新潮文庫作品一覧

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  • 紳士同盟(新潮文庫)
    5.0
    いんちき臭くなければ生きていけない! 思わぬ運命の転変にめぐりあい、莫大な金を必要としたとき、四人はそう悟った。目標は二億円――素人の彼らは老詐欺師のコーチを受け、知恵を傾け、トリックを仕掛け、あの手この手で金をせしめる……。奇妙な男女四人組が、人間の欲望や心理の隙、意識の空白につけこむスマートで爽快、ユーモラスな本格的コン・ゲーム小説。
  • 兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦―
    4.4
    津波に呑まれながらも濁流の中を自力で泳ぎ、人々を救助した隊員たちがいた! 自らの家族の安否も確認できないままでの救助活動、遺体と向き合う苛烈な日々……。そして非常事態に陥った福島第一原発では、世界が注視する中、全国からさまざまな部隊が召集されていた――。自衛隊を追い続けた著者二十年の歳月が生み出した緊迫と感動のノンフィクション。兵士シリーズの最高傑作。※新潮文庫版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
  • 遠すぎた輝き、今ここを照らす光
    4.2
    月刊誌記者として働く小坂井夏輝、31歳。取材先で中学の同級生・瀧光平と再会する。かつて周囲を見下していた瀧を夏輝は疎んじ、片や誰彼なく優しくする夏輝を瀧は偽善者と嫌っていた。だが次第に夏輝は瀧が抱える痛みを、瀧は夏輝の葛藤を知るようになる。過去を受け止め、前を向いて歩くために、二人はある行動に出る。逃げたくなる自分の背中をそっと押してくれる、優しい物語。
  • 日本原爆開発秘録
    3.7
    戦時下で秘密裡に進められていた「ニ号研究」「F号研究」という日本の原爆製造計画。戦局の挽回を期し、軍部が命じて科学者の叡智を集めた研究の全貌とは……。昭和史研究の第一人者が、膨大な資料と関係者への貴重なインタビューをもとに、戦後、原発立国へと舵を切った日本の「原子力前史」を繙き、現代との因果を詳らかにする。『日本の原爆─その開発と挫折の道程』改題。
  • 春告げ坂―小石川診療記―
    3.5
    たとえ治る見込みがなくとも、罪人であったとしても、その命はすべて尊い――。長い長い坂を登り切った先に位置する小石川養生所。身寄りがなく、弱い立場に置かれた人間が集まるこの場所で、医師・高橋淳之祐は日々奮闘していた。ある日入所した老人の秘められた人生が淳之祐の父の死の真相を明らかにするとき、彼の前に進むべき道が現れる。爽やかな感動を呼ぶ「赤ひげ」青春譚。
  • 小説以外
    3.8
    本好きが嵩じて作家となった著者は、これまでどのような作品を愛読してきたのか? ミステリー、ファンタジー、ホラー、SF、少女漫画、日本文学……あらゆるジャンルを越境する読書の秘密に迫る。さらに偏愛する料理、食べ物、映画、音楽にまつわる話、転校が多かった少女時代の思い出などデビューから14年間の全エッセイを収録。本に愛され、本を愛する作家の世界を一望する解体全書。
  • 着物をめぐる物語
    4.0
    華やかな歌舞伎座の楽屋に、藤娘の衣裳を着て現れる女形の幽霊。唐子の着物をほめてくれた混血の美青年が戦時中にたどった運命。夫と息子に先立たれた老女が黙々と織る越後上布。男に翻弄されたホステスが遺した大島。老境を迎えた辰巳芸者の着物への執念。畳紙に包まれ密やかに時を刻んでいた着物が、繙かれ鮮やかに語り始める……。縦糸と横糸のあやなす、美しく残酷な11の物語。※新潮文庫版に掲載のイラストは、電子版には収録しておりません。
  • あした―慶次郎縁側日記―
    4.0
    泥棒長屋に流れ着いた老婆の悲しみが、出世にとことん無欲だった若き慶次郎の思いと交わる表題作「あした」。無精な夫を捨てた、髪結い妻の思わぬ本音を描く「春惜しむ」。内緒の逢瀬を重ねてはらんだ娘が、未来ある思い人を必死に庇う「むこうみず」など、円熟の筆致が香り立つ江戸の哀歓十景。慶次郎への尽きぬ思いを語る、生前最後の著者談話も収録した、人気シリーズ第13弾!
  • 天皇と原爆
    4.0
    日米開戦はなぜ起ったのか? それは建国以来、西へと膨脹する覇権主義のキリスト教国アメリカと、天皇信仰の日本がぶつかり合う宗教戦争だった。原爆投下という恐るべき行為も、「サタンの国」日本を叩き潰そうという宗教的動機があったからこそ可能だったのだ。日本を悪者にする左翼似非(えせ)史観を糾弾し、日米両国を世界史の中に位置づけて大東亜戦争の「真実」に迫る、衝撃の論考。
  • ローマとギリシャの英雄たち 〈黎明篇〉―プルタークの物語―
    3.3
    1~2巻715~770円 (税込)
    いつか歴史の授業で習ったローマの皇帝、ギリシャの賢人。彼らの功績を暗記はしても、どんな人間だったかまでは知りえなかった。教科書の記述からこぼれ落ちてしまった古代リーダーたちの素顔を、恋、性格、家族関係など、魅力的なアプローチで解き明かす! 伝説の古典的名著『英雄伝』を、熟練の筆致で解かりやすく翻案した新しい歴史の入門ガイド。『プルタークの物語』改題。
  • 街のアラベスク
    -
    なぜだろう、この街を歩いていると、僕を通り過ぎていった愛しい人たちへの想いが甦る。まるで、街角の風景が、あの恋の記憶を永久保存していたかのように。井の頭公園、麻布十番、銀座、五反田、神楽坂、浅草、蒲田、新宿・十二社、善福寺──ふとした瞬間浮かび上がる、嘘のなかった誓いの台詞、息も詰まるような別れの言葉。東京という街のアルバムに綴じられた、切ない恋の物語。
  • ミステリー列車が消えた
    3.3
    行き先不明のブルートレイン「ミステリー号」が東京駅を出発したまま消息を絶ってしまった。ほどなく犯人から身代金10億円を要求する連絡が入る。速かに応じない場合は乗客の生命は保証できないという。全長250メートルに及ぶ列車を400名の乗客ごとに誘拐するという前代未聞の犯罪に、国鉄当局・警察は翻弄される。十津川警部の活躍は? 奇想天外なトリックの傑作鉄道ミステリー。
  • ガラシャ
    3.8
    明智光秀の娘として美しく成長した玉子。主君である織田信長の媒酌で、細川藤孝の子・忠興と華燭の典を挙げ、平穏な日々を送っていた。だが、突如発生した本能寺の変。実父の犯した罪により蟄居を命じられた玉子は、幽閉先で出会った男に惹かれてしまう。愛の何たるかも知らず妻となった女を苦しめる恋の業火──。絶世の美女と謳われた細川ガラシャの人生を描く華麗なる戦国純愛絵巻。
  • 傷―慶次郎縁側日記―
    3.8
    空き巣稼業の伊太八は、「身内に迷惑を掛けない」というのがモットーだ。豊蔵から共謀を持ちかけられ、目的の瓦屋に忍び込んだはよかったが、何とそこは豊蔵の弟の家だった。自らの信条に反する仕事をさせられた挙げ句、あらぬ罪まで着せられてお尋ね者になってしまった伊太八──彼の運命やいかに? 元南町奉行所同心の隠居・森口慶次郎が人々の心を潤す、粋と人情のお江戸事件簿。
  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―
    3.7
    1~3巻715円 (税込)
    百年近く生きたお祖母ちゃん(オーバー)の死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく……。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。
  • 島倉千代子という人生
    -
    日本の戦後を代表する歌手、「島倉千代子」。だが、婉然とした笑顔の陰には、人知れぬ波瀾万丈の人生が荒々しくも滾っていた。七歳の時の大怪我、十六歳でのデビュー、結婚と離婚、巨額の借金、そして乳癌宣告…。「この世の花」「からたち日記」「人生いろいろ」など、数々のヒット曲に乗せ、辣腕政治ジャーナリストがその愛と悲しみを描ききる。
  • きのうの空
    4.0
    見上げた空は果てしなく高かった。都会での華やかな暮らし、想い続けている人の横顔が、ふわり浮かんだ。だが、この地にしがみつき、一日一日をひたすらに積み重ねなければ、生きてゆけなかった。わたしの帰りを家族が待っていた。親やきょうだいは、ときに疎ましくときには重く、ただ間違いなく、私をささえていた。名匠が自らを注ぎこみ、磨き続けた十色の珠玉。柴田錬三郎賞受賞作。

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  • 川のある下町の話
    -
    恵まれぬ大衆の生活の重みと苦しみが渦巻いて虚無の雑音によどむ庶民の街――これは、そこに住む貧しい医学生、清純な女学生、薄幸の美少女、知性の優れた女医、キャバレーの孤独な青年など、善意に満たされた人々の人間讃歌であり、また人間の脆さ、哀れさを奏でて死を思わせる虚無の歌でもある。頽廃と死をつきぬける青春の愛の姿に、いのちの美しさの極致を描く。

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  • ニコライ遭難
    3.9
    明治24年5月、国賓のロシア皇太子を警護の巡査が襲った。この非常事態に、近代国家への道を歩み始めた日本が震撼する。極東進出を目論むロシアに対し、当時日本は余りにも脆弱であった――。皇太子ニコライへの官民を挙げての歓待ぶり、犯人津田三蔵の処分を巡る政府有力者と司法の軋轢、津田の死の実態など、新資料を得て未曾有の国難・大津事件に揺れる世相を活写する歴史長編。

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  • 火の杯
    -
    日本最大の財閥、御池家の庶子、康彦は財閥解体からのがれるための生け贄として、別人に仕立てられて公金拐帯の罪をきせられて、最後には生命までも奪われようとする。出生の秘密にまつわるニヒルな性格から、過酷な指令をただ受け入れているだけの康彦であったが、かつて自分の愛した奥勤めの娘の献身的な愛によって運命に立ち向かうようになる。山本周五郎が戦後の現実に挑んだ意欲作。

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  • 迷走地図(上)
    -
    1~2巻715円 (税込)
    保守党派閥抗争の確執の中、若手議員・川村は色と金を求め、銀座の高級クラブのママ織部佐登子に眼をつけた。だが、彼女は財界人をパトロンに持ち、政・財界間の影の資金ルートをつないでいた。次期首相を約束される寺西議員のもとから、逆リベートを運ぶ途中、佐登子は若い男に金を強奪されてしまう――。秘書、運転手、院内紙記者、代筆屋など代議士の陰で蠢く永田町人種の生態。

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  • 針女
    4.0
    死にに行く男が、愛を打ちあけたら、銃後に残される女はどんなに困るだろう――出征した帝大生の弘一が残した〈青春の遺書〉を胸に、針仕事に打ちこむ孤児の清子。やがて戦争は終り、弘一は復員するが、彼の性格は一変していた。二人の愛の結末は? 愛も哀しみも針一本にこめて激動の時代を生きたひとりの女性の姿を通して、日本人が忘れてはならない戦争の傷跡を描く。
  • 鬼怒川
    -
    鬼怒川のほとりにある絹の里・結城。貧農の娘チヨは、紬織りの腕を見込まれて、16歳で日露戦争生き残りの勇士のもとに嫁いだ。気のいい婚家の人々の中で、彼女は幸せになれるかに思われた。しかし、夫も、太平洋戦争から復員した息子も、そして孫までも“黄金埋蔵伝説”にとり憑かれ、悲惨な運命を辿る……。戦争の傷跡を背負いながら精一杯たくましく生きたひとりの女の生涯を描く。
  • 海暗
    -
    若者は次々と島を捨て、社会の動きからも隔絶された伊豆七島の御蔵島に、ある日「米軍射爆場に内定した」というニュースが伝わる。戦争中でさえ爆弾が落ちたことはなかったのに、なぜ? あまりのことに呆然とする島民たち――別名を海暗とよばれる黒潮に、断崖絶壁を洗われる平和でのどかな御蔵島を舞台に、射爆場設置に反対し、離島問題に取組む島民の苦悩と哀歓を描く問題作。
  • 地唄
    5.0
    琴に命を賭ける盲目の父と、父に背き日系二世の米国人と結婚した娘――父娘の愛憎の絆を妙なる調べに映す「地唄」、女流舞踊家と老墨絵職人の心の交わりを唐墨の逸品に凝縮させた「墨」、翻訳劇の端役を演ずることになった黒衣の悲喜劇を軽妙に綴る「黒衣」、文楽座の分裂を素材にして芸人の世界の厳しさをえぐった「人形浄瑠璃」。日本の伝統的な芸の世界を追究した珠玉四編を収める。
  • 表裏源内蛙合戦
    -
    迸る才知と野心を、時代の制約の中で徒らに空転させる江戸の一大奇人平賀源内の夢と挫折の生涯を、色と欲の渦巻く風俗の中に浮び上らせる表題作。ストリッパーの半生記に仕立てた吃音治療劇に仮託して、現代日本の社会と精神を徹頭徹尾、洒落のめした『日本人のへそ』。洒落に地口に語呂合せ、言葉遊びの爆撃で、笑いのうちに時代と人間の核心を衝く井上戯曲の原点を示す二大喜劇集。
  • 銀嶺の人(上)
    4.3
    1~2巻704~792円 (税込)
    女医をめざす、勝気な“泣かない子”であった駒井淑子は、冬の八ヶ岳で単独行を試みて遭難しかかった時、若林美佐子と出会う。鎌倉彫の新鋭彫刻家として注目されていた美佐子は、無口ですぐに“涙ぐむ子”であった。死を覚悟した二人を事もなげに助け出した三人の男性登攀家(クライマー)に魅入られて、彼女たちは、ついに初の女性隊によるマッターホルン北壁登攀への挑戦を試みる……。
  • 蒼氷・神々の岩壁
    3.7
    鋭いアイゼンの爪もよせつけない蒼氷に覆われる厳冬期、石が水平に飛ぶ台風シーズン――富士山頂の苛烈な自然を背景に、若い気象観測所員の厳しい生活と、友情と愛と死を描いて息づまる迫力をよぶ長編「蒼氷」。ヒマラヤを夢み、岩と氷壁に青春を賭けた天才クライマーが、登攀不能といわれた谷川岳衝立岩を征服するまでの闘志と情熱の半生を描く実録小説「神々の岩壁」。他に2編併録。

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  • 雄気堂々(上)
    4.3
    1~2巻704~748円 (税込)
    近代日本最大の経済人渋沢栄一のダイナミックな人間形成の劇を、幕末維新の激動の中に描く雄大な伝記文学。武州血洗島の一農夫に生れた栄一は、尊皇攘夷の運動に身を投じて異人居留地の横浜焼打ちを企てるが、中止に終った後、思いがけない機縁から、打倒の相手であった一橋家につかえ、一橋慶喜の弟の随員としてフランスに行き、その地で大政奉還を迎えることになる。

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  • 総会屋錦城
    3.7
    直木賞受賞の表題作は、株主総会の席上やその裏面で、命がけで暗躍する、財界の影武者ともいえる総会屋の老ボスを描く評判作。ほかに交通事故の時だけタクシー会社の重役の身代りで見舞いや弔問にゆく五十男の悲しみを描いた「事故専務」をはじめ、資本主義社会のからくり、陰謀などを、入念な考証に基づき、迫力あるスピード感と構成力で描く本格的な社会小説7編を収める。

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  • 状況曲線(上)
    3.7
    1~2巻704円 (税込)
    建設会社専務の味岡は、高級官僚に顔が利く“先生”を中心にした談合組織に入り、工事の情報を得ていた。彼が仲間と“先生”に会っていた日、同じビルの屋上で他殺死体が見つかる。偶然、後に犯人と疑われるような行動を取ってしまった味岡は、芸者との逢引き先でも、“先生”の女性秘書の遺体にぶつかってしまう……。巧妙なワナに追いつめられていく味岡! 長編サスペンスの傑作。

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  • 人情武士道
    3.5
    御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。

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  • 季節のない街
    4.3
    “風の吹溜まりに塵芥が集まるようにできた貧民街”で懸命に生きようとする庶民の人生。――そこではいつもぎりぎりの生活に追われているために、虚飾で人の眼をくらましたり自分を偽ったりする暇も金もなく、ありのままの自分をさらけだすしかない。そんな街の人びとにほんとうの人間らしさを感じた著者が、さまざまなエピソードの断面のなかに深い人生の実相を捉えた異色作。

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  • 真田騒動―恩田木工―
    4.0
    信州松代藩――五代目・真田信安のもと、政治の実権を握り放縦な生活に走った原八郎五郎を倒し、窮乏の極にある藩の財政改革に尽力した恩田木工を描く表題作。関ケ原の戦い以来、父昌幸、弟幸村と敵対する宿命を担った真田信幸の生き方を探る『信濃大名記』。ほかに直木賞受賞作『錯乱』など、大河小説『真田太平記』の先駆を成し、著者の小説世界の本質を示す“真田もの”5編を収録。
  • 猿田彦の怨霊―小余綾俊輔の封印講義―(新潮文庫)
    3.5
    天孫降臨の先導役として大役を務めながらも、謎の死を遂げたという猿田彦神。以来、「記紀」から姿を消し、脇役として民間伝承のなかに現れる。道祖神、庚申待ち、括り猿――。神はなぜ神話から抹殺されたのか。なぜ「猿」なのか。民俗学者・小余綾俊輔の歴史推理は、古代史の闇に容赦なく切り込んでいく……。歴史の封印が解ける時、常識を覆す真実が現れる。驚愕の古代史推理ミステリー。(解説・北夏輝)
  • 惜別(新潮文庫)
    4.0
    1巻693円 (税込)
    仙台留学時代の若き日の魯迅と日本人学生とのこころ暖まる交遊の描写を通して、日中戦争という暗く不幸な時代に日中相互理解を訴えた表題作。“アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ”敗戦へとひた走る時代風潮に対する芸術家としての自己の魂を、若き頃からの理想像、源実朝に託して謳う『右大臣実朝』。太宰文学の中期を代表する2編を収める。(解説・奥野健男)
  • 小説作法の奥義(新潮文庫)
    -
    小説を書く。原稿用紙とペンを備える。机に向かう。しかし――何をどう書けばいいか、これが難しい。作品のアイデアはどこから湧いてくるのか。物語が躍動する登場人物命名法、読者を満足させる〈九合目の理論〉、書き出しとタイトルのパターンとコツなど文筆活動六十余年、生み出した小説は九百編を超える小説界の「鉄人」が極めた秘技を伝授! 創作を志す人必読のウィットに富む全十章。
  • 初陣―隠蔽捜査3.5―(新潮文庫)
    4.2
    警視庁刑事部長を務めるキャリア、伊丹俊太郎。彼が壁にぶつかったとき頼りにするのは、幼なじみで同期の竜崎伸也だ。原理原則を貫く男が愛想なく告げる一言が、いつも伊丹を救ってくれる。ある日、誤認逮捕が起きたという報に接した伊丹は、困難な状況を打開するため、大森署署長の竜崎に意見を求める(「冤罪」)。『隠蔽捜査』シリーズをさらに深く味わえる、スピン・オフ短篇集。 この作品は『初陣ー隠蔽捜査3・5ー』文庫版を底本とした電子版となります。重複購入とならないようご確認下さい。
  • 隠蔽捜査(新潮文庫)
    4.3
    竜崎伸也、四十六歳、東大卒。警察庁長官官房総務課長。連続殺人事件のマスコミ対策に追われる竜崎は、衝撃の真相に気づいた。そんな折、竜崎は息子の犯罪行為を知る――。保身に走る上層部、上からの命令に苦慮する現場指揮官、混乱する捜査本部。孤立無援の男は、組織の威信を守ることができるのか? 吉川英治文学新人賞受賞の新・警察小説。

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  • なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない(新潮文庫)
    4.1
    人生には時々迷子になってしまう時期がある。仕事で失敗したり、恋人から別れを切り出されたり、家族に問題が生じたりすると、日常は簡単に砕け散ってしまう。まるで人生という大海原に放り出された「小舟」のようだ。僕らは今、他者との繋がりが薄れ、ひどく孤独になりやすい社会で生きている――いや、違う。僕はここにいます。独りじゃない。自他を共に愛する力を取り戻す「読むセラピー」。
  • 古都(新潮文庫)
    4.2
    京都の呉服問屋の娘である千重子は、幼馴染の大学生、真一と平安神宮へ花見に出かける。夕暮れ時、彼女はある秘密を明かすが、真一は本気にしなかった。やがて夏の祇園祭の夜、千重子は自分とそっくりな娘と出会う。あなたは、いったい誰? 運命の歯車が回りはじめた……。京都の伝統ある行事や街並み、移ろう季節を背景に、日本人の魂の底に潜む原風景を流麗に描く。ノーベル文学賞対象作品。(解説・山本健吉、綿矢りさ)
  • 小さいときから考えてきたこと(新潮文庫)
    4.3
    授業中にちっともじっとしていられなくて、どうやらLD(学習障害)だった(?)子供時代。ロボット犬グレーちゃんとの愉快なテレビ出演、沢村貞子や渥美清等かけがえのない人々との出会い、そしてユニセフの親善大使としてコソボやアフガニスタンの子供たちに出会ったときのこと。どんなときも「ほんとうの幸せ」を考えてきたトットちゃんの言葉が心にあたたかく響くエッセイ。(対談・なかにし礼)
  • 成瀬は天下を取りにいく(新潮文庫)
    4.3
    「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」幼馴染の島崎みゆきにそう宣言したのは、中学二年生の成瀬あかり。閉店を間近に控える西武大津店に毎日通い、ローカル番組の中継に映るといいだした。さらに、お笑いコンビ・ゼゼカラでM-1に挑み、高校の入学式には坊主頭で現れ、目標は二百歳まで生きること。最高の主人公の登場に、目が離せない! 本屋大賞を受賞した圧巻の青春小説!(解説・森見登美彦)
  • ナルニア国物語1 ライオンと魔女(新潮文庫)
    完結
    4.4
    古い屋敷を探検していた四人きょうだいの末っ子ルーシーは衣装だんすから別世界ナルニアに迷い込む。そこは白い魔女が支配する常冬の国だった。「人間の世界から来た四人の王と女王により魔女は滅ぼされる」という伝説のためルーシーらは追われる身となるが――。ナルニアは光を取り戻すことができるのか。美しい挿画と読みやすい新訳で堪能するファンタジーの最高峰。いま冒険の扉が開かれる。(解説・鴻巣友季子)
  • 雪の練習生(新潮文庫)
    4.1
    膝を痛め、サーカスの花形から事務職に転身し、やがて自伝を書き始めた「わたし」。どうしても誰かに見せたくなり、文芸誌編集長のオットセイに読ませるが……。サーカスで女曲芸師と伝説の芸を成し遂げた娘の「トスカ」、その息子で動物園の人気者となった「クヌート」へと受け継がれる、生の哀しみときらめき。ホッキョクグマ三代の物語をユーモラスに描く、野間文芸賞受賞作。(解説・佐々木敦)
  • ヴェネツィア便り(新潮文庫)
    3.8
    1巻693円 (税込)
    「もし、あなたがこれを読む時、ヴェネツィアがもうないなら、これは、水の底から届いた手紙ということになります」「ヴェネツィアは、今、輝く波に囲まれ、わたしの目の前にあります。沈んではいません」――三十年の時を越えて交わされる〈わたし〉と若い〈あなた〉の「ヴェネツィア便り」。なぜ手紙は書かれたのか、それはどんな意味を持つのか。〈時と人〉を描く懐かしくも色鮮やかな15の短篇。(解説・荻野アンナ)
  • 鯉姫婚姻譚(新潮文庫)
    3.6
    若くして隠居した孫一郎が、父から受け継いだ屋敷に移り住むと、庭の池には人魚が暮らしていた。その名は、おたつ。彼女に懐かれ「夫婦になってあげる」と言われた孫一郎は、結婚をあきらめさせるため、人と人ならざる者が恋に落ち、不幸な結末を迎えた話を語る。だが、二人の間には少しずつ変化が起き――。選考委員全員が「これ以上ないラスト」と驚嘆した日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(解説・大森望)
  • 胃が合うふたり(新潮文庫)
    4.2
    好きに食べて、好きに生きる――。茶をこよなく愛する記録魔の作家千早茜。季節を問わずかき氷を食べまくるストリッパーの元書店員新井見枝香。気が合う以上に「胃が合う」ふたりが集えば、とびきりの美味追求がはじまる。銀座のパフェ、芦原温泉のにごり酒、京都の生湯葉かけご飯、神保町の上海蟹。果てなきおいしさと人生の岐路を描く往復エッセイ。文庫版で番外編50ページ分を新たに収録。(鼎談・トミヤマユキコ)
  • いのちの記憶―銀河を渡るⅡ―(新潮文庫)
    完結
    4.0
    こことは別の場所に行き、ここにいる自分とは別の自分になってみたい——。盗賊にさらわれることに憧れていた少年時代、シルクロードを旅する私に父が詠んだ一句、北欧の小さなホテルでの会話から得た教訓、外の世界へと足を向かわせた熱の正体、人生の岐路となった『危機の宰相』、高倉健との偶然の出会いから始まった交流、そして永遠の別れ。忘れがたい無数の日々を追憶するエッセイ集。
  • 紫姫の国(上)(新潮文庫)
    完結
    3.8
    俺はこんなにも、死に取り巻かれている――。酒浸りの父親が逝き、商いの船旅に出た青年ソナンは奴隷として売られそうになるも、寸前で海へと飛び込む。激しい波は一緒に逃げた親友の命を奪うが、ソナンは絶壁の岩棚に投げ出された。水も食料もなく死と隣り合わせのその地に、突然ひとりの少女が現れ……。心に陰なき男と、国を背負う女。過酷なふたつの運命が交わる圧巻のファンタジー長編。
  • 晴れの日散歩(新潮文庫)
    4.0
    正解の味を知らずに食べるローカル料理に悩んだり、万能調味料の万能さに驚いたり、実は肉より魚卵が好きなことを打ち明けてみたり。年を重ねるごとに月日の流れは速くなり、明日には記憶の底に沈んでしまうような日々を積み上げながらも、私たちは毎日をちゃんと暮らしてきた。美味しいものや愛猫の写真と共に、些末な日々に対する著者の実感を書き留めた人気エッセイ集、待望の第四弾。
  • キャラヴァンは進む―銀河を渡るⅠ―(新潮文庫)
    3.6
    旅を学ぶとは人を学ぶということであり、世界を学ぶということでもあった――。『深夜特急』では訪れなかったモロッコ・マラケシュへの道、飛行機でのトラブルがもたらした「旅の神様」からの思わぬプレゼント、『一瞬の夏』より始まった新たな夢。シドニー、アテネと連なるオリンピックへの視線、『凍』を書くきっかけとなる対話。無数の旅と出会いの軌跡が銀河のごとく瞬き巡るエッセイ集。
  • 神の微笑(新潮文庫)
    5.0
    無信仰な僕が、一生の間に経験した宗教的現象を次々に想い起すと、これらが単なる偶然な経験ではなくて、偉大な神のはからいによって経験させられたのであろうかと、自然に考えるようになった――人生九十年、心に求めて得られなかった神が、不思議な声となって、いま私に語りかける……。芹沢文学の集大成、九十歳から年ごとに書下ろした生命の物語〈神〉シリーズ。(解説・大岡信)
  • 血腐れ(新潮文庫)
    3.6
    1巻693円 (税込)
    亡き夫に唇を触れられたと語り出した義妹(「魂疫」)。縁切り神社で行われる“儀式”(表題作)。忌まわしき伝承を持つ鐘が鳴るとき(「声失せ」)。原因不明の熱に苦しむ息子に付き添う私に近づいてきた女(「影祓え」)。身近な者の災難や死が切り裂いた日常。煉獄の扉を開くのは、無念を抱く冷たい死者か、あなたの傍らで熱を放つ家族か。禁忌を踏みこえた先に見える真相。戦慄のホラー・ミステリー短編集。(解説・杉江松恋)
  • 采女の怨霊―小余綾俊輔の不在講義―(新潮文庫)
    4.0
    奈良・猿沢池の畔に鎮座する「采女神社」は池に背を向け、平素は固く門を閉ざしている。昔、入水した采女の霊を慰める祭では、門が開かれるというのだが……。そもそも、なぜ下級女官の鎮魂が連綿と続いているのか。春日大社から壬申の乱、皇位継承の闇、平城京の怨霊封じに続く謎。民俗学者、小余綾俊輔の推理が、隠された古代史を解き明かす。鍵を握る采女とは何者か。歴史真相ミステリー。(解説・北夏輝)
  • カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―(新潮文庫)
    3.8
    カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。(解説・頭木弘樹)
  • 祈願成就(新潮文庫)
    3.2
    凄惨な事故死を遂げた郁美。その葬儀を機に、大人になった幼なじみ四人が再会した。小学生の頃の郁美は、仲間たちそれぞれの願いを叶えるため、雑木林でおまじないの儀式を行なっていた。彼女の死を境に、儀式に参加した四人は不気味な影に悩まされ、おぞましい事故や原因不明の災厄に見舞われる。無邪気な遊びに潜む恐ろしい罠とは――平穏な日常が暗転する、絶望に満ちたオカルトホラー。
  • 令和元年のテロリズム(新潮文庫)
    3.0
    20人を殺傷して何も言葉を残さず自殺した川崎無差別殺人犯。引きこもりとされる長男を殺害した元農水事務次官。戦後で最も多くの死者を出した京アニ放火殺人犯。自動車を暴走させて母子の命を奪い、「上級国民」という言葉を生んだ元高級技官――。令和の幕開けに起こった新時代の多難を予感させる事件から浮かび上がってくる現代日本の風景とは。安倍元首相殺害事件を追加取材した完全版。
  • 放浪・雪の夜―織田作之助傑作集―(新潮文庫)
    4.0
    『夫婦善哉』の作者であり、太宰治、坂口安吾の盟友としても知られる織田作之助。その作品の魅力は豊かな物語性にある。料理人順平の流浪の旅を描く「放浪」。別府へと逃れ落ちた男と女――「雪の夜」。商才に優れた男が家を再興する芥川賞候補作「俗臭」。龍馬に慕われた寺田屋お登勢の半生「蛍」。織田文学の研究者が厳選した11編を収録。波瀾万丈そして人情。大阪が生んだ唯一無二の作家がここにいる。(解説・斎藤理生)
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)
    3.8
    平凡な男の部屋に闖入して来た9人の家族。善意に満ちた笑顔で隣人愛を唱え続ける彼らの真意とは? どす黒い笑いの中から他者との関係を暴き出す傑作「友達」〈改訂版〉(谷崎潤一郎賞受賞)。日常に潜む底知れぬ裂け目を三つの奇妙なエピソードで構成した「棒になった男」。激動の幕末を生きた人物の歴史的評価に新たな光を当てた「榎本武揚」。斬新な感性で“現代”を鋭く照射する、著者の代表的戯曲3編を収録。(解説・中野孝次)
  • 希望のゆくえ(新潮文庫)
    3.5
    誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望(のぞむ)はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなる――。痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望(きぼう)」を探す優しいエールに満ちた物語。文庫化にあたり、書下ろし短篇を収録。(解説・山中真理)
  • 母親病(新潮文庫)
    3.3
    1巻693円 (税込)
    女は、旦那様に一生愛されるのがしあわせなのよ――。珠美子にそう語っていた母・園枝が急死した。有毒植物が体内から検出されたという。事故か自殺か、それとも。困惑のなか遺品整理に出向いた珠美子だったが、そこに端正な顔立ちの若い男性・雪仁が訪ねてくる。園枝の死を知った彼は震えて嗚咽した。良妻賢母の見本のような園枝と雪仁の関係は……。すれ違いながら衝突する母娘を描く連作集。(解説・三宅香帆)
  • 近親殺人―家族が家族を殺すとき―(新潮文庫)
    3.8
    日本の殺人事件の半数が、家族を主とした親族間で起きている。「まじ消えてほしいわ」と罵倒し、同居していた病弱な母親を放置、餓死させた姉妹。夫の愛情を独占すると憎しみをつのらせ、我が子をマンションの高層階から突き落とした母親。人はどんな理由から最も大切な存在であった家族を殺すのか。事件が起こる家庭とそうでない家庭とでは何が違うのか。7つの事件が炙り出す、家族の真実。
  • アルマジロの手―宇能鴻一郎傑作短編集―(新潮文庫)
    3.7
    彼は「手が……アルマジロの手が」というばかりだったのです――。不気味な緊張感を孕む怪奇な作品「アルマジロの手」、美しい姫君に恋をした狸の哀切「心中狸」、むさぼり喰らう快楽にとり憑かれた男の無上の幸福「月と鮟鱇男」の他、「海亀祭の夜」「蓮根ボーイ」「鰻池のナルシス」、そして甘美な爛熟世界に堕ちた男を描く傑作「魔楽」を収録。官能の深みと生の哀しみを短編に昇華させた七編。(解説・鵜飼哲夫)
  • 婚活1000本ノック(新潮文庫)
    4.0
    1巻693円 (税込)
    これは実話であり、登場するすべての人物・団体は実在する――。南綾子31歳、独身、売れない小説家。冬の夜、かつて「クソ男・オブ・ザ・イヤー」を授与した山田が現れ、わたしに婚活を命じる。遊び相手に殺されて幽霊となった山田は、わたしの婚活成功を頼みに成仏を狙うらしい。お料理合コン、お見合いパーティ、漁師の嫁募集。奮起しては絶望する綾子だったが。熾烈で切実な婚活小説!(解説・豊島ミホ)
  • 計算する生命(新潮文庫)
    3.0
    「計算」は私たちの生活のそこかしこに現れる。では、指やペンを使う足し算や筆算と、膨大な電力を消費する巨大コンピュータによる計算は、何が異なるのだろうか。機械が人間の能力を遥かに超越し、日夜無言で計算し続けるいま、私たちには一体何が残されるのだろうか――。気鋭の独立研究者が数学史を遡り、いつしか生命の根源まで辿り着いた果てに提示する新たな地平。河合隼雄学芸賞受賞作。(解説・下西風澄)
  • もう一杯だけ飲んで帰ろう。(新潮文庫)
    3.9
    居心地最高な西荻窪の焼鳥屋、喧噪を忘れる新宿の蕎麦屋、朝まで開いている中野の鮨屋に、激辛好きも唸る吉祥寺のラオス・タイ料理店。神田で羊を食べ尽くし、永福町でチーズにとろけ、立石ではしご酒を愉しむ。今日もまた、うまい肴と好きな人との時間をアテに、つい頼んでしまうもう一杯。夫婦で綴る、めくるめく“外飲み”エッセイ! 文庫書き下ろし「乗り越えて釜山(プサン)タコ鍋旅」を収録。
  • わたし、定時で帰ります。(新潮文庫)
    4.2
    1~3巻693~880円 (税込)
    絶対に定時で帰ると心に決めている会社員の東山結衣。非難されることもあるが、彼女にはどうしても残業したくない理由があった。仕事中毒の元婚約者、風邪をひいても休まない同僚、すぐに辞めると言い出す新人……。様々な社員と格闘しながら自分を貫く彼女だが、無茶な仕事を振って部下を潰すと噂のブラック上司が現れて!? 働き方に悩むすべての会社員必読必涙の、全く新しいお仕事小説!
  • 躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません―(新潮文庫)
    4.1
    今日も仕事で失敗してしまった。自分は何もできない……と悩んでいても自分が苦しくなるだけ。やりたくないことは一切やらず、苦手なことには手を出さず、できることがもっともっとできるようになって、むちゃくちゃ褒められるほうが心地良いじゃないか。人生ボチボチ、努力は敵、今のままで大丈夫。気分の浮き沈みの激しさに苦しんだ著者が発見した、愉快にラクに生きる技術を徹底講義。
  • モテの壁(新潮文庫)
    4.0
    「モテとか興味ない」と嘯(うそぶ) きつつ、モテるあいつは人生得してるようでなんだかシャクだ。何があるんだ、モテるやつには。何が違うんだ、俺たちとは。自称「モテに失敗したコラムニスト」が全力で嫌がりつつもモテを分析。小学生向け雑誌からインド映画、ジブリにAV男優まで。ただの「モテ」テク本とは一線を画す考察の先には 人生を変えるヒントがある!……かも? 「モテるかもしれない。」改題。
  • 月夜の散歩(新潮文庫)
    3.7
    どう工夫してもイマイチなポテトサラダに悩み、入手困難なご当地調味料にときめく。調理前のかたまり肉に高揚し、冷めゆく天ぷらに絶望する。弁当屋で顔を覚えられた恥ずかしさに悶え、飼い主に似てきた猫を愛で心を整える……。思い描いた立派な大人にはなれぬまま加齢していく人生の、ささやかな思考や出来事を、味わい深く見つめ出す。ふつうの生活がいとおしくなる、日常大満喫エッセイ。
  • ちよぼ―加賀百万石を照らす月―(新潮文庫)
    3.0
    女子(おなご)とて、闘わねばならなかった。信長と前田家に敗した朝倉家臣の娘・幾世は長じて正室まつの侍女として前田家に入り、千代保と改名。初代加賀藩主・利家に見初められて側室になり男児を産む。猿千代と名付けられた子はのちに名君・利常となるが、母千代保は人質として江戸へ向かった――。加賀百万石の礎を築き、寿福院の名で親しまれた、慈愛と情熱に満ちた女傑の生涯を描く歴史時代小説。(解説・本郷和人)
  • 処女の道程(新潮文庫)
    4.3
    女は結婚するまで処女でいるべきか――なんて議論は過去のもの。だが処女の価値には、その時代の女性の地位やモラルの変遷が現れていた。性に開放的だった古代~平安、儒教の貞操観念が浸透した封建社会。純潔が尊ばれた大正から、出産を国に推奨された戦時下。未経験が恥だった80年代を経て、性交渉しない自由を得た令和へ。古今の文献から日本の性意識をあぶり出す画期的な性のクロニクル。(解説・花房観音)
  • 死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人―(新潮文庫)
    3.6
    2005年、大阪で若い姉妹が惨殺された。犯人の山地悠紀夫はその5年前、実母を殺し、少年院で矯正教育を受けていた――。裁判で山地は「さっさと死刑にしてくれ」と主張。2009年、一切の真相を語ることも、反省することもなく絞首刑となった。享年25。その短い人生でなぜ3人も殺めたのか。彼は化け物か、それとも……。緻密な取材で事件の深層と凶悪犯の素顔に迫る、衝撃のルポルタージュ。(解説・あさのあつこ)
  • とわの庭(新潮文庫)
    4.0
    1巻693円 (税込)
    盲目の女の子とわは、大好きな母と二人暮らし。母が言葉を、庭の植物が四季を、鳥の合唱団が朝の訪れを教えてくれた。でもある日、母がいなくなり……それから何年経っただろう。壮絶な孤独の闇を抜け、とわは自分の人生を歩き出す。おいしいご飯、沢山の本、大切な友人、一夏の恋、そしてあの家の庭。盲導犬ジョイと切り拓いた世界は眩い光と愛に満ちていた。涙と生きる力が溢れ出す感動長編。(解説・平松洋子)
  • 国道16号線―「日本」を創った道―(新潮文庫)
    3.5
    横須賀から、横浜、町田、八王子、川越、柏などを経て木更津まで。東京をぐるりと囲む16号線エリア。約1100万人が住む一大経済圏である。旧石器時代から人々が集まり、二つの幕府の礎となった。絹の輸出で近代国家を支え、戦後はユーミンをはじめ新たな才能がここで育まれる。子供たちも増加し、未来へつながる道となった16号線、その秘密とは。胸躍る、新・日本文明論。(解説・三浦しをん)
  • 脱スマホ脳かんたんマニュアル(新潮文庫)
    3.7
    集中力が続かない。時間の使い方がヘタ。いつも寝不足。原因は、もしかしたらスマホにあるのかも。スマホを使っているとき、脳には一体何が起きている?――勉強しているときスマホを隣の部屋に置くと効率アップ。何かを覚えるときはタブレットではなく紙で読もう。睡眠が記憶を定着させる。SNSを使いすぎると幸福度が下がる? 知っておけば絶対安心、スマホとかしこく付き合うための本。
  • 近鉄特急殺人事件(新潮文庫)
    4.0
    京都発賢島行近鉄特急ビスタEX(エックス)の車内で大学准教授が殺された。彼はテレビ番組の過激な司会者として知られ、番組で伊勢神宮を貶める自説を主張する予定だった。一方、東京では歴史雑誌編集者が殺され、同棲していた同僚の女が姿を消した。二つの殺人に関連を感じ伊勢神宮に向かった十津川警部が内宮門前町〈おかげ横丁〉で発見したのは、容疑者の意外な姿だった。長編トラベルミステリー。
  • テロルの原点―安田善次郎暗殺事件―(新潮文庫)
    5.0
    一九二一年、ある無名の青年が広く知られる人物を殺害した。一代で財閥を作り上げた安田善次郎を襲った犯人の名は、朝日平吾。その衝撃は原敬首相暗殺の連鎖を生み、二・二六事件に至るテロリズムの世を招来する。彼は屈辱、怨恨、強い承認願望を抱いていたのではないか――。当時と現代に格差社会という共通項を見出す著者が、青年の挫折に満ちた半生を追ってゆく。『朝日平吾の鬱屈』改題。
  • 犬も食わない(新潮文庫)
    3.9
    派遣秘書の福は雇い主と出かけた先のビルで、廃棄物処理業者の大輔とぶつかった。ろくな謝罪もない舐めた態度に激高した福は罵詈雑言の限りを尽くし、大輔は一言でやり返す……そんな最悪な出会いから始まった。ベッドの半分を占める体は邪魔だし、同じシャンプーが香る頭は寝癖だらけ。他人の「いいね」からは程遠い、喧嘩ばかりで格好つかない恋愛の本音を、男女の視点別に描く共作小説。
  • 丘の家のジェーン(新潮文庫)
    4.1
    うららか街の古い大邸宅で、12歳のジェーンは重苦しい生活を送っていた。彼女には父がなかった。頑なな祖母と美しい母は、なぜかそのことに触れたがらない。しかし突然、父からの手紙が届いた。プリンス・エドワード島で一緒に夏を過そうという。こわごわ出かけた彼女は、美しい自然と素朴な人情、そして何より父の深い愛情に包まれ、丘の上の小さな家で目ざましく成長してゆく。
  • 一勝九敗(新潮文庫)
    4.4
    豪胆な父とは対照的に内気な息子・柳井正は、大学卒業後、家業の紳士服店を継いだ。やがて店をカジュアルウエアのトップ企業「ユニクロ」へと急成長させるまでには、数々の失敗の歴史があった。株式上場、急成長、業績低迷の実態に率直に触れつつ、高品質の衣料を低価格で売る秘訣、広告代理店任せにしない宣伝戦略、透明性の高い人事など、独自の経営哲学を惜しみなく公開する。
  • それでも俺は、妻としたい(新潮文庫)
    3.1
    1巻693円 (税込)
    同棲から始まった結婚。あの頃はチカと毎晩抱き合っていた――。40歳を迎えたのにいまだに売れない脚本家の俺。家事や息子の保育園への送り迎えをこなしているのに、働きに出ている妻にゴミ扱いされ、セックスは「ヤダ」の一言で拒否される始末。だが俺はチカの巨乳に触れたいのだ。いじましい欲望。ちっぽけなプライド。そして、愛。男と女を笑いの渦に叩き込んだ傑作夫婦小説(ほぼ実録)。(解説・北上次郎)
  • 女副署長(新潮文庫)
    3.6
    1~3巻693~737円 (税込)
    地域課警部補の死体が、警察署の敷地内で発見された。胸にはナイフが突き立ち、激しい雨に打たれていた。直後に封鎖された署内に動揺が走る。犯人は庁舎内に隠れているのか。まさか本官なのか。副署長の田添杏美は、所轄署の名誉をかけて犯人を挙げると決意するが……。留置場の異様な出来事、剛腕刑事課長との厳しい対立、解けない謎。元女性白バイ隊員の著者が女性警視の捜査魂を描く傑作。(解説・吉野仁)
  • 100文字レシピ ごちそうさま!(新潮文庫)
    4.5
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 待ってました! 簡単なのに本格派、大人気の「100文字レシピ」が新たに116品のお料理をどーんとご紹介。晩ごはんに、ちょっとしたお酒のおつまみに、おしゃれに決めたいディナーにと、使えるレシピが満載です。もちろん料理がニガテな人にもやさしくコツを伝授します。ハンディな文庫はお買い物のお供にしても便利。手軽なこのレシピで、自分で作るごはんのおいしさ味わってみませんか。(解説・重松清) ※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)
    3.8
    ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしている――。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。
  • 焔(新潮文庫)
    3.5
    焔を囲んだ人達が、それぞれの身に起こったことを語り出す――。近隣諸国と武力衝突の危険性が高まるなか、人々が“あること”を始める「ピンク」。突然泣き出してしまう“謎の病”が大流行する「眼魚」。南米やアフリカなど各地から集まった力士が頂点をめざす「世界大角力共和国杯」。祈りや驚嘆、希望など様々な思いを込めて語られた九つの物語は、最後に大きく燃え上がる。谷崎潤一郎賞受賞作。
  • やまいだれの歌(新潮文庫)
    4.4
    中学を出て、その日暮らしを三年半。十代も終わりに近づいてきた北町貫多は、心機一転、再出発を期し、横浜桜木町に移り住み、これまでの日雇いとは異なる造園会社での仕事をはじめた。三週目に入って、事務のアルバイトとして貫多と同い年の女の子がやってきた。寝酒と読書と自慰の他に特に楽しみのなかった貫多に心を震わせる存在が現れたのだった。著者初の幻の傑作長編、ついに文庫化。(解説・山下敦弘)
  • すごい言い訳!―漱石の冷や汗、太宰の大ウソ―(新潮文庫)
    3.0
    言い訳――窮地を脱するための説明で、自分をよく見せようとする心理が働くので、大方軽蔑の対象になる。しかし文豪たちにかかれば浅ましい言い訳も味わい深いものとなる。二股疑惑をかけられ必死に否定した芥川龍之介。手紙の失礼を体調のせいにしてお茶を濁した太宰治。納税額を誤魔化そうとした夏目漱石。浮気をなかった事にする林芙美子等、苦しく図々しい、その言い訳の奥義を学ぶ。(解説・郷原宏)
  • 作家との遭遇(新潮文庫)
    4.1
    少年の頃に開いた書物の森で、あるいは「学校」のようだった酒場の片隅で、沢木耕太郎が心奪われるように出会ってきた作家たち。山本周五郎、向田邦子、山口瞳、色川武大、吉村昭、吉行淳之介、小林秀雄、瀬戸内寂聴など、書くことが即ち生きることだった19人の作家に正面から相対し、その本質を描き出す。誰も知らなかった顔に辿り着き、緊張感さえ孕むスリリングな刺激あふれる作家論!
  • 幽玄の絵師―百鬼遊行絵巻―(新潮文庫)
    3.3
    都の闇に跋扈する、人ならぬもの鬼の如きもの――。妖異が見える異能の絵師土佐光信は、将軍足利義政から、人心を惑わす妖物の正体を解くよう命じられる。御所をさまよう血塗れの女や、禍々しい「呪詛屏風」、影を喰らうものや、人の泣き声を餌にするもの。将軍の心に取り憑き、裏から世を操る「鬼」……。光信が怪異の謎を突き止めたとき、真に怖ろしいのは妖物か人か――。室町ミステリー。(解説・細谷正充)
  • 辞表―高杉良傑作短編集―(新潮文庫)
    4.0
    1巻693円 (税込)
    この会社には将来があるのか――組織を見限り別の道に挑戦する男を描く「エリートの脱藩」。病魔に倒れた社長の後継人事に奔走する男の秘策「社長の遺志」。人員解雇に忙殺される人事部長を描く「人事部長の進退」。社内抗争に巻き込まれた男と同期の友情を描く「エリートの反乱」。社長の劇的な退任劇「社長、解任さる」。己れの矜持を賭けた決断の瞬間を経済小説の巨匠が鮮烈に描く名作。(解説・杉田健二)
  • 日本の聖域 ザ・コロナ(新潮文庫)
    4.0
    世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。人命を脅かす疫病を前に、己の利のみ追及し甘い蜜を吸う輩が存在する。感染症対策そっちのけでワクチン利権拡大に勤しむ国立感染症研究所。人流減しか提言できない専門家会議の実態。カネを独占するため異常に抑制されたPCR検査……。国民生活に密接する国の中枢で何が行われているのか? 25の組織や制度の裏面に迫り報じられない実情を暴く。(解説・柳田邦男)
  • 玄鳥さりて(新潮文庫)
    3.8
    富商の娘を娶り、藩の有力派閥の後継者として出世を遂げる三浦圭吾。その陰には、遠島になってまで彼を守ろうとした剣客・樋口六郎兵衛の献身と犠牲があった。十年後、島から戻った六郎兵衛。だが、二人は敵同士として剣を交えざるを得なくなる……。派閥争いに巻き込まれ、運命に翻弄されていく男たち。彼らは、何を守るために刀を振るうのか。真に大切なものを問う、葉室文学の円熟作。(解説・島内景二)
  • 阿修羅ガール(新潮文庫)
    3.6
    アイコは金田陽治への想いを抱えて少女的(ガーリッシュ)に悩んでいた。その間に街はカオスの大車輪! グルグル魔人は暴走してるし、同級生は誘拐されてるし、子供たちはアルマゲドンを始めてるし。世界は、そして私の恋はどうなっちゃうんだろう? 東京と魔界を彷徨いながら、アイコが見つけたものとは――。三島由紀夫賞受賞作。受賞記念として発表された短篇「川を泳いで渡る蛇」を併録。
  • フィッシュストーリー(新潮文庫)
    3.7
    最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。(解説・佳多山大地)
  • 天誅の剣(新潮文庫)
    3.0
    幕末師走。長州藩の志士山尾庸三と伊藤俊輔は、夜の九段坂で暗殺を決行した。義挙と信じていたが、改革派の村田蔵六から厳しく叱責される。翌年、二人は村田の助力で仲間と密航、ロンドンでその先進性に驚愕した! だが帰国してみると、世は守旧の激徒が暗躍し、村田の身にも危機が――。時は流れ、ハルビン駅頭。韓国併合に反対の伊藤が、凶弾に斃れる。〈天誅〉を主題に描く渾身の歴史小説。
  • 最後の読書(新潮文庫)
    4.0
    目はよわり、記憶はおとろえ、蔵書は家を圧迫する。でも実は、老人読書はわるいことばかりではないよ――。鶴見俊輔、幸田文、須賀敦子……。長い歳月をたずさえて読む本は、豊かで新鮮なよろこびに満ちている。親しい仲間や敬愛する先達との別れを経験しながら、それでも本と出会い続けよう。本を読み、つくり、書いてきた読書人が、その楽しみを軽やかに綴る現状報告。読売文学賞受賞作!(解説・鈴木敏夫)
  • 警察庁長官を撃った男(新潮文庫)
    4.2
    1995年3月、日本中を震撼した国松孝次警察庁長官狙撃事件。特別捜査本部を主導する警視庁公安部がオウム犯行説に固執する一方、刑事部は中村泰なる老スナイパーから詳細な自供を得ていた。だが、特捜本部は中村逮捕に踏み切らず、事件は時効を迎えてしまう。警察内部の出世とメンツをかけた暗闘や、中村の詳細な証言内容など極秘捜査の深層を抉るノンフィクション。
  • 火のないところに煙は(新潮文庫)
    4.0
    1巻693円 (税込)
    「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の〈私〉は驚愕する。心に封印し続けた悲劇は、まさにその地で起こったのだ。私は迷いつつも、真実を求めて執筆するが……。評判の占い師、悪夢が憑く家、鏡に映る見知らぬ子。怪異が怪異を呼びながら、謎と恐怖が絡み合い、直視できない真相へとひた走る。読み終えたとき、それはもはや他人事ではない。ミステリと実話怪談の奇跡的融合。(解説・千街晶之)

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