新潮文庫作品一覧

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  • 三島由紀夫を巡る旅―悼友紀行―(新潮文庫)
    4.0
    「矛盾が多ければ多いほど、その人物は面白いと言うことができます」(キーン氏)――三島は、矛盾に富む人だった。文学を愛し古典の教養溢れる一方で、日本の自然や食文化には無頓着。国内より海外で評価されることを切望し、貴族の存在を嫌いながらも度々作品に登場させた。知られざる素顔と葛藤を目撃していた両著者が亡き友を偲び語り合い、貴重な証言録となった追善紀行。『悼友紀行』改題。
  • カエルの楽園(新潮文庫)
    4.0
    1~2巻649~693円 (税込)
    国を追われた二匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。だが、南の沼に棲む凶暴なウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる……。単行本刊行後、物語の内容を思わせる出来事が現実に起こり、一部では「予言書」とも言われた現代の寓話にして、国家の意味を問う警世の書。(解説・櫻井よしこ)
  • 広島電鉄殺人事件(新潮文庫)
    -
    広島電鉄の若い運転士が路面区間で制限速度を20キロ超過する不祥事を起こし、処分を受けた。そして、停職中の彼が暴漢に襲われる事態に。東京では彼の高校の同級生だった鉄道雑誌の女性カメラマンへの殺人未遂事件が発生。二つの事件に繋がりを感じた十津川警部の前に、七年前に長野県渋温泉で起きた殺人事件が浮び上がる。そして、連続殺人の現場は、広島電鉄宮島線へ。「電鉄」シリーズ。
  • 漢字のいい話(新潮文庫)
    4.0
    「道」という文字には怖い意味がある。「女」「母」「婦」「妻」などの文字からわかる古代人の女性観は? 「為」は昔、中国に象がいた証拠! 甲骨文字の由来や筆記用具と書体の密接な関係、ローマ字に比べ「遅れた文字」とされてきた漢字が、コンピュータやスマホの時代には意外に便利で新しいことなど、日本人が日常的に使う表意文字の面白さと奥深さを、漢字学の第一人者が縦横無尽に語る。(解説・阿刀田高)
  • 百年の散歩(新潮文庫)
    4.2
    豆のスープをかき混ぜてもの思いに遊ぶ黒い〈奇異茶店〉。サングラスの表面が湖の碧さで世界を映す眼鏡屋。看板文字の「白薔薇」が導くレジスタンス劇。カント、マルクス、マヤコフスキー。ベルリンを幾筋も走る、偉人の名をもつ通りを、あの人に会うため異邦人のわたしは歩く。多言語の不思議な響きと、歴史の暗がりから届く声に耳を澄ましながら。うつろう景色に夢想を重ね、街を漂う物語。(解説・松永美穂)
  • 日本の聖域 シークレット(新潮文庫)
    3.7
    「報道しない自由」を謳歌する大メディア。その内向きな姿勢が深刻になる中、国民の知る権利に開いた「穴」を埋める役割が、より重要になっている。「がん告知」の闇、診療報酬支払基金、慶應大学医学部、安倍首相「私邸」、創価学会「婦人部」、神社本庁……。新聞やテレビが触らない、この国の秘密の領域に鋭く斬りこむ24の深層レポート! 会員制情報誌の名物シリーズ第五弾。
  • パーマネント神喜劇(新潮文庫)
    4.0
    派手な柄シャツを小太りの体に纏い、下ぶくれの顔に笑みを浮かべた中年男。でもこれは人間に配慮した仮の姿。だって、私は神だから――。千年前から小さな神社を守る恋愛成就の神は、黒縁メガネにスーツ姿の同僚と共にお勤めに励む。昇進の機会を摑むため、珍客がもたらす危機から脱するため、そして人々の悠久なる幸せのため。ちょっとセコくて小心で、とびきり熱い神様が贈る縁結び奮闘記!(解説・津村記久子)
  • 芭蕉という修羅(新潮文庫)
    4.5
    「古池や蛙飛こむ水の音」の句を詠んで華やかな江戸文化人サロン注目の俳諧師となった松尾芭蕉。遂には「風雅の正道」と喧伝され、没後は朝廷から「飛音明神」の号を賜り、偶像化され神となった。しかし、その芭蕉にはもう一つの顔があった。水道工事監督、幕府隠密、イベントプロデューサー。それぞれに危うい博打を打ち、欲望の修羅を生きた「俳聖」の生々しい人間像を描き出す決定版評伝。(解説・小澤實)
  • 五弁の秋花―みとや・お瑛仕入帖―(新潮文庫)
    4.5
    看板娘のお瑛と兄の長太郎が切り盛りする雑貨屋『みとや』。一律三十八文が売りの小さな店だが、のんきな兄が鼻高々で仕入れてくるのは、おかしな品ばかり。大量の黄表紙、煙臭い市松人形、小花の簪、山ほどの下駄。訳あり品に秘められた下町人情、意外な縁、嫉妬の罠とは……。時代小説の名手が、背負った過去にも負けずに生きる人びとの姿を、しみじみと描き出す。好評シリーズ第二弾。(解説・中江有里)
  • 信長嫌い(新潮文庫)
    4.0
    織田信長さえ、いなければ――。天下を獲れたはずの男・今川義元。戦に賭けた男・真柄直隆。逃げ続けた男・六角承禎。将軍殺しの悪名と生きた男・三好義継。戦より茶を愛した男・佐久間信栄。老躯をおして仇を狙う伊賀上忍の男・百地丹波。祖父の影を追い続けた男・織田秀信。乱世の主役、信長に翻弄された時代の“脇役”たちもまた、己が人生を必死にもがき生き抜いた。敗者たちの戦国列伝。(解説・清水克行)
  • 魂でもいいから、そばにいて―3・11後の霊体験を聞く―(新潮文庫)
    4.1
    未曾有の災害で愛する者に突然死なれ、絶望の淵に立たされた人々の心を救ったのは、奇跡としかいいようのない体験だった。布団に入ってきた夫を「抱いてあげればよかった」と悔いる妻。階上の息子の足音を聞く母。死亡届を書いている時に兄からメールを受け取った妹。それは夢だったのか、幻なのか――。再会を願う痛切な声と奇跡を丹念に拾い集めた感動のドキュメンタリー、待望の文庫化。
  • 東京湾景(新潮文庫)
    3.9
    品川の貨物倉庫で働く亮介は25歳の誕生日、出会いサイトでOLの〈涼子〉と知り合った。どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい〈涼子〉。嘘と不安を隠し、身体を重ねるふたりは、やがて押し寄せる淋しさと愛おしさに戸惑う……。東京湾に向きあった、品川埠頭とお台場に展開する愛の名作に、その後を描く短編「東京湾景・立夏」を増補した新装新版。(解説・朝井リョウ・陣野俊史)
  • ピアニストだって冒険する(新潮文庫)
    3.5
    華やかで力強いピアノの魂とともに――。何も知らず母に連れられて行った三歳のレッスン。十五歳でソリストを務めたN響世界一周演奏旅行。十八歳でジュリアード音楽院に留学して味わった挫折感。自らの人生をユーモラスに描き、国際コンクールの舞台裏、かけがえのない友人や恩師、そして日本の未来への想いを綴った文章の数々……。亡くなるひと月前まで書き継がれた最後のエッセイ集。
  • 卑弥呼の葬祭―天照暗殺―(新潮文庫)
    3.7
    高千穂の夜神楽の真っ只中で男性の首なし死体が発見された。一方宇佐神宮では御霊水の井戸に禍々しいものが……。その九州で「卑弥呼の調査に行く」と言ったまま行方不明の従弟・漣を追う萬願寺響子。実在する凶首塚古墳、百体神社の謎。奇妙な天岩戸伝説と隠蔽された事件とは。そして天皇家が鎮魂の儀式を続けてきた真の理由とは。この国の黎明に何があったのか。瞠目の古代史ミステリー。
  • 甲州赤鬼伝(新潮文庫)
    5.0
    その赤備え軍団は「戦国の伝説」となった――。十四歳の初陣で功を上げられず、父の介錯を務め首を切った山県昌満。心に深手を負い、若き頭領の重圧がのしかかる。だが馬鉄砲の腕を磨き、臣下の窮地を救った昌満は、赤備えの大将として復活。家康と、腹心井伊万千代を震え上らせる戦いを挑んでいく。権謀術数が渦巻く乱世で、最強の赤鬼たちは、いかなる光芒を放ったのか。鮮烈無比の傑作。
  • バブル―日本迷走の原点―(新潮文庫)
    3.7
    1980年代後半、金融自由化・国際化の中、地価と株価が急上昇し、日本全体は陶酔的熱狂(ユーフォリア)に浸った。当時、住銀、興銀、野村、山一などの銀行や証券会社と大蔵・日銀、政治家、「バブルの紳士」が繰り広げた狂乱の時代とはなんだったのか? 現場を見続けた「伝説の記者」が日本独自の資本主義システムまで議論を深め、「失われた20年」と呼ばれるデフレを招いた原因を捉える〈平成〉史決定版。(解説・勝英二郎)
  • 「鬼畜」の家―わが子を殺す親たち―(新潮文庫)
    3.9
    使用済みのオムツが悪臭を放ち、床には虫が湧く。暗く寒い部屋に監禁され食事は与えられず、それでもなお親の愛を信じていた5歳の男児は、一人息絶え、ミイラ化した。極めて身勝手な理由でわが子を手にかける親たち。彼らは一様に口を揃える。「愛していたけど、殺した」。ただし「私なりに」。親の生育歴を遡ることで見えてきた真実とは。家庭という密室で殺される子供たちを追う衝撃のルポ。
  • 美しき日本の面影(新潮文庫)
    -
    この国には妖精が棲んでいる――。日本中をピンクに染める桜前線、久米島の水辺で瞬く蛍、寝台特急「さくら」号、そして故郷長崎の平和の祈り。自然と共存する人々の心根の優しさに目を見張り、鮮やかな季節の移り変わりに息を呑む。デビュー以来、三十余年にわたり旅を続けてきた著者が、数々の出会いと別れ、少年時代の思い出を慈しみながら綴る、大人のための旅のエッセイ集。
  • 海と山のピアノ(新潮文庫)
    3.6
    「四国って土地だから行政からほっといてもらえるのかもしれない」二年に一度、村の全員で住む場所を移す「村うつり」。私は“足”を澄ませ、移った故郷を探す(「ふるさと」)。三崎の若い漁師達は遭難し、マグロになった。海に飛び込もうとする彼らを叱咤したのは船頭の大マグロ。励まされ、必死に漁を続けると――(「野島沖」)。生も死もほんとうも嘘も。物語の海が思考を飲みこむ、至高の九篇。(解説・彩瀬まる)
  • 日本の未来(新潮文庫)
    -
    終戦70年の夏、安倍晋三首相は内閣総理大臣談話を発表した。これを著者は政治文書として高く評価する。首相は、謝罪外交に終止符を打ち、日本国民の犠牲と、戦火を交えた国々で失われた命を悼み、21世紀の価値観を説いた。いま、世界は「新冷戦」の中にある。中国が新しい秩序を形成しようと米国に挑戦しているのだ。米中の狭間で、責任ある自立した国へと変わること。その決意が未来を拓く。
  • 周五郎少年文庫 黄色毒矢事件―少年探偵春田龍介―(新潮文庫)
    3.0
    無燃料機関(エンジン)の実験当夜、妹が掠(さら)われ、機密をも盗まれた。龍介は二つの暗号文を解読し、犯人を追う(「危し!! 潜水艦の秘密」)。超爆液の研究所で分析表が盗まれ、次々と所員が殺される。龍介は巧妙な方法で犯人を炙り出す(「黄色毒矢事件」)。若き日の周五郎が旺盛に執筆した血湧き肉躍る少年小説のうち春田龍介ものを七編厳選。(解説・末國善己)
  • 救命―東日本大震災、医師たちの奮闘―(新潮文庫)
    4.4
    あの日、医師たちは何を見、どう行動したのか――津波の恐怖にさらされ、家族との別れを覚悟しながら患者を誘導、極寒の病院の屋上で人々を励まし続けた医師がいた。自身も心に深甚な傷を負い、ともに涙して患者を癒した医師がいた。個人とプロフェッションの狭間で揺れながら、彼らはなぜ行動し、何を目指したのか。9名の医師による東日本大震災の貴重な証言、感動のドキュメント。
  • 永遠とは違う一日(新潮文庫)
    4.0
    「誰かに認められたいなら、もっと全力でやって」東山路代はマネジメントを担当するモデルの咲子に不満を抱いていた。今日こそは言う。そう決意した矢先、収録現場に遅刻し、咲子を怒らせてしまう。憧れのバンド7BOYSの傍で働くために上京して早四年、夢見ていた場所は遠すぎる――。スタイリスト、女子アナ、アイドル。華美な世界に生きながら決して特別ではない女性たちを描く作品集。(解説・山本文緒)
  • ポーカー・フェース(新潮文庫)
    3.7
    「初体験」から書き起こし、靴磨きの老人と鮨屋の主人の手がもたらす感懐へと導かれる「男派と女派」、銀座の酒場のエピソードがやがてカクテルの逸話へと姿を変える「マリーとメアリー」……波から波へと移るように、小路をふっと曲がるように、意外な場所へと運ばれるめくるめく語りの芳醇に酔う13篇。『バーボン・ストリート』『チェーン・スモーキング』に続く傑作エッセイ集。
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)
    3.9
    名(酩? 迷?)探偵ヨギ ガンジー登場! ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひき、ロンドンではヨーガを教え、シカゴではすりの実演、東京では医者を相手に催眠術の講義をする、謎の男ヨギ ガンジー。心霊術、念力術、予言術、枯木術、読心術、分身術、そして遠隔殺人術……。頭にターバンを巻き、長い白衣を着た正体不明の名探偵が、超常現象としか思えない不思議な事件の謎に挑む!
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)
    4.2
    オハイオ州の架空の町ワインズバーグ。そこは発展から取り残された寂しき人々が暮らすうらぶれた町。地元紙の若き記者ジョージ・ウィラードのもとには、住人の奇妙な噂話が次々と寄せられる。僕はこのままこの町にいていいのだろうか……。両大戦に翻弄された「失われた世代」の登場を先取りし、トウェイン的土着文学から脱却、ヘミングウェイらモダニズム文学への道を拓いた先駆的傑作。(解説・川本三郎)
  • 恋せよ魂魄―僕僕先生―(新潮文庫)
    4.2
    連れ去られた両親を救うために、一行を離れて長安へ向かった劉欣。彼を追う美少女仙人・僕僕と王弁はその旅の途中でタシという少女に出会う。不治の病と診断された彼女はなぜか、王弁の傍にいると症状が和らぐのだった。一方、劉欣の仙骨を狙う胡蝶の頭目は、ついに劉欣を追い詰め、最後の戦いを仕掛けようとするが。クライマックス目前! 大人気中華ファンタジー、出会いと別れの第九巻。
  • 不明解日本語辞典(新潮文庫)
    3.5
    「普通」って何? 「ちょっと」って何? 「っていうか」って何?……。毎日何気なく使っている日本語の意味を深くマジメに掘り進むと、摩訶不思議な言葉の作用に行き当たる。あまたの辞典類の頁をめくり、日本語の持つあいまいさ、難解さに真正面から果敢に挑む著者――時に茫然と立ち尽くしながらも、自ら選んだ32語を手掛かりに、言葉の海へと漕ぎ出して行く。ユニークな辞典風エッセイ。
  • 数学する身体(新潮文庫)
    4.0
    数学はもっと人間のためにあることはできないのか。最先端の数学に、身体の、心の居場所はあるのか――。身体能力を拡張するものとして出発し、記号と計算の発達とともに抽象化の極北へ向かってきたその歴史を清新な目で見直す著者は、アラン・チューリングと岡潔という二人の巨人へと辿り着く。数学の営みの新たな風景を切りひらく俊英、その煌めくような思考の軌跡。小林秀雄賞受賞作。(解説・鈴木健)
  • 結婚奉行(新潮文庫)
    -
    六尺超の大男、桜井新十郎は泣く子も黙る火付盗賊改の同心……から「結婚奉行」配下となった。持参金目的の婚姻を取り締まり、幕臣意識を正すための老中肝煎りの新職制。とはいえ、剣はイケても、男女の機微には不調法。賢妻きくと盟友高山の助けを借りて武家の婚活を支える。とある仇討ち絡みの一件で奉行所の不正を指摘した新十郎は、突如投獄されてしまうのだが……。『縁結び仕り候』改題。
  • 掲載禁止(新潮文庫)
    3.6
    人の死を見るツアーに参加したジャーナリストが目にした異様な光景(「原罪 SHOW」)、マンションの天井裏に潜む歪んだ愛(「マンションサイコ」)。恋愛していたら決して読んではいけない戦慄作「斯くして、完全犯罪は遂行された」の他、不気味な読み味の「杜の囚人」と、どんでん返しに言葉を失う表題作「掲載禁止」。繰り出される謎と仕掛けに、一行たりとも目を離せない衝撃の作品集!
  • 笑犬樓の逆襲(新潮文庫)
    4.0
    断筆解除をしてみれば、世間は面妖なことばかり。狂牛病の牛を哀れみ、ヒトゲノム解読を解読し、税務調査官の態度にあきれ、自民党の変貌を嘆き、酒鬼薔薇聖斗の出現に耳を欹て、歩行者喫煙取締りを糾弾し、小中学生や男の化粧を断固支持し、ホース片手に隣家の火事を消し、柳美里裁判に物申す!  「ならず者の傑物」筒井康隆が狂気の時代を迎え撃つ、獅子奮迅、呵々大笑のエッセイ集。
  • 旅のラゴス(新潮文庫)
    4.1
    北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
  • 愛に乱暴(上)(新潮文庫)
    3.6
    1~2巻649円 (税込)
    初瀬(はせ)桃子は結婚八年目の子供のいない主婦。夫・真守の両親が住む母屋の離れで暮らし、週に一度、手作り石鹸教室の講師をしている。そんな折、義父の宗一郎が脳梗塞で倒れた。うろたえる義母・照子の手伝いに忙しくなった桃子に、一本の無言電話がかかる。受話器の向こうで微かに響く声、あれは夫では? 平穏だった桃子の日常は揺らぎ始め、日々綴られる日記にも浮気相手の影がしのびよる。
  • 人間アレルギー―なぜ「あの人」を嫌いになるのか―(新潮文庫)
    4.5
    花粉などアレルゲンによって引き起こされる身体的アレルギー。これとよく似た心理的拒絶反応「人間アレルギー」についてはこれまで語られることはなかった。良好だった人間関係がなぜ急にうまくいかなくなるのか。些細な理由で相手の存在までも許せなくなるのはなぜか。自身のクリニックの具体的な臨床例と歴史上の人物のケースを分析しながら、この心理的葛藤状態を克服する処方を示す。
  • 太陽の塔(新潮文庫)
    3.8
    私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった! クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
  • リカバリー(新潮文庫)
    4.0
    路上を転がるボール、追う息子、叫ぶ父……。最愛の息子・考也を交通事故で亡くしたプロサッカーチームのベテランGK灰沢考人。事故後、自責の念から自暴自棄になった灰沢は家庭を壊し、チームのレギュラーの座も失う。一方、事故を苦にし自ら命を絶った亡き父の願いを胸に、若き砂田佳之也もプロ選手への道を歩み出す。サッカー小説を超える感動の物語。『転がる空に雨は降らない』改題。
  • 日本の敵(新潮文庫)
    4.5
    日本は今、歴史戦を挑まれている。闘いの主戦場を国連に広げ、不条理な非難を浴びせ続ける相手の主軸は中国である。だが、忘れてはならない。慰安婦問題をはじめ、わが国の名誉を汚す歴史非難の原因を作ったのは日本人だったということを。敵は内にも外にもいるのだ。私たちは、果敢に、粘り強く、真実を示し続けなければならない。主張する勇気と知性を身につけ、勁(つよ)き国家を創る術を説く。
  • 日本の聖域 アンタッチャブル(新潮文庫)
    3.5
    弱者のために、病める人のために、子どもたちのために、正義のために――。この国には、メディアが口をつぐみ、触れることが許されない黒々とした聖域が至る所に存在する。美名を隠れ蓑にして肥え太る者たちの正体とは? 25の組織や制度のタブーに挑む。新聞テレビのニュースだけでは飽き足らない読者に贈る、会員制情報誌の名物連載第二弾。『日本の聖域 偽装の国』改題。
  • 波の音が消えるまで―第1部 風浪編―(新潮文庫)
    4.3
    1~3巻649~737円 (税込)
    サーフィンの夢を諦め、バリ島から香港を経由し、流木のようにマカオに流れ着いた伊津航平。そこで青年を待ち受けていたのはカジノの王「バカラ」だった。失った何かを手繰り寄せるようにバカラにのめり込んでいく航平。偶然の勝ちは必要ない、絶対の勝ちを手に入れるんだ――。同じくバカラの魔力に魅入られた老人・劉の言葉に導かれ、青年の運命は静かに、しかし激しく動き出すのだった。
  • 浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―(新潮文庫)
    4.5
    1945年の終戦直後、焦土と化した東京では、家も家族もなくした浮浪児が野に放り出されていた。その数、全国で3万以上。金もなければ食べ物もない。物乞い、窃盗、スリ……生きるためにあらゆることをした。時に野良犬を殺して食べ、握り飯一個と引き換えに体を売ってまで――。残された資料と当事者の証言から、元浮浪児の十字架を背負った者たちの人生を追う。戦後裏面史に切り込む問題作。
  • ご破算で願いましては―みとや・お瑛仕入帖―(新潮文庫)
    3.7
    間口二間の小さな店を開いたお瑛は今年十六。両親をなくし、兄の長太郎と立ち上げた「みとや」は三十八(みとや)文均一の雑貨店だ。ところが能天気な兄が仕入れてくるのは、いわくつきの品物ばかりで……。不気味な守り刀、恋歌が書かれた五枚の不思議な絵皿、なぜか手に入った亡き父の煙草入れ。山ほどの算盤が意外な結末に結びつく表題作をはじめ、色とりどりの人間模様が心に沁みる情味豊かな六編。
  • 女たちの避難所(新潮文庫)
    4.1
    九死に一生を得た福子は津波から助けた少年と、乳飲み子を抱えた遠乃は舅や義兄と、息子とはぐれたシングルマザーの渚は一人、避難所へ向かった。だがそこは、“絆”を盾に段ボールの仕切りも使わせない監視社会。男尊女卑が蔓延(はびこ)り、美しい遠乃は好奇の目の中、授乳もままならなかった。やがて虐げられた女たちは静かに怒り、立ち上がる。憤りで読む手が止まらぬ衝撃の震災小説。『避難所』改題。
  • 細胞異植(新潮文庫)
    3.7
    国内二例目の赤ちゃんポストで張り込んでいた新聞記者・長谷部友美が目撃したのは、嬰児を抱いた石葉宏子の姿だった。独身だと思っていた知人の行動に戸惑う友美。慌てて姿を消した石葉の行方を追ううちに、女の抱えていた修羅が浮き彫りになってゆく。最後に掴みとった驚愕の真相とは。先端医療は新たなる福音か、人倫を揺さぶる悪魔の誘惑か――。『流転の細胞』改題、全面改訂完全版。
  • 本音で語る沖縄史(新潮文庫)
    -
    なにかと喧しい話題が多い沖縄。だが、日本と中国に挟まれたこれらの島々を「悲劇の島」や「栄光の琉球王国」という紋切型のイメージで見ると、その本当の姿を見誤る。国王即位を巡る後宮の陰謀、琉球史上最大の海戦の結末、離島を治めた女傑、最後の琉球王の淡い追憶など「アジアの交差点」といえる琉球諸島に生きた人々の足跡を、沖縄人二世の視点で辿る。「沖縄の戦後史」を新たに収録!
  • 発掘狂騒史―「岩宿」から「神の手」まで―(新潮文庫)
    4.2
    岩宿遺跡を発掘した在野の研究家、相澤忠洋。「旧石器の神様」と呼ばれた考古学者、芹沢長介。日本人の根源を辿る考古学界において、歴史を変えたその新発見は激しい学術論争、学閥抗争を巻き起こす。やがて沈殿した人間関係の澱は、日本を震撼させた「神の手」騒動に流れ着き――。微に入り細を穿つ徹底取材が生んだ骨太ノンフィクション。『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』改題。
  • 辻

    4.1
    父と子。男と女。人は日々の営みのなかで、あるとき辻に差しかかる。静かに狂っていく父親の背を見て。諍いの仲裁に入って死した夫が。やがて産まれてくる子も、また――。日常に漂う性と業の果て、破綻へと至る際で、小説は神話を変奏する。生と死、自我と時空、あらゆる境を飛び越えて、古井文学がたどり着いた、ひとつの極点。濃密にして甘美な十二の連作短篇。 ※当電子版では対談「詩を読む、時を眺める」は収録していません。
  • 芭蕉紀行
    4.0
    『野ざらし紀行』『冬の日』『笈の小文』『奥の細道』はもちろん、従来の案内書にはない『かしま紀行』『更科紀行』ゆかりのスポットも完全網羅。中学三年で芭蕉の言霊にふれ、自らも「旅を栖」とする著者が、足と目と感性で俳聖の全足跡を辿る。研究者のあいだではタブー視されている、蕉翁の衆道にも踏み込んだ稀有な書。沿道の美味な食べ物も紹介。著者手描きの絵地図入り。『芭蕉の誘惑』改題。
  • 身体巡礼―ドイツ・オーストリア・チェコ編―
    3.8
    ハプスブルク家の心臓ばかりが埋葬された礼拝堂をウィーンに訪ね、ボヘミアでは骸骨装飾で名高い納骨堂に足を運ぶ。プラハのユダヤ人墓地やカタコンベ、フランクル、マーラー、エゴン・シーレなど歴史的著名人の墓参りで浮かび上がってきた文化と埋葬、生者と死者との関係とはなにか? 長年、人間の体を観察しつつ思考してきた解剖学者が明かす、ヨーロッパ独特の身体性と死生観。
  • 日本の聖域 ザ・タブー
    3.4
    「知る権利」が危うい。国際NGO「国境なき記者団」が発表する「報道の自由度ランキング」での、日本の順位は下がり続けている。大手メディアに蔓延する萎縮、忖度、自主規制――。彼らが避けて触れない「闇」は、政界、官界、財界、学界などに絡み合って存在する。それら25の組織や制度にメスを入れる、会員制情報誌の名物連載第三弾。『日本の聖域 この国を蝕むタブー』改題。
  • 和算の侍
    3.0
    天才算術家関孝和に師事し、葛藤する中で円理を究めた高弟建部賢弘(かたひろ)。その苦闘の生涯を描く「円周率を計算した男」(歴史文学賞受賞)ほか、独学にして大酒飲みの奇才久留島義太(よしひろ)、算学者であり大名だった有馬頼ゆき(よりゆき)、百姓出身で孤高の算術家山口和(かず)など、江戸の天才数学者たちを主人公に、数奇な人生模様を情感溢れる筆致で描く、和算時代小説の傑作。『円周率を計算した男』改題。
  • 上野池之端 鱗や繁盛記
    3.9
    騙されて江戸に来た13歳の少女・お末の奉公先「鱗や」は、料理茶屋とは名ばかりの三流店だった。無気力な周囲をよそに、客を喜ばせたい一心で働くお末。名店と呼ばれた昔を取り戻すため、志を同じくする若旦那と奮闘が始まる。粋なもてなしが通人の噂になる頃、店の秘事が明るみに。混乱の中、八年に一度だけ咲く桜が、すべての想いを受け止め花開く――。美味絶佳の人情時代小説。
  • 雨の底―慶次郎縁側日記―
    4.0
    不意にさしかけられた傘の下で、男の優しさにずっと浸っていたかった――。大店の跡取り息子に尽くし抜いて捨てられた長屋娘と、娘の悲しみを見つめるもうひとりの男の目。男女のやるせなさに心震える「雨の底」。密かに持ち込まれた商家夫婦への不可解な脅迫文が、隠居暮らしの慶次郎を、愛憎渦巻く事件の暗がりへ再び導く「横たわるもの」ほか、円熟の筆が紡ぎだす江戸人情七景。
  • 白い牙
    4.2
    自分以外のすべてに、彼は激しく牙をむいた。強さ、狡猾さ、無情さ……彼は生き延びるため、本能の声に従い、野性の血を研ぎ澄ましてゆく。自分の奥底にいまはまだ眠る四分の一のイヌの血に気づかぬままに――ホワイト・ファング(白い牙)と呼ばれた一頭の孤独な灰色オオカミの数奇な生涯を、ゴールドラッシュ時代の北の原野を舞台に感動的に描きあげた、動物文学の世界的傑作。
  • 広域指定
    4.0
    一月十日午後九時、未帰宅者の一報を受け柴崎警部は高野朋美巡査らを急行させた。九歳の女児、笠原未希はどこへ消えたのか? 早期保護を目指し指揮を執る綾瀬署署長、坂元真紀。主導権を奪おうとする警視庁捜査一課。未解決事件の悪夢に悩まされる千葉県警。キャリアまでを巻き込んだ事件の捜査の行方――そしてその真相とは。名手が持てる力の全てを注ぎ込んだ、長篇警察小説。
  • 月の上の観覧車
    3.7
    1巻649円 (税込)
    閉園後の遊園地。高原に立つ観覧車に乗り込んだ男は月に向かってゆっくりと夜空を上昇していく。いったい何のために? 去来するのは取り戻せぬ過去、甘美な記憶、見据えるべき未来──そして、仄かな、希望。ゴンドラが頂に到った時、男が目にしたものとは。長い道程の果てに訪れた「一瞬の奇跡」を描く表題作のほか、過去/現在の時間を魔術師のように操る作家が贈る、極上の八篇。
  • 日本の決断
    -
    国際政治は急激に変化しつつある。歪んだ歴史認識を掲げ反日に燃える韓国。無法を繰り返す拉致国家・北朝鮮。軍事独裁国家へ邁進する異形の大国・中国……。国益を懸けた戦いは、自主独立の精神を欠いた国家には酷な結果をもたらしがちだ。このままでは日本の未来は危うい。喫緊の国家的問題に、我々はいかなる決断を下すべきか。この国の進むべき針路を、明快かつ的確に指し示す。
  • 宝島
    3.8
    死んだ老海賊の遺留品から「宝島」の地図を手に入れた少年ジム・ホーキンズは、医者のリヴジー先生や一本足の船乗りシルヴァーらと財宝を探しに孤島に向けて出帆した。ところが海賊どもの反乱が勃発。敵は十九名、ジムの味方は六名。息を呑む銃撃戦、恐怖の単独行の果て、ついにジムは宝のありかにたどり着くが……。読み継がれてきた不朽の冒険物語が鮮やかな新訳で待望の刊行。
  • 雨のち晴れ、ところにより虹
    4.5
    人を好きになったら、相手にも同じように想い返してほしい。それって、奇跡を望むことなのかな? 小さなことがきっかけですれ違った夫と妻。母の恋人の存在をうたがう女子高生。思春期の頃にひどく傷つけてしまった女の子の記憶に悩む、余命いくばくもない男。由比ヶ浜、鶴岡八幡宮、江ノ電、逗子マリーナ……潮騒の町を舞台に、離れた心と心が再びつながる瞬間を描く、湘南・六つの物語。
  • 辺境・近境
    4.0
    久しぶりにリュックを肩にかけた。「うん、これだよ、この感じなんだ」めざすはモンゴル草原、北米横断、砂埃舞うメキシコの町……。NY郊外の超豪華コッテージに圧倒され、無人の島・からす島では虫の大群の大襲撃! 旅の最後は震災に見舞われた故郷・神戸。ご存じ、写真のエイゾー君と、讃岐のディープなうどん紀行には、安西水丸画伯も飛び入り、ムラカミの旅は続きます。電子版特典!『辺境・近境《新装版》』に掲載された、松村映三カメラマン撮影のカラー口絵写真を追加収録!
  • ジュエリーの世界史
    3.8
    高価でお金持ちしか関係ないと思われがちな宝石。しかし、その意外な歴史はあまり知られていない。ティファニーやカルティエはどんな人物? ダイヤモンドの値段はどう決まる? 古代日本人から装身具が消えてしまった謎など、身を飾りたいという欲望とかかわる装飾品の歴史的変遷から、業界人しか知りえない取引の詳細まで、宝石に関する面白い話、満載。『ジュエリイの話』改題。
  • ブータン、これでいいのだ
    4.0
    クリーニングに出したセーターの袖は千切れているし、給湯器は壊れてお湯が噴出するし、仕事はまったく思い通りに運ばない。「幸せの国」と言われるブータンだけど、現実には社会問題も山積みです。それでも彼らは、「これでいいのだ」と図太くかまえ、胸を張って笑っている――初代首相フェローとしてブータン政府に勤務した著者が、日本人にも伝えたい彼らの“幸せ力”とは。
  • 文車日記―私の古典散歩―
    4.2
    こんなにも身近なところに、古典の世界が息づいている。私たちの人生そのままに、かつて、生きて戦い愛した人々がいる。――「古事記」「萬葉集」から若山牧水まで、民族の遺産として私たちに残されたおびただしい古典の中から、著者が長年いつくしんできた作品の数々を、女性ならではのこまやかな眼と、平明な文章で紹介し、味わい深い古典の世界へと招待してくれる名エッセイ集。
  • でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―
    4.2
    「早く死ね、自分で死ね。」2003年、全国で初めて「教師によるいじめ」と認定される体罰事件が福岡で起きた。地元の新聞報道をきっかけに、担当教諭は『史上最悪の殺人教師』と呼ばれ、停職処分になる。児童側はさらに民事裁判を起こし、舞台は法廷へ。正義の鉄槌が下るはずだったが、待ち受けていたのは予想だにしない展開と、驚愕の事実であった。第六回新潮ドキュメント賞受賞。
  • 月凍てる―人情江戸彩時記―
    4.3
    幼馴染みのおまつとの約束をたがえ、奉公先の婿となり主人に収まった吉兵衛は、義母の苛烈な皮肉を浴びる日々だったが、おまつが聖坂下で女郎に身を落としていると知り……(「夜明けの雨」)。兄を殺した仇を九段坂で張り込む又四郎に国許より兄嫁自害の知らせがもたらされた(「月凍てる」)。江戸の坂を舞台に人びとの哀歓を掬い取った人情時代小説の傑作四編。『坂ものがたり』改題。
  • シェイクスピアの正体
    3.0
    シェイクスピアとは誰なのか。別人、合作、それとも……。彼の存在が謎めいているのは、その作品の偉大さゆえでもある。片田舎から行方をくらませた無学な男は、いつのまにかロンドンで天才的な詩人・劇作家へと変貌を遂げた。才能が花開いたのか、誰かが成り変わったのか? シェイクスピア研究第一人者の東大教授が、演劇史上最大の謎を解く! 『謎ときシェイクスピア』改題。
  • イン・ザ・ヘブン
    3.4
    「ねえ、史子ちゃん、天国って、あると思う?」八十過ぎ、余命数週間の今日子さんは、あたしより三十も年上のお友達。天国では「病気をしていても元気になって、なりたい年齢に若返る」というあたしに対し、「でも、小さい頃死んじゃった子供は大きくなりたいんじゃないかしら」と妙に理屈っぽい。話すたびに、天国はどんどん複雑な状況になっていって……。短編10編とエッセイを収録。
  • 銀行王 安田善次郎―陰徳を積む―
    4.0
    日本を代表するメガバンク・みずほフィナンシャルグループ。この巨大企業の礎を築いた安田善次郎は、渋沢栄一らと共に国立銀行の設立に尽力し「元祖銀行王」と称されている。富山の貧しい下級武士の生まれながら、たった一代で巨万の富を掌中にした安田が如何なる時も肝に銘じた「陰徳」とは――。混迷の時代に生きるビジネスマン必読。『陰徳を積む―銀行王・安田善次郎伝―』改題。
  • さがしもの
    4.1
    「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。『この本が、世界に存在することに』改題。
  • 春の城
    3.7
    学徒出陣、基地での激務と空襲、マリアナ沖大海戦、父や恩師、そして恋人を奪った広島の原爆の惨状……。第二次大戦に遭遇した一人の青年の友情と恋愛、師弟愛と肉親愛とを、入念な筆で情趣ゆたかに描いた著者の処女長篇。激動の時代と生きながらなお、溌剌たる若い生命の感受性、健康で素直な生活感情と故国への愛、掛替えなき青春という時の、一つの姿を浮彫りにする。読売文学賞受賞。
  • 看守眼
    3.8
    刑事になるという夢破れ、留置管理係として職業人生を閉じようとしている、近藤。彼が証拠不十分で釈放された男を追う理由とは(表題作)。自叙伝執筆を請け負ったライター。家裁調停委員を務める主婦。県警ホームページを管理する警部。地方紙整理部に身を置く元記者。県知事の知恵袋を自任する秘書。あなたの隣人たちの暮らしに楔のごとく打ち込まれた、謎。渾身のミステリ短篇集。
  • 人生論
    3.8
    いっさいの自己愛を捨て、理性的意識に生きることによってのみ、人間は真の幸福を獲得することができる――人間いかに生きるべきか? 現世において人間をみちびく真理とは何か? 永年にわたる苦悩と煩悶のすえ、トルストイ自身のこの永遠の問いは、本書にみごとに結実した。誤ることのない鋭い観察力と、愛の直感と心の目で綴った、人生についての内面的、哲学的な考察。
  • 日本のアウトサイダー
    -
    中原中也、萩原朔太郎、三好達治、梶井基次郎、堀辰雄、岩野泡鳴、河上肇、岡倉天心、大杉栄、内村鑑三……。明治以後の、真の意味で個性的に生きた文学者・思想家を、時の功利的実証主義に反発したアウトサイダーとしてとらえ、その事跡と苦悩を検べる中で、逆に近代日本のインサイダーを照らし出そうと意図した労作の評論。現代の人間存在と歴史に深く問いかける。新潮社文学賞。
  • 大尉の娘
    -
    暴徒のため父母を惨殺されたマリーは、相思の将校グリニョーフに危難を救われるが、のちに嫌疑をかけられシベリア流刑に処せられた愛人の赦免を求め、ペテルブルクに行き女王に決死の嘆願をする。エカテリーナ二世の治世に起ったプガチョーフの反乱を背景とし、歴史小説と家庭小説が巧みに融合した、19世紀ロシア・リアリズム文学の先駆的作品であり、プーシキン芸術の最高峰と言われる。
  • たかが江川されど江川
    3.5
    人は「たかが野球」と言うかも知れない、だが僕にとっては「されど野球」だった――。かくも騒がれたあの「空白の一日」とは何だったのか。ユニークな父のこと、今も記憶に残るマウンドでの一球、そしてわが家族のこと……。不世出の投手江川卓が、その半生、短くも波瀾に満ちた九年のプロ野球生活を、華やかなスポットライトの届かなかった部分まで余すところなく語る。
  • 暗い旅
    3.7
    他者との自由な関係を認めあった恋の、突然の破綻――“かれ”の失踪。“かれ”を捜しに暗い旅へと出発した“あなた”の心は、失われた愛を求めて過去へ内部世界へと退行してゆく。だが、絶望は次第にイマジネールなものの中に吸収され、最後に“あなた”は一つの小説を書くことを決心する。〈ことば〉の自己繁殖によって反世界の文学空間をきりひらく、倉橋由美子の処女長編。
  • 聖痕
    4.3
    五歳の葉月貴夫はその美貌ゆえ暴漢に襲われ、性器を切断された。性欲に支配される芸術に興味を持てなくなった彼は、若いころから美食を追い求めることになる。やがて自分が理想とするレストランを作るが、美女のスタッフが集まった店は「背徳の館」と化していく……。巨匠・筒井康隆が古今の日本語の贅を尽して現代を描き未来を予言する、文明批評小説にして数奇極まる「聖人伝」。
  • 荒野のおおかみ
    4.1
    物質の過剰に陶酔している現代社会で、それと同調して市民的に生きることのできない放浪者ハリー・ハラーを“荒野のおおかみ”に擬し、自己の内部と、自己と世界との間の二重の分裂に苦悩するアウトサイダーの魂の苦しみを描く。本書は、同時に機械文明の発達に幻惑されて無反省に惰性的に生きている同時代に対する痛烈な文明批判を試みた、詩人五十歳の記念的作品である。
  • 移動祝祭日
    4.0
    1920年代、パリ。未来の文豪はささやかなアパートメントとカフェを往き来し、執筆に励んでいた。創作の苦楽、副業との訣別、“ロスト・ジェネレーション”と呼ばれる友人たちとの交遊と軋轢、そして愛する妻の失態によって被った打撃。30年余りを経て回想する青春の日々は、痛ましくも麗しい――。死後に発表され、世界中で論議の渦を巻き起こした事実上の遺作、満を持して新訳で復活。
  • リルケ詩集
    4.1
    現代抒情詩の金字塔といわれる「オルフォイスへのソネット」をはじめ、二十世紀ドイツ最大の詩人リルケの独自の詩境を示す作品集。
  • フィツジェラルド短編集
    3.8
    抜群の感受性で時代の寵児となり、真摯に人生の理想を追った人フィツジェラルド。「人生は崩壊の過程である」となぜ彼は書くことになるのか。ニューヨークの上流家庭に生まれた青年アンスンを憧れと揶揄をもって描いた「金持の御曹子」、大恐慌後、パリに静かな悔恨と不屈の魂で佇むチャーリーに熱い思いを託した「バビロン再訪」等、彼自身と当時のアメリカを彷彿とさせて魅力的な6編。
  • 撃てない警官
    3.6
    総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。
  • 日々の泡
    3.8
    愛を語り、友情を交わし、人生の夢を追う、三組の恋人たち――純情無垢のコランと彼の繊細な恋人のクロエ。愛するシックを魅了し狂わせる思想家の殺害をもくろむ情熱の女アリーズ。料理のアーティストのニコラと彼のキュートな恋人のイジス。人生の不条理への怒りと自由奔放な幻想を結晶させた永遠の青春小説。「20世紀の恋愛小説中もっとも悲痛な小説」と評される最高傑作。
  • 百年桜―人情江戸彩時記―
    2.7
    新兵衛はお店に押し込んだ賊の目を見て凍り付く。故郷の桜の下、幼い友情を誓い合った日の記憶が浮かぶ(「百年桜」)。訳あって家を出た母親を江戸でようやく探し当てた秀治に老母は一両握らせたが……(「初雪」)。部屋住みの悲哀を一身に纏い、継之進は国元を出奔した。ただ一つの使命のために(「山の宿」)。正直者には生きづらい江戸の片隅で、善意と善意がすれ違う人情時代小説傑作五編。
  • 五味康祐 オーディオ遍歴
    -
    タンノイ、マランツ、マッキントッシュ――。世界の銘機も、使い方を誤れば音が悪くなる。生涯、理想の音を追求しつづけた著者にとって、よいオーディオ装置とは何だったか? スピーカーの逸品タンノイ・オートグラフへの愛を語り、真空管アンプの品位を称讃し、FMチューナー・マランツ10Bの性能向上に熱意を燃やしたスーパーマニアの、体験的オーディオ論19編を収める。
  • 源氏物語私見
    4.0
    半生の情熱を傾け「源氏物語」全五十四帖の完訳をなし遂げた著者が、訳業のかたわらに書き留めた源氏への愛とその魅力を収める「源氏物語」体験の全貌。空蝉に作者・紫式部の自画像を読み取り、宇治十帖に独自の評価を述べるなど、著者ならではの着眼で問題を提起し、さらに、人間の生きざまの哀しさ、宿命の不可思議さを綴る。「源氏物語」への理解と興味をいっそう深める随想集。
  • シャーロック・ホームズ最後の挨拶
    4.0
    引退して田舎に引籠っていたホームズが、ドイツのスパイ逮捕に力を貸す、シリーズ中の異色作「最後の挨拶」。ほかに、一人暮しの老婆のもとに塩漬けの耳が送られてくる「ボール箱」、姿を見せない下宿人と奇妙な新聞広告の謎を解く「赤い輪」、国家機密である特殊潜航艇の設計図の盗難をめぐってホームズ兄弟が活躍する「ブルース・パティントン設計書」など全8編を収録。
  • じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ
    3.9
    美人だが、手におえないじゃじゃ馬むすめカタリーナが、男らしいペトルーキオーの機知と勇気にかかって、ついに可愛い世話女房に変身──。陽気な恋のかけひきを展開する『じゃじゃ馬ならし』。青年貴族クローディオーと知事の娘ヒーローのめでたい婚礼の前夜、彼女に横恋慕するドン・ジョンの奸計(かんけい)から大騒動がまきおこる『空騒ぎ』。明るい情熱と機知の横溢する喜劇の傑作2編を収録。
  • リア王
    3.9
    老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固め、三人のうちでもっとも孝心のあついものに最大の恩恵を与えることにした。二人の姉は巧みな甘言で父王を喜ばせるが、末娘コーディーリアの真実率直な言葉にリアは激怒し、コーディーリアを勘当の身として二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王リアの悲劇はこのとき始まった。四大悲劇のうちの一つ。
  • オセロー
    3.8
    ムーア人の勇敢な将軍オセローは、サイプラス島の行政を任され、同島に赴く。副官に任命されなかったことを不満とする旗手イアーゴーは、策謀を巡らせて副官を失脚させた上、オセローの妻デズデモーナの不義をでっちあげる。嫉妬のあまり、妻を自らの手で扼殺したオセローは、すべてが、イアーゴーの奸計であったと悟り自殺する。シェイクスピアの後期の傑作で、四大悲劇の一つ。
  • かもめのジョナサン【完成版】
    4.0
    「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、自分の限界を突破しようとした、かもめのジョナサン。群れから追放された彼は、精神世界の重要さに気づき、見出した真実を仲間に伝える。しかし、ジョナサンが姿を消した後、残された弟子のかもめたちは、彼の神格化を始め、教えは形骸化していく……。新たに加えられた奇跡の最終章。帰ってきた伝説のかもめが自由への扉を開き、あなたを変える!
  • ふむふむ―おしえて、お仕事!―
    3.7
    あなたがなりたかった職業は何ですか。靴職人、お土産屋、動物園飼育係、フィギュア企画開発、漫画アシスタントにフラワーデザイナー。夢を叶え、技能と情熱をもって働く15職種16人の女性に、作家が直撃インタビュー。時に持ち前の妄想力を炸裂させ、時にキレキレの自己ツッコミを展開し、時に物欲の鬼と化しながら、聞き取った素晴らしき人生の物語。さあ皆でレッツ“ふむふむ”!
  • 眠れぬ真珠
    3.9
    出会いは運命だった。17も年下の彼に、こんなにも惹かれてゆく――。孤高の魂を持つ、版画家の咲世子。人生の後半に訪れた素樹との恋は、大人の彼女を、無防備で傷つきやすい少女に変えた。愛しあう歓びと別離の予感が、咲世子の中で激しくせめぎあう。けれども若く美しいライバル、ノアの出現に咲世子は……。一瞬を永遠に変える恋の奇蹟。情熱と抒情に彩られた、最高の恋愛小説。
  • 殺人者はいかに誕生したか―「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く―
    3.8
    世間を震撼させた凶悪事件の殺人者たち――。臨床心理士として刑事事件の心理鑑定を数多く手掛けてきた著者が、犯人たちの「心の闇」に肉薄する。勾留施設を訪ねて面会を重ね、幾度も書簡をやりとりするうちに、これまで決して明かされなかった閉ざされし幼少期の記憶や凄絶な家庭環境が浮かび上がる。彼らが語った人格形成の過程をたどることで、事件の真相が初めて解き明かされる。
  • ノエル―a story of stories―
    3.9
    孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
  • 尋ね人
    4.2
    五十年前に突然姿を消した恋人を探してほしい。末期ガンの母・美月からそう懇願された。将来を誓いあった東北大生だったという。東京で恋に破れ、故郷函館でひっそり暮らしていた李恵は母の願いに応え、男の行方を捜し始める。史上最大級の海難事故・洞爺丸遭難が、人びとの運命に打ち込んだ楔(くさび)とは。現代と過去、母娘の恋が交錯する。『海猫』『余命』を越えた、恋愛小説の最高峰。
  • 鋼の魂―僕僕先生―
    3.8
    唐、吐蕃、南詔の三国が支配を狙う雲南の国境地帯。この地を訪れた一行は、孤児を引き取って暮らす男女、宋格之と呉紫蘭に出会う。やがて大国の争いは激化し、子ども達に危機が迫る中、僕僕らは村に伝わる守り神「鋼人」の封印を解くため、湖底へと向かう。迫りくる軍勢。進まぬ国家間の和解。裏で糸を引く「胡蝶」。戦争前夜の狂騒を前に、王弁は何を思う? 緊迫のシリーズ第六弾!
  • 闇の黒猫―北町奉行所朽木組―
    4.8
    腕が立ち、情にも厚い定町廻り同心・朽木勘三郎と、彼に心服する岡っ引たちは、商家の盗難騒動、茶問屋跡取り息子失踪事件を鮮やかに解き、いよいよ江戸の闇夜に跋扈する「黒猫」の正体へと迫ってゆく……。
  • 球形の季節
    3.5
    四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた……。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した! 新鋭の学園モダンホラー。
  • あの日の僕らにさよなら
    3.5
    桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に……。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは──。交錯する運命を描く恋愛小説。『冥王星パーティ』改題。

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