柴崎友香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
戦争のビデオをただただ観続ける主人公(?)の砂羽の行動とその内面に最初は戸惑い、不気味な小説だと感じていた。
しかし、読み進めていく中で少しずつ芸術作品としての小説が、その構造から見えてくる。
ある場所で、ある時間に、ある人がそこにいることの偶然性及びいなかった可能性とその世界線の世界について、様々な場面で考え続ける砂羽。
なぜそのことについて考えるのか、砂羽にすらわかっていない。ただ、誰かとそのことについて話したいと思っていて、しかしうまく話せない、うまく理解してもらえない。
主人公は自分という存在の不確実性について、過去の事実に思いを巡らすことによって実感している。
また、葛井夏という砂羽の大学時代の友人の妹が小説内に登場するが、2人は出会うことはない。
しかし、夏の身に起きた出来事はしっかりと語られる。そして、その出来事は砂羽と夏の兄との友人である中井という人物が媒介することで砂羽に伝達される。
「砂羽がいなかった街で」、違う時間を過ごす二人。
砂羽が考えていたことが『わたしがいなかった街で』という作品世界の中で描かれることによって、この小説は言葉によって織りなされた芸術作品と見事になっている。
不思議で少し不気味な小説世界と新鮮な読書体験ができるいい小説だと思います。
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルは「帰れない探偵」なんだが、ミステリーではないんだが、とてもミステリアスな小説。
借り受けた探偵事務所に帰ることができなくなった女探偵が主人公、彼女は生まれ育った母国にも帰れない事情を持つ。なんとなくどこの国か分かるような、でもちょっと違うような各所を転々としつつ、その場所場所で少し非現実的な仕事を請け負っていく物語。
異国情緒がある文体の中に、現実っぽいディストピアを予感させる出来事を散りばめ、デジタルデータなど最先端技術を手中に収める巨大企業「スコノルミー社」が暗躍する管理社会への危惧も描く。
架空の世界を扱ったフィクションだからと、油断しておいて最後に出てくる「終わらない歌(ブルーハーツ)」…探偵が帰れない、あの居心地の悪そうな国はやっぱり日本やったんやな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの作品の『今』っていつなんでしょうか?
ずっと、今から10年くらいあとの話で、パラレルワールドなのかと思いきやそうでもない感じ。
タイトルロールの『帰れない探偵』は家を見失い(?)各国で依頼をこなしながら、異邦人のごとく漂っています。
訳ありの依頼人や連盟の指示に翻弄されたり、危険な身にあったり。
大きな波はなく、淡々と、すこしずつ進展していくストーリー。
職業柄あまり自分出さずに、感情に振り回されることもなく、どこか諦めている主人公ですが、最後の章で少しだけ、そのあたりがほぐれていく感じがしました。
探偵ものとして読むと裏切られた感じがするかもです(笑) -
Posted by ブクログ
性というか性別(性自認や対象)というか、性欲というか性癖とか、性体験とか。
「性」のことはご法度的で親子、恋人、親友でも避けたりするわけで、孤独な世界だと思ってきたけれど。それが女性作家が17人も語るわけで下品上等、生々しくて面白い。
面白い、と言ってる事を下品と言う人もいると思いますが、多様性?とあえて言葉にすれば線引きしないでよ、と。
面白いというのは具体的に変えれば興味深い、が適切か。いやらしい意味でなく、前述のようにご法度な他者の世界に興味があるわたしは、作家がこうもあけすけにエッセイとして実体験や思想を語ってくれてありがたく。
本として残るので結構なカミングアウトもあったりするわけですが、それはどういう心境なのだろうか、とも思ったり。
他にもこの手の本はあるのかな?と探したくなったほど。
男性作家版も出して欲しい所存です。