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日米開戦前夜。平均年齢三十三歳、全国各地から集められた若手エリート集団が出した結論は「日本必敗」。それでも日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視して無謀な戦争に突入したプロセスを描き、日本的組織の構造的欠陥を暴く。 石破茂氏との対談、新版あとがきを収録。
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「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」
2025年8月~ NHK総合 出演:池松壮亮
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Posted by ブクログ
なぜあの戦争を止めることができなかったのか。 かつて戦前に実在した「総力戦研究所」は、その名とは裏腹に「対米戦必敗」を予測したのである。 キャリア半ばの官僚が内外から、あるいは民間組織に従事するものまで、幅広く集められた研究員は机上演習の名の下で、実際の戦況予測に基づいてあらかたの予測をし、日本...続きを読む必敗を結論付けた。 蘭印に進出をし、石油を確保せざるを得ないこと、 俗に言うシーレーンの確保が求められる中で、石油を内地に送り込むことが難しくなるとの予測。 国力、資源量ともに数十倍とも言えた日米の差を彼らは見事に数値化し、あるいは際限まで予測を立てた。 それらの予測は文字通り見事なもので、歴史を知る我々、あるいは地政学の重要性がこれほどまでに謳われている現代でこれらを予測、理解、納得することとは訳が違うのである。 また何より特筆すべきは、その思想環境にある。 東條当時の陸相は、彼らの数値的意見をつっぱね、 日露戦争での輝かしい成果を掲げ、勝ちに不思議な勝ち有りと言わんばかりに、勝利を信じた。 しかしそんな彼もまた、この結果を予測した1人ではなかっただろうか。 多角度からの忠誠心により、いくつもの葛藤に戦前、戦中、戦後に渡り、直面し続けた彼も戦争の突入を回避させたかった。 「なぜ戦争を止めることができなかったのか」、 この問いに対し、構造的な問題があるのは当然のことだろう。石破前首相は戦後80年所感において、軍の統帥権が天皇大権であったこと、それが即ち御前会議という、ある種形骸化した式典により決定がなされ、責任の所在が不明瞭であり、またその意思決定が実質的には政府と軍部による連絡会議による協議の上であったこと。 こうした構造の点を第一に指摘をしていた。 政治家たるもの、この指摘は極めて重要だ。 しかし、石破氏は本作の著者猪瀬直樹氏との対談において、このように発言する。 「国を変えるのは、最後は世論ですからね、政治家は、フォロワーではなく、あくまでもリーダーとして、その世論に訴えかけていく必要がある。」 これもまたご指摘のとおりだ。 しかしこれが現代の危うさなのだ。 構造的問題として、あるいは組織的にNoを突きつけれぬ点、または不明瞭な責任の所在を利用し、理知的でない判断を取ること。これらは確かに組織側として明確な教訓だ。 しかし、国を変えるのは世論なのだ。 構造である程度の抑止が叶っても、最後に変えてしまうのは世論なのである。 熱狂方向にある世論は、当時の日本必敗予測に際して、冷静な受け止めをできるだろうか。 軍部にも軍部の求めるものがある、 それは陸軍も海軍も然り、彼らにも各々譲れぬ条件があり、それは戦争を回避することではないのだ。 これはもう間違えなくバカの壁、だ。 経済界から見れば確実なマイナス要素も、 軍部は失業する兵士や士気、などを考慮すればプラス要素となりたる。 熱狂という名の集団心理の表出を我々は単に安心と捉えるのではなく、数値、そして相手の視線を真剣に捉えること。それがなし得て、初めて強固な民主主義を育める。
おそらく10年ぶりくらいに再読、以前より戦前の官制や統帥部関係についての知識がついているのでより楽しく読めた。 この本の妙は総力戦研究所での論戦と実際の戦争への動きを見事にリンクさせている部分だと思う。陸軍省燃料課の石油確保をめぐる騒動と鈴木貞一による出来合わせの答弁、また実際に蘭印の石油を手に入れ...続きを読むた後の顛末を研究所で論議の末両手を上げて降参のポーズをとる仕草に見事につなげている。ノンフィクションにも(むしろノンフィクションだからこそ?)文才が必要と分かる。 戦後80年、戦争前にこのような議論が行われていたこと、そして行われていながらなぜ戦争に突入してしまったのかは忘れてはならないと思う。
最近読んだ2冊の本で取り上げられており、読んでみました。 対米戦前、若きエリートを緊急に招集し創設された「総力戦研究所」。そこでは開戦前に日本必敗を正確に分析していた。それでも、なぜ日本は開戦へと踏み切ったのか… 設立当初は分析結果を政府がどう活かすかという目的があったとは思うが、アメリカに石油...続きを読むを止められ「ジリ貧」に陥った政府はアメリカと戦うことが正当であるとする分析結果を求めるようになる。結論ありきと、それを正当化するための分析結果。結局、出所不明、計算方法不明、つじつま合わせの数字が開戦への正当な裏付けとして用いられた。あと、必敗という分析報告に対して東條英機の返答、ロシアにも勝てないと思っていたのに勝てただろ、ってのは読んで思わず頭を抱えてしまった。 開戦という国家の一大事、その意思決定の裏側を暴いた本。けれど、最近読んだ「サイエンスフィクション」という論文不正の本に、なんかよく似ているなあ、と思った。大なり小なり、どこの国、どの分野でも同じようなことが今も起きてるんでしょうね…
若きエリートらがデータを元に日本必敗を予想した総力戦研究所に関する史実と取材をまとめた一冊。 以下の2点が特に面白かった。 ①どういう経緯でデータは無視され開戦に突き進んで行ったのかがわかりやすく整理されている(文章そのものはとても読みづらいが) ②東條英機は学校や教科書で書かれているような独裁的な...続きを読む人物ではなく…という意外性
こんな組織があったとは今のいままで知らなかった。「緒戦は優勢ながら徐々に米国との産業力、物量の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から三〜四年して日本が敗れる」原爆の投下以外見事に的中した総力戦研究所のこの予測が日本のその後の選択に活かされていたら一体どれだけの命が救われたことだろう。
恥ずかしながら総力戦研究所の存在をこの本で初めて知った。 御前会議は決定事項を承認するだけのセレモニー、結果ありきでデータ収集…等、いまの日本社会に通ずる部分が多々あり身につまされる思いになった。
1983年初刊のノンフィクション。 昭和16年、軍を含む官庁や民間から選りすぐりの若手人材が「総力戦研究所」に集められた。 彼らは、各方面から持ち寄ったデータをもとに、模擬内閣を組織して開戦後の経過をシミュレーション。 その結果は「日本必敗」というもの。 しかしながら、敗戦に至るまでの過程を、原爆...続きを読む投下以外ほぼ正確に予測したこのシミュレーションは、結局採り入れられることなく日米戦へ突入。 優れた分析がありながらも、開戦に至ってしまったプロセスは必読です。 データよりも結論ありきの空気が優先されてしまうのは、現代でも変わらぬとても重い教訓だと思います。
立場が人を作ると言うが、その立場は現実をみる眼を曇らせるというのもまた正しいと思う。先に描きたい絵があると、どうしてもその絵を飾るような事実を集めたくなってくるものだ。 本書で取り扱われている総力戦研究所では、各方面のエリートが集められ模擬内閣でそれぞれの「立場」を与えられる。しかしその「立場」は...続きを読む期限が定められており、かつゲームの役職といった雰囲気の自由さがあったように推察される。立場ゆえのしがらみがなければ、事実に執着して結論を出せる。日米戦争に対して「必敗」という正しい結論を下せたのもその自由さゆえであろう。 総力戦研究所のことは本書を読むまで、その存在さえ知らなかった。日米戦争は軍部の暴走と片付けられることが多いが、一旦はデータ(事実)に基づいて検討をしてみようとした形跡があるのは、救いである。そして、そのことを記録に残してくれているおかげで、現代の私たちがその存在を知る事になった。まずは事実を正確に記録すること。それが歴史認識の土台を築く。 ここで全て書ききれないほど様々な事に気づかせてくれた本だった。続編もあるようなので是非みてみたいものだ。
第二次世界大戦および太平洋戦争は、日本の歴史上大きな転換期であった。この戦争の敗北で、これまでの価値観を根本的に覆す羽目になったのだ。その敗因として、日本はアメリカに関する情報や国内の補給線を十分に維持できなかったなど多々あげられる。そもそも、アメリカに宣戦布告をした時点で敗北が決定したのであろう...続きを読むか。そのようなことをあれこれ思い巡らす。このように、日本はこの戦争を依然として検討する余地があるのだが、実は、戦争直前の時点で日本が負けるとわかった組織が存在した。それが本書で取り上げる「総力戦研究所」である。この組織こそまさに、太平洋戦争で起こった出来事を見事に的中させたのだ。自分が観測したかぎりでは、教科書はおろか一般的な書籍にすら、その組織の存在を書いていなかったため、この本を読んで初めて知った。 「総力戦研究所」とは、陸海軍とは独立して、さまざまな官僚たちが集結した一大組織である。この組織は、数値データを駆使してある結論に至った。それが、物量的に見て、アメリカに勝てないということだ。この時代において、第二次世界戦は既に開始されており、ドイツ、イタリアを中心とした枢軸国が欧州を蹂躙した。そんななか、総力戦研究所は、あれこれと必死こいて先ほどのようにデータを提示してアメリカとの戦争を回避しようと努めた。それにもかかわらず、軍部、特に陸軍の上層部は耳を傾けなかったのである。本書以外にも、陸軍の組織の実態、たとえば『失敗の本質』や『組織の不条理』(いずれも中公文庫出版)が明らかであるが、本書においても組織の硬直化、根拠なき自信や非科学的な根性論を唱えるなど、組織の腐敗した側面が露呈している。 本書は主に組織間の派閥などを中心に目を向けられるが、なかでも太平洋戦争で宣戦布告を決定した時の首相東条英機の心情を事細かに当てたところも、この戦争の過程を知るうえで重要である。東条英機と聞くと、漠然とこの戦争を決断した張本人であるとか、独裁者というイメージなど、どちらかいうと印象の悪い人物だと捉えられる。たしかに、東条は、首相のみならず、陸軍大臣、軍需大臣、また参謀総長を兼任した事実がある。しかし、権力を集中させた背景を知ると意外な事実を思われるかもしれない。東条英機は首相となる直前に近衛内閣で陸相を担当していた。そのとき、陸軍の代表として、日本は戦争をするべきという発言が残っている。しかし、数々の証言を確かめると、実は昭和天皇に忠誠を誓って、そのような言動をしたことがわかる。ところが、一方で、昭和天皇の証言を確かめると、天皇本人は最初から戦争に反対の立場であったことが判明した。以上から、東条英機の行動は裏目となって、結果的に、A級戦犯として裁かれてしまい死刑という、色々と報われない結果となってしまった。このような事情を知ると、いかに国の舵取りが困難をきわめて、個人の力では抗えないほど、日本の組織の力が絶大であったのか理解できる。たとえ優秀な人物であったとしても、限度があることがこの本からうかがえる。 先ほどの話に戻るが、日本が資源の乏しさゆえに、戦争を持続するにしても、せいぜい短期決戦が限度であることが、数値から見て明確であった。本書でも言及されるは、第二次世界大戦とは石油の確保が、戦争を決定づけたといっても過言ではない。それゆえに、組織にとっては、日本で貯蔵する石油の容量を確かめたかった。ところが、本書によると、石油の容量を把握する者は組織の中でもほんの一握りで、極秘情報であったのだ。 しかし、聞く耳を持たなかった上層部にとって、ただの戯言と聞こえたのだろうか、「総力戦研究所」が邁進して、徒労になった。 さて、これらの歴史的背景を振り返って、現代人は何を学ぶべきであろうか。そのヒントは、この本の巻末にある筆者の猪瀬直樹と政治家石破茂の対談からいろいろと学べるであろう。なかでも石破氏の「国を変えるのは、最後は世論ですからね。政治家は、フォロワーではなく、あくまでもリーダーとして、その世論に訴えかけていく必要がある」というのは政治の本質をする者ならではの発言だ。太平洋戦争では、多くの国民が戦争への参加に賛成した。その事実をふまえると、戦後以降に根付いた民主主義において、国民の一人一人が政治に関与する自覚を持たなくてならないと警告されているような気がした。 それにしても、たとえ優秀な頭脳の持ち主を終結させたとしても、別の要因(今回でいうと軍部上層部の柔軟性の欠如)で阻まれてしまい、これは現代の組織間にも当てはまるだろう。ここから、個人で柔軟で寛容な気構えを抱くことがやはり重要ではないだろうか。 今後も人間の組織間の本を読み続けていくつもりであるが、いずれにしても人間とは他者に翻弄されるほど、はかない存在なのかもしれない。組織間とは究極的に人間関係であるので、上手く対処するのは苦難なのであろう。
優秀な青年で構成された総合戦研究所では、日本の敗戦は予測されていた。勝てないと分かっていたにも関わらず戦争に突入していく日本。何が正しいか、あるべき姿か、大局観に立ち、考え、勇気を持って意見を述べていく事が大切だ。哲学がないと周りの空気にのまれていく。 難しい言葉や文章があり読みにくかった。
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昭和16年夏の敗戦 新版
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