柴崎友香のレビュー一覧

  • 続きと始まり

    Posted by ブクログ

    確かに、ここには私がいる。
    しかしそれは、共感という名の、自己愛に満ちた思いの表明ではない。
    自画像を突きつけられたときの少しばかりの居心地悪さに近いだろうか。
    深煎りのコーヒーを口に運び、苦味と共に微かにざらつきが舌に残る。

    声高な社会への違和感と、それに目を伏せるだけの日々。
    空き地を見ても何が建っていたかすら思い出せない不安。
    まだ恵まれている方だよなと、いう思いが浮かんでしまう自己嫌悪。
    真っ当に生きていると思う一方で、社会の“普通”の枠から疎外され、帰属感を持てないこと。
    誰かを傷つけた罪悪感を、誰かに癒して欲しいこと。

    「終わり」も「始まり」も掴めないまま、続きを生きることしか

    0
    2024年10月13日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    連載でなんだかんだ半分くらいは読んでたかな。岸政彦、愛知の進学校出身、大学入る時に東京でもなく京都でもなく大阪に出て来てそのまま居着く、勝手に似てると思って親近感持ってるのよね。大阪出身やない分「4時ですよーだ」を見れてないのはちょっとコンプレックスではある。メンバメイコボルコスミ11も知らないし。いや、岸政彦が書いてるように大阪に産まれてたら今大阪に居なさそうな気もするけど。

    0
    2024年09月13日
  • 百年と一日

    Posted by ブクログ

    こんな心地よい平熱があるのかー

    自分の人生において、覚えていようがいまいが1ミリも支障のない些細なシーンなのに、なぜか何年たっても頭から離れないことや、自分以外は誰も覚えていないけど自分だけがひっそりと覚えている友達とのやりとり、みたいなもの。そんな場面を詰め込んだような短編集です。

    基本は平熱です。ずっと平熱。最後の一行でどんでん返しがある?ある?ある?、、、やっぱない、みたいな。あえてラストの数行を手で隠しながら読んだりしましたが、そこには常に平熱しかありませんでした。これはけして「つまらない」と言っているのではありません。こんなに心地良い平熱があるのかと不思議な読後感です。派手な盛り

    0
    2024年08月30日
  • 続きと始まり

    Posted by ブクログ

    気づかずに忘れていたあの日々のこと、空気と、少しずつ降り積もっていった気持ちたち。

    楽しいことはすべて制限されるのに仕事だけが通常モードになろうとする、働くだけの存在になれってこと?
    とか、
    まんぼう
    とか、
    ⚫︎度目の緊急事態宣言
    とか、
    また営業時間が変わるだけ
    とか、
    え、これでもやるの?なオリンピック
    とか、
    自宅待機
    とか、
    Go travelとか。

    いくつかの並行世界が、なんとなく同じところで繰り広げられてるように見えていた世界が、
    やっぱり並行世界は並行世界だったんだと気付かされるような出来事の数々。

    もっとさかのぼって、東日本だったり阪神淡路だったり
    でもこの後だってたく

    0
    2024年08月24日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    思い出、人生、出会い、暮らし、そういうものが集まった自分の大切な街について書いている。静かで淡々とした2人の文体が心地よかった。

    特に印象に残ったのは、
    岸さん→「淀川の自由」「トニーのこと」
    柴崎さん→「大阪の友だち」「大阪と大阪、東京とそれ以外」

    0
    2024年08月20日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    どこかでこの著者達とすれ違っていたとしても不思議ではない、そんな距離感の過去の場所場所にノスタルジックな気持ちになる。あの時の自分や色んな人、風景はもう帰ってこないけど、その場所は少しずつ変わりながら今もあり続ける。
    近い場所と時代を共有したエッセイならではの感傷に浸ることができました。

    0
    2024年08月04日
  • 百年と一日

    Posted by ブクログ

    時代に流されながら、またかつての場所に戻る。そこには、まったく知らない何かがあったり、変わらない何かがある。
    もしかしたら、違う世界に迷い込んだのかもと思わせたりもする。
    人間の歴史がさまざまな形で流されていく中で何かを思い出すと、必ず同じ思いをしているかつての仲間がいたり、時間の進み具合が人によって違っていたり、不思議だけれどなんだか安心できるいくつもの物語

    0
    2024年07月23日
  • 続きと始まり

    Posted by ブクログ

    作品全体にコロナや震災という大きな出来事が横たわっているが、それとはまた別の小さな物語がていねいに綴られている。とりたてて特徴のない登場人物たちの、でもその人だけの悩み、気持ち、生き方。それを見過ごさないということ。なかったことにしないということ。
    読み手である平凡なわたしの人生もまた、肯定されているように感じた。

    0
    2024年07月02日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    20代、30代の頃はミナミでよく遊んだ。ホームグラウンドだった。梅田にはないバタ臭さとごった煮感が自分の肌感覚に合っていた。あらゆる道を歩いて知らない路地はなかった。働いたお金は大体洋服か友人、彼女とのご飯代に変わっていった。居酒屋、バー、カフェ、立ち飲み、レストランが好きで新しいお店を開拓しては仲間と語らいバカみたいに飲んで朝方始発で帰るような生活をよくしていた。大阪を読んでいるとまんま自分と同じ生活を感じて同じような感覚で街を捉えている2人の体験が綴られていて夢中で一気に読んでしまった。自分があの頃に感じていたミナミと今のミナミは同じで違う存在なんだなと改めて突きつけられた。

    0
    2024年07月02日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    岸政彦さんと柴崎友香さんによる、大阪に纏わるエッセイが交互に展開される。岸さんは上新庄に住まわれていて淀川河川敷の話などあり、私も淀川沿いの大学で、社会人になってから1年半ほど上新庄に住んでいたので同意するエピソードが多々あった。柴崎さんは1973年生まれということで、私は1972年なのでほぼ同世代。中学校の頃の「4時ですよーだ」など2丁目劇場や、ミニシアター系、音楽の話題など同じような感じ。最近の小中高生がどんな感じかよくわからないけど、昔の方が無駄があったというか、時間がゆっくりだったような気はする。そんな以前の大阪をロマンティックに書かれていないところが、貴重な記録というか自分にも近い当

    0
    2024年06月24日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    上京物語は掃いて棄てる程あるが、下阪(なんて表現はないが都に住む以外が全て下るのであるならば)物語は中々ない。大阪ですらそうなのだから他の各地では尚更だろう。

    最近の「移住しました」系のYouTubeともどこか似て非なる、進学就職を機に移り住み、そのまま居着いてしまった人達の中の一定数には、その居着いた土地に対して染まらない染めれない感情と、一方で愛したい愛されたい感情が相反して内在している。

    他所から大阪に移り住んだ、という点では岸氏と立場を同じくするが、自分は故郷を棄ててしまった訳ではない。故郷忘れじ、という点では柴崎氏と同じである。愛惜ある土地が複数ある事は幸せな事、と思う。

    「大

    0
    2024年06月22日
  • ご本、出しときますね?

    Posted by ブクログ

    出てくる作家さんが、すごく豪華!
    性格の悪さもさらしていて、楽しかった。
    最後の光浦靖子と尾崎世界観との鼎談が一番笑った。

    0
    2024年06月18日
  • 大阪

    Posted by ブクログ

    岸さんの言葉はどうしてこうも胸の奥を揺さぶるのだろうか。子どもの頃からすれ違ったひと、知らない遠い街、知らない誰かの生活を想像することが好きだった。想像だけでなく本当にあるそんな話を岸さんの言葉で聞くのは、面白くてどこか切ない。最高。

    0
    2024年06月12日
  • 百年と一日

    Posted by ブクログ

    一編8ページ程度の短いお話が約30。
    何年経っても場所はあり続ける。
    その場所にある建物と人々を時代とともに交代させながら…。綿々と続く時間の物語。おもしろかった。

    0
    2024年05月26日
  • 続きと始まり

    Posted by ブクログ

    石原優子、小坂圭太郎、柳本れい。
    この3人の2020年から2022年までの日々や思いがそれぞれ記された小説。1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東北大震災、そして2020年からのコロナ禍。生活も考え方も変わらざるをえない出来事のなかで、どう生活をしなにを考えてきたのか。三人三様なのだけれど、細かく表現されていて、読みごたえがあった。共感することも多かった。「じわじわと。自分が削り取られていく感じ」とか。深く考えてしまうと、人と話すのは本当に難しく思えた。「わたしは、なにを言って、なにをしてきたか。わかっているのだろうか。」ということも、自分に当てはめて考えた。捉え方は人それぞれだから、普

    0
    2024年05月21日
  • ショートカット

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    行きたい場所があれば、会いたい人があればすぐに行けるよ。そんなに遠くないから。

     恋愛も友情も距離なんか関係ないと言いたいわけじゃない。強く会いたいと思えば、すぐにでも行けるんだと思えた。

    0
    2024年05月02日
  • 寝ても覚めても 増補新版

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    主人公の置かれているその瞬間の情景と空気感を文章で伝えられる珍しいタイプの作家だと思います。
    主人公が若い時は「若い」と分かる空気感と情景の表現であるため、昔を思い出し郷愁にかられる描写がいくつもありました。(当方トシなので)
    しかしこれは甘い恋愛小説ではない!

    主人公は(おそらく)守ってあげたいタイプの可愛い女の子で、自己中な性格でも友だちがいて男性にも好意を持ってもらえて…

    若い女性特有の「根拠のない無敵感」が分かる描写が中盤まで続き、後半で30歳を超えた主人公を取り巻く現実が徐々に読者に開示されます。
    これまでやってきた事のツケが回ってきており、職や友達を失い、貯金もない。

    「根拠

    0
    2024年04月11日
  • 続きと始まり

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    自分が決して共感しないだろう人の心情を疑似的に追体験するのが小説の機能の一つ。そういう意味でとてもよかった。依然としてわかりはしないけれど。

    0
    2024年03月28日
  • 百年と一日

    Posted by ブクログ

    誰もが大きな物語の主人公になろうと成功を求め必死に努力するけれど、所詮ひとは時の流れの中に儚く溶け消えてしまうような存在なのかもしれない。けれど、この作品の一つ一つのエピソードに出てくる名もなき登場人物のような、小さな物語の地味な端役だったとしても、誰かと出会い関わり合いそして別れていくなかで、時の流れは確かに組み替えられ、新しい時の流れが作り出されている。時の流れは人を簡単に分解するけれど、他方で、人は時の流れを新たな方向へと導いている。人間と時間の奇妙な関係。時間が主役のこの不思議な物語は、自分のかけがえなさとか個性とかそういうものに執着する人生の虚しさを教えてくれると共に、小さくても豊か

    0
    2024年03月13日
  • その街の今は

    Posted by ブクログ

    日日是好日。上がりも下がりもない 劇的に事件もない 何かが起こって起承転結もない、んー凄く良い感じの柴崎友香さんだった。良太郎とベタベタの飲み会の次の日にお互い酔ってたと言いズバッと闇金と聞く あー友達になるんだろうなと 友人から恋愛の仕方が間違っているのではと疑問を投げかけられ、なるほどと付き合うことを意識すればいいのにせずに ラスト良太郎の家に行きランチの約束をするが、幕ですか、気になる人と何かある訳でもない 嫌な気持ちにならない平坦な気持ちのまま幕でした。これ気になってて取り寄せて読んだ、通ってる本屋にはこういう本を並べて欲しいものだ、本棚減らすとか意味がわからない。悲しいかな本屋がどん

    0
    2024年02月15日