川上弘美のレビュー一覧
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ジャンルで言えば異世界ファンタジーなのだが471pある本書で「夜」の世界に行くのは300pあたりである、和製ファンタジーって異世界に行くまでめちゃくちゃ長いがちよね。グリクレルにまた会いたくて七夜物語のちょっとした後日談かな?ぐらいの気持ちで読み始めたのだが哀しくも清々しい読後感に包まれる良い小説だった。川上弘美先生のキャラクター達は本当にお別れになるのが寂しくなる。
あとがきで笑った、ピーツピジジジジ、鈴木博士の研究をみて以来野山でカラ系の声を少しばかり聞き分けられるようになったのだが、私が近づいた途端警戒鳴きをさせることが多々有りちょっと傷つく -
Posted by ブクログ
生と性と死をめぐる、命についての神話。
命は水(aqua)の中で生まれ、水の中へ返り、水の中を巡って、再び生まれる。
肉体は土(terra)に埋められ、分解され、心はまだ生者のそばにいるけれど、やがて死を理解して、肉体のある土へ帰って行くだろう。
それなのに、命はまるで空気(aer)から生まれるように、突然体の中へやって来る。その異物感、自己愛。動物としてのニンゲン。
動物であるから、男と女が共にいる。その間には、火(ignis)がある。燃える炎、消えかけたりくすぶったり一息に燃えがったり。同じところを巡り巡る。
そして世界(mundus)が、立ち現れる。何千年も繰り返される、物語。 -
Posted by ブクログ
はるか遠い未来の物語。
全く別の場所の、別の話が連なっていくのかと思いきや、驚いたことにそれぞれの短編がほんの少しずつ繋がっていた。
ここで語られている世界は、人口密度が極端に低く、母と子どもたちが暮らしていて、男はたまにしか出てこない。
原始的な雰囲気がうかがえるけれど、コンピューターが出てくるあたり、大昔の話ではないようだ。
ごく限られた地域のことのように思えるのに、なんだか壮大で、目に見えない何かに飲み込まれていきそうです。
私たちはいったいどこへ連れて行かれるのだろう。
最初は曖昧でぼんやりとした感じだったのが、「大きな鳥にさらわれないよう」と次の「Remember」あたりから、見え -
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Posted by ブクログ
ちょっぴり生きづらい人たちのお話。生きやすく生きられるならとっくにそうしてるんだけど、今の生きづらい生活もちょっぴり愛おしい。窮屈なのがかえって心地いい。そんな人たちのお話。
「ずっと雨が降っていたような気がしたけど」「銀座 午後二時 歌舞伎座あたり」「儀式」「二百十日」「土曜日には映画を見に」がとくに好き。サブカルチャーとはこういう作品だと僕は思う。孤独を孤独のままに受け止めてくれるもの。いつも僕はそういうけど多分この本みたいなことなんだと思う。どれもマジックみたいなお話だった。どのへんがマジックか、実はあんまりピンときてないんだけど、「マジック」って言葉が頭のなかに浮かんでる。だからマジ -
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