【感想・ネタバレ】大阪のレビュー

あらすじ

大阪へ来た人、大阪を出た人――かつていた場所と今いる場所が「私」を通して交差する。街と人の呼吸を活写した初共著エッセイ。文庫化にあたって書き下ろし収録。解説:西加奈子

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ネタバレ

岸さんと柴崎さん、そして私にとっての大阪

大学進学を機に大阪に住み始めた岸さんと、三十二歳になる直前まで大阪に住んでいた柴崎さん。

「わたしにとっては、大阪を書くことは、自分の生きてきた時間と場所と、関係のある人を書くことに、どうしてもなってしまう。」(P16)

柴崎さんは大正区の南の果てご出身、私は大阪市の北の果てに住んでいた(身内に美容師がいるのも同じ)ので「ああ、こういう感じだったなぁ」というところと「南のほうはそうだったんだ」という答え合わせのようでとてもとても興味深く…私が実家やその周辺で子供だった頃、柴崎さんも柴崎さんの場所で子供だったんだなというノスタルジーも感じつつ読みました。

「三十年前に私ははじめて大阪にやってきて、淀川の河川敷に出会い、大阪の自由を感じた。そして、そこから同じ三十年という時間を遡ると、大阪は、阪急百貨店に子供が捨てられる街だったのだ。」(P63)

岸さんサイドは大阪に移住してきた人の心情が丁寧に細やかに描かれていました。私にとって場所として馴染みがあるのは岸さんサイドのエッセイ。野良犬のことが書かれていて、小学生の私が飼った犬は友達が拾った野良犬だったので懐かしく思いました。

居場所を語ることは人生を語ること。でも今の住んでる場所は仮住まい感をヒシヒシと感じるので生まれ育った場所というのは特別なんだなと再認識しました。

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2025年10月20日

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この本を読んで以後、良くも悪くも大阪に住んでるだけで、常にノスタルジーを感じさせてくれることになってしまいました。たぶんおそらく僕は生まれてから死ぬまで大阪から離れることはなさそうです。

出身の中学校はクラスの数も減り、所属していた部活はなくなり、僕も生まれて見てきた20年ほどで大阪の様相が随分変わってきました。もうあとしばらく経つと跡形もなくなってしまうんじゃないかと寂しすぎる気持ちです。

好きな関西の作家さん。岸さん、柴崎さん、西加奈子さん、塩谷舞さん、これからも増えていきそう。みんな関西弁を愛してる気がして。文字で読む関西弁はどこか小っ恥ずかしくて、可愛い。

西さんの解説の"世界が均質化され、ほとんど同じことを体験させられ、そして共有を促される現代にあっては、"のところを見て、行列に並ぶ人気店とか、人気のインスタグラマーが買ってる商品だからとか、インスタやTiktokで流行りに乗せられ、すぐに群がっていってしまうような、そういうんじゃなくてもっと自分としての価値観を大切にしてほしい。自分で探して自分で見つけに行って、自分から良いものを広めないと。他人から受けとるだけの人間になってしまったらもう戻ってこれない、と思います。

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2025年09月22日

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連載でなんだかんだ半分くらいは読んでたかな。岸政彦、愛知の進学校出身、大学入る時に東京でもなく京都でもなく大阪に出て来てそのまま居着く、勝手に似てると思って親近感持ってるのよね。大阪出身やない分「4時ですよーだ」を見れてないのはちょっとコンプレックスではある。メンバメイコボルコスミ11も知らないし。いや、岸政彦が書いてるように大阪に産まれてたら今大阪に居なさそうな気もするけど。

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2024年09月13日

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思い出、人生、出会い、暮らし、そういうものが集まった自分の大切な街について書いている。静かで淡々とした2人の文体が心地よかった。

特に印象に残ったのは、
岸さん→「淀川の自由」「トニーのこと」
柴崎さん→「大阪の友だち」「大阪と大阪、東京とそれ以外」

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2024年08月20日

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どこかでこの著者達とすれ違っていたとしても不思議ではない、そんな距離感の過去の場所場所にノスタルジックな気持ちになる。あの時の自分や色んな人、風景はもう帰ってこないけど、その場所は少しずつ変わりながら今もあり続ける。
近い場所と時代を共有したエッセイならではの感傷に浸ることができました。

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2024年08月04日

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20代、30代の頃はミナミでよく遊んだ。ホームグラウンドだった。梅田にはないバタ臭さとごった煮感が自分の肌感覚に合っていた。あらゆる道を歩いて知らない路地はなかった。働いたお金は大体洋服か友人、彼女とのご飯代に変わっていった。居酒屋、バー、カフェ、立ち飲み、レストランが好きで新しいお店を開拓しては仲間と語らいバカみたいに飲んで朝方始発で帰るような生活をよくしていた。大阪を読んでいるとまんま自分と同じ生活を感じて同じような感覚で街を捉えている2人の体験が綴られていて夢中で一気に読んでしまった。自分があの頃に感じていたミナミと今のミナミは同じで違う存在なんだなと改めて突きつけられた。

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2024年07月02日

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岸政彦さんと柴崎友香さんによる、大阪に纏わるエッセイが交互に展開される。岸さんは上新庄に住まわれていて淀川河川敷の話などあり、私も淀川沿いの大学で、社会人になってから1年半ほど上新庄に住んでいたので同意するエピソードが多々あった。柴崎さんは1973年生まれということで、私は1972年なのでほぼ同世代。中学校の頃の「4時ですよーだ」など2丁目劇場や、ミニシアター系、音楽の話題など同じような感じ。最近の小中高生がどんな感じかよくわからないけど、昔の方が無駄があったというか、時間がゆっくりだったような気はする。そんな以前の大阪をロマンティックに書かれていないところが、貴重な記録というか自分にも近い当時の思い出が再現されていて大切にしたい本だと感じた。

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2024年06月24日

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上京物語は掃いて棄てる程あるが、下阪(なんて表現はないが都に住む以外が全て下るのであるならば)物語は中々ない。大阪ですらそうなのだから他の各地では尚更だろう。

最近の「移住しました」系のYouTubeともどこか似て非なる、進学就職を機に移り住み、そのまま居着いてしまった人達の中の一定数には、その居着いた土地に対して染まらない染めれない感情と、一方で愛したい愛されたい感情が相反して内在している。

他所から大阪に移り住んだ、という点では岸氏と立場を同じくするが、自分は故郷を棄ててしまった訳ではない。故郷忘れじ、という点では柴崎氏と同じである。愛惜ある土地が複数ある事は幸せな事、と思う。

「大阪の生活史」を益々読みたくなって来た。
喜久屋書店阿倍野店にて購入。

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2024年06月22日

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岸さんの言葉はどうしてこうも胸の奥を揺さぶるのだろうか。子どもの頃からすれ違ったひと、知らない遠い街、知らない誰かの生活を想像することが好きだった。想像だけでなく本当にあるそんな話を岸さんの言葉で聞くのは、面白くてどこか切ない。最高。

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2024年06月12日

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自分が大阪出身ということもあり購入

大阪で生まれ育った柴崎さんと、大人になってから大阪にやって来て気に入ってずっと暮らしている岸さんのエッセイ集

自分は、大人になって大阪から出て行った方なのでどちらかというと柴崎さんのお話に共感が持てて、育った環境も、ご実家が自営業で商店街で育った境遇は自分の境遇と同じだったので色々思い出すこともあり楽しく読めました

チャリンコで心斎橋やらアメ村に行ける距離感も、私がチャリンコで梅田へよく遊びに行った頃と重なって懐かしさを感じられたし、ホンマに色々思い出させてもらってありがたかったです

大阪、改めてええとこやな、たまには帰らんとなぁ、と再認識させてもらえた一冊でした

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2025年09月05日

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 学生時代から初めて大阪に来てなじんだという社会学者・岸氏と大阪生まれで現在は東京に住む小説家・柴崎さんのエッセイの連作集(対話ではない。)大阪という町に対する二人の思い入れ、愛情に富んでおり、「大阪」という独特の語感からの何とも言えない感覚を満喫できた。「大阪って嫌い」と言われることが多いのも、その強烈な個性的雰囲気が物語っていることも同感だ。大阪弁は意味の伝達よりも、会話を続けること自体に意味がある。そして、喋り続けることにより、自分は怪しくない人ですよー、と表現しているのだと、柴崎さんの感想には笑った。彼女の幼少期からの大阪での成長ぶりが面白く、中学時代からエレファントカシマシの公演にはほとんど行き、しかも最前列で聴いた!凄い!!岸氏が書く「大阪が好き」と言う時、「大阪で過ごした人生のその時間が好き」と言う事だろう、それは決してその時代が幸せでなかっとしても、という言葉は、至言だと思う。

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2025年08月09日

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なんとなく不思議な感じで読めた。
いろいろな場所を歩いて感じる感覚を表しているような、散歩していてなんとなく思い浮かぶノスタルジックな感じというか。
全体を通して後半の方が感覚が合ってきたので単発ではあまり感銘受けなかったかも。

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2025年01月25日

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ネタバレ

岸政彦さんの本はいつも読んでて本当に不思議な感覚に陥る感じがある
頭の中をスーンと何か静かなものが突き抜けて流れていくような感じ
流動的で普遍的〜連続性〜みたいな(自分で意味分かってないけど)単語が似合うような
登場人物に親しみを持って読んでいたら急にその人が消えるからさ、なんかそこで〜普遍的〜みたいなさ…分かってないけど…

柴田友香さんめっちゃ都会の学生生活で羨ましいんやけど…田舎って損だなあ
こんなに文化享受できなかったし行くとこなかったし暇だから時間は長く感じたよ

私こんな楽しそうな街一生知らないんだよなー
大学進学のときとか就職とかなんで出なかったんだろって後悔がまた湧いてくる
知らない街に住みたかったのに
複数の居場所が欲しかったのに
本当地元近辺を出ないで一生このままなんだよなー
もう1人では動けないし…
自分で自分が可哀想

私たちは自分というものに対して、憧れを持つことができない。
ほんそれ!!

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2024年12月25日

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お二人にとってのそれぞれの「大阪」を書いている。そんなん書かれたら、僕も書きたくなる。僕はずっと大阪におる。いや、関学に入学した1年間だけは西宮におったけど。大阪は大阪弁で一括りにされるけど、場所によって言葉違うねんで。地域限定方言っちゅうのもようある。せやから言葉変われば、いろんなもんも変わるはずやし、見える風景も変わる。そやな、柴崎さんが過ごした中学生時代の話があったけど、僕が過ごした中学時代はもっと暗黒やったわ。昔は犯罪が許されてたからなぁ。知らんけど。ま、今日はこれくらいにしといたろ。

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2024年11月10日

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2人が大阪で生きていた
もしかしたらすれ違っていたかもしれない
そんな風に読ませてもらいました
昔と今、何が変わったんやろ
昔は良かったなぁ何が良かったんやろ?

淡々と進む語り口に
胸があっかくなって
あー私大阪好きやったんやなぁ
って

毎日少しずつ読み進めて2週間ほどかけて読みました

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2024年10月24日

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大阪にまつわる2人のエッセイ。
個人的に岸政彦さんの回が面白かった。
大阪という都市を通して、変わっていくこと、失われてしまったものについての感慨。
いいとも悪いとも言わず、絶妙な距離感で描かれる大阪の変遷は、筆者の青春時代とあいまって切ない。

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2024年07月12日

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知り合いでもないのに、ここまで個人的な話を聞いてもいいのかと、ドキドキしながら読んだ。それを引きずり出してしまうほど、大阪とおふたりの人生は、分かちがたく結びついているのだろうと思った。

おふたりの作品の根底にあるものの正体がわかったようで、ファンとして読んでよかった、読んだ方がいいエッセイ。

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2024年04月29日

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『大阪』を書くことで、いま街の中で生きる自分の人生を書く…。『大阪へ来た人』と『大阪を出た人』による初共著エッセイ。
私も大阪に来て40年。当初は賑やかだけど汚くて怖い街という印象だったが、この数年ですっかり洗練された都市に変わった。それでも他の都市にはない独特の空気が、ずっと住み続けたい理由である

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2025年01月04日

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柴崎さんはともかく、岸さんのパートは大阪ワナビーのおっさんの自慢とも蘊蓄とも取れない昔語りだった
若い頃はやんちゃしてたな〜おっさんになってからもこんな悪い友達がいたんだぜ〜みたいな、飲み屋で隣に座ったおっさんが聞いてもないのに延々と語ってくる様に似た読後感

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2024年08月06日

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たしか座間味に行ったんだと思う。夕方、誰もいない浜辺で撮った写真が、たしかかあったはずだ。どこに行ったんだろう。彼女はたしか黄色いワンピースを着ていたと思う。たしか、たしか。思う、思う。

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2025年10月21日

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