(2009/12/26)
講談社新書はときおりとんでもないいい本を出す。
この本を読んだ後の感動は、福岡伸一氏の「生物と無生物の間に」を読んだときの感動を思い出させた。
何がそうさせたのか。読みどころ満載であるが、3つにしぼってみよう。
1.著者はもともとの研究対象はコンピュータビジョン、つまり機械がどうやってものを認識するか、だったが、身体による体験が認識に有効であることを知り、ロボットへと研究対象をシフトしていったこと
2.ロボットに究極のインタフェース機能を期待すること
3.「ロボットに心があるか」というテーマを通じて、実は人間に心があるのか、心とは何なのかを追及していること
だろうか。ちょっとまとまり切らないが、、。
なんといっても3は圧巻。
「ロボットの動きに心を感じる」のは当たり前と思う。
我々は二次元の漫画、アニメの人物に心を感じることができる。文章の中の登場人物にも感じる。まして三次元、同じ空間にいるロボットが、人に近い形をすれば、当然心を感じると思う。
相手の心は、相手にあるかどうかはどうでもよく、自分の中にあるのだ。
ということは、人は人との関係の中でしか生きられないということになる。
それが今、他人とコミュニケーションがうまく取れず、一人の世界に生きる人が増えているように思える。そのほうが過ごしやすい、というのであればまだいいが、そうしたくないのにそうせざるを得なくなり、悩み、自殺へと至る人も多いのではないか。その積み重ねが3万人につながっているといえるのではないか。先進国で群を抜く多さ。これは個人の問題ではない。社会の病気だ。
自殺予備軍はその10倍、30万人といわれる。異常事態。なんとかしたい。
ということまで考えさせられるほど刺激を受ける良書だ。
著者は英国コンサルティング会社SYNECTICSの「生きている天才100人」調査で日本人最高位の26位に選出(2007年)されるような人らしい。
自分の娘、自分自身もアンドロイドにしてしまう、すごい研究家。
それでいてこの文章が書ける、、、すごい。
今年自分で読んだ130冊の本の中で、間違いなくベスト3に入る本だ。
副題 人の心を映す鏡
プロローグ ロボットは人の心の鏡
第1章 なぜ人間型ロボットを作るのか
第2章 人間とロボットの基本問題
第3章 子供と女性のアンドロイド――人間らしい見かけと仕草
第4章 自分のアンドロイドを作る――<人間らしい存在>とは
第5章 ジェミノイドに人々はどう反応し、適応したか――心と体の分離
第6章 「ロボット演劇」――人間らしい心
第7章 ロボットと情動
第8章 発達する子供ロボットと生体の原理
第9章 ロボットと人間の未来
エピローグ ロボット研究者の悩み