川上弘美のレビュー一覧
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「"ふつう"って何?」みたいな翠くんの中にうずまいている居心地の悪さに我々が向き合うにはとうに歳をとりすぎていて、だからそのことを語ろうとしても口から出るのは自分というものを世界から切り離して俯瞰のつもりで語る空想にすぎなくなるのだから、それを自覚できているだけいくぶんかましだとおしだまるのが吉。
川上弘美という作家は私を含めた川上弘美ファン全員にとって自分の生活/思考様式の中で大きな位置を占めてしまう、いうなれば病のようなところがある、だろう。あるだろう。私の周りには何人か、好きな作家を尋ねたときに「川上弘美」と答える人たちがおり、そしてその人たちの書く文章というのは川 -
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久しぶりに川上弘美の作品を読んだ。
川上弘美作品に出てくるちょっと行儀が悪かったり、性格に難アリというような主人公をチャーミングに描いているところが好きだ。作品内の他キャラクターには「チャーミングですね」とは認識されていなくとも読者にはどこか可愛く思えるし、そういう少しの「難」を抱えた読者をちょっと救う話ばかりだ。
物語そのものは大きく変化していなくて、問題に対する心持ちだけがギュンと変わりましたよというお話が大好きなのでかなり良い作品集だったなあと感じた。
特に表題作の「パスタマシーンの幽霊」で主人公が披露するケチャップごはん(ほかほかごはんにバターと醤油、ケチャップを回しかけて適当にぐ -
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不倫関係のつながり
① 妻
② 夫
③ 妻の親友(独身)/ 夫の不倫相手
④ 妻の不倫相手 / ⑤の弟
④ 夫の友人(独身)/ ③の男友達
⑤ ③の男友達(独身)/ ④の兄
⑥ ③の男友達(独身)
最終的に皆自分たちの居場所を見つけ出し始めて、これらのつながりは解消されていくところで物語は終了。
登場人物の気持ちのうつろいや感情の揺れ動きを、作者はゆったりとした文体で丁寧に描写しているところが良かったです。
物語はスリリングな展開はなく、波が打ち寄せてはかえるといった情景が浮かんでくるような、穏やかで平和な流れで構成されていました。
文章の細やかな描写に惹かれ二度読みましたが、一度読んだ -
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ネタバレこれはタイトルが猛烈に好きで中身も知らずに買った本。東京のどこかの町の、商店街を中心とした11の連作短編集だった。読む前から絶対に好きだと分かっていたけれど、最後まで読んでみてやはり大好きだった。
ただ続いていく日常と積み重なっていく過去。この町で働く人、買い物に訪れる人、住居としている人。主人公が代わっていっても一様に温度の低さが心地よく、誰も無理をしていないように見える。
この町の人々は、自分の心と孤独に向き合い、隣人に心をさらけ出したり隠してみたり、付かず離れず生きている。どこにでもいそうだけれどここにしかない、はかない繋がりがあって、それがどうしようもなく心を惹きつける。
特に忘れられ