あらすじ
日米開戦前夜。平均年齢三十三歳、全国各地から集められた若手エリート集団が出した結論は「日本必敗」。それでも日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視して無謀な戦争に突入したプロセスを描き、日本的組織の構造的欠陥を暴く。
石破茂氏との対談、新版あとがきを収録。
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いろいろと話題になってしまったドラマの元となった本。
この夏に『日本のいちばん長い日』を読んだが、この本も私の「ちゃんと知ってなきゃいけない話リスト」に加わった。
"事実"を畏怖することと正反対の立場が、政治である。(p.256)
戦争後終わって80年経って、進歩があったのだろうか。
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おそらく10年ぶりくらいに再読、以前より戦前の官制や統帥部関係についての知識がついているのでより楽しく読めた。
この本の妙は総力戦研究所での論戦と実際の戦争への動きを見事にリンクさせている部分だと思う。陸軍省燃料課の石油確保をめぐる騒動と鈴木貞一による出来合わせの答弁、また実際に蘭印の石油を手に入れた後の顛末を研究所で論議の末両手を上げて降参のポーズをとる仕草に見事につなげている。ノンフィクションにも(むしろノンフィクションだからこそ?)文才が必要と分かる。
戦後80年、戦争前にこのような議論が行われていたこと、そして行われていながらなぜ戦争に突入してしまったのかは忘れてはならないと思う。
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最近読んだ2冊の本で取り上げられており、読んでみました。
対米戦前、若きエリートを緊急に招集し創設された「総力戦研究所」。そこでは開戦前に日本必敗を正確に分析していた。それでも、なぜ日本は開戦へと踏み切ったのか…
設立当初は分析結果を政府がどう活かすかという目的があったとは思うが、アメリカに石油を止められ「ジリ貧」に陥った政府はアメリカと戦うことが正当であるとする分析結果を求めるようになる。結論ありきと、それを正当化するための分析結果。結局、出所不明、計算方法不明、つじつま合わせの数字が開戦への正当な裏付けとして用いられた。あと、必敗という分析報告に対して東條英機の返答、ロシアにも勝てないと思っていたのに勝てただろ、ってのは読んで思わず頭を抱えてしまった。
開戦という国家の一大事、その意思決定の裏側を暴いた本。けれど、最近読んだ「サイエンスフィクション」という論文不正の本に、なんかよく似ているなあ、と思った。大なり小なり、どこの国、どの分野でも同じようなことが今も起きてるんでしょうね…
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若きエリートらがデータを元に日本必敗を予想した総力戦研究所に関する史実と取材をまとめた一冊。
以下の2点が特に面白かった。
①どういう経緯でデータは無視され開戦に突き進んで行ったのかがわかりやすく整理されている(文章そのものはとても読みづらいが)
②東條英機は学校や教科書で書かれているような独裁的な人物ではなく…という意外性
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こんな組織があったとは今のいままで知らなかった。「緒戦は優勢ながら徐々に米国との産業力、物量の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から三〜四年して日本が敗れる」原爆の投下以外見事に的中した総力戦研究所のこの予測が日本のその後の選択に活かされていたら一体どれだけの命が救われたことだろう。
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恥ずかしながら総力戦研究所の存在をこの本で初めて知った。
御前会議は決定事項を承認するだけのセレモニー、結果ありきでデータ収集…等、いまの日本社会に通ずる部分が多々あり身につまされる思いになった。
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1983年初刊のノンフィクション。
昭和16年、軍を含む官庁や民間から選りすぐりの若手人材が「総力戦研究所」に集められた。
彼らは、各方面から持ち寄ったデータをもとに、模擬内閣を組織して開戦後の経過をシミュレーション。
その結果は「日本必敗」というもの。
しかしながら、敗戦に至るまでの過程を、原爆投下以外ほぼ正確に予測したこのシミュレーションは、結局採り入れられることなく日米戦へ突入。
優れた分析がありながらも、開戦に至ってしまったプロセスは必読です。
データよりも結論ありきの空気が優先されてしまうのは、現代でも変わらぬとても重い教訓だと思います。
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立場が人を作ると言うが、その立場は現実をみる眼を曇らせるというのもまた正しいと思う。先に描きたい絵があると、どうしてもその絵を飾るような事実を集めたくなってくるものだ。
本書で取り扱われている総力戦研究所では、各方面のエリートが集められ模擬内閣でそれぞれの「立場」を与えられる。しかしその「立場」は期限が定められており、かつゲームの役職といった雰囲気の自由さがあったように推察される。立場ゆえのしがらみがなければ、事実に執着して結論を出せる。日米戦争に対して「必敗」という正しい結論を下せたのもその自由さゆえであろう。
総力戦研究所のことは本書を読むまで、その存在さえ知らなかった。日米戦争は軍部の暴走と片付けられることが多いが、一旦はデータ(事実)に基づいて検討をしてみようとした形跡があるのは、救いである。そして、そのことを記録に残してくれているおかげで、現代の私たちがその存在を知る事になった。まずは事実を正確に記録すること。それが歴史認識の土台を築く。
ここで全て書ききれないほど様々な事に気づかせてくれた本だった。続編もあるようなので是非みてみたいものだ。
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第二次世界大戦および太平洋戦争は、日本の歴史上大きな転換期であった。この戦争の敗北で、これまでの価値観を根本的に覆す羽目になったのだ。その敗因として、日本はアメリカに関する情報や国内の補給線を十分に維持できなかったなど多々あげられる。そもそも、アメリカに宣戦布告をした時点で敗北が決定したのであろうか。そのようなことをあれこれ思い巡らす。このように、日本はこの戦争を依然として検討する余地があるのだが、実は、戦争直前の時点で日本が負けるとわかった組織が存在した。それが本書で取り上げる「総力戦研究所」である。この組織こそまさに、太平洋戦争で起こった出来事を見事に的中させたのだ。自分が観測したかぎりでは、教科書はおろか一般的な書籍にすら、その組織の存在を書いていなかったため、この本を読んで初めて知った。
「総力戦研究所」とは、陸海軍とは独立して、さまざまな官僚たちが集結した一大組織である。この組織は、数値データを駆使してある結論に至った。それが、物量的に見て、アメリカに勝てないということだ。この時代において、第二次世界戦は既に開始されており、ドイツ、イタリアを中心とした枢軸国が欧州を蹂躙した。そんななか、総力戦研究所は、あれこれと必死こいて先ほどのようにデータを提示してアメリカとの戦争を回避しようと努めた。それにもかかわらず、軍部、特に陸軍の上層部は耳を傾けなかったのである。本書以外にも、陸軍の組織の実態、たとえば『失敗の本質』や『組織の不条理』(いずれも中公文庫出版)が明らかであるが、本書においても組織の硬直化、根拠なき自信や非科学的な根性論を唱えるなど、組織の腐敗した側面が露呈している。
本書は主に組織間の派閥などを中心に目を向けられるが、なかでも太平洋戦争で宣戦布告を決定した時の首相東条英機の心情を事細かに当てたところも、この戦争の過程を知るうえで重要である。東条英機と聞くと、漠然とこの戦争を決断した張本人であるとか、独裁者というイメージなど、どちらかいうと印象の悪い人物だと捉えられる。たしかに、東条は、首相のみならず、陸軍大臣、軍需大臣、また参謀総長を兼任した事実がある。しかし、権力を集中させた背景を知ると意外な事実を思われるかもしれない。東条英機は首相となる直前に近衛内閣で陸相を担当していた。そのとき、陸軍の代表として、日本は戦争をするべきという発言が残っている。しかし、数々の証言を確かめると、実は昭和天皇に忠誠を誓って、そのような言動をしたことがわかる。ところが、一方で、昭和天皇の証言を確かめると、天皇本人は最初から戦争に反対の立場であったことが判明した。以上から、東条英機の行動は裏目となって、結果的に、A級戦犯として裁かれてしまい死刑という、色々と報われない結果となってしまった。このような事情を知ると、いかに国の舵取りが困難をきわめて、個人の力では抗えないほど、日本の組織の力が絶大であったのか理解できる。たとえ優秀な人物であったとしても、限度があることがこの本からうかがえる。
先ほどの話に戻るが、日本が資源の乏しさゆえに、戦争を持続するにしても、せいぜい短期決戦が限度であることが、数値から見て明確であった。本書でも言及されるは、第二次世界大戦とは石油の確保が、戦争を決定づけたといっても過言ではない。それゆえに、組織にとっては、日本で貯蔵する石油の容量を確かめたかった。ところが、本書によると、石油の容量を把握する者は組織の中でもほんの一握りで、極秘情報であったのだ。
しかし、聞く耳を持たなかった上層部にとって、ただの戯言と聞こえたのだろうか、「総力戦研究所」が邁進して、徒労になった。
さて、これらの歴史的背景を振り返って、現代人は何を学ぶべきであろうか。そのヒントは、この本の巻末にある筆者の猪瀬直樹と政治家石破茂の対談からいろいろと学べるであろう。なかでも石破氏の「国を変えるのは、最後は世論ですからね。政治家は、フォロワーではなく、あくまでもリーダーとして、その世論に訴えかけていく必要がある」というのは政治の本質をする者ならではの発言だ。太平洋戦争では、多くの国民が戦争への参加に賛成した。その事実をふまえると、戦後以降に根付いた民主主義において、国民の一人一人が政治に関与する自覚を持たなくてならないと警告されているような気がした。
それにしても、たとえ優秀な頭脳の持ち主を終結させたとしても、別の要因(今回でいうと軍部上層部の柔軟性の欠如)で阻まれてしまい、これは現代の組織間にも当てはまるだろう。ここから、個人で柔軟で寛容な気構えを抱くことがやはり重要ではないだろうか。
今後も人間の組織間の本を読み続けていくつもりであるが、いずれにしても人間とは他者に翻弄されるほど、はかない存在なのかもしれない。組織間とは究極的に人間関係であるので、上手く対処するのは苦難なのであろう。
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昭和16年に実在した「総力戦研究所」という、若手精鋭で構成された「模擬内閣」が何を行っていたかを中心に太平洋戦争に向かう経緯と同研究所の構成員の行く末を追ったノンフィクションです。「総力戦研究所」という組織が有ったこと自体を初めて知り、実際にどのような貢献をしたのかを知ることができ僥倖でした。今迄、東條英機に対して抱いていた独裁的イメージが大分変りました。
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シミュレーション以外にも満洲や南方
既に撤退すべきと
更に
石油タンク船の台数の極端の少なさ
戦争に向かう前、日露、日中戦争や旧藩(長州藩)との確執など歴史を遡ってみたくなる
きっかけの一冊
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ドラマを見てから原作も読みました。
アメリカと戦争をするにあたり、どのような経緯や判断があったのか。総力戦研究所で模擬内閣の出した答えは日本必敗。
それでも無謀な開戦をしてしまう当時の日本。当時の組織構造の問題がよく理解できました。東條英機が開戦を阻止するべく動いていた事は知らなかった。
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これまでの昭和歴史認識を覆すほど、インパクトのある一冊だ。
これまで散々日本がなぜ日米開戦に至ったのか? 当時の政府、軍、国民は何を感じ、何に向かっていたのか? について語られる機会、書籍はあった。
しかし、猪瀬直樹氏の分析力、調査力、表現力は我々の認識に向かって破壊力を持っていた。
まさにそこが本書の醍醐味である。
「日本は必ず敗ける」、「それは机上の空論でしかない」
そう言って我が国は米英との全面戦争に突入した。
昭和16年の夏にあらゆる分野から専門知識を持った30歳代の若者「総力戦研究所」という組織が政府直轄で招集されていた事実にまず驚く。
そしてもし米英と戦争に陥ったら? の仮設で「総力戦とは何であるか?」 それは武力戦、経済戦、思想戦を含めた全ての情報からシナリオを描き、昭和16年夏の時点で「日本必敗」の結論が既に出ていた。
「総力戦研究所」の詳細な分析に驚く。(猪瀬氏の調査も詳細だ)
それでも日本は米英との戦争に突入した(突入に誘導されたのを止められなかった)のである。
「あの戦争における犠牲は何だったのか?」と改めて考える機会になった。
巻末の「昭和16年夏の敗戦の教訓」だけでも読む価値がある
著者の猪瀬氏と自民党石破内閣総理大臣(当時防衛大臣)との対談である。
「なぜ失敗が起きるのか?」の本質がこの本から十分に読み解くことができる、貴重な本だと思う。
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日本が戦争に突入したのは、無思考・無情報で雰囲気に流されたものと勘違いしていたが、実際は緻密なデータや優秀な企画人員が論議していたにもかかわらず、①組織構造上対等な力関係がなかった(軍部が統帥権を盾に押し切れる構造だった)、②データ(戦争有無別の石油持続力)の背景にある前提や粒度を確認せずに結論だけをベースに議論を進めた、ことなどで悲劇が生じたものだと感じた。
昔の人々も極めて優秀で合理的であろうとしていた、そうした観点から、歴史を驕りなく素直に学び反省することは、いまに生きる教訓になるのだと感じた。
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対米戦争は必敗である。結論が出ていたのに戦争に突き進んでしまう。その根は日清日都露戦争に、もしかしたら明治維新まで遡ることが出来るのかもしれない。
子供のころ、大正生まれの祖母はあの戦争は負けてよかった。だからこその今の平和がある。と言っていた事を思い出します。
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毎年夏、終戦記念日が近くなると、日本国が主体的に関わった戦争に関する書籍を読むことにしています。今年は、本書を手に取りました。私の購入した文庫本には、現在の首相である石破茂氏と著者の猪瀬直樹氏の対談(2010年10月号「中央公論」)も掲載されており、日本の政治が戦後どう変容してきたのかも垣間見ることができます。
『昭和23年冬の暗号』も読みつもりです。
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虎に翼にでてきた総力戦研究所のお話
歴史のイメージがガラッと変わりました。東條英機は戦争を回避しょうとしていたとか、開戦前から必敗という分析結果があったのに戦争に突撃したとか、ビックリすることばかり。
登場する人が多く、古い言葉遣いがでてくるので読みやすくはないですが、頑張って読んでみることをすすめます。
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どこで紹介されていたのか忘れてしまいましたが、気になった本(2023年2月7日に「読みたい」として登録した本)ということもあり、読んでみました。
ちなみに、猪瀬直樹氏の著書を読んだのは、おそらくこれが初めて。
第二次世界大戦の終戦を日本が迎えたのは昭和20年8月15日。
それから遡ること4年、昭和16年8月に、「日本必敗」との結論が、内閣直轄の研究所である総力戦研究所から出ていました。
その結論に至る過程を描いたのが本書。
昭和16年当時、戦争をするにも、経済の発展にも、石油が大きな要素だったわけですが、同年にアメリカからの石油の輸入が断たれた日本は、石油獲得のための新たなルートの確保が必要になりました。
が、新たなルートの候補は一択(インドネシアからの輸入)。
それでも、このルートを確保できれば、日本は戦争ができる、と日本は考えていました。
しかし、アメリカは、その状況を把握していました(むしろ、インドネシアルートに誘導したともいえます)。
つまり、アメリカとしては、インドネシアルートを断ちさえすれば、日本を石油枯渇に追い込み、戦争に勝てる、とわかっていたわけです。
しかも、アメリカは圧倒的な国力をもつので、時間さえかければ(数年程度)、いずれはルートを抑えられます。
というわけで、「日本必敗」は避けられないわけですが、残念ながら、日本は昭和16年12月8日に戦争に突入。
そして昭和20年8月15日に、想定通り(しかも、たくさんの犠牲者を出して)、敗戦を迎えたわけです。
ちなみに、開戦当時の首相である東條英機も、昭和天皇も、開戦には反対で、東條英機(元陸軍大臣)については、軍部の暴走を抑えることで戦争を回避する役割を期待されていたのですね。
結果的には、軍部の暴走を抑えきれず、開戦してしまったわけですが…。
個人も組織も、「どうすべきだったか」と「実際の行動」には、違いがあることが多いですが、日本(日本政府)という組織にとって、この違いが過去最大だった出来事が第二次世界大戦、と言えるように思います。
そのことを改めて心に刻むにあたり、戦後80年となる今年は、よいタイミングだと思います。
なお、巻末に、石破茂氏(現在の総理大臣)と猪瀬氏の対談がありますが、戦後80年を石破首相で迎えることに、何ともいえない因縁を感じるのは、私だけでしょうか。
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なかなか難解なドキュメンタリー。
歴史に埋もれてる「総力戦研究所」を克明に記した面白い本。データ重視だと「日本必敗」だったのは明らかなのに、開戦したい軍部のシナリオどおりデータが捻じ曲げられていく様は今に通じるものがある。
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昭和16年に模擬内閣によるシミュレーションで日米戦争の結果が日本必敗との結論が導き出されていた、とのふれこみのノンフィクション。この結論に至るまでの喧々諤々の議論が描かれると期待したが、このあたりの描写は肩透かし。内閣総力戦研究所が設立されるまでの経緯や開戦当時の総理大臣東条英機の内面に重きを置いた感じ。後者については特に目新しさは感じず。研究所の存在を知らなかったため、設置経緯等は興味を持てた。
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慣れない単語が多く読みづらい部分はあったが、それでも良かった。
総合戦研究所の報告には敗戦必須と出ているのに、どうして戦争に突入したのかよくわかった。
仮説を立てて物事を進めることと、結論ありきで物事を進めることには大きな隔たりがあるはずなのに、区別できていないように思える。しかも時の首相が。
そして、今の日本でもこれと同等のことが起きるんじゃないか不安に感じる。声が多ければ根拠がなくてもその主張が通ってしまいかねないのが現状。直近ではJICAの交流強化事業撤回がそうだ。いま一度歴史に真正面から向き合っていきたい。
Posted by ブクログ
昭和16年、政府は総力戦研究所を立ち上げ、各省庁や軍から30代前半の精鋭を集めた。課題として模擬内閣を作り、日米開戦をシミュレーションした結果、「緒戦は優勢ながら、徐々に米国との産業力、物流力の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から3〜4年で日本が敗れる」という結論に至る。インドネシアの油田を手に入れても、輸送船が米国に撃沈され石油が手に入らなくなる、というシミュレーションは軍の側でも予測されており、この研究所のメンバーで出した結論が殊更優れていたとは思えない。当時機密とされていた各種数字を見れば、優秀な官僚なら辿り着ける結論である。それでも開戦を回避できなかったという時代が恐ろしい。開戦の4ヶ月前に総戦力研究所が東條内閣へ研究成果として、日本必敗を発表したが、開戦回避を模索していた東條英機でも抑えられる状況ではなかった。統帥を抑制できない憲法の欠陥が戦争を招いたとも言える。東京裁判の様子も描かれているが、改めて日米開戦の「戦犯」は誰(何)なのかを考えさせられた。
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日米開戦前夜。平均年齢三十三歳、全国各地から集められた若手エリート集団が出した結論は「日本必敗」。それでも日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視して無謀な戦争に突入したプロセスを描き、日本的組織の構造的欠陥を暴く。
石破茂氏との対談、新版あとがきを収録。
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第一章から読み始めるも途中で挫折。なんか読みにくい。積読に。
改めて読んでみる。今度は第三章から。
石破と猪瀬の対談が一番わかりやすい。
石破国会議員大絶賛。国会での質問でも複数回取り上げたとはびっくり。
敗戦と分かっていても海軍のメンツが猪突猛進に走らせたということか。
欺かれていた国民、命を捧げた若者にとっては余りにも悲しい。
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総力戦研究所の存在を知らなかったので、国力を含めた対米戦を研究していたことに安堵した。ただ、日本の命運がかかった研究に手を付けたのが開戦のわずか数ヶ月前だったこと、国の総力を上げて然るべき研究を官民から選りすぐられたエリートとはいえ実務10年前後の若者たちに行わせていたことには驚かされた。そして残念なのは、研究成果が反映されなかったこと・・・。結果論になるけれど、首脳陣の誰かがこの研究成果を吸い上げていたら多くの命が救われただろうと思うと胸が痛む。未来は見えないものだけど読める未来もあっただろうに・・・。
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太平洋戦争開戦の数ヶ月前に集められた少壮のエリート達によって創られた「総力戦研究所」。彼らが集められるデータを全て検討して机上演習も遣り尽くして出した結論は、「日本必敗」。真珠湾攻撃と原爆投下を除いて時期や各国の動き等をピタリと当てたと言います。
だが、彼等の提言は「日本は(勝算のもっと低い)日露戦争でも勝てたのだから、今回も勝てる」と握り潰されてしまった。
今の日本社会でもこの悪弊は続いている、と言うのが本著の論旨でした。
この本は比較的出版が古く名著とされているが、「経済学者たちの日米開戦」、「失敗の本質」の方が説得力と知的好奇心があったかな。
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「失敗の本質」とはまた違った視点を示してくれた良本。ただ、記録に忠実であろうとするが故に、素人には読みにくかった。半藤一利さんのように軽妙な文体であれば幅広い読者に届くのでは