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囲碁の口論から父を惨殺した笠原孫七郎を追って三十年。信州松本藩の夏目半介は仇討ち費用を人に貸して生計を立てる江戸暮らし。ふとなじんだ娼家のお君の、熟れた体に激しく溺れた。そのお君が悪事を犯しただんなと江戸を出奔、半介は後を追うが、その男こそ……。「うんぷてんぷ」以下、江戸時代の仇討ちをテーマとする八編を収録。仇討ち制度の非人間性と、それに翻弄される人間たちの運命を鮮やかに描く珠玉作品集。
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Posted by ブクログ
池波正太郎(1923-1990)も没後三十年。時蠅は矢を好む。短篇集『仇討ち』の登場であります。テエマはそのものずばり「仇討ち」。 日本人は曽我兄弟の仇討(1193)や鍵屋辻の決闘(1634)、さらには忠臣蔵・赤穂事件(1703)など、仇討物語が好きであると言はれてゐますが、本当の所は分かりませ...続きを読むん。Wikipediaなら、「要出典」「誰によって?」などと書かれるかも。ただ、歴史上の事情が関係してゐるとは言へさうです。 仇討制度について、池波正太郎自身が、作中で解説してゐますので、引用しますと― さむらいがさむらいを斬殺すれば、その場において、自分も腹を切る、自決する。これが武士の心得である。相手を殺して逃げたとあれば、殺された者の子か、弟妹かが敵討ちの旅にのぼらねばならない。/同時に殺した者の実家や身寄りの者にまで迷惑がかかる。/封建の時代(ころ)は、つまり日本がいくつもの国々にわかれてい、それぞれに大名がこれをおさめていたわけだから、A国で殺人を侵してB国へ逃げこんでしまえば、一応、A国の法律は適用されぬことになる。/ここに、武家の[敵討ち]がおこなわれる。/いわば法の〔代行〕ということだ。 迷惑な事です。仇討の旅立ちに当つては、親族一同から励まされ意気揚々として出立しても、簡単に仇は見つからず、見つかつても彼我の力量差から返り討ちに遭う事もあります。大概は仇は見つからず、かといつて里にも帰れず、放浪の旅になる事が多かつたやうです。 本書にも仇討に出ざるを得なくなつた物語が八篇収録されてゐます。例へば「うんぷてんぷ」は、長年の仇討の旅に疲れた男が、もう諦めて女と所帯を持たうとした途端に、嫉妬から斬つた男が仇だつたといふ、文字通り運否天賦の話。 例へば「仇討ち七之助」。仇が強すぎて敵はぬ相手で、逆に返り討ちが怖くて名を変へてゐたが、その名を借りた男が兇状持ちで、見知らぬ男から斬られるといふ理不尽な物語であります。 ほかに「顔」「仇討ち狂い」「金ちゃん弱虫」「熊田十兵衛の仇討ち」「あばた又十郎」「出刃打お玉」を収録。当時の宮仕へとは、現代のサラリーマン以上に悲哀を含んだものだ喃と感じた次第であります。
短編小説で気楽に読めた。仇討ちというテーマだけど、そんなにどろどろ生臭い感じはしないので、よかった。 仇討ちを題材に全部違う構成、展開の話になっているので面白い。 それにしても仇討ちというシステムは恐ろしい。もし自分が親を殺されたとしたら、自分の足でその犯人を探して、首をとってこなければ地元に帰るこ...続きを読むとを許されないなんて厳しすぎる。日本狭しと言えども、電車もなければ、車もない時代に1人の人間を探して歩き回るなんて、途方もない所業だなぁ、と思った。
いかにも池波正太郎と言う感じ。 巡る世の中、良い悪いもの人それぞれ。 教訓めいた話もあり。 気軽な一冊かな。
短編の中でも仇討ちにテーマを絞ったもの。池波流の見事な切り口でまとめられている。 しかし、このテーマだけで一冊できてしまうとはさすが。読後感もいいんですよね。 テレビの時代劇も、最後のお定まりのあれ、がなくっちゃ〜。ってところがあると思うんだけど、池波小説はえ?と裏切られても読後感はいいんですよね。...続きを読むそこがやっぱりすごいところかも
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