柴崎友香のレビュー一覧

  • わたしがいなかった街で

    Posted by ブクログ

    戦争のビデオをただただ観続ける主人公(?)の砂羽の行動とその内面に最初は戸惑い、不気味な小説だと感じていた。

    しかし、読み進めていく中で少しずつ芸術作品としての小説が、その構造から見えてくる。

    ある場所で、ある時間に、ある人がそこにいることの偶然性及びいなかった可能性とその世界線の世界について、様々な場面で考え続ける砂羽。

    なぜそのことについて考えるのか、砂羽にすらわかっていない。ただ、誰かとそのことについて話したいと思っていて、しかしうまく話せない、うまく理解してもらえない。
    主人公は自分という存在の不確実性について、過去の事実に思いを巡らすことによって実感している。

    また、葛井夏という砂羽の大学時代の友人の妹が小説内に登場するが、2人は出会うことはない。

    しかし、夏の身に起きた出来事はしっかりと語られる。そして、その出来事は砂羽と夏の兄との友人である中井という人物が媒介することで砂羽に伝達される。

    「砂羽がいなかった街で」、違う時間を過ごす二人。
    砂羽が考えていたことが『わたしがいなかった街で』という作品世界の中で描かれることによって、この小説は言葉によって織りなされた芸術作品と見事になっている。

    不思議で少し不気味な小説世界と新鮮な読書体験ができるいい小説だと思います。

    0
    2026年08月13日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    不思議な気持ちになるお話。
    心許なくなり、自分も主人公の探偵と一緒に小道を彷徨い歩いているような気持ちになる。
    だんだんとこの探偵の事が頼りなく思えてきたり、何のために依頼をこなしているのかわからなくなったり、確固たるものなんてないのかもと思えてきたり、関わってくる人達が実は探偵で、調べられているのは主人公の方ではないかと思ったり。
    時にはこういうお話を読むのもいいなと思いました。

    0
    2026年08月05日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    タイトルは「帰れない探偵」なんだが、ミステリーではないんだが、とてもミステリアスな小説。

    借り受けた探偵事務所に帰ることができなくなった女探偵が主人公、彼女は生まれ育った母国にも帰れない事情を持つ。なんとなくどこの国か分かるような、でもちょっと違うような各所を転々としつつ、その場所場所で少し非現実的な仕事を請け負っていく物語。

    異国情緒がある文体の中に、現実っぽいディストピアを予感させる出来事を散りばめ、デジタルデータなど最先端技術を手中に収める巨大企業「スコノルミー社」が暗躍する管理社会への危惧も描く。

    架空の世界を扱ったフィクションだからと、油断しておいて最後に出てくる「終わらない歌(ブルーハーツ)」…探偵が帰れない、あの居心地の悪そうな国はやっぱり日本やったんやな。

    0
    2026年08月05日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    この作品の『今』っていつなんでしょうか?

    ずっと、今から10年くらいあとの話で、パラレルワールドなのかと思いきやそうでもない感じ。

    タイトルロールの『帰れない探偵』は家を見失い(?)各国で依頼をこなしながら、異邦人のごとく漂っています。
    訳ありの依頼人や連盟の指示に翻弄されたり、危険な身にあったり。
    大きな波はなく、淡々と、すこしずつ進展していくストーリー。

    職業柄あまり自分出さずに、感情に振り回されることもなく、どこか諦めている主人公ですが、最後の章で少しだけ、そのあたりがほぐれていく感じがしました。

    探偵ものとして読むと裏切られた感じがするかもです(笑)

    0
    2026年07月19日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    不思議な小説だった。 具体的な固有名詞は出てこず、架空の設定でありながら、どこか現実とリンクするような国や場所が登場する。まるで現実とファンタジーの中間をふわふわと彷徨っているようで、自分も探偵と一緒に旅をしているような感覚になれた。読み終えて、帰る場所がまだ存在している自分にちょっと安心する(笑)

    0
    2026年06月28日
  • きょうのできごと 増補新版

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    京都で過ごした学生時代を思い出すような話だった。酔って人の髪切るまきちゃん面白過ぎる笑 生産性のない飲み会や集まりをたくさんしたけど、楽しい時間だったなぁとしみじみ思い出す。
    出町柳や鴨川の描写が懐かしい。京都に行きたくなるなぁ

    0
    2026年06月27日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    近未来のファンタジー。いろいろな世界が描かれており、それは好ましい未来か?と思うとちょっとゾッとする。

    0
    2026年06月25日
  • 百年と一日

    Posted by ブクログ

    小説、
    というか、文章表現の可能性の広がりを感じる作品。

    ひとつの接続詞で
    10年以上の時を翔け、
    100km以上の距離を往く。

    多層に重なり合う人生の合間に佇む、ひとつの場所。
    場所は確かにずっとそこにあり、
    人の営みの中で向かう場所になり、帰る場所になる。

    解説文より要約「物語は私たちの現実に接続する。読者は物語から帰還し、深く息を吸う」

    0
    2026年06月23日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    舞台となるどの街も、近未来的というかパラレルワールド的というか現実世界と微妙なズレが生じているような絶妙な違和感を漂わせつつ、湿度や匂い、街のざわめきなど、その場の質感が妙にリアルに伝わってきて、半分夢の中にいるまま旅をしてきたような不思議な読後感。しばらく時間を空けて忘れかけた頃に再読する予感。

    0
    2026年06月21日
  • 帰れない探偵

    Posted by ブクログ

    久しぶりに文学作品を読んだ気がする。
    温度と湿度が低く、どこかカラッとして不思議な世界。
    各章が違う街の物語として展開され、どこの街もなぜか見たことがあるけど異世界感もあるアジアのどこかのイメージ。
    物語の温度が低いので大きな感動などはないが、不思議の街を散策する読書体験はとても新鮮だった。

    0
    2026年06月20日
  • ご本、出しときますね?

    Posted by ブクログ

    言葉を扱うプロたちのトークはおもしろく、
    意外な一面や交友関係が知れたのも読んでいて楽しかった。
    作家さんたちがお勧めしている本がどれも本屋さんで入手するのが難しそうなものばかりで思わずにやにや。いつか出会いたいと思いながら読みたいリストに書き連ねた

    0
    2026年06月20日
  • 私の身体を生きる

    Posted by ブクログ

    こんなに赤裸々に描かれているのか、と思うのは、それもまた性を隠す大人の無意識に引っ張られているのだろうか。作家さんによって「身体」に対する感じ方がこんなにも違うのだなと興味深かった。

    0
    2026年06月08日
  • 私の身体を生きる

    Posted by ブクログ

    性というか性別(性自認や対象)というか、性欲というか性癖とか、性体験とか。

    「性」のことはご法度的で親子、恋人、親友でも避けたりするわけで、孤独な世界だと思ってきたけれど。それが女性作家が17人も語るわけで下品上等、生々しくて面白い。
    面白い、と言ってる事を下品と言う人もいると思いますが、多様性?とあえて言葉にすれば線引きしないでよ、と。

    面白いというのは具体的に変えれば興味深い、が適切か。いやらしい意味でなく、前述のようにご法度な他者の世界に興味があるわたしは、作家がこうもあけすけにエッセイとして実体験や思想を語ってくれてありがたく。
    本として残るので結構なカミングアウトもあったりするわけですが、それはどういう心境なのだろうか、とも思ったり。
    他にもこの手の本はあるのかな?と探したくなったほど。
    男性作家版も出して欲しい所存です。

    0
    2026年06月07日
  • 私の身体を生きる

    Posted by ブクログ

    いつも読んでる大好きな作家さんたちの身体にまつわるエッセイ。作家さんたちにも過去や苦しみや葛藤があると知ってしまった。

    「誰かから指弾される前に、違う、お前は違うと「私の中の世間」が言ってくる。」

    ☁️ 世の中には女性であることで苦しんでる人がいないわけないのに、言語化されてしまうと本当にいると見えてしまう、なんて、自分勝手さに嫌になりながら読み進めました。

    0
    2026年06月02日
  • 春の庭

    Posted by ブクログ

    これぞ純文学という感じ。
    大したことは起こらない。伏線も完全には回収されない。でもなぜか引き込まれる。不思議な筆致。

    0
    2026年05月29日
  • ご本、出しときますね?

    Posted by ブクログ

    作家の人たちってこんなに話上手いんだなと驚く。
    飲み会の場で話しているようなフランクさもありつつ芯を食った内容になっている。
    紹介されている本も面白そうなものばかりで、ウォッチリストにたくさん入れた。話し手さんの本も未読のものは代表作くらいは読んでおこうという気になった。

    0
    2026年05月19日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    個人的な語りの中から、大阪の街の雰囲気がたちのぼってくる。大阪に長く住んでいた人にも、私のように何度か行っただけの人にも、その匂いのようなものが思い出されてくるはず。

    0
    2026年05月03日
  • 遠くまで歩く

    Posted by ブクログ

    コロナ禍以降の非日常が日常になってしまった世界線の話で、リモートしたり、色々な制限がある中でクリエイティブな活動をしている人々の群像劇。

    語り手は森木ヤマネという女性作家。

    作中に内田百閒の作品だったり、お雇い外国人だったり、読んでみたいと興味をそそられるものがたくさんあったなー。

    柴崎さんの小説って本当に隣で繰り広げられていてもおかしくないというか、スっと入ってくる。

    ぶつ切りのラストじゃなくて、人生のように続いていくラストというか、とても良い話でした。

    0
    2026年04月18日
  • 続きと始まり

    Posted by ブクログ

    コロナ禍、戦争、地震が起こってるけど、コロナは自分もなったけど、戦争や地震についてはテレビの情報だけ見てるだけ。その時の心理描写は自分も感じる部分があったから、良かった。
    文学的な作品だわ。。

    0
    2026年04月16日
  • 千の扉

    Posted by ブクログ

    柴崎さんの書く物語はすごく不思議。大きい事件は起きないけど、日常の機微とか、どうかんがえても脇役みたいなひとのことも丁寧に描かれていて、なんかすごい。
    群像劇のドラマをみているみたい。
    結婚相手のおじいちゃんから初恋のひとにまつわる頼み事をされた千歳が奔走?する話なんだけど、まあそんなに真剣にならなくても…と思うような場面もあったりしたけど、ほとんどの人間にとっての日常ってこんなもんだよなぁと思ったり。

    団地っていう身近でよく知ってるものが舞台だったのもあり、もしかしたらあるかもなあて思えたりして妙にリアルでおもしろかった。

    0
    2026年04月11日