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Posted by ブクログ
すごく面白く読んだが、この本のどこが面白いのかを説明するのはとても難しい。
一言で言えば、筆者が好きな、あるいは好きだった料理屋について語るだけの本。時代は筆者の若い頃、戦前から、おそらく昭和50年代まで。場所は、都内各所・京都・大阪・横浜・名古屋・近江・パリ、などバラエティに富んではいるが、それでも書いていることは、料理屋のことである。
近江、八日市の「招福楼」という料亭についての文章を引用する。
【引用】
招福楼へ、はじめて入って昼食をしたためたのは、十三、四年前のことになるだろう。
そのときのうまさ、おどろきについては、あらためて書きのべないが、この店の主人・中村秀太良の、料理と接客に対する情熱の見事さは、いまも全く変るところがない。
【引用終わり】
として、最近の招福楼での食事の中身についての文章が、そのあとずっとつづくのである。
これの何が面白いのか?上手くは説明出来ない。
何とも言えない味のある文章、ちょっと前の東京の粋、何より池波正太郎の暮らし方・生き方。
そういったものが、文章の魅力を作っているのだろう。
Posted by ブクログ
読んでいるだけでお腹が空いてくる…。こういう人のことを、美食家と言うのだろう。出てくるお店は、必ずしも高級店だけではないけれど、どれもとても美味しそうで、そしてそれは単に食べ物の味が良いだけではなく、お店の佇まいや、主人のこだわりや、そこにいる人々の会話や、それらが作り出す空間とそこで過ごす時間全てが、「美味しい」のだと思う。
そして、馴染みのない店や時代なのに、描かれた情景がどこか懐かしく感じられるのは、亡くなった祖父と著者が同世代を生きた人だからだと気づいた。いつのまにか、祖父がお酒を飲むと時折語ってくれた昔話と重ね合わせて読んでいた。東京の西の郊外の貧しい家の出で、家族の誰よりも倹約家だった祖父は、きっとこんなに豊かな外食の経験はなかっただろう。けれど、美味しいものをつまみにお酒を飲む幸せは、戦争を経験しているからこそ、より一層強く感じていたのだと、今振り返ると思う。祖父にこの本を渡して、感想を聞いてみたかった。
「オリムピック」が、「科学とマシンと錯覚」が、東京を、そして日本の都市のあちこちを破壊してしまったと著者は言う。この本が書かれた30数年前は、まだ今よりは「良い時代」だったのではないかと思ってしまうけれど、それでも、日本に活き活きと根付いていた食文化は、既に刻々と変わり続けていたのだろう。そして、きっと著者は呆れるだろうけど、二度目の「オリムピック」がやってくる。私たちはまだ、破壊を続けているのだろうか。それとも、少しは何かを取り戻そうとしているのだろうか。
決して美食家ではなくても、お酒を飲み歩ける年齢になると、「この店は無くしちゃいけない」と思う店にたまに出会うことがある。でも、だからといって、その店が変わらずに永遠に続いてほしいと願うのも、無責任なことのかもしれない。ただできることは、通えるときに好きな店に通い、その味や時間を、しっかりと記憶しておくことだけなのだと思う。
Posted by ブクログ
池波正太郎の「鬼平犯科帳」のドラマが好きだったが、本で一冊も読んだことがない作家だった。エッセイなので読みやすい。単なるグルメ本っていうより、時代と町の風景、お店の佇まいなどを感じつつもおいしいものを読むことで堪能できる。いわゆる一見さんでは尻込みしちゃいそうなお店もあるけれど、蕎麦屋など本当に日常的に通ってらしたところも良く出てくる。東京は縁がないからあまりよくわからないけど、行ったことない浅草方面にも興味が湧いた。たまたまだけど、仕事で「剣客商売」のあらすじを書いた直後に読んだのもあって、作品が生まれた背景が出て来た時、おお〜っという感動があった。あと松本の「まるも」は、卒業旅行で旅館に泊まったことがあるので、いい選択したなぁと嬉しかった。時々文章が途中一文字抜けてる?と思うのが何箇所かあったのが気になったが(笑)とにかく旅に出かけてみたくなった。
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