あらすじ
日米開戦前夜。平均年齢三十三歳、全国各地から集められた若手エリート集団が出した結論は「日本必敗」。それでも日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視して無謀な戦争に突入したプロセスを描き、日本的組織の構造的欠陥を暴く。
石破茂氏との対談、新版あとがきを収録。
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Posted by ブクログ
いろいろと話題になってしまったドラマの元となった本。
この夏に『日本のいちばん長い日』を読んだが、この本も私の「ちゃんと知ってなきゃいけない話リスト」に加わった。
"事実"を畏怖することと正反対の立場が、政治である。(p.256)
戦争後終わって80年経って、進歩があったのだろうか。
Posted by ブクログ
今年(2026年)の夏、映画『開戦前夜』の原案となっているというので、映画の理解のために読んでおいた。 猪瀬直樹の著作など何十年ぶりだろう……。いや、名前は当然知っていたが、雑誌の中のコラムや論評を読んでも、書物としてまとまったものを読むのは、ひょっとしたら初かもしれない。
往年の読みなれた経済書、啓蒙書、ノンフィクションものの筆致、それこそ立花隆や、城山三郎らを彷彿させるようで、懐かしい気がした(奇をてらわないしっかりした文章、展開。安心して読める)。
それもそのはず。本書の初出は1983年だというから、そもそも昭和の作品だ。それが、2010年に改めて見直され、巻末に石破茂(当時自民党政調会長)との対談も掲載されている。防衛大臣歴任後、野に下ってからの立ち位置の石破だったが、防衛、安全保障オタクと評されていたので、その意味では本書の巻末対談としては適任だったろう。
というか、その2010年や、2020年に新版として再出版、そして2025年に映画原案として再注目されている経緯から、本書の存在価値を探ることができそうだ。
2010年は、自民党が野党に転落していた時期。まだ東日本大震災前ではあるが、民主党によるリーダーシップに国民が疑問を抱いていた時期だ。2020年は、いわずもがな、コロナ禍が世界を覆い、先の見通せない時代だった。
高度経済成長を経て、戦争が忘れられつつある時代に、組織論として太平洋戦争前夜を描いた著作が、民主党の決められない政治に異を唱えるように、意思決定のなんたるかを問う意味で見直され、そしてコロナ禍の2020年は、溢れるデータを活かせない現状と曖昧に責任の所在を明確にしない世相を糾弾する意味で、危機管理の観点から再注目されたのは非常に面白い。
そして、今。というか、昨年(2025年)に新版が出て、NHKでドラマ化される原案となり、そのドラマを劇場映画用にしたのが今年。戦後80年という記念の年だった昨年ということもあるが、いわずもがな地政学的な地球規模の俯瞰が改めて求められる時代に突入した今、世界を相手に戦った当時の日本の在り方を見直す意味で、本書に改めて脚光が当たっている、その構造が実に面白い。
ある意味、いくつ危機を経てこようとも、日本意思決定や危機管理のネイチャーは旧態依然で改善されておらず、いつまでたっても問題視されるのは、「正しい予測が存在したのに、なぜ組織はそれを採用できなかったのか」という点にあるという指摘か。
映画を観ての違和感は、その「なぜ」を、単に「空気」という曖昧なものに矮小化して伝えようとしていた点だった。猪瀬直樹の原案の書でも、そういう論考だったのかと思ったが、さにあらず。読んでよかったと思った。
NHKは、そうした安易な結論、というかフワッとした印象をを国民に植え付けておけば良いと考えたのか、実に底浅いドラマだった。それを映画に仕立てあげたところで、その本質は変わっておらず、その一歩先を突き詰めようという気概を削ぐような、お涙頂戴な物語にしているところに、逆に恐ろしさも感じるくらいだった。
それは、映画を観た自分の周りが、「空気」だ「同調圧力」だと、さも原因を特定できたかのように、腹落ちさせていることに危機感を感じるからだ。それこそ、そう理解しておくのが良いのだろうという空気を読んだ上での感想、レビューに過ぎず、まんまとNHKの大本営発表を鵜呑みにした思考停止の証左ではなかろうか。
本書にもある。
「決断の内容より”全員一致”のほうが大切だったとみるほかなく、これがいま欧米で注目されている日本的意思決定システムの内実であることを忘れてはならない。」
皆と同じ感想を述べる。これで良し、というところから、もう一歩踏み出さないとね。
映画及び原案の本書で得られた知識としては、東条英機の人物像の印象が塗り替わったことか。
本書の指摘にこうある。
「日米開戦の原因を「東條」という一人の悪玉に帰するのは、あまりに単純すぎる話である。しかし勧善懲悪の図式は、いまだにひとつの常識である。」
学びの多い一冊だった。
Posted by ブクログ
特に今のご時世、戦争やそれに至る政治プロセスといったものについて考えさせられる作品。
開戦に至る経緯について、世の中で言われる「常識」的なものとは異なる観点を与えてくれる。「軍部の暴走」「東條首相の判断」といった簡単な理由では片付けられない過程が見えてくる。昭和天皇の「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の判断や、東條首相就任前の閣議決定、形式だけの御前会議や統帥部と軍部の縦割りなど、これまであまり知らなかった事実もあり、大変勉強になった。世の中が全体的に開戦ありきという雰囲気だったのかと思っていたが、当然そんなこともなく、当時も様々な意見があったし、今回取り上げられている総力戦研究所のような取組もあったはずなのに、なぜああいった経緯を辿ったのか、これからも考えていく必要がある。
Posted by ブクログ
今年の夏の『開戦前夜』という映画の公開に合わせてパッケージがリニューされ、本屋の店頭にあった。
著者は作家であり、政治家でもある猪瀬直樹。
著者が政治家の視点で書いたのか、作家の視点で書いたのかはわからないが、取材と古文書からできるだけ事実に沿って描かれている。
日米開戦の前に、「総力戦研究所」というものが設立され、模擬内閣により戦争のシュミレーションが行われたことは知っていた。
官界、軍、民間から36人の優秀な人材が集められ、彼らは戦後の社会の中でも枢要なポストにつくことになる。
言い換えれば、当時の叡智が集められ、戦争の帰趨について分析することが目的だった。
結論は、日本必敗。どうやっても勝てない。現代から考えれば負けるのは自明の理。
国力の大きく劣位した国が何故戦争へと進んだのか、読後もよくわからなかった。そのことを示すことが趣旨ではないのかもしれないが。
研究所が何をなしたのかが述べられているだけだった。
満州国を手放すことができなかった陸軍は開戦を望み、政府や海軍は開戦を止められなかったのは、何故か?
フラストレーションが残った。