川上弘美のレビュー一覧
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ネタバレ章ごとに、リリ、幸夫、春名、暁と視点が移っていき、お互いが緩く関わり合いながらそれぞれの生活や将来を変化させていく話。
全体を通して大きく視点が二周しており、一周目では四人全員の浮気現場がバレる同じ事件についてのそれぞれの視点だったが、二周目ではリリが離婚を決めたことを発端に章が進むごとに時間も進んでいっており、とても面白かった。物語の登場人物は、皆どこか自分の居場所に悩んでおり、どうしてここにいるかも分からないけど、それでも何かしらを求めて生きていく。薄暗く少しでも遠くにいる相手の顔などほとんど見えないが、近くを通り過ぎたり一緒に歩く時にはちょっとは、はっきりして見え、それでも離れれば分からなくなる最初に描写された「夜の公園」の散歩が、そのままこの小説のテーマなのかなと思った。
文章に関しては章の登場人物ごとにイメージを変えており、春名は軽く幸夫はどろっとしているという風な印象を受けた。だからこそ川上弘美らしさを文章全体から感じることは少なかった。また、描写が素晴らしく、特にリリの妊娠が発覚した時やその後の決意の描写が好きだった。ただ、純文学なのでつっこむ方が野暮なのかもしれないが、最初の暁のナンパに乗るリリのシーンで、お互いの考えや心情などが全く分からず、動機が薄いように感じた。 -
Posted by ブクログ
全てにそつがなく、ストレートに愛情表現したかと思えば、子供のように心にスルスルと入り込む。情を交わした10人の女性の視点によって描かれる、モテる男ニシノユキヒコの生き様。ニシノさんを背景に、各章の女性の個性が浮かび上がっていると感じた。
きまって去られてしまう。女は生涯寄り添えない相手と本能的に察知しているから。それはそうでしょうね…思い出はせめて綺麗にしたいから。
読み終えるまでに、ニシノさんの魅力に触れればと思ったけど、なかなか難しかった。関わった女性側の気持ちもあまりわからない(人の気持ちなど、他所のものが容易に理解出来るものではないという事だろう)。しかし、不適切な関係であるのに、生臭さを感じさせない川上弘美さんの品のあるさらりとした心情描写すごくて、特に「しんしん」から面白く読み入った。
愛に満たされることなく飢えて怯える心情が、女性との関りから読み取ることが出来た(なんとなくだけれど)気がする。
強いようで弱い。人の呼び方が様々なように、人は多面的で色々な面を持ち、相手側からの見方で浮き彫りにされるということが伝わりました。
必死に自分を模索しているのに、ふわふわ不思議な空気に包まれ宙を浮いているような余韻が残った。自分の居場所をみつけることは難しそう。 -
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伊勢物語、きちんと読むの初めて。
川上弘美さんの日本語は美しいな。
和歌の訳がそこはかとなく典雅だ。
物語絵でよく出てくる有名な九段の八橋、宇津山だけにあらず。
しかし業平はすごいね、さすが歴史に名を残すプレイボーイ…
三十段の、歌を「逢うのは 一瞬 恨みは 永遠」て訳すのはしびれる。伊勢物語もすてきだけど川上弘美さんもすてき。
最後125段
「生きるとは
なんと
驚きに満ちたことだったか」
ってところなんて、めっちゃすてきじゃないですか
もりみーの竹取物語もすごく面白い。
もちろん元の話自体が面白いけど、彼の訳がなんともシュールで人間臭くて好きだ。
しかしなんておもしろい話なんだろうなぁ、古事記とかも面白くてユーモアあふれてるけど、竹取物語のファンタジーたまらん。昔の人すごい。 -
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雑多なものが所狭しと詰め込まれた空間って、
無条件にときめいてしまうたちなので、
古道具屋という舞台設定にまず惹かれた。
だからさあ、が口癖の適当店主中野さん、
中野さんのお姉さんで芸術家のマサヨさん、
少々ぼんやりしたアルバイトの男の子タケオ、
中野さんの愛人?らしき“銀行”ことサキ子さん、
古道具屋関係の人達は
ちょっと浮世離れしているというか、
変わっている。
変わっている、というのが第一印象だ。
でも、物語を読み進めると、
彼らの人間くささを知ることになる。
このリアリティと非現実感のバランスが絶妙だ。
ヒトミとタケオのじれったい恋愛に、
もしくはマサヨさんの大人の恋愛観に、
はたまた中野さん(中年オヤジ)の愛嬌に、
あるいはサキ子さんの心の変化に、
きっと誰もがどこかで自分の経験を重ね合わせて、
はっとすることがあるんじゃないだろうか。
誰もが強さと弱さを持っていて、
意思や感情を持っていて、
生きている一人の人間という感じがして
すごくよかった。
主人公であるヒトミの人間らしい感情は、
主人公であるが故に1番見えづらいんだけど、
ラストの“悲しかったよ”で全部もっていかれた。
主人公に自分を投影しながら
読むケースがあると思うけど、
ヒトミがひとりの独立した人間だって、
このシーンで強く感じた。
川上弘美さんの作品は『某』とか『神様』とかを
読んだことがあって、
ちょっとファンタジックな世界観の中で、
だからこそより克明に現実が見えてくる、
みたいな印象だったので、
それと比べると
舞台設定に現実感が強いなと思ったけど、
SFもファンタジーもなしに
この作風は成立するんですね。
『某』が好きだからこそ敬遠してしまっていた
『センセイの鞄』も読んでみようと思った。 -
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去年、世田谷文学館の谷口ジロー展で、谷口さんがこの作品を書いていることを知ったが、販売コーナーには無かった。結果、谷口ジローコレクションの配本を待つことになった。
川上弘美さんの原作を読んだのは、いつだったか。帯に川上さんの一文「こういう話だったんだ!描いていただいて、ほんとうに知ったような心地です。」がある。
本当にそう言う感じ。老境のセンセイと月子さんが淡々と吞んでいる漫画。偶にキノコ狩りやお花見があるけれど。
急いで読んじゃいけないんだよと心に言い聞かせながら、頁をめくる。
気がつくと、月子さんの気持ちにセンセイが占めているのが何とも言えず、沁みるなあ。
この後は、8月配本の続巻を待つばかり。