火付盗賊改方長官、鬼の長谷川平蔵、通称「鬼平」の活躍を書くシリーズ、今回は特別長編で鬼平の過去の因縁にも繋がる。
===
火付盗賊改方は、鉄砲洲の笹田屋に押し入ろうとする盗賊一団「池尻の辰五郎」の現場に先回りした。辰五郎は潔く自害して果て、一味は捕縛され全員が死罪となった。
…冒頭が、同心の細川峯太郎のダメダメっぷりでちょっとげんなり(-_-;)。お役目で賭博場を見張っていたらそのまま夢中になってしまい借金を重ねるし、以前の話で鬼平に叱り飛ばされたっていうのに相変わらず昔の逢引相手(峯太郎が同心で既婚と知らなかった)に未練たっぷり、たまたま入った飲み屋「豆甚」で行き合った年増女(といっても25歳)の性のお相手を勤めてお小遣いをもらいまたしても博打、そして女房には「お役目ったらお役目だ!なんだその不機嫌は!」と威張り散らす。物語としては「昔の木村忠吾みたい」って役割なんだけど、さすがに兎の忠吾は結婚してから普通の女性との遊びはしてない(商売の女性に関しては分からないが)し、いくらなんでも同心で賭博出入りは笑って済ませられん。
そんな呑気な細川峯太郎の所業がバレて鬼平に冷水を浴びせられる(文字通り、水をぶっかけられる)。一つだけ得られた情報は、峯太郎に小遣いと身体を渡した女がどやら盗賊一味らしく、そこから盗賊一味が手繰れそうだということ。
女は片腕の盗賊「猫間の十兵衛」の娘のお松だった。そして猫間の十兵衛と池尻の辰五郎は実は異母兄弟。そして過去に鬼平と因縁があったらしい。猫間の十兵衛は、自分の片腕と、弟の復讐に、鬼平との直接対決に人生最後の一暴れを決意した。
そして猫間の十兵衛の仕掛けた暗殺者、安藤玄丹が鬼平に差し向けられる。腕の立つ者同士の対決となったが安藤玄丹はその場を逃げ延びる。
しかしその数日後から、鬼平の周りの者達が次々に襲撃される。同心、鬼平の娘婿河野の部下の侍、下男、そして鬼平の不詳の嫡男辰蔵。
自分が狙われるなら、せめて役目である与力や同心や狙われるなら役目の範囲で警戒のしようもある。しかし全く関係なく丸腰の下男までもが狙われるとは。ついに幕府(こうぎ)は「長谷川平蔵個人に恨みを持つ者の仕業なら、彼を罷免させれば収まる」との声が大きくなっている。鬼平の上司であり良き理解者である京極備前守が鬼平の重要性を解いている間に盗賊たちを捕まえられるのか。
そんな折、鬼平の密偵の一人「玉村の弥吉」に、「法明寺の九十郎」が「今度の盗(つと)めを助(すけ)てほしい」と接触してきた。しかもそれが、つい先ごろ火付盗賊改方が池尻の辰五郎一味を捉えた店ではないか。今回の法明寺の働きと、先ごろの盗めとは関わりがあるのか?
鬼平は市中見回りのため頭を丸めて坊主に変装して連続暗殺事件を探る。やがて、二つの事件の背後には同じ盗賊の存在(これが猫魔の十兵衛なのだが)が見えてくる。
===
「長谷川平蔵は若い頃家の事情から無頼者になっていた。家の事情が治まり今では火付盗賊改からの鬼の平蔵として大活躍」というのはこの物語の根本です。しかし「それは鬼平の家柄が良かったからだろう。若い頃グレていたのが改心したから水に流しれいいのか!」という問題ありまして、今回はその過去の因縁が鬼平に直接降り掛かってきた。
小説として良かったのは、上司であり理解者である京極備前守がいること、密偵の働きが具体的だったこと。今までも密偵たちの働きで、市中見廻りとか盗賊の仲間になった振りをして情報を流すことは書かれていた。今回の密偵玉村の弥吉は、ある意味「余計なことはしない。瞬時に適切な判断をする」ってこと。派手さはないし、まさに裏方なんだけど、これこそが密偵の働きだと思った。
そしてここ数巻の間に不詳の嫡男長谷川辰蔵にすこしづつ成長の兆しが!?
これからを期待しましょう・笑