川上弘美のレビュー一覧

  • わたしの好きな季語

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     季語に纏わる話と、その季語を使用した一首を二ページでひとまとめにし、さらに春夏秋冬と新年に分別して見やすい。
     それにしてもなんとも自分が普段から使用している言葉に対しても、その自然風景や背景などが隠されていることに無頓着になっている今日この頃を思い知らされるとともに、著者はその繊細な、また、なかなか見落としがちな物事も見事に捉えて、しっかりと向き合い、言葉にしていることが、この一冊だけでよくわかる。
     またてんとう虫(春でなく夏)、西瓜(夏でなく、秋)など、現代との季節感の齟齬を感じざるを得ない言葉や、「日永」「薄暑」などなど普段使わないも、その響きと字面から魅了されるものもある。
    日本人

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    2022年11月13日
  • どこから行っても遠い町(新潮文庫)

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    近所ですれ違う、名前も話したこともない人たちの人生や考え方の想像が膨らむ。「あけみ」に最も感情移入した。

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    2022年10月23日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

    購入済み

    豪華なアンソロジー

    まずは参加している作家陣の豪華さです。そして、ユーミンの楽曲のとのコラボということで、面白くないわけがありません。個人的には綿矢りささんの「青春のリグレット」が好きでした。読んだ後で、楽曲を聞きなおしたくなるような一冊でした。

    #切ない #泣ける

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    2022年08月14日
  • パスタマシーンの幽霊(新潮文庫)

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    少しだけ「普通」とは離れた感がある女性たちのお話。短編集なのだが、ひとつひとつの話にきっちり入り込めるし、時間も場所も忘れられる。どれもこれも、その辺のよくある話なのに(多分)川上さんの世界が存分に醸し出されていて、読み終わるのが寂しくなるくらいだった。失恋したりくっついたり立ち上がったり諦めたり。どの話の女性とも話をしてみたくなる。シワシワの黒豆が食べたくなる。ひとつだけ驚いたことが、私の旧姓は珍しい苗字なのだけど、その苗字が出てきて、その女性の話にやたら共感していたこと。私の大好きな川上さんの小説に自分の旧姓を見つけられるなんて、自分の中で勝手に宝物にした。

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    2022年04月17日
  • 蛇を踏む

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    蛇になっていきそうになる様がまさにそうなんだろうなあと思った。あり得ないことをあり得るように書くのがやはり川上弘美は上手。ため息と百合の枯れる匂いがするような「うそばなし」にどっぷり引き込まれていきました。川上弘美は他の作品もものすごくいいので、これが読みづらかった方には「古道具中野商店」なんかが読みやすいし、これが良かった方には「神様」なんかもお勧めです。

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    2022年04月15日
  • 某

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    ああ、川上弘美だ。
    「神様」とか「蛇を踏む」とか、久しぶりに思い出した感じがあった。

    たぶん、私たちはふだん「わたし」というものをそれほど意識して生きてはいない。
    少なくとも私はそんなに「わたし」について考えることはしない(思春期の頃はもっと「わたし」について考えていたように思う)。
    なぜなら「わたし」について考えることはとっても面倒くさいことだからだ(この言い方が適当でなければ、非常に時間がかかるとかって言い換えてもいい)。
    10代のころは時間だけはあったから「わたし」について考えても差し障りがなかったけれど、社会人になってしまったいま「わたし」について考えていたら、日々の生活に支障をきた

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    2022年03月26日
  • これでよろしくて?

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    誰もがきっと、このようなガールズトーク、話したい議題を持ち寄ってあーだこーだと言いたいだけの、そんな場が必要だと思った。生き生きした会話のやり取りは聞いている(読んでいる)だけで楽しい。

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    2022年02月28日
  • 水声

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    幽霊の小説だと思った。
    幽霊の小説、というのはオバケが出てきてどうこう
    ということで済む話ではない。
    "幽霊"とはどういうことか?
    "幽霊が出現する"という現象とは何か?についての小説。
    物語のうねりを直列的に眺めるかたちではなく、
    その部屋およびその部屋にまつわるある時間に巣食う"幽霊"についてを、あらゆる角度とあらゆる時間から暴いていく。

    1ページ目から最後のページまでずっと歪な不気味さがある。
    この小説を思い出すことが怖い。
    この小説を怖がる時、読者のそばに幽霊がもう立っている。

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    2022年01月25日
  • 神様 2011

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    熊に誘われて散歩に出るわたし。デビュー作『神様』に「あのこと」が起こった2011年に、書き直した『神様2011』。
    「あのこと」により、私たちに生活、日常は大きく変わった。それでも生きていかなくてはならない。日常は続いていく。川上さんは、静に激しく怒っている。自分自身に向かって。『神様』には、熊の神様が『神様2011』には、ウランの神様が描かれている。そして、現在も大きな出来事により日常が変わっている。『神様2021』を読んでみたい。50ページ弱の短い作品ですが、何度も何度も読み返しました。

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    2022年01月24日
  • センセイの鞄

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    ツキコの方に年の近い私。
    読めば読むほどツキコとセンセイの日々をずっと読み続けていたくなる。
    自分がお酒を飲まないので、飲み屋でつまみをつつきながら、とっくりをかたむけてみたい、と思った。
    センセイははじめからずっと、ツキコの傍にいるようだ。

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    2022年01月08日
  • 東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

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    夢心地のふわふわした中、
    少しだけ鼻がつんとしたり
    微かに寂しくなったり。
    なんか好きで、川上さんワールドを
    たゆたいたくなる。

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    2022年01月04日
  • 溺レる

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    退廃的な生活。ダメな女。道を間違った男。変な人たち。こどものようなおとな。意味のない日々。
    自分はなにをがんばっているんだろう?自分もこうなりたい、ほんとうは。ひとには言えないけど。

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    2021年11月12日
  • ざらざら(新潮文庫)

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    ネタバレ

    一編、10ページ程の短編集。
    地球に住まう誰かのお話です。

    「夏の奈良、という言葉にちょっと嬉しくなって
     あたしも旅支度を始めた。」
    「エアコンの強くきいた店内に入ると、汗が急に引
     いた。汗は引いたが、反対に外の暑さがどっとま
     とめてやってくる感じだ。」
              ※『ラジオの夏(p9〜p17)』

    あれ。私も恋人も一緒に夏の奈良に行って「鹿くせぇ」と言ったことある気がするぞ。


    「黒田課長の性器を思い出そうとしたが、どうして
     もうまくゆかなかった。忘れたのではなく、望遠
     鏡を逆さから覗くような感じで、黒田課長のこと
     がものすごく遠く非現実的にしか思えないの
     だ。」

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    2021年11月06日
  • パスタマシーンの幽霊(新潮文庫)

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    ネタバレ

    川上弘美さんの文章を前にすると、私は為す術がなくなります。
    人物の感情を推し量るとか、場面を分析してみるとか、いわゆる「読解」をしてみても良いのに、存外その「読解」が嫌いではない質なのに、ダメなのです。

    空気に呑まれるというのが、適切な表現かもしれない。
    本を閉じて、自分の世界に戻っていくのが、いつももったいなく感じるので、私は現実に満足していないんだなと思い知らされたりもします。

    川上さんの紡ぐ言葉は、除夜の鐘のようにボワワワーンと体の芯に響きます。
    評価とか感想とか書けないので、今回の読書で一番響いた一節を紹介します。

    「若いって、いいな。ヤマグチさんの話を聞いていると、いつも私は思

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    2021年11月03日
  • 七夜物語(下)

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    久しぶりに児童書を読みました 
    2人の子どもが物語に入り込んでいく話。川上弘美さんのドキッとする文章であっという間の冒険を私もしたような楽しいひとときでした
    懐かしく それでいて大切なことを考えさせられる良作でした。 挿画の酒井駒子さんの儚げな絵も素敵でした

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    2021年10月14日
  • どこから行っても遠い町(新潮文庫)

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    川上弘美って、
    どうしてこうも怖いのだろう。

    以前からそうなのだが、
    年々その怖さが増していき、
    先に読んでいた『森へ行きましょう』に真骨頂を見ていたが、
    この作品で既にその片鱗が明確に現れていたか。

    ふわっと夢のようでありながら、
    生々しさと毒があって、
    そのくせ冷たいくらいに俯瞰している視線がある。
    それはグロテスクではない静かなものだからこそ、
    とても怖く感じる。

    確かにどこにでもありそうな町の人間模様に、
    少しでも足を踏み入れれば、
    そこにはひとりひとりの人生があり、
    それは何にも変えられない超個人的なものだ。
    その人生達が触れ合って、絡み合い、
    通り過ぎて、離れていって、
    そう

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    2021年08月27日
  • 東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。

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    おかしな出来事もさることながら、川上弘美ならではのひょうひょうとした自虐ネタに、声を出して笑ってしまう。

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    2021年08月14日
  • 水声

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    ネタバレ

    川上弘美ではもちろん「センセイの鞄」が一番好きだけど、これはそれと同レベルくらい切なかった。ありそうでなかった恋愛の設定だ。
    お互いを強く求め続けた二人の気持ちは、普通の恋愛とは言えない。今、性同一性障害とか認知され始めているけど、こういう人たちももしかしたら世の中には…?ちょっと考えにくいし、存在するとしても多分、社会の中で「自分たちを認めてください」と声をあげることはまずしないだろうと思われる。ひっそりと生きるというか…。
    そういうこともアタマをかすめつつ、でもあくまでも「物語」として、感情移入しながら読める。
    「ママ」のキャラクターも素晴らしい。
    多くの人が、彼女のように生きたいと思うの

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    2021年08月08日
  • 神様 2011

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    ネタバレ

    川上弘美先生ご自身のあとがきで、この作品が補強されました。
    短い作品ではありましたが、とても深い作品だと思いました。

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    2021年07月27日
  • わたしの好きな季語

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    春(22)・夏(24)・秋(25)・冬(19)・新年(6)と、川上さんが好きな季語とそれを含む一句を選び、その季語や句にまつわるエッセイが綴られている。
    虫大好き、生物大好きな川上さんの、生きとし生けるもの全てに注ぐ視線が温かく、そしてちょっと不思議な体験談もあったり。
    昭和の頃の話も同年代として懐かしく読みました。

    載っている季語は、誰でもそこで一句読めそうな身近なものが多いですが、その中で異彩を放っていたのが『絵踏(えぶみ)』でした。
    現代の歳時記にはもう載っていないことも多い、ということですが、2018年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産へ登録されたこともあ

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    2021年06月24日