猪瀬直樹の作品一覧
「猪瀬直樹」の「合本版 猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」全16巻」「昭和16年夏の敗戦 新版」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「猪瀬直樹」の「合本版 猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」全16巻」「昭和16年夏の敗戦 新版」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
信州大学人文学部卒。1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。『ペルソナ 三島由紀夫伝』、『ピカレスク 太宰治伝』、『こころの王国 菊池寛と文芸春秋の誕生』など数多くの作品を手がける。
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Posted by ブクログ
総力戦研究所の存在を公にしてくれた一冊。昭和16年の夏に机上演習として、各省や民間エリートが集められた日米戦争はすでに敗戦の結論を出していた。その発表に東條英機も在席していた。
陸軍大臣時代とは異なり、天皇からは開戦決議の白紙撤回を期待されて組閣することとなった東條英機は、時すでに遅い時局から、日米戦争回避へ動くが流れには逆らえず結局開戦。実際の戦争は真珠湾攻撃と原爆を除いて総力戦研究所の想定通り進む。石油を求め南進すると本国へのシーレーンを確保できず商戦は破壊されて石油は届かない。
本書では、何故敗戦するとわかっていたのに、正しい予測をした人がいて、内閣にその情報まで上がったのに、天皇は戦争反対だったのに、それでも意思決定に活かせなかった構造を描いていく。
戦後全く同じ状況でないにせよ、流れに逆らい意思決定ができるようになったのかは、いささか心許ない…
Posted by ブクログ
猪瀬直樹さんの「昭和23年冬の暗号」を読みました。同氏の「昭和16年夏の敗戦」と対になる作品でもあるけど、単独でも十分面白い。
昭和21年4月29日、つまり終戦の翌年の天皇誕生日に東條英機に代表されるA級戦犯は巣鴨拘置所、通称スガモプリズンに収監され、5月3日に彼らを裁く東京裁判が始まった。5月3日は翌昭和22年に日本国憲法が施行され、憲法記念日として国民の祝日となった。東京裁判が結審したのはさらに翌年の昭和23年11月12日になるが、極刑を言い渡された7人のA級戦犯の刑が施行されたのは、その年、昭和23年の12月23日、すなわち、後の平成天皇となる皇太子殿下の誕生日だった。日中戦争から太平洋戦争に至る一連の戦争責任について、天皇は訴追を免れ、東條英機を始めとする軍部の暴走、統帥権の独立を盾にシビリアンコントロールの効かない当時の日本の体制の問題としてかたづけられたが、そのメルクマールとなる日を日本国民、特に天皇家の心に深く刻ませる意味で、敢えてこの日が選ばれたという話だ。
日本占領軍の総司令官であるマッカーサーは、いかにアメリカ軍の犠牲を少なく、つまり低コストに日本の武装解除を進め、占領統治をアメリカ主導で進めるかが大きな命題であった。戦後生まれの我々は、原爆投下を契機に日本人は一夜にして、鬼畜米英から親米になったような勘違いがあるが、当たり前のように終戦を受け入れない勢力はあって、当然彼らは武装もしていて、徹底抗戦の構えを見せていたりもした。これを武力で押さえ込もうとすれば、硫黄島や沖縄のようにアメリカ軍にも多大なる被害が予想される。そこで考えられたしゅだんが、天皇を擁護し、戦争責任を一部の軍部に負わせるという作戦である。国家元首である天皇に本当に戦争責任が無かったのかは別の議論である。とにかく低コストにそしてアメリカ主導とするために迅速に事を進める必要があった。分断国家となったドイツの例もあるし、その後勃発する朝鮮戦争の例を見ても、世界の赤化を食い止める意味でも日本の占領はアメリカが主導権を握らなければいけないという強い思いもあったであろう。マッカーサーはそれを周到に実施したのに過ぎない。一方で、天皇家には「お前らの身代わりとして、軍人達は処刑されたんだ」という事を深く心に刻ませる意味で、天皇家に縁のある日にちを選んで、刑が執行された。なんとも。
Posted by ブクログ
予言的
新版の終わりに収められている「我われの歴史意識が試されているー新版のあとがきにかえて」が秀逸だった。新型コロナウイルス感染症流行による小中学校の一斉休校に関する安倍政権の決定過程を斬った。それは新型コロナ感染症対策本部、関係閣僚・官僚による協議、首相秘書官兼補佐官官の首相への進言という三段構えから成り、日米開戦を決めた連絡会議と御前会議と同じく、きわめて不透明だった。
現在のコロナ対策は、これに分科会が加わり、首相の判断を判断を歪めている。
本書は、日米開戦時の東條英機首相を実直な官僚として描いた。開戦決断の責任は東條が負うが、実際の責任の所在が曖昧であった当時の風景と併せて。これは、実務能力の高さで首相に昇り詰めた菅氏とどこか重なる。今の日本の行く先が当時と同じく滅亡なのかと思うと、非常に暗い気持ちになる。
当時、国の若い精鋭を集めた「総合戦研究所」は、数字を積み上げたデータから日米開戦について「日本必敗」の結論を導き出した。政府は、東條を始め和平派・中間派の閣僚を抱えながら開戦を決断した。戦略物資などのデータを持っていながら、開戦に向かうようになぜか議論が進んだ。
データがあるのに、どうしてそういう解釈になるのか分からないような過程があり、政策が決まっている風景は、今と驚くほど似ている。本書は予言的であり、読んでいて引き込まれた。