川上弘美のレビュー一覧

  • パスタマシーンの幽霊(新潮文庫)

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    一遍一遍読むたびに、はぁとひと息ついて、余韻に浸りたくなる。なんだかわからないけど、噛み締めたくなる。

    この短編集を手に取る前に、『ざらざら』『ぼくの死体をよろしくたのむ』を読んでいたので、リンクするお話を見つけるたびに感動していた。もちろん、この短編集から読んでも十二分に楽しめると思う。
    『ざらざら』よりかはソフトな恋模様だった。
    それぞれ異なる恋愛をしていて、チープな言い方になってしまうが、面白い。

    表題作『パスタマシーンの幽霊』が特に大好きで、料理の不得意な主人公がケチャップごはんをつくるシーンが一番のお気に入りだ。短編集を読み終わってからも、この部分は何回も読み返しているし、実際に

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    2024年01月16日
  • 猫を拾いに(新潮文庫)

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     大好きで何度も読んでる本。どれも本当に短いお話なのに印象的で心に残るし読み返したくなる。特に好きなものは、

    「猫を拾いに」
    あたしたちは、じきに、ほろびるんだね
    空想のようで現実のような少し切ない日常。

    「クリスマス・コンサート」「旅は、無料」
    一本の映画を見たような気持ちになる恋の話。

    川上さんの書くちょっと距離感のある女性たちと、現実や日常の延長線に成立する少し不思議な世界がとてつもなく好き。

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    2024年01月11日
  • 東京日記7 館内すべてお雛さま。

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    ネタバレ

    勝手に、作者の方を文学のすごい人で、高尚な遠い感じの人というイメージを持っていたので、ゆるく、ほっとして、たまに何だか笑ってしまうような内容に惹きこまれました。装丁も素敵ですね。紅白と駅伝を、録画して、お正月に晩酌をしながら3日とかかけて見る、というのに、年末年始で力がぐっと入っていたので何かほっとしました。他にも、粗大ゴミを追いやった魔空間を作ってしまった話や、ドラクエウォークをされているなど、好きなエピソードがありました。

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    2023年12月31日
  • 蛇を踏む

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    ネタバレ

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    「影」としての心との出会い

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった。
    蛇は柔らかく、踏んでも踏んでもきりがない感じだった。「踏まれたので仕方ありません」人間のかたちが現れ、人間の声がして、蛇は女になった。
    部屋に戻ると、50歳くらいの見知らぬ女が座っている。「おかえり」と当たり前の声でいい、料理を作って待っていた。「あなた何ですか」という問いには、「あなたのお母さんよ」と言う……。
    母性の眠りに魅かれつつも抵抗する、若い女性の自立と孤独を描いた、第115回芥川賞受賞作「蛇を踏む」。


    ⚫︎感想
    ユングの「影」を想起した。積極

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    2023年12月16日
  • センセイの鞄

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    ネタバレ

    「今年いっぱいはまだ三十七」の主人公の「わたし」と、「歳は三十と少し離れている(すなわち60代後半ということ)」「センセイ」の恋物語。センセイはわたしの高校時代の国語の教師であり、卒業から20年近く経ってから、偶然、再会したのだ。
    恋愛のテンポは驚くほどゆったりしている。「センセイと再会してから、二年。センセイ言うところの"正式なおつきあい"を始めてからは、三年。それだけの時間を共に過ごした」とある。この物語は、主に、わたしがセンセイと再会してから、「正式なおつきあい」を始めるまでの二年間の出来事が綴られている。特に劇的な出来事があって、2人がつき合うようになるわけではない

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    2023年12月16日
  • 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

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    とても、おしゃれ〜な気分になる。欧米人の会話ってウィットが効いてて、嫌味なく本気で喋っていいよな、とら思っているけど、そこを少し日本人的ないテイストで流してる感じ。口に出さなかったことも含めて、表現がおしゃれ。

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    2023年11月25日
  • ぼくの死体をよろしくたのむ(新潮文庫)

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    なんか、全部よかった!!
    深緑色の缶に死体を集める話、駅弁をちょうど半分まで食べて交換する2人組の話、恋情とは別の愛の話、不思議な美術館の廊下、ふわふわとした雲みたいな掴みどころのない、だけど心にすっぽりはまる短編集だった。
    私も日曜のお昼は決まってそうめんを食べるようにしてみたい。

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    2024年01月16日
  • 神様

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    読んで間違いなかった。
    『ぼくの死体をよろしくたのむ』で川上弘美の世界に惹き込まれ、この作品で読むのが3冊目ですが、読んで良かったと心から思います。

    フシギと現実の間をふよふよと浮いて、うまいこと行ったり来たりしている川上弘美の文章は、読みやすくて心にすっと馴染む。川上弘美のフシギには、違和感がなくて、疑問も持つことなく、まるで自分もその世界にいるみたいに読めてしまうから好き。

    どのお話も好きだけど、くまのお話、梨の話、おばあちゃんの営むバーのお話が好きでした。くまに関しては、もうくまに恋してしまいそうだった。梨の話は、なんとなく主人公の感覚に共感できるところがあって、「ズレ」という表現に

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    2024年01月16日
  • 溺レる

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    汲々とすればするほど、二人いっしょではなくなる。

    ともかく充填し用いあってできてくるのは、ウチダさんでもないわたしでもない、そのあわいに生まれてでてくるところの形象である。

    (さやさや/溺レる/亀が鳴く/可哀想/七面鳥が/百年/神虫/無明)

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    2023年10月13日
  • 三度目の恋

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    いちずに?ほんに、まことにか?へ、くそ、かずら、ばいのりちい、えいわがらくさあい?だらだらしやくねつわおん、ていおんやけどにごちゆういを、なんにつけ、やけだけしおんちやんどくさい、へりくだう、くだらけた、くらい、くおにはーにちいどくさい?へくだまだまだしだらく、ないがらなきなきのばいおん?

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    2023年10月12日
  • これでよろしくて?

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    ネタバレ

    めっちゃ見てくる人がいるからスタートするのも面白い。
    その見てくる人が元カレ土井優のお母さんっていうのも絶妙!そしてその土井母に誘われて入る
    "これでよろしくて?"同好会!!
    なんじゃそりゃ!!と思いながら読んでたら
    この同好会がすごく良い。

    議題にするテーマや義例も面白い。
    明確な答えなんか出さなくても
    とにかく話して話がそれれば次がその議題になったり。わぁいいなぁ〜〜

    この同好会がおもかと思ったけど
    菜月の普段の生活が結構主だった。
    その何気ない日常も分かるものが多かった。

    家族、夫婦
    相手の何気ない一言に、納得できなかったり
    傷ついたり、自分だけ輪の中にいないと

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    2023年09月28日
  • 溺レる

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    年増のわたしと更に年上の男性との関係。すっかり大人のふたりなのにどこか子供っぽいやりとりで、読み終わるとなんだか心があったかい。蝦蛄を食べたくなった

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    2023年09月14日
  • 東京日記3 ナマズの幸運。

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    さらさらと読めて読後の清涼感がクセになる。
    10年ほど前の文章なのに、2023年の今のエッセイと言われても全く違和感がない。10年も経つと文化や環境、価値観そのものなんかも変わってしまうのに、今の人の心にもするりと入り込む魅力がある。
    柔和な文体で淡々とした筆致は、1冊の本丸々の詩でも読んでいるかのような感覚になれる。
    各月の始まりに題される章題が文体のどこに散りばめられているのか忘れないように読み進めるのに、読むとすぐに(あれ?章題なんだったかな…)となってしまい、自分の記憶力に落ち込むが、それも少し楽しい。

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    2023年08月23日
  • 竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記

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    読むのに時間がかかってしまったけど、すごく面白かった。
    竹取物語、堤中納言物語 : 読みやすい。普通に面白い短編集。
    伊勢物語 : 女遊び三昧の主人公が嫌な感じで、なかなか読み進められなかった。
    土左日記 : 紀貫之って面倒臭い。女たちの水浴び(胎貝や鮨鮑!)を覗き見しといて、これはモト歌があって…と言い訳してるのウケる。
    更科日記 : 江國香織の訳がいいのか、作者に共感しまくり。
    当時の結婚制度、女房の仕事など謎が多いのできちんと調べてみたい。

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    2023年08月14日
  • 神様

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    隣に住む律儀なクマとピクニックに行く。恋愛に悩む河童に招待される。きれいな壺の中からかわいらしい女性が出てくる。梨畑で不思議な白い毛の生き物に出会う。
    「私」が関わるのはフツーの人間ではないけど、人間のように一生懸命考えたり悩んだりしている。ふわふわしてて、ちょっと泣ける話が9編入った短編集。
    これは買って、一生そばに置いておきたい本だなぁ。この本の雰囲気が好き。佐野洋子さんの解説もおもしろい。
    私は特に「神様」「夏休み」「花野」がお気に入り。

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    2023年08月04日
  • 東京日記2 ほかに踊りを知らない。

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    卵一個ぶんのお祝い。の続編。
    一度に読んでしまうのはもったいないなと感じる文章の数々。けど1日でするすると読んでしまう魔の魅力がある。
    前作同様、短い日常の情景を集めた作品で、畏まっていない等身大の日記文学。
    たまに、淡々と書かれているのに、何故だか少しうるりときてしまう文章があって、どきどきする。
    著者の川上さんの本を読むと、すぐに影響されて川上さんみたいな文章を書きたくなる。(素人にそんな簡単に書けるものではないのに。)

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    2023年07月27日
  • 東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

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    言葉は少ないのに、自然と情景が流れていくような、ずっと読んでいたくなる文章。フラットで等身大で、まるで友人の日記を読ませてもらっているかのような感覚になる。(こんな文章の上手な友人はそうそういないだろうけど。)
    本の一節にこんなシーンがある。部屋の鴨居にTシャツをかけたハンガーを3つ吊るし、その下を通る。何気ない誰もが見たことのあるなんの変哲もない日常を、著者の目には、『3人が揺れて笑っている』ように見えている。誰もが見ている世界を、ほんの少しの語句と感性の差で薄くきらきらしたフィルターがかかったような世界に変えてしまう、そんな魅力がここには詰まっている。

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    2023年07月27日
  • ざらざら(新潮文庫)

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    一編一編が味わい深くて、余韻に浸りながら編ごとに何度も読み返した。タイトル通り、後味が「ざらざら」とした短編集。けれど不快感のざらざらではなくて、ふとした瞬間に訳もなく泣きたくなるような、後悔に似た気持ちが残る感じ。
    この本を読んでいるあいだ、かつて愛したひとたちとの幸福の瞬間を思い出していた。洗濯機の使い方がわからないわたしに、洗剤と柔軟剤を入れる場所を教えてくれたこと。彼の実家で食べた、キンキンに冷やしたイチゴに白砂糖と練乳をかけたものが美味しくて、今でも春になると自分で作って食べること。当時はマイナーだった、彼の好きなアーティストがテレビに出ていると、つい教えてあげたくなること。愛だった

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    2023年07月25日
  • ざらざら(新潮文庫)

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    読んだのは2度目。
    もう全然内容は覚えていなかったんだけど、とてもとても今の心にぐっとくる。
    大好きな本になった。

    いてもいられない状態なんてそんなに長く続かないから大丈夫。
    みたいなことが書いてあって、本当にその通りだなと思う。
    早くこのざわざわした気持ちが去ればいいのにと思う時、この言葉を呪文のように唱えてします。

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    2023年07月18日
  • センセイの鞄

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    「大人は、人を困惑させる言葉を口にしてはいけない。次の朝に笑ってあいさつしあえなくなるような言葉を、平気で口に出してはいけない。」
    自分自身が思い出になる前に、鞄が空っぽになる前に、どれくらいの出会いがあるだろうか。

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    2023年07月05日