ロイコクロリディウムから始まる、寄生虫の話。「パラサイト・イヴ」というホラー小説が紹介され、早速読みたくなる。
ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリの映像は以前twitterで見たことがあり、その行動面よりも見た目の異形さから強烈な印象があった。ドーキンスの「利己的な遺伝子」の考え方にも触れられ、寄生者が宿主の行動を支配する事例がたくさん挙げられている。
カクレクマノミがイソギンチャクに何故刺されないのか、という理由の一つをカクレクマノミの体表の粘液のマグネシウム濃度が関係していることを女子高生二人が突き止めたコラムが印象深い。
アレロパシー(他感作用)も初めて知った。ある植物が生産する特殊な物質が他の植物や昆虫、動物に作用することを言う。ex サクラは葉からクマリンを放出して、他の植物を生えにくくする。
寄生においてスナノミがとても怖いと思った。足の裏から入り込んで、足がボロボロになっている写真が載っている。ノミと言っても、スナノミは外部寄生か内部寄生かは曖昧だ。
また、蜂は全て英語で「bee」だと思っていたが、狩りバチは「wasp」というらしい。勉強になった。
エメラルドゴキブリバチはよくある狩りバチのように獲物を仮死状態にするのではなく(大きすぎて運べない)、蜂が誘導する方向に動いていけるようにしてしまう。凄くピンポイントで麻酔と毒の注入をする。
この麻酔手術、人間に生かせないかと思っていたら、すぐにロボトミー手術のことが書かれていて、慄然とした。ロボトミー殺人事件なるものも日本で起きたことがあるらしい(同意なしに手術したことへの復讐だという)。
この獲物にされたゴキブリは生きながら蜂の幼虫に食べられ、蜂が蛹になるころ、死んでいく(それまで毒の効果は消えない、その量に関しても蜂、凄い、と思う)。
しかしゴキブリにとっては本当に悲惨。あまり好きではないが同情してしまう。
これをゴキブリ対策に利用できないか、という話が出ていたが、生物防除は思わぬ結果を招くことがあるから、慎重にして欲しい。
他にもブードゥーワスプ、テントウハラボソコマユバチなど寄生バチの話が続く。エメラルドゴキブリバチは麻酔と神経毒の二段階だったが、ブードゥーワスプはまだその行動制御方法が分かっておらず、テントウハラボソコマユバチはウイルスによってマインドコントロールしていることが分かっている。以前「ダーウィンが来た」のテントウムシの回で寄生されたテントウムシでも生還出来る個体がいる、ということでホッとしたのだったが、本書を読むと、一度寄生されたテントウムシは再度寄生される確率が高いという。私はどうも寄生する側には立てないらしい。
「えげつない生き物図鑑」で取り上げられていたハリガネムシも書かれていた。ハリガネムシがいることによって、川の渓流魚が得ることが出来るエネルギー量(えさ)が増え、河川の生態系に影響を与えているとは意外だった。
他にもいろいろ寄生生物についてかかれていたが、後半はちょっと私のエネルギー不足でつまらなく感じた。
しかし、前半だけでも、ダントツに面白い。カラーの写真だったら、もっと良かったかも。