川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一編一編が味わい深くて、余韻に浸りながら編ごとに何度も読み返した。タイトル通り、後味が「ざらざら」とした短編集。けれど不快感のざらざらではなくて、ふとした瞬間に訳もなく泣きたくなるような、後悔に似た気持ちが残る感じ。
この本を読んでいるあいだ、かつて愛したひとたちとの幸福の瞬間を思い出していた。洗濯機の使い方がわからないわたしに、洗剤と柔軟剤を入れる場所を教えてくれたこと。彼の実家で食べた、キンキンに冷やしたイチゴに白砂糖と練乳をかけたものが美味しくて、今でも春になると自分で作って食べること。当時はマイナーだった、彼の好きなアーティストがテレビに出ていると、つい教えてあげたくなること。愛だった -
Posted by ブクログ
「"ふつう"って何?」みたいな翠くんの中にうずまいている居心地の悪さに我々が向き合うにはとうに歳をとりすぎていて、だからそのことを語ろうとしても口から出るのは自分というものを世界から切り離して俯瞰のつもりで語る空想にすぎなくなるのだから、それを自覚できているだけいくぶんかましだとおしだまるのが吉。
川上弘美という作家は私を含めた川上弘美ファン全員にとって自分の生活/思考様式の中で大きな位置を占めてしまう、いうなれば病のようなところがある、だろう。あるだろう。私の周りには何人か、好きな作家を尋ねたときに「川上弘美」と答える人たちがおり、そしてその人たちの書く文章というのは川 -
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久しぶりに川上弘美の作品を読んだ。
川上弘美作品に出てくるちょっと行儀が悪かったり、性格に難アリというような主人公をチャーミングに描いているところが好きだ。作品内の他キャラクターには「チャーミングですね」とは認識されていなくとも読者にはどこか可愛く思えるし、そういう少しの「難」を抱えた読者をちょっと救う話ばかりだ。
物語そのものは大きく変化していなくて、問題に対する心持ちだけがギュンと変わりましたよというお話が大好きなのでかなり良い作品集だったなあと感じた。
特に表題作の「パスタマシーンの幽霊」で主人公が披露するケチャップごはん(ほかほかごはんにバターと醤油、ケチャップを回しかけて適当にぐ -
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Posted by ブクログ
不倫関係のつながり
① 妻
② 夫
③ 妻の親友(独身)/ 夫の不倫相手
④ 妻の不倫相手 / ⑤の弟
④ 夫の友人(独身)/ ③の男友達
⑤ ③の男友達(独身)/ ④の兄
⑥ ③の男友達(独身)
最終的に皆自分たちの居場所を見つけ出し始めて、これらのつながりは解消されていくところで物語は終了。
登場人物の気持ちのうつろいや感情の揺れ動きを、作者はゆったりとした文体で丁寧に描写しているところが良かったです。
物語はスリリングな展開はなく、波が打ち寄せてはかえるといった情景が浮かんでくるような、穏やかで平和な流れで構成されていました。
文章の細やかな描写に惹かれ二度読みましたが、一度読んだ