川上弘美のレビュー一覧

  • センセイの鞄

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    心が暖かくなる、でもちょっと切ない気持ちになるとても良いお話でした。
    センセイとツキコさんのあいだに流れる空気とか、物腰の柔らかさ。行きつけのお店の美味しそうなお料理の数々。全てがほんわかと和ませてくれます。
    読み終わったあと、ついセンセイ口調になってしまう自分がおりました。
    ワタクシはこの話が大好きでございますよ。

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    2015年02月09日
  • 東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

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    装丁だけでなく本文にも祖父江さんの楽しい仕掛けが込められている川上さんの東京日記シリーズ。

    帯に「けっこうホントの日記です。」と書かれてあるように、5分の4はホントのカワカミさんの日記のような短編の卵たち?少しの脚色がどこなのか…なんてどうでもよく、粛々と内に外に伸び縮みする川上さんの毎日から生まれる言葉が愛らしい。

    ある春の日に、花茣蓙を手に入れたという友達に誘われて公園に花見へと出掛け、桜と柳の美しい公園でお弁当やお酒を開ける長閑な一日。沢山の花びらが舞い散る中、交代で花茣蓙を担ぎ合いながら駅まで歩く帰り道。もう過ぎゆこうとしている春の幸福な後ろ姿を見送るようで心が静かに和らいだ。

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    2026年05月21日
  • 三度目の恋

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    心情が語られるのに、これほどひらがなの文体がしっくりくるとは。昔々も昔も、色んな意味で今より余白があったのかもしれない

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    2026年05月16日
  • センセイの鞄

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    『ツキコさん。もう一度、呼ばれた。
    振り向くと、センセイが立っていた。』
    『センセイ、こんなところで、どうしたんです。
    散歩ですよ。いい夜ですな。』

    不器用でまっすぐなツキコと、頑固で融通がきかなそうなセンセイのゆったりした交流
    2人のほどよい会話、関係がとてもよかった

    それが石野先生や小島との再会で、少しずつ変わっていく
    『ツキコさん、デートをいたしましょう』
    センセイとツキコがぶらりと歩く風景を想像して、とても素敵だなと思いました

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    2026年05月03日
  • 水声

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    ネタバレ

    少し変わっていつつも平穏な家族の成り行きを時代を行きつ戻りつしながら流麗な文章で描く。家族それぞれの個性がきっちり描かれており読みやすい。主人公、都の目線で徐々に明かされる家族の秘密も興味深く、数々の伏線が回収されていく。家族とは、恋愛感情とは、死とはを考えながら読み進める。母親の死、地下鉄サリン事件の死、日航機墜落の死をきっかけに人は揺れ、秘めていた欲望を実行するのは自分の死も意識するからなのか、本能なのか。
    都と弟の陵との心地よく歯がゆい関係性を興味深く読んだ。恋愛感情は同居する時間と反比例して低下していく不思議は全ての人において当てはまることではないのかも。

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    2026年04月11日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    何を読んでいるのかまったくわからないまま、でもなぜだか飲み込まれて読み進めると少しずつ世界が繋がっていく、その塩梅が生々しく気持ちいい。一気読みしてしまった。作者の想像力と愛が美しい物語。

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    2026年04月10日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    ネタバレ

    普通の日本の風景のように始まった物語だが、進むにつれてどこかおかしい。違和感がどんどん増えていく。
    ほとんど絶滅している人類の、最後の生き残りたちが生きる様子を、詩的な文章で描いていて、本当にこんな未来になるかもしれないと思わせる力がある。
    世界観がはっきりしていて、最後の方でそれを説明しすぎてしまうところがやや難点か。雰囲気から読み取れるぐらいにしておいた方が、詩的な文章とのバランスがよかったかもしれないと思った。
    ともあれ、想像力はすばらしく、読者の頭の中にも想像の世界をくっきりと立ち上げることができるすばらしい文章だった。これは映像では決してできない、文学だけが持つ力だと思う。

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    2026年03月24日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    常に別れや滅びの気配がただよっている。
    この人の文章を読むと明確な言葉としての感想は浮かんでこないが、不思議な世界の穏やかな寂しさに包まれる。唯一無二な感じ。
    性に関するワードがかなり出てくるため、人目のあるところで読みづらい。

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    2026年02月24日
  • 神様 2011

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    オリジナル版で、清濁を併せ呑むような熊の内面は諦めと優しいが混ぜこぜになってるんだと感じて、ほのぼのとした物語にホッコリして少し切なくなった。2011版で、「あのこと」さえも受け入れて淡々とな日常をやり過ごす姿に、さらにやりきれなくなった。神様は残酷で私達は無力だけれど、それでも日々は流れていく

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    2026年02月21日
  • 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

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    大人の恋愛未満の交流って感じで、なんかおしゃれで余裕があって素敵。
    「そういう時に限って冷蔵庫の中のものが」とか「尻馬人生」とかコメディ一歩手前のばかまじめなやりとりがなんだか愛おしい。

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    2026年02月18日
  • 森へ行きましょう

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    「ルツ」という女性が様々な平行世界で、どんな選択をしてどういう生き方をしているかを、それぞれ描いているという物語。
    誰しもが「あの時こうしていたら」と、生きていく中で思ったことがあると思うけど、それが物語の中で行われていて、すごく満足感のある話だった。
    最終的にはそれぞれが、幸せというものを発見して噛み締めていた。
    中には、「それで本当に幸せって言えるの?」と思えるような結末もあったけど、それぞれ自分が選択した人生だから、っていうのが答えなのかな?
    小説を書いた世界線の話、身近な人間を参考に物語を広げて書いているっていうのが面白そうすぎて私も書いてみたいな、と少し思った笑
    でもそう簡単に上手く

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    2026年02月11日
  • 明日、晴れますように 続七夜物語

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    ネタバレ

    前作『七夜物語』の主人公鳴海さよと仄田鷹彦の二人は、冒険のあとそれぞれの人生を送り、大人になった。
    そしてさよの息子の絵(かい)と仄田君の娘(りら)は小学4年生、同じ学校のクラスメートである。

    りらは、クラスの女子三人組にいじめられている。
    父親の仄田くんもそうだったように、頭はいいのに空気を読まない、少し変わったところがあるからだ。
    絵はりらがいじめられている事に気付いても、しばらくは何もしなかった。
    どうしたらいいのかわからなかったし、そのことについて考えるのも気が重かったからだ。

    ふたりが冒険に出るきっかけはそういうことだったのだけど、そこに至るまでの絵の日々、りらの思いなどが丁寧に

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    2026年01月28日
  • 夜の公園

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    ネタバレ

    どんな恋にも終わりがあって、その終わりが必ずしも苦しかったり悲しかったり涙を流すようなものになれないからこそのさみしさを感じた。執着なのか恋なのか愛なのかなんなのかよくわからない熱だけを持つ。その熱がどんどん上昇していったり冷めていくのはすごく自然なこと。セックスしたら子供ができることもそれと同様に自然なこと。(ラストはそこが描かれてると思った)
    この本はそういう恋愛が持つ自然さとともに、自然であることの不気味さ、さっぱりとしたきもちよさがあって、それがとてもなまぬるくていつまでもこの中にいたかった。

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    2026年01月04日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    物語の中の時間単位が大きすぎると思わせるほど、割と近い将来の出来事なのかもしれない。視点の違うエピソードを繋ぎ合わせることで徐々に世界の様相や成り立ちが見えていく感覚は、未来のことでありながら歴史書を読み解いていくそれとも似ている。

    色んな登場人物がいるけど、読者はこの世界でいう「見守り」の立場に近いところに置かれているような感じかな?

    感情が最小限まで削ぎ落とされた先にある、戦争も平和もないグロテスクな秩序。人工知能の一つにチャッピーと愛称をつけて呼び始めた今、僕らはどのフェーズにいるんだろう。

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    2026年01月03日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    川上弘美氏の「大きな鳥にさらわれないよう」を読み終える。 壮大な時間のなか、愛とはなんなのかを問い続ける神話のような美しい物語だった。

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    2026年01月01日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

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    綿矢りささんが好きなので買いました。期待していたとおり心が痛くなるような女性が主人公でとてもよかったです。ユーミンの歌は知らなかったので、そういう楽しみ方はできませんでしたが…
    桐乃さんの短編に出てくる男性は女性から見れば恐怖を感じるかもしれません。

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    2025年12月26日
  • 神様

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    登場する生き物達が愛らしく、ときおり怖い。
    各話20p弱の短編集だが、情報をあまり入れない中で非常に共感力が高く上手い作品だった。
    「別れ」とは寂しいものだったと再認識させられ、若干のコンセプトも感じる。

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    2025年12月20日
  • 真鶴

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    寝る前から読み始め、次の日のお昼頃には読み終えた。
    真鶴、まなづる。
    良い響き。
    神奈川県に真鶴半島という場所がある事をGoogleに教えてもらった。
    文章から真鶴の海の香りを感じ、瀬戸内海の海の香りも感じた。二つの海の香りは全く違く感じた。

    ついてくるもの、とは何だったんだろう。
    この物語からたくさん、"距離感"というものを感じた。
    京と娘の百、礼、青茲。
    皆、距離を感じた。
    京と礼の、近づきたいのに近づかせてくれない押し問答は読んでて途中とても辛くなってしまった。
    主人公京と1番距離が最終的に近かったのは多分、ついてくるもの、だっただろう。
    友達、になったんだと思う。

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    2025年12月18日
  • 蛇を踏む

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    ある日蛇を踏んでしまった。帰宅したら見知らぬ女が居てそれは蛇だった〜表題作含め3篇の不思議な話。不思議すぎて置いてけぼり感ありながらもシュールさも感じる。とにかく不思議なおはなしだった。

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    2025年12月17日
  • 三度目の恋

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    「幾重もの時間を生き、人びとと縁を結び、幾重もの感情を知り、それらが終わった今、わたしは心の底から、何かを愛したいと思えてならないのです。その愛は、狭いものではなく、かといって広すぎるものでもなく、ぼうっとともった春の灯のようであってくれればいい。その灯がわたしを照らさなくとも、わたしが愛した何かを照らしてくれさえすればいい。そうしたら、わたしは愛するものを優しく見つめることでしょう。ただただ、柔らかく見つめていることでしょう。この余生が終わるまで、ずっと」

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    2025年12月09日