせる機会はほとんどない。三人の時間は重なることもなければ見えないところで関わったりすることもほぼないに等しい。
抱えるものも異なるし、互いのことを思いやり心配するほどの濃密な繋がりもあるわけではない。
誰の日常にもあり得るくらいのトラブルや小さな変化を経験しながら、それぞれが過ごす一年。
現実世界を切り取って、そのリアリティを保ちながら描かれていく叙事詩のような作品だと感じた。そう、時系列で静かに重ねられていく三人の女性の日常は平坦で抑揚はなく、気づけば逆にそれが詩的だなあ、と思った。 -
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【本の内容】
職場の同僚と女の子のかわいさについて語り、グラビア誌の「永遠のセクシー女優名鑑」に見入ってしまう実加。
美術大学時代の友人たちの行く末を思いつつ、自宅で催した女の子限定カフェなど、今ここに一緒にいることの奇跡のような時間をみずみずしく描いた表題作をはじめ、著者の世界が凝縮された作品集。
[ 目次 ]
[ POP ]
大阪を舞台に、28歳の実加と友人たちのさりげない日常を描く表題作が心に染みる。
職場や居酒屋や自宅カフェでの何気ないやりとり。
とるにたりない些細なことこそが奇跡的な瞬間となって人生を紡いでいく。
また、性愛の視点ではなく普通に「かわいい女の子やきれいな -
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【本の内容】
人を思う気持ちはいつだって距離を越える。
離れた場所や時間でも、会いたいと思えば会える。
「だって、わたしはどこにでも行けるから」―遠い隔たりを“ショートカット”する恋人たちのささやかな日常の奇跡を描いた、せつなく心に響く連作小説集。
[ 目次 ]
[ POP ]
遠距離恋愛をしていたとき、100万円くらい払ってもいいから(払えないけど)「どこでもドア」が欲しいと毎日思っていた。
それが駄目なら「取り寄せバッグ」でもいいと思っていた。
ドラえもんが頼りにならないならこの際エスパー魔美にでもなるから、とにかくこの状況をどうにかしてくれ、枕を濡らしていたのを思い出した。